ハナママゴンの雑記帳

ひとり上手で面倒臭がりで出不精だけれど旅行は好きな兼業主婦が、書きたいことを気ままに書かせていただいております。

『大草原のビッチの告白』 ②

2017-03-09 22:38:47 | ひと

《  からのつづき 》

 

成長後のアリソンしか知らない友人たちは全く信じてくれないそうですが、

生来は人見知りで内気な性格だったアリソンは、『大草原・・・』 のセットでも、消極性を克服するのに苦労したそうです。

監督のウィリアム・クラクストンに 「話すときはしっかり相手の目を見なきゃ駄目だよ」 と注意されたりして。

(そう言うクラクストン自身も内向的で、自分の爪先を見つめながら話していたそうですが。

第1シーズンの途中で、アリソンの内気さが高慢さだと誤解されているとエージェントが連絡してきます。 驚愕したアリソンですが、

自分で考えて納得もします。 カメラの中で私はビッチを演じ、演じていないときは黙って座っているだけ。 共演者たちが、そんな私を

お高くとまっていてアンフレンドリーだと誤解してしまうのも無理はない。 でもこのままでは、出演契約も危うくなってしまう・・・

両親にアドバイスをもらい、アリソンは服装をカジュアルにカラフルにし、無理にでも話しかける努力をしました。

成長時はアリソン以上に内気だったというマリオン伯母さんはアリソンに深く同情し、「一番簡単なのは、質問をすることよ。

たいていの人は、自分のことを話すのが大好きだから」 とアドバイスをくれました。

そこでアリソンは、深呼吸をし、それまでとは正反対のことをするようにしました。

引込みたくなったら前に進んで話しかける。 下を見たくなったら上を見る。 身をすくめたくなったら笑う。

(まるで馬鹿みたい。 こんなことで私に対する見方が変わるわけがない。) そう思っていたアリソンですが、2日もしないうちに

「アリソンは現場に溶け込みつつある」 と、喜んだエージェントから電話がありました。

このことでアリソンは、人は自分が見たいものを見、信じたいことを信じるものなのだと学びました。

 

 

 アリソンには頼みの綱もありました。 メリッサ・ギルバートです。

アリソンが高慢だという噂を聞きつけた10歳のメリッサは、『大草原・・・』 でのアリソンの最初の友達として、その噂が

真実ではないことを知っていました。 そこで誤りを正すべく、ミーティングを開きます。

場所はシミ・ヴァレーの、彼女のドレッシング・ルーム(として使われているトレイラー)。 エキストラを含む子役の女の子たちがすべて、

ランチに招かれました。 狭いトレイラーのなかで、皆は長椅子や机や床に窮屈に座ります。 おしゃべりが始まり、ある子が

「アリソンがいい子だったと知って驚いた」 と言いました。 待ち構えていたメリッサは、それに飛びつきました。

「そうでしょう!? 私には、誰かがアリソンに関する噂を広めているんだってわかってたわ! 誰から(アリソンが高慢だと)聞いたの?」

その子が別の子を指差すと、指差された別の子はまた別の子を指差して・・・・・ メリッサ・ギルバートに尋問されるという

思いから、皆がパニック状態に陥りました。 やがて、どうやら噂の元は、ランチに加わらなかった女の子らしいことがわかります。

すると、年長の女の子が勇気を出して言いました。 「でも実際にはあの子じゃなくて、あの子のお母さんだったのよ?」

メリッサはこれには驚きませんでした。 頭を振りながら、彼女は皆に言います。

競争が避けられないこういう世界では、ステージ・ママがライバルを蹴落とすため他の子役の悪い噂を広めるのはよくあることだと。

「こういうことは、これからも起こると思うの。 私たちにお互いを蹴落とさせようとして。 でも私たちは、そんなのに

巻き込まれちゃだめ。 だから今後は、誰かの噂が耳に入ったら、真先に私に知らせてね?」

全員がそれに同意し、メリッサ・ギルバートはステージ・ママたちに対する子役たちの同盟を結成したのでした。

それ以降は誰かの悪い噂が広まることはなく、セットで起きたことは何でもメリッサの耳に入るようになりました。

『大草原・・・』 のセットにおけるドン・コルレオーネになったメリッサ。

やがて成長した彼女は映画俳優組合の代表を務めましたが、当時の彼女を知る人々は驚きませんでした。

 

『大草原・・・』 終了後も続く、アリソンとメリッサの友情。

   

 

「気をつけていないとメアリー・スー・アンダーソンに殺される」 というのは、 当時10歳にしてすでにドラマ・クイーンだった

メリッサ・ギルバートの誇張でした。 しかしながら、アリソンによると、優しく賢く美しいメアリーを演じていたメリッサ・スーは、本当に

打ち解け難いミステリアスな少女だったようです。 自分の家族や家庭生活については一切語らず、もちろん誰かを

家に招いたりもせず。 撮影には古典的ステージ・ママそのものの母親が付き添ってきて、常に娘にくっついていました。

他の子役の親や保護者たちから浮いた存在になりつつあったメリッサ・スーの母親を気遣ったマリオン伯母さんは

彼女に話しかけ、アリソンよりは多くのことを知ることができました。

メリッサ・スーの父親とは離婚して、 メリッサ・スーには兄弟、多分姉か妹がいたけれど、今は母娘二人きり。

 

マリオン伯母さんはアリソンに、固く言いつけたそうです: メリッサ・スーがアリソンを無視しても、一緒に遊ぶのを拒んでも、

たとえ面と向かって侮辱しても、黙ってその場を離れること。 状況を悪化させるようなことをしては絶対に駄目。

辛抱強く、心を広く持つように。 「あの子は家ではとても不幸なのよ。」

 アリソンはメリッサ・スーにもフレンドリーに接しましたが、成功することはありませんでした。 「おはよう!」 と言っても、返ってくるのは

冷たい凝視か、吐息の下から漏れる 「ふぅ・・・ん」 みたいな音。 大抵の場合はそれ以下で、メリッサ・スーはアリソンの存在も

「おはよう!」 も完全に無視し、読んでいる本から目を上げないことすらありました。

メリッサ・スーがバックギャモンが好きだと伝え聞いたアリソンは、それが彼女の殻を破る機会になるかもと喜びました。

(私はやり方を全然知らないけれど、だったらなおさらいいわ! 彼女は私に、やり方を見せて自慢できるもの。)

アリソンがメリッサ・スーに近づいてバックギャモンに興味を示すと、メリッサ・スーは退屈した表情を浮かべました。 自分はやり方を

知らないが難しいのかと訊かれると、うんざりしたような表情を見せてメリッサ・スーは言いました。

「いいえ、でもあなたにはわかりそうもないわね。 あなたって、いつも少しばかり覚えが悪いし。」

あっけらかんとした面と向かっての侮辱でしたが、アリソンはそれがジョークかもという望みにかけます。

神経質な笑みを浮かべて 「覚えが悪い? そうね、私は確かに覚えが悪い方かも!」 と言ってみましたが・・・

メリッサ・スーは笑ってはいませんでした。 「ううん、」 冷たい口調で続ける彼女。

「少しばかりじゃなくて、かなり覚えが悪いわね。 実のところ、あなたってかなり馬鹿だわ。」

そうか・・・ メリッサ・スーが自分にバックギャモンを教える気がないことを悟ったアリソンは、さらに何か言われる前に、

その場を退散しました。

 

メリッサ・スーと母親

 

(個人的にはこの母親の表情、何となくコワいです。 目線がカメラを外して泳いでいるようで・・・)

 

メリッサ・スーのそんな態度は母親に原因があると、誰もが思っているようでした。 メリッサ・スーの母親はただ静かに娘に付き添って

いるだけでしたが、二人の関係には何か妙なところがあると、誰もが秘かに感じていました。 繊細さに欠ける人々の中には

実際にそう口にする人もいました。 例えば、繊細なところがまったくない(オルソン夫人役の)キャサリン・マグレガー。

ある朝メークアップ中のマグレガーは、何年もセラピーを受けたあとでようやく自分が母親を嫌っていたことを自覚したと

話していました。 彼女の母親は極度に冷酷でしたが、彼女は長いこと、母親の冷酷さを気にもかけないふりをしていたと。

母親には我慢ができないとようやく認めることができたとき、彼女は大きな安堵を感じたそうです。

マグレガーが 「それでようやく私は、母親を嫌っていることに気がついたのよ!」 と言っているときに部屋に入ってきたメリッサ・スーは、

おののきました。 彼女には珍しく、反論までしたのです。 「そんなことできないわ。 母親を嫌うなんて。」

マグレガーはメリッサ・スーに向き合うと、ばっさり言ってのけました。

「もちろんできますとも。 母親を嫌う人はたくさんいるわ! もちろんそうでなければ一番いいけれど、時には我が子を嫌う

ひどい母親もいる。 そして母親を嫌う人々もいるわ!」

「でも自分の母親を嫌うなんてできないわ!」 メリッサ・スーは抵抗します。

「そんなこと言ったのは、一体誰?」 マグレガーは譲りません。

「私の・・・ お母さん」 どもりながら答えるメリッサ・スー。

「ほうらね!」 オルソン商店で万引きを見つけたかのように、メリッサ・スーを指差してマグレガーは吼えました。

メリッサ・スーはくるりと後ろを向き、トレイラーから駆け出していきました。

 

メリッサ・スーには伝説となった 『良い日』 がありました。 第1シーズンの途中のことです。 メリッサ・ギルバートが、

マジック・マウンテン遊園地でのバースデー・パーティーに皆を招待したのです。 スリルのある乗り物は苦手なアリソンは

荷物持ちにまわりましたが、それでもジャンク・フードを食べて笑いさざめいてうわさ話に花を咲かせて、皆と一緒に典型的なティーンの

女の子の一日を楽しみました。 そしてメリッサ・ギルバートとアリソンが驚いたことに、メリッサ・スーも・・・・・ 本当に楽しそうでした。

本当に、真に、ふりではなく、笑顔で、声高に笑って髪を振り上げて。 一日中。

やがて母親が迎えに来ました。 それはまるで、黒雲が太陽を隠すかのようでした。 メリッサ・スーは無口になり、表情は

いつもの、退屈したような凝視に戻ったのでした。

 

第1シーズン放映中、オルソン夫人を演じるキャサリン・マグレガーとアリソンは、学費が高額な私立の女学校のイースター・イベントに、

オルソン夫人とネリーの衣装で登場するよう依頼されました。 メディアも一緒に。 青々とした芝生が広がる庭には

メリー・ゴーランドが設置され、池にはアヒルの幼鳥が放され、イースター・エッグ・ハントも準備され、ウサギの格好をした

ウサギ役までいました。 たくさん写真を撮られたあと、二人は生徒とお金持ちの父兄たちに紹介されます。 が・・・ そこには

熱狂も喜びも感激もなく、戸惑いがあるのみでした。 二人は悪役だったから。

年長の生徒の幾人かはサインをもらいに来てくれましたが、会場は静まったままでした。

4歳か5歳の女の子を連れた母親がオルソン夫人に娘を引き合わせました。 マグレガーは優しく微笑んで 「ハロー」 と言いましたが、

女の子はわっと泣き出したと思うと大声で叫び始めました。 アリソンは、どちらがより深いトラウマを負ったか測りかねました:

あの恐ろしいオルソン夫人に対面して恐怖に陥った小さな女の子か、それとも自分が微笑みかけたせいで

小さな女の子を泣かせてしまったと気づいたマグレガーか。

  

誰とも直接には接しない方がいいと悟ったマグレガーとアリソンは、その後は目立たないように過ごしました。 サインを欲しい、二人と

話がしたいという人にはこっそり応対するようにして。 何か食べに行くにはちょうどいい機会だと思ったアリソンは、学校が

準備してくれたフード・コートに一人で向かいました。 脇道を歩いていたアリソンですが、くすくす笑いが聞こえたと思ったら、突然

ドスン!

お尻をふたつの足に蹴られ、前のめりにコンクリートの地面に倒れました。 冷たいコンクリートに頬を預け、

遠ざかるくすくす笑いと足音を聞きながら、アリソンは考えます。

一体なぜこんなことになった? 私はあの子たちを知りもしない。 なのに彼女らは私を蹴り倒し、それを喜んでいる。

私はテレビで別の人間のふりをして、自分ならしないようなことをし言わないようなひどい事をたくさん言っている。

メリッサ・ギルバートを毛嫌いするふりをしている。 実際には大好きなのに。

自信たっぷりのタフないじめっ子のふりをしている。 本当の私は臆病で内気でいじめられることのほうが多いのに。

こういうことは、お金をもらってする仕事だからやってきただけなのに。

あまりにも上手にやってきたものだから、私の 『ふり』 があまりにも説得力があり過ぎたから、あの子たちは本当に私を嫌ったんだ。

あまりにも私を嫌い、あまりにも私に対して怒っていたから、私を見ただけで蹴り倒さずにはいられなくなったんだ。

ということは、これは確実に一種の達成に違いない。

エミー賞受賞でさえ、私が女優として人々に与えられる影響力の、これ以上の証明にはならないわ。

もちろんエミー賞受賞は、これほどまでに痛みを伴わないだろうけれど。・・・

その日を最初で最後に、アリソンをネリーの姿で一般市民の前に登場させることは二度としないと決定されたそうです。

一般市民を挑発してしまい、危険すぎるという理由で。 

 

 

《  につづく 》

 

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コメント (12)    この記事についてブログを書く
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12 コメント

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Unknown (ぽん)
2018-02-02 11:56:53
はじめまして。ぽんと申します。
大草原の小さな家を検索していたところ、こちらのブログに辿り着きました。

大好きなドラマで、特にオルソン一家が好きなのでとても面白く拝見いたしました。
読みやすくわかりやすく素晴らしいです!

他の記事も読ませていただきます!
突然のコメントを失礼しました。
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コメントありがとうございます。 (ハナママゴン)
2018-02-05 05:35:31
ぽんさん、読んでいただいてありがとうございます。
『大草原』いいですよねー!NHKで初放映されていた頃高校生だった私は本当にラッキーでした(遠い目)。

この連載、完結させるつもりでこの「その②」をUPしたのに、すでにそれから11ヶ月経ってるーっ!
完結前に死なないよう気をつけつつ、ぜひとも近い将来に完結させようと思います。
どうかもうしばらくお待ちくださいね。
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お礼 (Boku)
2018-03-10 01:26:09
「大草原の小さな家」が好きで、このブログに来ました。撮影秘話、とても興味深いです。このブログ、本当に良い仕事されたと思います。続編楽しみにしています。
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ありがとうございます! (ハナママゴン)
2018-03-10 21:25:18
そして、本当に本当に申し訳ありません、未だに完結していなくて・・・
できるだけ早く完結させたいといつも心の中にあるので(『ガラかめ』じゃあるまいし)、忘れてはいません、ご安心くださいね。
励みになるコメントをありがとうございました
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こんにちは (リン)
2018-10-18 18:26:05
初めまして(^-^)
先日J:COMで大草原の小さな家の一挙放送があり懐かしくてネット検索をしていたらこちらのブログにたどり着きました。
大変読みやすく面白かったので続きを楽しみにしてます(≧▽≦)
それにしても子役の人たちの今の年齢を知ると改めて自分の年を感じますね💦
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申し訳ございません・・・ (ハナママゴン)
2018-10-22 02:24:31
②をUPしてからまたもやほったらかしにしてしまい、さらに一年半が経ってしまったではありませんか!
ガラかめもたじろく長期連載・・・は大げさとはいえ、できるだけ早く完結させたいと思いますのでなにとぞご勘弁ください。

『大草原』は本当に良いシリーズでしたよね。
ローラやネリーと同年代だった私は、彼女たちを演じた女優さんたちと一緒に歳をとって今や50代です、トホホ・・・
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一気に読みました! (夏子)
2019-05-19 17:25:44
私も50代です。
大草原の小さな家を見て育ちました。
思い出深いシーンはたくさんありますが、
私が一番好きなのは、
ネリーが恋に落ちる瞬間!

ネリーを演じたアリソンさんのこと、
全く知る機会がなくて、
初めてこのようなお話に接しました。

紹介してくださって、ありがとうございます!
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コメントありがとうございます! (ハナママゴン)
2019-05-20 05:25:51
そして、本当に申し訳ありません・・・
この連載、あと2回続く予定なのですが、長期間放置してしまったためアリソンさんの本の内容の細かい部分は忘れてしまい・・・
続きを書くにはまた読み直さなきゃならないのか・・・と思うとなかなかふんぎりがつかず。
でも皆さんから温かい感想をいただき、やる気が出てきました。
約束はできませんが、できるだけ早いうちに完結させたいと思います!

ネリーを演じたアリソンさん、役柄とは正反対の女の子だったみたいですよね。
著書もユーモアを交えた快活な文体で、とてもよかったです。
邦訳されて日本でも発売されればいいのですが。
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人物像 (erimo)
2019-07-17 14:24:54
有料動画配信サイトhuluで今現在1話から見直してます。
昔はたまに見ていましたが、今回全話配信されてるのを知りました。恐ろしいほどの長編だったんですね。ちょうどブログにも書かれているローラとネリーが川に落ちた話まで見ました。実際の裏話を聞けて楽しかったです。出演者の人物像が知りたくてここにたどり着きました。此のブログもとっても興味がわき一気に最後まで読みました。続編を読みたいです。楽しみに待ってます。
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ありがとうございます! (ハナママゴン)
2019-07-18 04:47:16
そして、未だに完結していなくて本当に本当に申し訳ありません・・・!
熱しやすく冷めやすい自分の性格に我ながら呆れます。
あまりにも間が開いてしまったので、続きを書くにはまた本を読み直さなければならず、それが面倒なのでついまた先延ばしにしてしまって。
でも今年中に何とか完結を目指しますので、気を長く持ってお待ちいただければ幸いです。
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