今年はアルバムのレコーディングに始まり、5月にリリースしてからは全国ツアーに明け暮れてと、サードアルバム「I'm a Songwriter」にどっぷりだった一年でしたが、おかげさまで半年かけて全国あちこちを駆け回りましたし、まだ廻れていないところはありつつも、ある程度は全国の皆さんの手にも行き渡ったのかな、なんて思っております。
ただ、発売からはもう半年経ってますし、買ってすぐの頃はまあ何回か聴いたけども、最近は新鮮味も無くなってきているし、新しいCDもいっぱい出てるし、そろそろメルカリに……という方もいらっしゃるかもしれません。
……ちょっと待った!!
そんなアナタのために、また新鮮な気持ちでアルバムを聴くことができるかもしれない、全曲セルフレビューをお届けしたいと思います!……という、まさかの前2作と同じ導入でスイマセン。
というわけで、1曲目「はじまりの唄」。
この曲は、2018年のセカンドアルバム「Wonderful World」のリリース記念ワンマンの時に、アルバムに収録されている曲や古い曲で始まるのではなく、新曲で始まりたいなあと思って書いたのを覚えております。セカンドアルバムで納得のいくアルバムを作れたことで、一種の燃え尽き症候群みたいになってしまうのが嫌だったという気持ちがありました。それで、リリース記念のワンマンという一種のゴールのようなイベントでも、新曲で始まることできちんと「次」に向かって動いていけるんじゃないかという目論見ですね。
歌詞のテーマとしては「はじまり」ですが、今にして思うと、この頃漂っていた、この感じでやっていけば未来が見えるんじゃないかという手応えめいたものを感じ始めているようにも感じます。
それと、あんまりガツガツとした曲ばかりじゃなく、サラっとした手触りの曲が欲しいなと考えていたこともあって、すごくライトな感じに書きました。自分が好きな作風とはちょっと違いますが、だからと言って物足りないかというとそういうわけでもない、なかなか良いバランスのところに着地できたのではないかなと思っています。
ガツンとメッセージを!というタイプの曲ではないぶん、遊び心みたいなものも散りばめてあるのも、自分の中では楽しいポイントです。あの曲のアンサーソングのような部分もあるし、あの曲のオマージュになっている部分もあるし、みたいなところは、なんというか音楽家ならではの贅沢な遊び方ですね。
レコーディングは、前作「Wonderful World」でも「夏にサヨナラ」で手伝ってくれた仙台ハマノヒロチカバンドの面々と。今回はプリプロも仙台できちんとやって、曲のイメージなども何度もメンバーとやりとりしました。
構想としてひとつ最初にあったイメージがありまして、僕の曲は(当然ながら)ほとんどの曲がピアノの音から始まるのですが、今回のアルバムは、CDを再生して1曲目の冒頭の音が鳴ったときに、その音はピアノではなく違う楽器の音であって欲しいなあというのがありました。そんな冒頭のイメージから、おそらくこの曲が1曲目になるだろう、この曲からアルバムが始まるんだというイメージが膨らみ、そんなイメージから全体のアレンジを作り上げていきました。8ビートのダウンピッキングだけで引っ張る数十小節はさぞかし大変だったと思います!笑
仙台ハマノヒロチカバンドは「最後の青春」や「夏にサヨナラ」をゴリゴリと演奏することが多かったこともあり、わりとやんちゃな印象を持っていたのですが、さりとてみんなさすがの手練者たち。むしろこういう曲でこそ本領発揮できるような節もありますね。サビに向かってじわじわと盛り上がっていくアンサンブルは、メンバーそれぞれの引き算の美学も光る、素晴らしいアレンジだと思います。
間奏のフレーズは「はじまり」繋がりということで、野狐禅のデビュー曲「自殺志願者が線路に飛び込むスピード」の間奏のフレーズをしれっと引用していたのですが、やっちゃんのドラムもそれに合わせてゲンタ兄貴風にしてくれたのも嬉しかったです。笑
あきのりさんのベースは屋台骨という感じで、バンド全体をしっかり引き締めてくれて、かつ感情の移ろいも感じさせる名フレーズがそこかしこに光っています。静と動のコントラストも良いですね。
そしてタンクさんは今回はなんと言ってもスライドギターですね。90年代のJ-POPを彷彿とさせるような、そうそうそれが好きなんだよ!という我々世代のツボを突くようなフレーズが、この曲の瑞々しさを演出してくれているように思います。
仙台での出張レコーディングも前回に続いて2回目ですが、1日のうちに1曲集中で全パートを録りきってしまうこの形式も楽しいですね。レコーディングエンジニアをやってくれたヒロオ君にも大変助けられました。
仙台バンドでは、今回のツアーでは福島と仙台で2本ライブもさせてもらいました。このレコーディングの経験があったからこその、ライブでの一体感もとても心地よく、いつかはこのメンバーでワンマンなんてことも夢見てしまいますね。