えんどうたかし の つぶやきページgooバージョン

このブログは、憲法や法律に関連する事柄を不定期かつ思いつくままに綴るものです。なお、素人ゆえ誤りがあるかもしれません。

自治体の劣化その2・・・「業者不在で学校ごみ処理困惑」・・とな?

2013-08-24 02:02:03 | Weblog
 中国新聞「地域ニュース」'13/8/24によると・・・<以下http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201308240011.htmlより引用>・・

 呉市教委が学校で出る生ごみや、可燃・不燃ごみなどの処分に頭を痛めている。広島県の補助金受給に絡んで社長らが詐欺罪に問われた産業廃棄物処理業西尾興産(苗代町)が回収を請け負っていたが、集めなくなったため。市は同社への委託を打ち切り、別の業者と契約する。ただ夏休み明けには間に合わず、9月初めは市教委職員たちが集める。

 市教委によると、同社は旧市内の全28小学校の給食調理で出たごみや残飯を毎日回収、乾燥させ飼料化し養豚業者に販売していた。可燃・不燃ごみなどは旧市内の全46小中学校で週2回集め、市の処理施設に運んでいた。

 事件があっても契約は有効で、同社は滞りなく委託業務をこなしていた。異変があったのは7月。給食ごみの回収は1日、可燃・不燃ごみなどは19日が最後で、市はそれぞれ19日、23日に同社との契約を解除した。同社は「会社の事情でできなくなった」としている。

 同社の給食ごみの処理量は2012年度は計90・6トン、可燃・不燃ごみなどは計388・7トン。給食ごみは夏休みまで市教委の職員が各校を回って集め、市の施設で処理。可燃・不燃ごみなどは校務員たちがごみ処理施設に運び込む。教職員がごみを自宅に持ち帰っている学校もある。

 今回の契約解除で飼料化事業は中断。給食ごみも市の施設で処分するよう変更した。

 市は異常事態を受けて、業務を別の業者に委託するため入札準備を進めていた。今月末に入札をするが、契約など手続きもあり、業務再開は9月9日になる見通しだ。

 市教委教育総務部の末重正己部長は「職員の業務に影響が出ており、早く通常態勢に戻したい」としている。

・・・<引用終わり>・・。

 問題は二つあるように思われる。

 先ず1つは、回収を請け負った業者が回収できなくなった時、市は、次の手段をゴミ排出事業者(事業ゴミの排出当事者)として、緊急に新たな処理業者を見つけられない点である。
 第三者に委託している以上、その業者が債務を履行できなくなった時のことを予めリスクとして見積もっていないことは問題だと思う。所謂正常化バイアス(日常バイアスともいう)というやつである。正常性バイアス(normalcy bias)は、社会心理学、災害心理学などで使用される心理学用語で、正常化の偏見、正常への偏向、日常性バイアスともいう。
 正常性バイアスの「バイアス」は偏見、先入観といった意味で、つまり多少の異常事態が起こっても、それを正常の範囲内としてとらえ、心を平静に保とうとする働きのことである。この働きは、人間が日々の生活を送るなかで生じるさまざまな変化や新しい出来事に、心が過剰に反応し、疲弊しないために必要な働きではあるが、これが過度になると、本当に危険な場合、警報装置が鳴っているといった非常事態の際にも異常と認識せず、避難などの対応が遅れてしまうことである。
 異常な事態であるのに、次の業者を選定する手続きを、従来の入札準備でやろうとしていることは誤りだと思う。

 2つ目は、一部の学校で教員に事業ゴミを持ち帰らせて自宅で処理させていることである。
 これは、例えば工場や事務所・食堂など事業場で出るごみを労働者である従業員に持ち帰らせているということである。
 廃掃法では、事業活動を行う者(事業者)は、自らの責任で適正に廃棄物の処分を行わなければならず、事業所から出るごみについては,廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃掃法」という。)において
 ①自らの責任で適正に処理すること
 ②発生抑制,再使用,再生利用等を積極的に行い,廃棄物の減量を図ること
 ③適正処理や減量について,国や市の施策に協力しなければならないこと
・・などの事業者責任が定められており、事業者自らが廃棄物の処理を適正に行うことが義務づけられているのである。
 この法律により、一般家庭から出るごみは自治体が責任を持って収集運搬や処分を行わなければならないのに対し、事業所から出るごみは事業者が自ら又は委託によって処理する必要がある。ここでいう事業所とは、規模や業種を問わずあらゆる事業活動を行っているところを言いい、会社・事務所などの営利を目的とするところだけでなく、病院や学校・社会福祉施設など公共サービスを行っているところも含まれる。
 事業活動とは、製造業や建設業・オフィス・商店等の商業活動などに限定されるものではなく、営利目的であるか否かを問わない。したがって、非営利的活動を行うNPO(非営利団体)・水道事業・学校等の公共事業も含めた広義の概念である。
 ところがこれを、その事業所に勤務する労働者に持ち帰らせて(持ち帰った以上、家庭ごみとして処理せざるを得ないであろうから・・)処理させているというから、違法の蓋然性が高いということになる(廃掃法6条の二の6項「事業者は、一般廃棄物処理計画に従つてその一般廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合その他その一般廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第七条第十二項に規定する一般廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する一般廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない」、罰条25条「次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」同条6項「第六条の二第六項、第十二条第五項又は第十二条の二第五項の規定に違反して、一般廃棄物又は産業廃棄物の処理を他人に委託した者
」)。

 なお、通常、労働法的には使用者と労働者は他人ではないが(履行すべき労働条件の範囲内でであれば・・)、しかし、労働契約外の事業を労働者に委任するのであるから、労使関係に関わらず両者は他人であって、事業者が配下の労働者や下請人等に一般廃棄物の処理・運搬を委託すれば同条違反と解されよう。

 本来、ゴミ処理の専門家であるはずの自治体としては、ずいぶんとお粗末で劣化したものだと思う。

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