山の恵み里の恵み

キノコ・山菜・野草・野菜の採取記録

歩ける道(2)

2009-03-13 11:14:31 | その他
 東のかた遠からぬところに浮かぶ冨士、北には奥秩父金峰山(きんぷせん)、西は八ヶ岳、そして南、眼前にそびえる甲斐駒と鳳凰三山。冨士(登る気にさえならなかった)と鳳凰三山(50年前からの憧れの山塊、若いころは金がなくて、年とってからは体力がなくて、遂にあきらめた)を除いては、いずれも縦走した思い出深く、懐かしき山々。
 雪をいただく山々にかこまれ、小さな公園で絶景に見入っている老残の浮浪者風浮浪者。満開を過ぎて散りかけた梅の林、百年は優に超えていそうな櫻の大木数本。暖かい陽射し、心地よい春風、あたりに人っ子ひとりいない山里の無人駅。売店なし、コンビニなし、食堂なし、土産物店なし、演歌や民謡をがなりたてるスピーカーなし、団体バスの駐車場なし、おば(あ)さんグループの喚声なし。静かな静かな早春の昼下がり。与謝蕪村の南画にでもありそうな、理想郷、桃源郷。
 中央東線穴山駅。小淵沢を過ぎ、長坂・日野春・穴山・新府を経て韮崎に向う車窓から、どの駅で途中下車しようか「品定め」。韮崎(沙漠だった)でラーメンでもとの目論見がはずれ、駅の売店でパンを買っただけで引き返す。さいわい鈍行の運転間隔が30分おきと便利なため、3箇所で途中下車が可能。それぞれ30分ずつ。最初は穴山。次に日野春(ひのはる)。さすがに無人駅ではなかったものの、何もない点では穴山同然。駅の外にささやかな看板が出ていて、『オオムラサキ自然観察歩道』の案内地図が描いてある。次の長坂駅まで、釜無川沿いに10キロ3時間の行程とある。直線距離なら4キロぐらいだから、ずいぶんと回り道だが、ホンモノの歩道ならめっけもの、よし、本当に「歩ける道」かどうか、15分で行けるところまで歩いてみよう。
 クルマに煩わされずに、町から町、駅から駅へ歩けるかどうかは、最初で分かる。駅前は往来が激しい街道筋だが、通りの向こう側に「歩道入口」の道標が見える。細い路地をくだると、もう一本のケモノ道の辻に「→」印。細い山道が奥に向っている。こりゃあ幸先がいいぞ。山道を登りきると、墓地、そしてちょっとした住宅地。住民のクルマしか通らないような細い道。そしてまた山道が川の方向に続いている。しかしここで時間切れ。第一印象は悪くない。もしかしたらホンマモンの「歩ける道」かも。要所要所に真新しい道標があるから、地図も磁石も不要だろう。よし近々、全部を歩き通してみようっと。
 来る前にネットでちょっと調べた限りでは、この「歩道」のことなんか見つからなかったよ。帰ってから改めて『オオムラサキ自然観察歩道』で検索してみたら、詳細なコースマップも「能書き」も出ていた。団体さん向け、観光ツアー向けじゃない、だから「お金にならない」、だから大宣伝なんかする価値がない、ってところなんだろう。これこそもっけのさいわい、「歩ける道」としては絶好の条件が揃っている。
 接続待ちで寄った小淵沢。駅の中に大量に置いてあるパンフレット。『武田信玄の棒道(ぼうみち、とでも読むのか)遊歩道』なるものもあった。こちらは小海線甲斐小泉から小淵沢までの8キロなにがしの「ウオーキングコース」らしい。ただし食指が全然動かない。ユーメー観光地・リゾート地の5キロ圏内には近づかないのさ。