《 ハドソン川の奇跡からのつづき 》
ハドソン川に奇跡を起こしたのは・・・ この方。
当時57歳だった、 チェズリー・バーネット・ “サリー” サレンバーガー機長
絶体絶命の窮地にありながら、機長の管制官とのやり取りは冷静沈着そのものでっ!
通信を文章にしたものをコピペしてみました。 実際の録音を聞きながらたどると興味深いです。
皆さん早口で、私には会話をたどることすらおぼつかない~!
(ちなみに Cactus というのはコールサインだそうです。 『トップガン』 でトム・クルーズの機が Maverick だったように。)
1549の便名を機長は1539便、管制官は1529便と間違えていますが、それは緊迫した状況下でのご愛嬌ということで~
15:27:32
管制官: Cactus 1549, turn left heading 2-7-0.
15:27:36
機長 : Ah, this, uh, Cactus 1539. Hit birds, we lost thrust in both engines.
We're turning back towards LaGuardia.
15:27:42
管制官: OK, yeah, you need to return to Laguardia. Turn left heading of uh, 2-2-0.
15:27:46
機長 : 2-2-0.
15:27:49
管制官: Tower, stop your departures. We got an emergency returning.
15:27:53
ラガーディア空港: Who is it?
15:27:54
管制官: It's 1529, he ah, bird strike. He lost all engines. He lost the thrust in the engines.
He is returning immediately.
15:27:59
ラガーディア: Cactus 1529, which engine?
15:28:01
管制官: He lost thrust in both engines, he said.
15:28:03
ラガーディア: Got it.
15:28:05
管制官: Cactus 1529, if we can get it to you, do you want to try to land runway 1-3?
15:28:11
機長 : We're unable. We may end up in the Hudson.
15:28:17
管制官: Jet Link 2760, turn left 0-7-0.
15:28:19
Jet Link 2760: Left turn, 0-7-0 Jet Link 2760.
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15:28:31
管制官: All right cactus 1549. It's going to be a left. Traffic to runway 3-1.
15:28:34
機長 : Unable.
15:28:36
管制官: OK, what do you need to land?
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15:28:46
管制官: Cactus 1549, runway four is available if you want to make left traffic to runway four.
15:28:50
機長 : I am not sure if we can make any runway.
Oh, what's that over to our right?
Anything in New Jersey, maybe Teterboro?"
15:28:55
管制官: OK yeah, off to your right is Teterboro airport.
15:29:02
管制官: Do you want to try and go to Teterboro?
15:29:03
機長 : Yes.
15:29:05
管制官: Teterboro, uh, Empire actually. LaGuardia departure got an emergency inbound.
15:29:10
テーターボロ空港: Okay, go ahead.
15:29:11
管制官: Cactus 1529, Over the George Washington bridge want to go to the airport right now.
15:29:14
テーターボロ: He wants to go to our airport check. Does he need any assistance?
15:29:17
管制官: Ah, yes, he, ah, was a bird strike. Can I get him in for runway one?
15:29:19
テーターボロ: Runway one, that's good.
15:29:21
管制官: Cactus 1529, turn right 2-8-0, you can land runway one at Teterboro.
15:29:25
機長 : We can't do it.
15:29:26
管制官: OK, which runway would you like at Teterboro?
15:29:28
機長 : We're gonna be in the Hudson.
15:29:33
管制官: I'm sorry, say again, Cactus?
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15:29:41
管制官: Jetlink, 2760, contact New York. O-2-6 point 8.
15:29:45
Jet Link 2760: 20-6-8 Jet Link 2760.
15:29:51
管制官: Cactus, ah, Cactus 1549, radar contact is lost.
You also got Newark airport off your two o'clock and about 7 miles.
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15:30:06
管制官: Eagle flight 4718, turn left heading 2-1-0.
15:30:09
Eagle Flight 4718: 2-1-0, um, 4718. I don't know, I think he said he was going in the Hudson.
15:30:14
管制官: Cactus 1529, uh, you still on?
15:30:22
管制官: Cactus 1529, if you can, ah, you got, ah, runway 2-9 available at Newark
off your two o'clock and 7 miles.
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15:30:32
管制官: Eagle flight 4718, climb and maintain one two thousand.
15:30:34
Eagle flight 4718: OK, 1-2 thousand and, ah, leaving 5 and 280 heading.
15:30:41
管制官: And Eagle flight 4718, I’m sorry, I missed that, say again.
15:30:45
Eagle Flight 4718: And uh, we're up to 12,000, uh, 280 on the heading.
15:30:48
管制官: OK, thank you Eagle flight 4718, Turn left. 2-2-0.
15:30:51
Eagle Flight 4718: 2-2-0 4718.
15:31:30
Unknown: Was that cactus up by the Tappan Zee?
15:31:32
管制官: Uh, yeah, it was a cactus. He was just north of the, ah, George Washington Bridge
when they had the bird strike.
高度/速度調節と着水準備に大忙しだった機長。 乗客と乗員に機内アナウンスで
“This is the captain; brace for impact. (衝撃に備えてください。)” と警告できたのは
15:29:11、着水の約90秒前のことだったそうです。
15:30:38の “We're gonna brace. (衝撃に備えます。)” のあと15:30:43に、ボイスレコーダーの録音は終了。
(詳細はこちら。)
左側に座ったサリー機長(57歳)が同便のメイン・パイロットで、彼の当日までの累計飛行時間は19,663時間。
右側に座ったジェフ・スカイルズ副操縦士(49歳)も経験豊かなパイロットで、
サリー機長ははじめ、彼に離陸を任せて無線や雑務を担当していました。
ザ!世界仰天ニュースに、“ハドソン川の奇跡” が 詳しく再現されています。
バードストライク後、サリー機長は “My aircraft.” とスカイルズ副操縦士に言い、副操縦士もそれに応えて
“Your aircraft.” と言ってサリー機長に操縦を代わってもらいます。
これはサリー機長が副操縦士の技量を疑ったからではなく、サリー機長が “Pilot in Command” として
その機の責任をもつパイロットだったからだそうです。
(世界仰天ニュースでは操縦を代わるとき “I have.” → “You have.” と言っていますが。)
操縦桿を握ったサリー機長は管制官と交信しつつ、副操縦士とともに何とかエンジンを再スタートさせようと試みます。
管制官の 「テーターボロに向かいますか?」 に 「イエス」 と応えたのが15:29:03、
でも25秒後の15:29:28には 「ハドソン川に着水します」 と告げています。
不時着水は避けたいとの思いから 「イエス」 と応えはしたけれど、その頃にはもうすでに、
ハドソン川しか道はないと悟っていらしたのでは?
コックピットからの眺めはこんな感じだったんでしょうね。
このCG動画で、サリー機長気分をちょっぴり味わえますよ。
機体が地面を離れて1分後の15:27:11にバードストライクが発生。
不時着水は15:30:39だったそうだから、バードストライクからわずか208秒、3分半後のこと。
3分半て・・・・・ お湯沸かしも含めたら、紅茶一杯入れる時間と大差ないんじゃ!?
そんな短かい時間に大きな決定を下し、全神経を集中させて実行し、大成功に導いたサリー機長。
カッコよすぎ・・・・・
マイケル・ブルームバーグニューヨーク市長(当時)は彼を “Captain Cool” と称賛したそうですが、
それも大いにうなずけます。
サリー機長があの便の機長で、本当に本当に良かった・・・・・!!
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ついでながら、不時着水機のその後をば。
ハドソン川から引き揚げられた1549便の機体(エアバスA320型機)は、ニュージャージー州の倉庫に一時保管され調査検分され、
「損壊が激しすぎるので修理はムダ」 と判断されました。 廃車・・・ 廃機が決定した同機はオークションにかけられ、
同便の目的地だったノース・カロライナ州シャーロットにあるカロリナス航空博物館(Carolinas Aviation Museum)に
展示されることが決まり、2011年6月4日から10日まで、7日間かけて966kmを、陸路で輸送されたそうです。
長さ58mという本体部分。 各地で交通渋滞を引き起こしつつも、沿道で人々に大歓迎されました。
輸送を手がけたトラック会社は、ウェブサイトで輸送の進行状況を刻々とアップロード。
数時間車を飛ばして、夜を過ごすため休んでいる機体の側面に触りに来た人々もいたそうです。
本体が博物館に到着した翌日の2011年6月11日には、サリー機長をはじめとする
元乗員・元乗客全員が招待されての “移送完了パーティー” が催されました。
すでに届いていた両主翼や尾翼はUSエアウェイズの協力を得て取り付けられ、完成した機体はノース・カロライナ州立大学
シャーロット・カレッジの工学部の学生によってデザインされた取付け台に固定されました。 (詳しくはコチラ。)
サリー機長とスカイルズ副操縦士は、USエアウェイズの制服を同博物館に展示用に寄贈したそうです。
《 サリー機長の “あの日” につづく 》