⑦Green New Town
こんな町、あったらいいな。ホントに出来たら、億単位の「ごほうび」を上げよう。
1)歩く町
半径1キロの円形。総面積1×1×3.14=3.14平方キロ=314ha(町歩)=3,140反歩。1戸につき1反歩あて割り当てるとすれば、3千あまりの家族が入居(入植)できる計算だが、もちろんダメ。公共施設や道路・水路などに広いスペースが必要だから、せいぜい半分程度だろう。(中心部に地下駅でもあればサイコーだなあ。そう言えば「サイコーですか?」の詐欺師、どうしてるかな)。
広い濠にぐるっと取り囲まれており、その脇を広い道路が走っている(江戸城のようだね)。濠には東西南北に一本ずつ、中心方向に橋がかけられ、車道(1車線)と、両側に広い自転車道と歩道がついている。橋のたもとにはバス停と広い駐車場。橋を渡ったところに木戸(バリケード)が設置してあって、「曲者」の侵入・逃亡に備えている。(イザヤ・ベンダサン氏に言われるまでもなく、今や日本も、水と安全はタダじゃない)。
橋から町の中心に向って、橋と同じ幅の車道と自転車道と歩道から成る並木道が一直線に通じている。車道は緊急車両または土木建築・設備点検維持のために特別に許可されたクルマしか通れない。国賓のクルマだって通れない(こりゃまた、皇居より厳しいね)。
中心部は半径100メートルの円形。(「水路」に水が流れるように)少し小高くなっていて、大きな噴水(自噴)を中に広い池がある。池のまわりは公共施設と商店街が環状に建ち並んでいる。ただし「道路」はなく、「路地」のみ。水路の水は、町なかを流れたあと、濠に落ちる。
中心部を取り巻いて、同心円状(バウムクーヘン状)に「居住区」が整然と並んでいる。同心円の幅は(区画の面積が同じになるように)内側ほど広く、順次狭くなっている。輪と輪の間は路地と水路で仕切られている。「路地」はすべて(緊急車両と作業車がぎりぎり通れるだけの)「水路」を含め幅2メートル、「水路」は幅30センチ。中心から放射状に、やはり路地と水路が伸び、各「区画」のかどで交叉している。水路は畑の水撒きだけでなく、雪片付けにも役立つ。
路地はクルマもバイクもスクーターも禁止。例外は前記の特定車両のみで、それも超低速で動いてもらう(道幅が狭いため、どうせノロノロでしか進めない)。徒歩以外で許されるのは、一輪車・自転車・三輪車・車椅子・電動スクーター・乳母車・小型ガートラ(電動式)・大八車・リヤカー・駕籠・輿(かなり大時代がかってるね)。馬車・牛車・人力車・輪タクは不可。
縦横に走る路地のおかげで、どの区画からも、中心部へは徒歩で15分以内、外へ出るのも同様。まさに「歩く町」だね。もちろん町内全域バリアフリー。アスファルト(危険化学物質)舗装はせず、石畳や木材チップを敷き詰めてある。
2)自給自足
「区画」はどれも面積1反歩(1,000㎡、300坪)。総数約1,500、町の人口は、従って、3,000~4,000ぐらい。どの区画も、例外なく、1/3(100坪)が宅地、1/3が畑、1/3が自由植栽地(恒久的建造物禁止)と厳格に決められている。食糧自給に励まない『不耕者』(既報)は入れてもらえない。サボれば追い出される。
入居資格は最低夫婦ふたり、ほかは肉親だけ(親戚や「おともだち」はだめ)。「オレの土地をどう使おうとオレの勝手だ」なんて言わせないため、期限付き借地権契約を結んでもらい、更新は可能だが、審査は厳しい(「不心得者」は退去)。又貸し禁止。住居は2階建て以下。家屋を寝泊り以外の目的(事務所/事業所/営業拠点/工場のたぐい)に使うこと厳禁。仮設の倉庫や納屋以外の建造物を勝手につくることも禁止。
食糧と水と電力(石油石炭系の燃料は一切使わない)はできるだけ自給自足。食糧は自給度に応じて別途(既報)「ごほうび」だ出る。各区画とも簡易井戸(公費負担)を掘り、自前の水の確保に努めるとともに、断水や渇水に備える。畑や植栽地で育てた野菜・穀物・花卉のうち、自家消費分を超える余剰分は「交換ステーション」で現金または他の作物と換えることができる。
建物の屋根は太陽電池パネル(公費負担)を全面設置するため、すべて南向きの片屋根。需給バランスを調整するため、中央に大型蓄電池を設置し、同時にスマートグリッド方式を採用して、外部からの供給不足や停電に備える。電線は地中化。太陽熱温水器・ヒートポンプ式エアコン推奨。
中心部に配水地と下水処理場があり、各路地の地中に上下水パイプが通っている(都市ガスの配管はない)。処理済みの下水(中水)は濠に落とし、汚泥は堆肥化。
3)静かな町
町の静謐と平穏を保つために、屋外での喫煙・ケータイは禁止。屋外スピーカー禁止。大声や大音を発する行為や集会禁止。押し売り・勧誘・販売などの営業禁止。「うろんなヤツ」がうろつかないよう、常時監視を怠らない。「よそもん」を家に入れない、泊めない。ただし介護・看護・医療関係者は別。
まとまり(班)ごとに交代で、夜回り・昼回り・朝回りをし、防火・防犯に努める(巡回中は特例としてケータイー使用許可)。
家畜や犬の放し飼いは(たとえ敷地内でも)禁止。吠えてうるさい犬禁止。猫は「白でも黒でも、ネズミを捕る猫は良い猫」だから、うろつき容認。ただし必ず鑑札(飼い主が明確に分かる首輪など)をつける。野良猫・野良犬は処分。犬猫以外のペットは禁止。営利・非営利を問わず、宗教的・政治的・社会的・文化的諸団体の活動は厳禁(「何とかの自由」侵害だ、なんて騒がれそうかな。それならいっそのこと、「特権的自治都市」に指定してもらおかな、昔の堺のように)。
個人的訪問者(見学者)歓迎。団体さん(5人以上)お断り。グループの場合は、大声で話をしないことを条件に許可。
滞納・禁止行為・迷惑行為・ポイ捨てなどをする「困ったひと」は即刻退去。
4)きれいな町
美観を保つため、屋外広告禁止。区画内に雑草やゴミがはびこらないように努めてもらうことは当然。各区画の周囲に落葉喬木を植え並べ、路地を並木道にする。夏には木陰の役割も果たしてくれるだろう。路地や水路の清掃は接している区画の責任。
「ごみゼロ」にするため、ごみ収集なし。ごみ焼却場なし。生ゴミ・落葉・枯草・雑草など、各戸で処理し切れない分は「堆肥化ステーション」に持ち込む。自販機禁止。壜缶をはじめ、容器・包装・廃品のたぐいは販売店に戻す。外部から持ち込んだものは外部に戻す。(「返しそこない」防止のために、デポジット制の導入が必要かも)。
金属・紙・プラスチックなどは「リサイクルステーション」へ。ステーションが引き受けてくれないものは、各自外部の処理場へ運ぶ(そもそもハナから持ち込まなければいいんだ)。それでも落ちているごみのうち、販売店が分からないものは、メーカーに受取人払いで送り返し、手数料を請求する。
伐採した木や枝・廃材などは「炭化ステーション」で木炭に変え、燃料不足に備える。木灰は良い肥料になる(焼き畑農業を見よ!)。
5)封鎖
周辺で悪疫が発生したら、橋を通行止めにして「鎖国」する。(こちら側で発生した場合は「あちら側」が封鎖措置をとるだろう)。飢饉や災害や暴動などで避難民が押し寄せてきたら、中には入れないで、濠の外に救護所を設けて対処する。そういう事態に備えて、「中央倉庫」に米・麦・塩・医薬品を備蓄しておく。人間、最低限食糧と塩と水と電気があれば、長期間の「籠城」に耐えられる。備えあれば憂いなしさ。
6)費用
初期投資(町の建設費)は莫大なものになりそう。公的補助2/4,債券1/4、受益者負担1/4といったところか。上記「ごほうび」とか、篤志家の寄付があれば、個人の負担分は減るだろうが、「狸の皮算用」なんかアテにならない、借りた金は地道にお返ししていくさ。
入居時に払い込むのは、受益者負担分+退去時に建物などを撤去する費用(見込み)で百万円単位。
地代(利用権料)は町の年間経費の均等割り+債券償還費+公共施設・設備更新のための積立金、月々十万単位になりそう。かなり高いが、「いいとこ」に暮らすにはそれなりの代償が必要さ。
その代わり、エコシステム採用など初期投資がしっかりしているおかげで、電気代・水道代・交通費・食費は少なくて済むはず。電力消費を節約すれば「お釣り」が出るかもしれない。水路と並木・植栽のおかげで、冷房はあまり使わなくて済むだろう。堆肥がたっぷり入手できるから、畑の肥料代もほとんど要らないだろう。畑の作物からも収益が得られるだろう。
国や国際機関から「モデル都市」に指定されて、初期投資がゼロで済むなんてことも、まんざら夢ではないだろうし、いろいろな「ごほうび」がもらえるかも知れない。投資信託が乗り出してくる、グローバル企業がスポンサーとして名乗り出る...。あれやこれやで、出費がかなり抑えられるかも知れない。とは言え「絵に描いた餅」や「たなぼた」を期待するのは危なっかしい。やはりかなりの資金と定収入が必要だと覚悟していたほうが無難だが、「終の棲家」として、退職金と年金を注ぎ込んでもいいから、というお年寄りも多いはず。貯金と定収入のある「子育て世代」にも魅力的じゃないかな。ただし、最初から立派な家を建てようとして、多額のローンを組むなんてのは愚の骨頂ですぞ。
いやー、「理想の町」を考えるのは大変ですなあ。「禁止、禁止」が多くて、かなり「独裁・専制」臭が漂うキライがあるなあ。「安心・安全できれいな町」を追求すると、どうしてもこうなってしまうのかな。
考えるだけで大変なんだから、実際につくるとなるとどれほどの努力を要することか。ま、考えるだけで、もうすっかり入居した気分になれたから、それだけで満足じゃないかな。しかし、もったいないなあ。廃村や廃村になりかけている農山村・漁村など、(「観光で町おこし」なんてことを目指すかわりに)こんな町をつくれば賑やかさを取り戻せるんじゃないかなあ。