村上春樹を英語で読む

なぜ、こう訳されているのかを考える。

「友人がふかえりからことづかった手紙」は誰宛?

2017-01-05 12:15:47 | 村上春樹を英語で読む
『1Q84』に次のような箇所がある。下は、その英訳である。

でもその前に予備校に行って、友人がふかえりからことづかった手紙を読まなくてはならない。
Before that, though, he needed to go to the cram school and read the letter that Fuka-Eri had left for him.

「友人がふかえりからことづかった」がthat Fuka-Eri had left for himと訳されていて、for himが追加されている。

「ある」がremained

2017-01-05 12:03:39 | 村上春樹を英語で読む
『1Q84』に次のような箇所がある。下は、その最後の文の英訳である。

天吾はその電報文のような手紙を三度読み返してから、畳んでポケットに入れた。いつものことだが、繰り返して読めば読むほどふかえりの文章は信憑性を強くしていった。彼は誰かに監視されている。天吾は今ではそれを確定した事実として受け入れていた。彼は顔を上げ、予備校のカフェテリアの中を見渡した。講義のある時間だったから、カフェテリアにはほとんど人はいない。数人の学生がテキストを読んだり、ノートに何かを書き付けたりしているだけだ。陰からこっそり天吾を監視しているような人間も見当たらない。
基本的な問題がある。
A basic question remained:

「ある」がremainedと訳されている。

「講義のある時間だった」は英語で?

2017-01-05 12:02:41 | 村上春樹を英語で読む
『1Q84』に次のような箇所がある。下は、その英訳である。

講義のある時間だったから、カフェテリアにはほとんど人はいない。

Class was in session so the cafeteria was nearly deserted.

「講義のある時間だった」がClass was in session(授業中だった)と訳されている。「講義のある時間」は必ずしも「講義が行われている時間」ではない。

「出社する」の概念と実体

2017-01-05 11:58:54 | 村上春樹を英語で読む
『プログレッシブ和英中辞典』で「出社」を引くと次のようにある。

出社する go [come] to the office
8時半に出社しなさいCome [Report] to the office at 8:30.

「出社する」とgo [come] to the officeは概念のレベルでは同意であるが、同辞書からの次例は実体のレベルでの同意の表現である。

田中はまだ出社しておりませんTanaka is not in [here/at the office] yet.

『1Q84』に次のような箇所がある。下は、その英訳である。

まだ午前十一時だ。小松がそんなに早く出社するはずはない。
It was eleven a.m., too early for Komatsu to show up at work.

「出社する」がshow up at workと訳されている。

これも実体レベルの同意表現である。