まず始めは、昨日アップしようとしたのにネットに接続できなかったためアップできなかった部分です。
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今日は早番で、午前7時から午後2時50分までの勤務だったが、途中で衝撃的なニュースが入った。
午前11時頃だったか。 私を陰に呼んで有資格ナースが言うことには、「リナさん(患者さん、仮名)は(共用の居間の)テレビを見るのが好きだけれど、今日はニュース番組があるようなチャンネルは避けてね。」
「了解。 でもどうして?」
「オフィスにお達しがあったの。 今朝ウォットン・ローン病院で、スタッフの女性が患者さんに刺されたって・・・。」
「えぇっ?! 怪我の程度は?!」
有資格ナースは表情を翳らせて首を振った。 「残念ながら・・・・・。」
亡くなったスタッフの名前はもちろん、彼女がどの病棟で働いていたのか、有資格ナースだったのかそれとも私のようなヘルスケア・アシスタント(=無資格)だったのか、正規のスタッフだったのか私のような非常勤だったのかそれとも派遣で来ていた人だったのかなど、詳細はわからないとのことだった。
午後3時半頃に帰宅し、さっそくニュースをチェックしたが、事件に関する報はなかった。 しかし午後10時近くなって再度チェックしたら、事件についての第一報が入っていた。
『今朝グロスターにある精神疾患を扱うウォットン・ローン病院で、スタッフが刺される事件が起こり、午前7時半頃救急車が呼ばれた。 刺されたスタッフは事件が起きたユニットの同僚に応急処置を施され、駆けつけた救急車によって隣接するグロスター・ロイヤル病院(正確にはグロスターシャー・ロイヤル病院)に緊急搬送されたが、救急救命チームの努力の甲斐なく、午前8時半に死亡した。 被害に遭ったスタッフは女性で、ヘルスケア・アシスタントだったと考えられている。 加害者とみられる60代の男性患者は、殺人容疑で逮捕され、警察で取調べを受けている。』
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グロスターにあるウォットン・ローン病院(Wotton Lawn Hospital)は、ベッド数88。 入院病棟4つに加えて、精神疾患集中ケアユニットと、警備レベルの低いユニットがある。・・・らしい。
サポート・ワーカーの仕事をしていた私が、同僚から「余暇時間を使って精神科病棟で非常勤のヘルスケア・アシスタント(HCA)もしている」と聞いたのは、2007年夏のことだった。 非常勤HCAは随時募集しているそうなので、電話をして招かれて面接に赴いたのは、このウォットン・ローン病院だった。 (サポート・ワーカーは2010年3月末をもって辞めたので、現在は非常勤HCAの仕事のみ。)
大きな総合病院グロスター・ロイヤル病院の裏手に、同じ敷地内にひっそりとたたずむウォットン・ローン病院。 介護ケア職という職業柄、『犯罪記録証明書』などが必要で、書類が全部整って仕事を始められたのは、2008年2月のことだった。 ウォットン・ローン病院でいくつかの訓練を受講したのち、仕事がスタート。 4つある入院病棟の3つで、余暇時間があるときにぽつぽつと半年ほど仕事をした。
私が現在働いている、チェルトナムにあるCL(チャールトン・レーン)病院(Charlton Lane Hospital)も精神科病院だが、WL(ウォットン・ローン)病院との違いは、WL病院は労働年齢の成人患者さん(Working Age Adults)を対象にした病院であるのに対し、CL病院は高齢(60歳以上)の患者さん用の病院だということ。 前述したように半年ほど働いてみたが、私には高齢の患者さんのお世話をするほうが向いていると思ったので、CL病院のみで働かせてもらうようになった。 つまり6年前のちょうど今頃を最後に、WL病院から遠ざかったことになる。 ただ非常勤スタッフにシフトを采配するスタッフバンクのオフィスがWL病院にある関係で、その後も年に一回くらいの割合で何かしら用があり立ち寄ってきた。
WL病院の全体図 (★印下が玄関) 横から見たところ
玄関 私も何度かこの玄関を出入りした。(駐車中の赤いヴァンは郵便屋さんのもの。)
今日も私は早番だったのだが、出勤の途中ラジオで“BBCグロスターシャー”を聞いていたら、ニュース時にこの事件の簡単な報道があった。 出勤したら、病棟にいた夜勤のナースたちは、被害者の名前をもう知っていた。 たぶん横のつながりで、またたく間に広がったのだろう。 その場にいた皆で、午前7時から始まる20分間の申し送りの前に短いローカルニュースをテレビのBBC1チャンネルで見たのだが、この事件が簡単に報道されていた。 被害者の身元はまだ公式には未確認とのことで、名前は発表されなかった。
残業を頼まれたので午後4時20分まで1時間半の残業をし、帰宅途中スーパーに寄り、家に着いたのは午後5時半頃。 さっそくニュースをチェックしたら、昨日よりは少し詳しく事件が報道されていた。
‐ 被害に遭った女性は53歳のシャロン・ウォールさんで、夜勤を終えたばかりのヘルスケア・アシスタントだったと考えられている。 夜勤スタッフと早番スタッフとの間の申し送りは、午前7時から7時20分まで。 (CL病院と同じ。) 事件は申し送りが終わった直後に発生したと考えられる。
‐ 2人の孫をもつシャロンさんは、現在病院から3マイル(5km弱)離れたグロスターのタフリー地区に一人暮らし。 隣家の女性によると、「動物好きで犬を飼っているし、野良猫がいると世話をせずにはいられないような優しい人」とのことだ。
‐ WL病院でこのような事件が起きたのは初めてではなく、2009年2月にはモンペリエ病棟において、妄想型分裂病患者により男性スタッフが眉を刺される事件があった。
‐ 自分自身や他者を傷つけるリスクが高い患者を収容し治療する病棟/ユニットにおいては、ナイフ・ハサミ・カミソリといった鋭い刃をもつ品は、保管を禁じられている。
私が働く高齢者専門のCL病院でも、刃のある品物の扱いには慎重だ。 たとえその患者さん自身にはリスクはなくとも、別の自傷癖のある患者さんや自殺願望のある患者さんの手に渡らないとも限らないからである。 患者さんの個室はオートロックになっているが、自室に戻って休もうとしたときに錠が下りていていちいち戻ってスタッフに開錠を頼むのが面倒と、椅子をはさんでドアを開放しておく患者さんも少なくないので。
被害者は、もう2人のお孫さんまでいた、私と同年代の53歳。 いつものように仕事に行って、いつものように仕事を終えたのに、そのまま職場で帰らぬ人になってしまったなんて・・・・・ こんなことが起きるなんて、誰も考えもしないだろう。 車で通勤中に事故死なら、まだあり得るが。
CL病院でも、患者さんに危害を加えられることはある。 特に認知症患者さんの病棟では、日常茶飯事。 叩かれたり、蹴られたり、引掻かれたり、つねられたり、髪を引張られたり、唾を吐きかけられたり、飲物を引っかけられたり。 それほどひどくにではないものの、私も何度か、被害に遭っている。 認知症など精神疾患によるものだから、本人に悪意はない。 とはわかっていても、こういうことをされると、やはり気分は凹む。・・・
最近は、かなり錯乱したまだ50代の認知症患者さん(男性)にスタッフが噛まれる事件が二度続けてあった。 皮膚が破れて出血したため、スタッフは直ちに総合病院の救急科に赴いて血液検査と手当てを受けなければならなかった。 介護ケア中に顔面に頭突きをされて目の下に黒痣をつくったスタッフもいたし、排泄のケア中に大暴れされて肩を痛めたスタッフもいたし・・・
でもまさか、病院という安全であるはずの施設において、スタッフが殺害されるなんて。 ひどい言い方だが、被害者が患者さんならまだわかる。 認知症患者さんの間での押したり叩いたり突き飛ばしたりの小競り合いは、よくあるから。 高齢の患者さんが大半だから、打ち所が悪ければ、・ ・ ・ もあり得るかと。
同職者として、事件の詳細がきっちり報道されることを願う。
加害者である患者は、どのようにリスクを査定されていたのか。
凶器は何だったのか。
どのようないきさつを経て、こんな凶行が発生することになったのか。
凶行を防ぐために、できたことはないのか。
この事件から教訓を学んで将来に生かさなければ、被害者が浮かばれません。
被害者のご家族の現在の心境を思うと、胸が痛みます。
2人のお孫さんに、おばあちゃんに突然、もう二度と会えなくなったわけを、何と説明したものか ・・・・・
被害に遭ったシャロンさんのご冥福を、心からお祈りします。 ・・・・・
《 続報: 犯人の男 》
認知症や精神疾患があるとはいえ、加害者であることは間違いないし、本当にどうしてこんな最悪な事件になってしまったのかを解明しないことには、被害者の方がかわいそうすぎます。
ハナママゴンさんも日々患者さんからの仕打ちを目の当たりにされて、とても大変だと思います。
今も同じ病院で働く方々や、同業者の方達のためにも、スタッフの安全を徹底的に守っていただきたいですね。
(全く関係ないですが、ロンドンに住む義理の妹が昨日、突然路上でナイフを持った男に襲われ、幸い30ポンドを渡したら逃げてくれたそうです。本当に物騒ですよね。。。)
いったい何が凶器に使われたのでしょう。
まさか、食事用のナイフやフォーク?
不可能ではないかもしれませんが、致命傷を負わせるにはかなりの力が要るはず。
こんな事件がもう二度と起きないように、事件の背景や経過を徹底的に解明してもらいたいです。
義妹さん、怖い目に遭われたんですね! 路上強盗だなんて・・・
その後大丈夫ですか? こういうことって、精神的にかなりのダメージを受けますよね。
私はビビリなので、そんなことがあったらしばらくフラッシュバックに悩まされ、一人で外を歩くのが怖くなってしまいそうです。
物騒な世の中ですから、お互い気をつけましょうね。
(とくにチビままさんは、大事な時期ですしね!)
精神疾患者だと、責任能力がないので無罪・・・と、そんなニュースを聞くたびにもやもやした気分になります。
ハナママゴンさんも日々大変な職務を遂行されているのですね。お疲れ様です。
思いがけずに命を落としてしまう瞬間がどこに潜んでいるのかわからない・・・日々大切に生活したいと改めて思った次第です。
心の病気だったとはいえ、人が一人殺されたというのに、犯人が精神疾患を抱えていたため無罪になると、歯がゆい思いがします。
じゃあ被害者の無念は、遺族の痛憤は、いったいどこへ行けばいいっていうの!?って。
この事件の犯人は、もちろん今後どうなるかわかりませんが、とりあえずは殺人罪で起訴されました。
今後も折にふれて続報を記事にしたいと思います。
なにせ同職なので、私も非常に興味がありますから。