※初めての方はこちらもどうぞ→ ■うみねこ推理 目次■ ■トピック別 目次■
駒の動きその6・盤面(III)
筆者-初出●Townmemory -(2009/05/24(Sun) 00:48:47)
http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=25578&no=0 (ミラー)
[Ep4当時に執筆されました]
●再掲にあたっての筆者注
本文中に目次があったのですが、削除しました。
「譲治」が殺された理由を考えていて、思いついた瞬間、あまりの結論に愕然として、ちょっと泣きそうになってしまいました。後半は、すごくセンチメンタルな気持ちで書いています。
以下が本文です。
☆
みなさん、こんにちは。
この書き込みは、ルールと駒の動きについて考えるシリーズです。
今回は、ep3の感想戦です。
●ep3、ベアトリーチェの棋譜
難易度は互角。
(ラムダ曰く「遊びが多い。勝っても負けてもどうでもいいと思ってない?」)
*
第1の晩。「鍵の選びし6人」で取ったのは、紗音、嘉音、源次、熊沢、郷田、金蔵。
(「銃」候補はひとりもいない。また便利な透明ゴマ「金蔵」を封印)
この時点の生存者は、
蔵臼、夏妃、絵羽、秀吉、留弗夫、霧江、楼座、真里亞、戦人、譲治、朱志香/南條。
蔵臼、絵羽、留弗夫、霧江が、「銃」に成る。
右代宮ペアレンツ、碑文の謎に挑む。
「絵羽(銃)」、碑文の謎を解き、九羽鳥庵(推定)を発見。
「楼座(銃)」、碑文の謎を解き、九羽鳥庵(推定)を発見。
(楼座の銃は霧江から返却されたものと推定)
「絵羽(銃)」と「楼座(銃)」、黄金郷発見を伏せておく協定を結ぶ。
第2の晩。「寄り添う2人」で取ったのは、楼座(銃)と真里亞。
(「2人」に対応するのは「楼座&真里亞」か「蔵臼&夏妃」か「絵羽&秀吉」か「留弗夫&霧江」、もしくは任意の「親&子」……。)
楼座の銃、を生存者が回収。(夏妃、「夏妃(銃)」に成る?)
この時点での生存者は、
蔵臼(銃)、夏妃(銃)、絵羽、秀吉(銃)、留弗夫(銃)、霧江、戦人、譲治、朱志香/南條。
(銃の位置は右代宮ペアレンツであれば常に交換可能)
(ベアトはあと5駒を取り、そのうちの1人は南條でなければならない)
留弗夫(銃)、霧江(銃)、秀吉、本館に孤立。
ベアトはこの3駒を取る。残りはあと2駒。
銃2丁が消滅。
ベアト、「蔵臼」と「夏妃」を取る。
銃2丁は消滅せず、残留。のち絵羽が「絵羽(銃)」に。
(13人で儀式成立。ただし南條の殺害に失敗)
ベアト、「譲治」を取る。(14人め)
朱志香失明。
「南條」を取る。(15人め。南條生還の阻止にギリギリ成功)
「絵羽(銃)」、銃のルール「狼と羊のパズル」により「戦人」射殺。
絵羽(銃)、九羽鳥庵へ。(生還)
本館残留者・朱志香で第10の晩到来。ゲームエンド。
●ep3、感想戦
凄いぞ。棋譜を並べるだけで、みるみるいろんなことがわかってくる。
今回のゲームは、最初からいきなり「手抜きの6手」を打ってくるんです。ベアトリーチェは。
第1の晩で、ベアトが取った駒は紗音、嘉音、源次、熊沢、郷田、金蔵。
2つの意味でおかしい。のです。
1.「銃」になれる強い駒をあえて残し、弱い使用人コマばかり取っている。
2.生かし続けたほうが都合がいい「金蔵」を、ゲームから取り除いている。
上の世界にいる「指し手ベアトリーチェ」にとっては、「遊んでみた、ハンデをくれてやった」ということになるでしょう。
でも、これは連続殺人事件なんです。
犯人は、必死のはずです。
必死のはずの犯人が、こんな不合理な殺し方をするのは、絶対に何か事情がなければならない。
そこで、考えてみました。
そしたら、説明がつきました。
第1の晩は、6人を殺さなければならない。
そしてベアトリーチェ=犯人は、ぴったり碑文どおりに殺したがるという「打ちグセ」がある。
いいですか、ベアトリーチェは、第1の晩で、1人でも多くの「右代宮ペアレンツ」を取りたいのです。右代宮親チームは、「銃」に成ってしまう。だから最善手をめざすなら、6人全員が右代宮親チームであることが好ましい。
いや、もしラムダデルタだったら、第1の晩で、親世代7人を全員殺します。
そして6人分の死体を発見させ、1つは隠蔽し、あとで杭を打って放り出せばよいのです。
でも、ベアトリーチェ=犯人は、そういう打ち方ができない。
ここで、ep3の、第1の晩犯行時の、右代宮親チームの状況を見てみましょう。
彼ら7人は、全員で客間に集まって、親族会議の議論をしていました。
つまり7人が一室にいた。
この状態で、6人だけを殺して、1人だけ生かしておき、なおかつ自分の正体がバレないようにするのは不可能なんです。不可能って言い切るのがダメならば、困難です。
では、ベアトリーチェ=犯人は、次善の策として、どうするか。
「金蔵の名前で使用人たちに召集をかけ、殺す」
これがいちばん単純で安全なんです。
犯人の正体が金蔵本人であれば、より簡単でより安全になります。つまり、金蔵称号説ですね。
筆跡により、犯人=ボトルメール作者=南條息子への手紙の差出人=最低でも20億円の資産を持ってるらしい人物、ですから、「犯行時に犯人は金蔵として命令を下せる」という仮定は蓋然性が高いです。
これまで私は、「第1の晩の6人は、指し手ベアトリーチェが任意に決定する」のだと思い込んでました。
でも違うんですね。
「駒がどういう初期配置でゲームスタートするのかは、決まっていない、わからない」
のですね。
所期配置によって、犯人が殺せる人物と、殺せない人物が出てくる。
だからゲームによって、最初に殺される6人が違う。
そう……これが、「魔女のルーレット」ということですね。
そして。
なぜこの段階で「金蔵」を取ったのか。
犯人は、5人いる使用人を、一ヶ所に呼びつけることができる。
ということは、「南條」を呼びつけることだってできるはずなんです。
だから、この盤の最善手は、紗音、嘉音、源次、熊沢、郷田、「南條」なんです。
でも、「南條」を取れなかった。
だからしかたなく「金蔵」を取った。
そこには明確な理由があるはずだ。
この夜、南條は割り当てられた自分の客室に、ひとりでいた。つまり、殺すのは簡単だったのです。
つまり、物理的に不可能だったわけではない。
としたら。これは、「駒の動き」の制約によるものではないか。
こういうルールがあるとしか思えない。
・「南條」を、第1の晩で取ることはできない。
でもどうして?
まあ、ふつうに考えたら、「検死をさせねばならないため」。
言い換えたら、「検死をごまかし、間違った死因(生死判定)を言わせる必要があるため」。
つまり「南條は犯人とグルであるから、必要な役目を果たさせるまでは消せない」と考えると、状況に当てはまり、無矛盾なのです。
この駒の動きを、採用することにします。
●「南條」を、第1の晩で取ることはできない。また、第8の晩までに取らなければならない。
(検死でウソを言わせるため。また、九羽鳥庵に逃げ込んで生還してしまうため)
*
ベアトリーチェの次なる失着は、第2の晩です。
「寄り添う2人」で、楼座(銃)と真里亞を取ります。
ここで変な動きがある。
どうして、楼座の銃を盤上から取り除かなかったのでしょうか。
これまであんなに、銃を減らしたがっていたのに。
つまり犯人側から見たら、
「銃を残したほうが都合がいい」
か、
「銃を没収できない何らかの理由があった」
かの、どちらかです。
そして、いきなり結論を言いますよ。
「楼座と真里亞を殺したのは絵羽であり、かつ、絵羽は連続殺人の真犯人ではない」
こう考えると、つじつまが合います。
連続殺人犯人ベアトリーチェにとっては、銃を減らせば減らすほど有利。だから、銃を没収しない理由がない。よって、楼座&真里亞殺しの犯人はベアトリーチェではない。
逆に、絵羽には、銃を没収できない、銃を残した方が都合がいい理由があります。
絵羽からしてみたら、「自分以外にも凶悪な殺人犯がいる」ということが明白だからです。
身を守るために、場には武器があったほうがいいんです。
だいたい、よく考えてみたら、
「寄り添う2人」
という表現で、楼座と真里亞があてはまるかっていうと、なんか違和感があります。
これまでは夫婦か恋人だったのに、いきなり親子になってしまい、しかもこの親子ってDV状態ですよね。
真犯人からしてみたら、意外なところで、自分以外の誰かが勝手に殺人をしてしまい、しかたなくこれを「寄り添う2人」だと言い張ってみた。のだと思います。
なぜ、楼座と真里亞を殺したのを、他の誰でもなく絵羽としたのか。それは、黄金の所有権をめぐってトラブルがあったことに加え、ラストで戦人を射殺するとき、「おまえが殺したのか」「そうよ」のやりとりがあったからです。
*
そして、次なるベアトリーチェの失着は。
「南條」を考えましょう。
「南條」は、第8の晩までに取っておくべき駒です。
というか、第10の晩で消滅させることができない、という条件の駒です。
もし取らないでいると、彼は生還します。
生還すると、真相を喋ります。
真相を喋ると、ルールYとルールZが消滅します。つまり、「無限」と「黄金」が無効化される。
無限と黄金が、指し手ベアトリーチェ、現象ベアトリーチェの正体ですから、ベアトリーチェは死にます。赤字で喋るあのドレスの人は、最初から存在しなかったことになります。
なのに「南條」は、第9の晩まで生き残ってる。
これは、かなりヤバイ展開なんです。
犯人の本来の思惑では、きちんとどっかのタイミングで殺すつもりだった。
それはどこか。
ここです。
本館で、「留弗夫(銃)」「霧江(銃)」「秀吉」を取ったとき。
「秀吉」が、イレギュラーな死なんです。
本来なら、秀吉じゃなく、南條が取られるはずだった。
どうしてそう言えるのか。
いいですか、絵羽&秀吉夫妻は、「銃」の駒です。
「銃」は、自分の家族を最大限守るようにふるまいます。
なので、本来なら、「秀吉」だけを取るなんて、できるわけないんです。そんなの、犯人は狙わない。
「秀吉」が、絵羽と譲治を連れずに、単独行動を取っていることそのものが、イレギュラーなんです。
イレギュラーな行動をされたせいで、イレギュラーな殺しをしてしまったのです。
犯人の、本来の計画はこうです。
かしこい霧江が、第1の晩の六連鎖密室のトリックに気づく。
このトリックを成立させるには、「南條」が犯人一味でなければならない。
よって、霧江と留弗夫は、「南條」を殺すか、もしくはゲストハウスから追放する。追放の場合は、犯人が殺せば良い。
しかし、犯人にとってイレギュラーが発生しました。それは、絵羽がこっそりゲストハウスを出て、楼座親子を殺したことです。
絵羽がいない間に、秀吉はタバコを吸ってしまった。
つまり、絵羽にアリバイがないことになる。
霧江は、六連鎖殺人から始まる「全ての殺人の犯人」が絵羽だと思い込んだ。
霧江はまず秀吉をおびきだして殺し、そのあと絵羽をおびきだして殺すつもりだった。犯人が絵羽夫妻だけだと思い込んでいるから、本館に行っても大丈夫だと思っているし、油断している。
さあ、3人が本館に孤立した。これ幸いと、犯人はこの3駒を取った。
ただしそのせいで、「南條」を取るというプランは狂ってしまった。
*
「蔵臼」と「夏妃」を取った局面を考えます。
ここでも、「ベアトの手抜き」が見られます。
この局面でも、銃が没収されずに、現場に残っているのです。
なんでか。
それは、楼座のときに、もうわかってます。
ep3の殺人には、大まかに2種類の殺し方があるのです。
1.格闘で殺され(絞殺含む)、銃を没収されなかった死体(楼座、真里亞、蔵臼、夏妃)
2.殺害方法不明で殺され、銃を没収された死体(留弗夫、霧江、秀吉)
1の殺し方をしたのが絵羽です。
2の殺し方をしたのが、真犯人ベアトリーチェです。
つまり「蔵臼」と「夏妃」を殺したのは絵羽です。
殺した理由は? おそらく、秀吉を殺したのが彼らだと思い込んだからではないでしょうか。
*
そして……。
ここからが、ep3のハイライトです。
儀式外の14人めの被害者として、「譲治」が殺されます。
「銃」のルールにより、譲治を殺したのは絵羽ではありません。
2つの論点を設定します。
第1に、真犯人には、譲治を殺す理由があった。(必要のない14人目をあえて殺しているのだから)
第2に、この殺人が発覚したことで、絵羽はようやく悟ります。「秀吉を殺したのは蔵臼夫妻ではない。まだどこかに殺人者がいる!」
第2のポイントにより、絵羽に「狼と羊のパズル」のフラグが立ちます。
「狼と羊のパズル」が起動したせいで、絵羽は「戦人」を殺します。戦人の死因は狼と羊のパズルだと、TIPSに書いてあります。
ということは、南條を殺したのは絵羽ではないということが確定します。
・南條を殺したのは自分ではない。
・朱志香は失明しているので南條を殺せない(と絵羽は考える)。
・よって南條を殺したのは戦人であり、譲治や秀吉を殺したのも戦人である。
このような思考をたどらないかぎり、「狼と羊のパズル」は起動しないからです。
では、残った論点はひとつ。
犯人はどうして譲治を殺さなければならなかったのか。
……考えました。
そして、わかりました。
そして、ちょっと感動してしまいました。
何が正しいかなんて、誰にも、作者にも決められないことですが、私は、「これが真相だ」と確信できる答えにたどり着きました。
犯人はどうして譲治を殺さなければならなかったのか。
それが、この、「うみねこのなく頃に」という作品のすべてを物語っているように思います。
どうして譲治と紗音の死体がいっしょの部屋に横たえられているのか。
どうしてその部屋の扉には謎の数字が書いてあるのか。
その答えが、黄金郷の正体だったんだ、というアイデアです。
それを次回に書きます。次の書き込みが、ひょっとして、このシリーズの最終回になるかもしれません。
予告編として、黄金郷の「式」を書いておきます。それはこうです。
愛がなければ視えない。
愛がなければ、そこにたどり着いても、黄金しか視えない。
愛がなければ、死は、死でしかない。
うわあかっこいい……。
続き→ チェックメイト――黄金郷再び・金蔵翁の黄金郷
■目次1(犯人・ルール・各Ep)■
■目次2(カケラ世界・赤字・勝利条件)■
■目次(全記事)■
■関連記事
●盤面解析
駒の動きその1・南條(大爆発説)
駒の動きその2・戦人、真里亞、嘉音
ルールXYZを指さそう
駒の動きその3・銃(とわたしはだあれ)
駒の動きその4・盤面(I)
駒の動きその5・盤面(II)
駒の動きその6・盤面(III)
チェックメイト――黄金郷再び・金蔵翁の黄金郷
駒の動きその6・盤面(III)
筆者-初出●Townmemory -(2009/05/24(Sun) 00:48:47)
http://naderika.com/Cgi/mxisxi_index/link.cgi?bbs=u_No&mode=red&namber=25578&no=0 (ミラー)
[Ep4当時に執筆されました]
●再掲にあたっての筆者注
本文中に目次があったのですが、削除しました。
「譲治」が殺された理由を考えていて、思いついた瞬間、あまりの結論に愕然として、ちょっと泣きそうになってしまいました。後半は、すごくセンチメンタルな気持ちで書いています。
以下が本文です。
☆
みなさん、こんにちは。
この書き込みは、ルールと駒の動きについて考えるシリーズです。
今回は、ep3の感想戦です。
●ep3、ベアトリーチェの棋譜
難易度は互角。
(ラムダ曰く「遊びが多い。勝っても負けてもどうでもいいと思ってない?」)
*
第1の晩。「鍵の選びし6人」で取ったのは、紗音、嘉音、源次、熊沢、郷田、金蔵。
(「銃」候補はひとりもいない。また便利な透明ゴマ「金蔵」を封印)
この時点の生存者は、
蔵臼、夏妃、絵羽、秀吉、留弗夫、霧江、楼座、真里亞、戦人、譲治、朱志香/南條。
蔵臼、絵羽、留弗夫、霧江が、「銃」に成る。
右代宮ペアレンツ、碑文の謎に挑む。
「絵羽(銃)」、碑文の謎を解き、九羽鳥庵(推定)を発見。
「楼座(銃)」、碑文の謎を解き、九羽鳥庵(推定)を発見。
(楼座の銃は霧江から返却されたものと推定)
「絵羽(銃)」と「楼座(銃)」、黄金郷発見を伏せておく協定を結ぶ。
第2の晩。「寄り添う2人」で取ったのは、楼座(銃)と真里亞。
(「2人」に対応するのは「楼座&真里亞」か「蔵臼&夏妃」か「絵羽&秀吉」か「留弗夫&霧江」、もしくは任意の「親&子」……。)
楼座の銃、を生存者が回収。(夏妃、「夏妃(銃)」に成る?)
この時点での生存者は、
蔵臼(銃)、夏妃(銃)、絵羽、秀吉(銃)、留弗夫(銃)、霧江、戦人、譲治、朱志香/南條。
(銃の位置は右代宮ペアレンツであれば常に交換可能)
(ベアトはあと5駒を取り、そのうちの1人は南條でなければならない)
留弗夫(銃)、霧江(銃)、秀吉、本館に孤立。
ベアトはこの3駒を取る。残りはあと2駒。
銃2丁が消滅。
ベアト、「蔵臼」と「夏妃」を取る。
銃2丁は消滅せず、残留。のち絵羽が「絵羽(銃)」に。
(13人で儀式成立。ただし南條の殺害に失敗)
ベアト、「譲治」を取る。(14人め)
朱志香失明。
「南條」を取る。(15人め。南條生還の阻止にギリギリ成功)
「絵羽(銃)」、銃のルール「狼と羊のパズル」により「戦人」射殺。
絵羽(銃)、九羽鳥庵へ。(生還)
本館残留者・朱志香で第10の晩到来。ゲームエンド。
●ep3、感想戦
凄いぞ。棋譜を並べるだけで、みるみるいろんなことがわかってくる。
今回のゲームは、最初からいきなり「手抜きの6手」を打ってくるんです。ベアトリーチェは。
第1の晩で、ベアトが取った駒は紗音、嘉音、源次、熊沢、郷田、金蔵。
2つの意味でおかしい。のです。
1.「銃」になれる強い駒をあえて残し、弱い使用人コマばかり取っている。
2.生かし続けたほうが都合がいい「金蔵」を、ゲームから取り除いている。
上の世界にいる「指し手ベアトリーチェ」にとっては、「遊んでみた、ハンデをくれてやった」ということになるでしょう。
でも、これは連続殺人事件なんです。
犯人は、必死のはずです。
必死のはずの犯人が、こんな不合理な殺し方をするのは、絶対に何か事情がなければならない。
そこで、考えてみました。
そしたら、説明がつきました。
第1の晩は、6人を殺さなければならない。
そしてベアトリーチェ=犯人は、ぴったり碑文どおりに殺したがるという「打ちグセ」がある。
いいですか、ベアトリーチェは、第1の晩で、1人でも多くの「右代宮ペアレンツ」を取りたいのです。右代宮親チームは、「銃」に成ってしまう。だから最善手をめざすなら、6人全員が右代宮親チームであることが好ましい。
いや、もしラムダデルタだったら、第1の晩で、親世代7人を全員殺します。
そして6人分の死体を発見させ、1つは隠蔽し、あとで杭を打って放り出せばよいのです。
でも、ベアトリーチェ=犯人は、そういう打ち方ができない。
ここで、ep3の、第1の晩犯行時の、右代宮親チームの状況を見てみましょう。
彼ら7人は、全員で客間に集まって、親族会議の議論をしていました。
つまり7人が一室にいた。
この状態で、6人だけを殺して、1人だけ生かしておき、なおかつ自分の正体がバレないようにするのは不可能なんです。不可能って言い切るのがダメならば、困難です。
では、ベアトリーチェ=犯人は、次善の策として、どうするか。
「金蔵の名前で使用人たちに召集をかけ、殺す」
これがいちばん単純で安全なんです。
犯人の正体が金蔵本人であれば、より簡単でより安全になります。つまり、金蔵称号説ですね。
筆跡により、犯人=ボトルメール作者=南條息子への手紙の差出人=最低でも20億円の資産を持ってるらしい人物、ですから、「犯行時に犯人は金蔵として命令を下せる」という仮定は蓋然性が高いです。
これまで私は、「第1の晩の6人は、指し手ベアトリーチェが任意に決定する」のだと思い込んでました。
でも違うんですね。
「駒がどういう初期配置でゲームスタートするのかは、決まっていない、わからない」
のですね。
所期配置によって、犯人が殺せる人物と、殺せない人物が出てくる。
だからゲームによって、最初に殺される6人が違う。
そう……これが、「魔女のルーレット」ということですね。
そして。
なぜこの段階で「金蔵」を取ったのか。
犯人は、5人いる使用人を、一ヶ所に呼びつけることができる。
ということは、「南條」を呼びつけることだってできるはずなんです。
だから、この盤の最善手は、紗音、嘉音、源次、熊沢、郷田、「南條」なんです。
でも、「南條」を取れなかった。
だからしかたなく「金蔵」を取った。
そこには明確な理由があるはずだ。
この夜、南條は割り当てられた自分の客室に、ひとりでいた。つまり、殺すのは簡単だったのです。
つまり、物理的に不可能だったわけではない。
としたら。これは、「駒の動き」の制約によるものではないか。
こういうルールがあるとしか思えない。
・「南條」を、第1の晩で取ることはできない。
でもどうして?
まあ、ふつうに考えたら、「検死をさせねばならないため」。
言い換えたら、「検死をごまかし、間違った死因(生死判定)を言わせる必要があるため」。
つまり「南條は犯人とグルであるから、必要な役目を果たさせるまでは消せない」と考えると、状況に当てはまり、無矛盾なのです。
この駒の動きを、採用することにします。
●「南條」を、第1の晩で取ることはできない。また、第8の晩までに取らなければならない。
(検死でウソを言わせるため。また、九羽鳥庵に逃げ込んで生還してしまうため)
*
ベアトリーチェの次なる失着は、第2の晩です。
「寄り添う2人」で、楼座(銃)と真里亞を取ります。
ここで変な動きがある。
どうして、楼座の銃を盤上から取り除かなかったのでしょうか。
これまであんなに、銃を減らしたがっていたのに。
つまり犯人側から見たら、
「銃を残したほうが都合がいい」
か、
「銃を没収できない何らかの理由があった」
かの、どちらかです。
そして、いきなり結論を言いますよ。
「楼座と真里亞を殺したのは絵羽であり、かつ、絵羽は連続殺人の真犯人ではない」
こう考えると、つじつまが合います。
連続殺人犯人ベアトリーチェにとっては、銃を減らせば減らすほど有利。だから、銃を没収しない理由がない。よって、楼座&真里亞殺しの犯人はベアトリーチェではない。
逆に、絵羽には、銃を没収できない、銃を残した方が都合がいい理由があります。
絵羽からしてみたら、「自分以外にも凶悪な殺人犯がいる」ということが明白だからです。
身を守るために、場には武器があったほうがいいんです。
だいたい、よく考えてみたら、
「寄り添う2人」
という表現で、楼座と真里亞があてはまるかっていうと、なんか違和感があります。
これまでは夫婦か恋人だったのに、いきなり親子になってしまい、しかもこの親子ってDV状態ですよね。
真犯人からしてみたら、意外なところで、自分以外の誰かが勝手に殺人をしてしまい、しかたなくこれを「寄り添う2人」だと言い張ってみた。のだと思います。
なぜ、楼座と真里亞を殺したのを、他の誰でもなく絵羽としたのか。それは、黄金の所有権をめぐってトラブルがあったことに加え、ラストで戦人を射殺するとき、「おまえが殺したのか」「そうよ」のやりとりがあったからです。
*
そして、次なるベアトリーチェの失着は。
「南條」を考えましょう。
「南條」は、第8の晩までに取っておくべき駒です。
というか、第10の晩で消滅させることができない、という条件の駒です。
もし取らないでいると、彼は生還します。
生還すると、真相を喋ります。
真相を喋ると、ルールYとルールZが消滅します。つまり、「無限」と「黄金」が無効化される。
無限と黄金が、指し手ベアトリーチェ、現象ベアトリーチェの正体ですから、ベアトリーチェは死にます。赤字で喋るあのドレスの人は、最初から存在しなかったことになります。
なのに「南條」は、第9の晩まで生き残ってる。
これは、かなりヤバイ展開なんです。
犯人の本来の思惑では、きちんとどっかのタイミングで殺すつもりだった。
それはどこか。
ここです。
本館で、「留弗夫(銃)」「霧江(銃)」「秀吉」を取ったとき。
「秀吉」が、イレギュラーな死なんです。
本来なら、秀吉じゃなく、南條が取られるはずだった。
どうしてそう言えるのか。
いいですか、絵羽&秀吉夫妻は、「銃」の駒です。
「銃」は、自分の家族を最大限守るようにふるまいます。
なので、本来なら、「秀吉」だけを取るなんて、できるわけないんです。そんなの、犯人は狙わない。
「秀吉」が、絵羽と譲治を連れずに、単独行動を取っていることそのものが、イレギュラーなんです。
イレギュラーな行動をされたせいで、イレギュラーな殺しをしてしまったのです。
犯人の、本来の計画はこうです。
かしこい霧江が、第1の晩の六連鎖密室のトリックに気づく。
このトリックを成立させるには、「南條」が犯人一味でなければならない。
よって、霧江と留弗夫は、「南條」を殺すか、もしくはゲストハウスから追放する。追放の場合は、犯人が殺せば良い。
しかし、犯人にとってイレギュラーが発生しました。それは、絵羽がこっそりゲストハウスを出て、楼座親子を殺したことです。
絵羽がいない間に、秀吉はタバコを吸ってしまった。
つまり、絵羽にアリバイがないことになる。
霧江は、六連鎖殺人から始まる「全ての殺人の犯人」が絵羽だと思い込んだ。
霧江はまず秀吉をおびきだして殺し、そのあと絵羽をおびきだして殺すつもりだった。犯人が絵羽夫妻だけだと思い込んでいるから、本館に行っても大丈夫だと思っているし、油断している。
さあ、3人が本館に孤立した。これ幸いと、犯人はこの3駒を取った。
ただしそのせいで、「南條」を取るというプランは狂ってしまった。
*
「蔵臼」と「夏妃」を取った局面を考えます。
ここでも、「ベアトの手抜き」が見られます。
この局面でも、銃が没収されずに、現場に残っているのです。
なんでか。
それは、楼座のときに、もうわかってます。
ep3の殺人には、大まかに2種類の殺し方があるのです。
1.格闘で殺され(絞殺含む)、銃を没収されなかった死体(楼座、真里亞、蔵臼、夏妃)
2.殺害方法不明で殺され、銃を没収された死体(留弗夫、霧江、秀吉)
1の殺し方をしたのが絵羽です。
2の殺し方をしたのが、真犯人ベアトリーチェです。
つまり「蔵臼」と「夏妃」を殺したのは絵羽です。
殺した理由は? おそらく、秀吉を殺したのが彼らだと思い込んだからではないでしょうか。
*
そして……。
ここからが、ep3のハイライトです。
儀式外の14人めの被害者として、「譲治」が殺されます。
「銃」のルールにより、譲治を殺したのは絵羽ではありません。
2つの論点を設定します。
第1に、真犯人には、譲治を殺す理由があった。(必要のない14人目をあえて殺しているのだから)
第2に、この殺人が発覚したことで、絵羽はようやく悟ります。「秀吉を殺したのは蔵臼夫妻ではない。まだどこかに殺人者がいる!」
第2のポイントにより、絵羽に「狼と羊のパズル」のフラグが立ちます。
「狼と羊のパズル」が起動したせいで、絵羽は「戦人」を殺します。戦人の死因は狼と羊のパズルだと、TIPSに書いてあります。
ということは、南條を殺したのは絵羽ではないということが確定します。
・南條を殺したのは自分ではない。
・朱志香は失明しているので南條を殺せない(と絵羽は考える)。
・よって南條を殺したのは戦人であり、譲治や秀吉を殺したのも戦人である。
このような思考をたどらないかぎり、「狼と羊のパズル」は起動しないからです。
では、残った論点はひとつ。
犯人はどうして譲治を殺さなければならなかったのか。
……考えました。
そして、わかりました。
そして、ちょっと感動してしまいました。
何が正しいかなんて、誰にも、作者にも決められないことですが、私は、「これが真相だ」と確信できる答えにたどり着きました。
犯人はどうして譲治を殺さなければならなかったのか。
それが、この、「うみねこのなく頃に」という作品のすべてを物語っているように思います。
どうして譲治と紗音の死体がいっしょの部屋に横たえられているのか。
どうしてその部屋の扉には謎の数字が書いてあるのか。
その答えが、黄金郷の正体だったんだ、というアイデアです。
それを次回に書きます。次の書き込みが、ひょっとして、このシリーズの最終回になるかもしれません。
予告編として、黄金郷の「式」を書いておきます。それはこうです。
愛がなければ視えない。
愛がなければ、そこにたどり着いても、黄金しか視えない。
愛がなければ、死は、死でしかない。
うわあかっこいい……。
続き→ チェックメイト――黄金郷再び・金蔵翁の黄金郷
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チェックメイト――黄金郷再び・金蔵翁の黄金郷
ただ、これまでのエントリでは、コレ!という固定された事件の犯人にまで到達できなそうに思います。
それについては、置いた仮定・コマの動きのルールが、証明できるモノでない、あるいは、情報が少ないなどの理由で、実際難しいでしょうか?(自分なりに、同じ方法をやってみようと考えている次第なので聞いてみたいです。)
ベアトリーチェに勝つためには、真相がわからずに無限化した島の状態を、1つの事実で固定し、白き魔法(解釈の自由)の入る余地をなくすことが必要だと思います。
問題編というだけあって、答えの説明を可能にする素材は、揃っているとは思うのですが。
たとえば、譲治の「自分もオカルトに走りたい」発言を聞いてたのは誰だったか。秀吉が「おまえ、なんてことしたんや!」といってひっぱたける相手は絵羽以外には誰か。そういうことを集約していくと私は1人しか見あたらないんです。
でも、証拠がないのをいいことに、「読んだ人がお好きな犯人を決めて良い」というのも素敵かなと思ってます。
根底の部分で認識のズレがあるようなので、すこし聞いてみたいです。
白き魔法を使い、事件の解釈・描写をしている人物と実際の殺人を行っている人物は、同一人物なのでしょうか?
というのも、島を覆っている白き魔法は、事実の『解釈』でしかないので、自分が殺した人間を、『魔法でベアトが殺したの♪』 と解釈できるのか?描写できるのか?いや、出来ないと考えます。
ですので、殺人犯は別にいて、それを見ていた人物Xが、殺害の瞬間を見ていない状態で、白き魔法。目を開けたら『ベアトが魔法で殺したんだ。』という解釈をした。それが全編にわたる魔法描写だと考えています。
まとめると、
ジェシカか、マリアが、白き魔法『解釈』をして、外に存在するメタベアトや、島の仕組みを作り、バルトに魔法を信じさせようとしてる。のだとは思いますが、実際に起きた事件の犯人は違うのではないかという話です。
事件の実行犯の殺人犯=ベアトではなく、
それを見ていた人物の白き魔法が=ベアトである。と考えるということです。
ベアトは、
現在も、外の人からは事実はわからないので、自由気ままに1回ごとに『解釈』のゲーム盤を作っているようにみえる。しかし、
当時、島にいたベアト=人物は、或る程度の事実を観測してしまっている。
だから、自由なゲーム盤に見えるが、その1つ1つの駒の動き、ルールには、当時の島の事実が隠されている。
それを明らかにすることで、少なくとも、人物Xがみた事件の事実・島に起きた真実がわかります。そこから、事件の殺人犯を見つけることができるように思います。
それが、真実の棋譜とコマのルールの重要性だと感じ、もうすこし煮詰めたいのです。
魔法だと思わせようとする事件の犯人は別なのではないか。むしろ、同一にはなりえないという意の発言でした。
んと、
■うみねこについて考えるスタンスが違うように感じるのですが・・汗
不確かな情報ばかりで、証明など出来ない。だからどんな仮説を、その人が考えても良いじゃないか。
という風に広く構えられていらっしゃいますよね。
自分は、砂上楼閣のような仮説であっても、だれかと意見を交換することで、すこしは精錬され、精度の高い仮説ができるのではないか。という期待でいろいろ書き込みしています。
この違いが、書き込みの内容・文面に現れ、ご迷惑をおかけしてはいませんか。