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このブログは、憲法や法律に関連する事柄を不定期かつ思いつくままに綴るものです。なお、素人ゆえ誤りがあるかもしれません。

公務員が管理運営する公立劇場における労働安全衛生法上の『労働基準監督機関の職権』・・・“事業場”とは

2010-03-19 00:13:34 | Weblog
 地公法では公務員の身分(任用関係・適用される条例や規則による)を予定しているところ、これを他の法律の適用除外を職員による区分として形式的に規定しているが、一方、労基法「別表第1」は、これが“事業場”となっている。この差異は、形式主義と実質主義の違いなのだろうと思う。

 さて、事業場とは、私の理解では「個別の労働者の職種ではなく、就業場所や資材等の付属物と、そこの労働環境と労働者の労働の性質の総体を言うか、若しくはこれらを総合的に(関係請負人の行う事業等も)勘案して個別事業場ごとに決せられるべき性質の、労働を行う場所である」と定義づけられるように思う。
 なお、厚生労働省も事業場とは「一定の場所において相関連する組織のもとに業として継続的に行われる作業の一体」であるとしている。このことは、実質的な要件から判断されるという意味で私の考え方と一致すると言えよう。
 何より、法がその立法意思に沿って、より適切に適用できることが重要なのであるから、この点、厚生労働省の説明も妥当だと言える。

 そうであれば、例えば自治体が直営する(指定管理者制度を導入していない)劇場(市民会館・市民劇場)などでは、自治体職員(と関係請負人)が管理運営にあたっているが、このような場合には、先に述べた労基法別表第1の10「映画・演劇その他興行の事業」にあたると解する余地もあるように思う。

 つまり、「労働基準監督機関」の職権は、“人事委員会(置かない場合は長)”ではなく、『労働基準監督官』だと解す余地もあるだろうと言うことである。この場合、刑事訴訟法上の「司法警察員」の職権も、安衛法92条により警察官に加え労働基準監督官となろう。
 
 当に、“一定の場所において相関連する組織のもとに業として継続的に行われる作業の一体”としての事業場が、関係労働者(「公務員」と「関係請負人の労働者」)にとって如何なる性質なのか?・・・という事が問われなければならない。
 これは、我々民間委託労働者にとって極めて重要な問題である。なぜなら、公立劇場の部分委託業務として民間委託労働者が公務員と混在している事業場の場合、元方事業者は自治体(機材の準備も含め)であるので、当該元方事業者の労働者たる「自治体職員」の安全衛生教育や事業場の労働環境整備の義務は自治体の長であり、この長に対し、労働基準監督機関の職権を行使できる者は誰か?、ということは極めて重要な問いなのである。《追記3月21日》

 
 参考資料:

 神戸市では、下記URL(pdfファイル)のように、[表]によりよく整理しているほか、兵庫労働局と協議して、事業場の実態に即した区分により、労働基準監督機関の職権の区分(人事委員会か、労働基準監督官か)を整理しているので参照されたい。
 なお、神戸市の事業場区分が、安衛法の目的に照らし妥当かどうかは別である。《追記4月5日》
 http://www.city.kobe.lg.jp/information/about/construction/tyousaka/roudouanzen/img/1p.pdf

 また、解説もわかりやすいので、以下に抜粋して引用する。

 労働基準法 及び 安全衛生法

1 労働基準法及び労働安全衛生法の趣旨
労働基準法(労基法)及び労働安全衛生法(安衛法)は,憲法第27条第2項の「賃金,就業時間,休息その他の勤労条件に関する基準は,法律でこれを定める。」との規定に基づく法律であり労働者の労働条件の最低基準を定めています。従って,この基準に達しない労働条件にかかる労働契約はその限りで無効で,無効となった部分は労基法の定める基準によることになります(労基法第13条)。一方労働安全衛生法(安衛法)は,職場における労働者の安全と健康を確保するために事業者が講ずべき措置の基準を定め,快適な職場環境をつくることを目的としています。(安衛法第1条)
両法とも違反行為に対しては罰則(労基法第13章,安衛法第12章)を規定し,労働者の「人たるに値する生活」の保障を目的としています。
なお,安衛法は,昭和47年に労基法から分離独立して制定されたものですが,労基法によれば,労働者の安全及び衛生に関しては,安衛法の定めるところによる(労基法第42条)とされており,安衛法は労基法の付属法ということができます。また,それぞれの法律はお互いに密接に関連しているため一体的に運営されなければなりません。

2 地方公務員に対する労働基準法及び労働安全衛生法の適用関係
地方公務員にも原則として労基法及び安衛法が適用されます。
しかし,公務員には,職務の公共性に基づく別途公務員関係の諸法令が制定されており,一般法である労基法,安衛法の規定を適用除外しなければならない場合があります。(第1表参照)
また,労基法及び安衛法の施行に伴う監督機関は,一般的には労働局又は労働基準監督署ですが第1表のとおり労基法別表第1の第11号及び12号に掲げる事業並びに官公署の事業(同表に掲げる事業を除く。)に従事する職員(企業職員及び単純労務職員を除く。)については,人事委員会が労働基準監督署と同様の許可・認定・検査等の職権を行使します(地方公務員法58条第5項)。

神戸市においては
・神戸市立学校の県費負担教職員に対する監督機関は,神戸市人事委員会となります。
・公社公団等の外郭団体へ出向・派遣された職員については,その団体を管轄する労働基準監 督署が職権を行使します。
・企業職員及び単純労務職員については,地公法第58条第5項の規定が適用除外されており その従事する事業等の号別区分のいかんにかかわらず,労働基準監督署が監督機関になります。<後略>

 引用終わり。



 参照法令:

 安衛法(労働安全衛生法)

 第二十九条 元方事業者は、関係請負人及び関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反しないよう必要な指導を行なわなければならない。
 2  元方事業者は、関係請負人又は関係請負人の労働者が、当該仕事に関し、この法律又はこれに基づく命令の規定に違反していると認めるときは、是正のため必要な指示を行なわなければならない。
 3  前項の指示を受けた関係請負人又はその労働者は、当該指示に従わなければならない。

 第五十九条  事業者は、労働者を雇い入れたときは、当該労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない。
 2  前項の規定は、労働者の作業内容を変更したときについて準用する。
 
 第九十二条  労働基準監督官は、この法律の規定に違反する罪について、刑事訴訟法の規定による司法警察員の職務を行なう。

 第百二十条  次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
 <中略>第五十九条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)、<中略>の規定に違反した者。


 地公法(地方公務員法)

 第58条
 労働組合法(昭和24年法律第174号)、労働関係調整法(昭和21年法律第25号)及び最低賃金法(昭和34年法律第137号)並びにこれらに基く命令の規定は、職員に関して適用しない。
 2 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第2章の規定並びに船員災害防止活動の促進に関する法律(昭和42年法律第61号)第2章及び第5章の規定並びに同章に基づく命令の規定は、地方公共団体の行う労働基準法(昭和22年法律第49号)別表第1第1号から第10号まで及び第13号から第15号までに掲げる事業に従事する職員以外の職員に関して適用しない。
 3 労働基準法 第2条、第14条第2項及び第3項、第24条第1項、第32条の3から第32条の5まで、第38条の2第2項及び第3項、第38条の3、第38条の4、第39条第5項、第75条から第93条まで並びに第102条の規定、労働安全衛生法第92条の規定、船員法(昭和22年法律第100号)第6条中労働基準法第2条に関する部分、第30条、第37条中勤務条件に関する部分、第53条第1項、第89条から第100条まで、第102条及び第108条中勤務条件に関する部分の規定並びに船員災害防止活動の推進に関する法律第62条の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は、職員に関して適用しない。
 ただし、労働基準法第102条の規定、労働安全衛生法第92条の規定、船員法第37条及び第108条中勤務条件に関する部分の規定並びに船員災害防止活動の促進に関する法律第62条の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定は、地方公共団体の行う労働基準法別表第1第1号から第10号まで及び第13号から第15号までに掲げる事業に従事する職員に、同法第75条から第88条まで及び船員法第89条から第96条までの規定は、地方公務員災害補償法(昭和42年法律第121号)第2条第1項に規定する者以外の職員に関しては適用する。
 4 職員に関しては、労働基準法第32条の2第1項中「使用者は、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、又は」とあるのは「使用者は、」と、同法第34条第2項ただし書中「当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは」とあるのは「条例に特別の定めがある場合は」とする。
 5 労働基準法、労働安全衛生法、船員法及び船員災害防止活動の促進に関する法律の規定並びにこれらの規定に基づく命令の規定中第3項の規定により職員に関して適用されるものを適用する場合における職員の勤務条件に関する労働基準監督機関の職権は、地方公共団体の行う労働基準法別表第1第1号から第10号まで及び第13号から第15号までに掲げる事業に従事する職員の場合を除き、人事委員会又はその委任を受けた人事委員会の委員(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の長)が行うものとする。

2 コメント

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ハインリッヒの法則 (えんどう)
2010-06-15 02:36:43
 ハインリッヒの法則 (-ほうそく、Heinrich's law) は、労働災害における経験則の一つである。1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背景には300の異常が存在するというもの。ハインリッヒの(災害)三角形(トライアングル)(定理)又は(傷害)四角錐(ピラミッド)とも呼ばれる。

 <中略>

 「不安全行動は不安全状態の約9倍の頻度で出現している」ことを約75,000例の分析で明らかにしている(詳細はドミノ理論参照)。なお、ハインリッヒは「災害」を事故と事故を起こさせ得る可能性のある予想外で抑制されない事象と定義している。

上記の法則から、

災害を防げば傷害はなくせる。
不安全行動と不安全状態をなくせば、災害も傷害もなくせる(職場の環境面の安全点検整備、特に、労働者の適正な採用、研修、監督、それらの経営者の責任をも言及している)。
という教訓を導き出した。

 ウィキペディアフリー百科事典より

 なお、統計学が将来起こり得る事実をどのくらい反映する結果となるかは不明だが、重大事故に至るには「不安全行動」と「不安全状態」が存在しており、そのうち予防可能であるものが存在することは確かだと言えよう。
公務現場における委託労働者の労働安全衛生 (えんどう)
2010-06-19 00:40:14
労働安全衛生法の適用については、地公法58条により、事業所における区分は「労基法別表1」によることとなっているが、これらは労働基準監督機関が自治体(人事委員会ないし長)であるか、それとも管区の労働基準監督署になるかの違いであるところ、実際にはきちんと整理されていない場合も多い(県レベルでは整理されている場合も多いが、市町村単位では労災事故等なにか問題が起きてから整理する場合が殆どであろう)。
 即ち、これまでの公務員制度改革により、実際には出先(公立劇場)などの事業場では自治体職員と民間委託労働者が混在し、当該民間労働者が中間ラインの部分作業を行うような「現業的な公務員との作業の一体」となっているのに、自治体(人事担当者)の考え方では“当該職員の身分が一般職であるから”として、「別表1」の適用除外や、同表12号(教育研究事業場)となっていたりもしている。
 ちなみに私(公立劇場の舞台技術管理という公務員による使用許可を経た後を引き継ぐ具体的な業務を行う民間人)の現場も、公務員の業務と一体化された事業場であるが、“12号適用事業場”だとされ、安全衛生法適用に関しての当該事業場の労働基準監督機関は「長」と解されている。

 ところで、安全衛生法は委託・指定管理者にかかわらず、「事業場としての作業の一体性」を重視しており、発注者である自治体にも、安全衛生上の監督を行うよう求めていると解される。

 なお、単なる①『発注者(注文者)』にすぎない場合と、発注者が場所・機材・事業内容・事業期間などに関与して事業を行う②『元方事業者』である場合とでは、法適用が異なる(下記労働安全衛生法の規定を参照されたい。
 
 因みに指定管理者制度を採用していても、施設やその改修予算決定権・機材調達・仕様書の決定権などを考慮すると、自治体が②『元方』である可能性は十分にあると解される。

 参照規定:

 元方事業者の講ずべき措置等・・・・労働安全衛生法29条
 事業者の講ずべき措置等・・・・・・・・・ 同法 20条~28条
 違法な指示の禁止・・・・・・・・・・・・・・ 同法 31条の4
 機械等貸与者等の講ずべき措置等・・同法 33条
 建築物貸与者の講ずべき措置・・・・・・同法 34条

 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S47/S47HO057.html

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