えんどうたかし の つぶやきページgooバージョン

このブログは、憲法や法律に関連する事柄を不定期かつ思いつくままに綴るものです。なお、素人ゆえ誤りがあるかもしれません。

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政府は本当に長時間労働の是正をする気はあるのか?

2017-03-06 20:41:06 | Weblog
 ニュースの焼き直しとなるが、疑問に思っていることがあるので以下にそれを述べたいと思う。

 即ち、安倍総理は、今年の施政方針演説で、次のように述べていた。
 「一年余り前、入社一年目の女性が、長時間労働による過酷な状況の中、自ら命を絶ちました。御冥福を改めてお祈りするとともに、二度と悲劇を繰り返さないとの強い決意で、長時間労働の是正に取り組みます。いわゆる三六協定でも超えることができない、罰則付きの時間外労働の限度を定める法改正に向けて、作業を加速します。」首相官邸HP・・・

 ところが、報道などによれば「長時間労働規制 労使トップが10日にも2回目の会談」<テレビ朝日系(ANN) 3/5(日) 16:02配信><より引用>・・・長時間労働の規制を巡る2回目の労使のトップ会談が10日にも開かれる方向で調整が進められていることが分かりました。
 罰則付きの残業規制は、繁忙期や一定の業種などについて1カ月の上限を100時間程度まで認めるかどうかが労使間での最大の争点です。先月27日の経団連の榊原会長と連合の神津会長との会談では溝は埋まりませんでしたが、例外措置として1カ月100時間程度まで認める方向で調整が行われていて、10日にも再び会談を開いて合意を目指します。また、経団連が導入に反対している勤務終了から次の始業まで一定の時間を空ける「インターバル規制」についても一致点を見いだしたい考えです。
・・・<引用終わり>

 上記の報道などによれば、連合と経団連の合意がないと規制法案が通らないということになりそうなのである。これでは、連合(一応は労働側である)が100時間まで残業を認めないと、残業時間の上限の規制法すらできないということになってしまう。
 これでは安倍首相が提唱していた「働き方改革」が発端となり、政府主導で始められたにもかかわらずである。
 とにかくこの発言がおかしい。2月14日の「働き方改革実現会議」 で、時事通信より<引用>・・・安倍晋三首相は席上、残業時間の上限規制について「多数決で議決するものではない。労使で合意形成してもらわなくては法案は出せない」と指摘。「胸襟を開いた責任ある議論を労使双方にお願いしたい」と述べた・・・とのこと。<引き続き時事通信の記事>・・・労働基準法は、労働時間を原則1日8時間、週40時間と定めているが、36条に基づく「三六協定」を結ぶと、事実上無制限で残業させることができる。事務局案では、三六協定を見直し、残業時間の上限を定め、年720時間、月平均60時間に制限する。違反企業には罰則も科す。・・・<引用終わり>

 連合(一応労働側)が100時間まで認めないと、この話がチャラ(振り出し)になるというのはおかしい。
 なぜなら1ヵ月100時間は過労死ラインであろう。法定外労働時間が月間100時間を超えた場合の精神疾患(とそれを原因とする自死)との間に因果関係を認めるというのは、医学的見地や経験則などから導かれた合理的数字(通説・多くの判例も支持している)である。

 〝本末転倒〟というのはこういうことだ。

 あと、念のためだが、目指すのは、〝残業代ゼロ〟なのか?、そうではなく〝残業ゼロ〟なのか?、ということも議論がすり替わりそうである。
 即ち、先ず残業代をゼロにすることでインセンティブとして残業を減らすという議論が行われかねない。

 画して我が国では、譲れない権利を譲り渡さなければ、元の権利が取り戻せないというジレンマに陥ることにもなる。


 ≪追記≫

 あと、上記とは直接関係はないが、こちらも医療を受ける権利と引き換えに、生命の安全を奪われかねないニュース。<パーキンソン病患者>病院に配車断られ…男性遺体で発見(毎日新聞 3/7(火) 21:53配信)

 <引用>・・・千葉県柏市内の老人ホームに入居していたパーキンソン病患者の男性(72)が昨年12月、市立柏病院で介護タクシーを呼ぶよう頼んだところ断られ、約1カ月後に別の場所で遺体で発見されていたことが病院関係者らへの取材で分かった。男性は要介護3で歩行にはつえが必要だったが、直線距離で約3キロあるホームまで歩いて帰ろうとした可能性があるという。
 病院関係者らによると、男性は昨年12月下旬に同病院で診察を受けた後、介護タクシーを呼んでホームに帰ろうとした。電話をかけるのに必要な現金を持ち合わせていなかったため、病院案内窓口で電話を依頼したが看護師から「対応は難しい」と断られたという。
 男性は「そうですよね」と言って立ち去ったがその後行方が分からなくなり、ホーム側はその日のうちに病院と警察に連絡。1月下旬になって病院から約1.5キロ離れた川の近くで遺体で見つかった。
 死因は凍死で、行方不明になった日が死亡日とされたという。現場は空き地や草むらが広がる道路からは少し離れた場所だった。
 病院の対応と男性の死亡の因果関係はわからないものの、6日にあった市議会一般質問では病院の対応を疑問視する声が上がった。市保健福祉部の佐藤靖理事は「男性には個々の患者の要望に応えるのは困難と伝え、理解もいただいた」と説明。質問に立った末永康文市議(護憲市民会議)は取材に「1人で帰るのが無理と気づかないのは問題。丁寧に対応すれば命は奪われなかった」と批判した。
 病院は取材に「外来患者は1日500人以上おり、対応には限界がある」と話している
。【橋本利昭】
・・・<引用終わり>

 そもそも福祉ニーズが何であるかがわかっていないという問題だと思う。「500人の患者が来るから個別の対応が無理」というのが病院側の見解のようである(せめて『魔が差した、今後は気を付ける』というべきであったろう)。しかしこれは、病院職員の業務=医療機関がが行うべき業務と、そこから牽連・接続した、一般の傷病者や高齢者に接する人間としての平衡感覚(社会的妥当性)との接続の問題である。
 帰路につくべき患者が抱える諸問題について、それを次の担当すべきプロ(事業者に引き継ぐという)事業者意識に欠ける病院とは果たして如何なる存在なのであろう。
 医療機関は、事業者である前に社会性がなければならない。それが福祉国家というものだ(勿論自治体もである)。

 取材の回答を見る限り、柏市立病院にはその社会性がない。

 病院職員が、労働する事業場(医療現場)に入る前に、人間としての感覚を置き去りにしていかなければならないとすれば、やはり前の労働時間(100時間云々)の問題と同じようにも思える。
 
 連想ゲームのような記述となるが、人間としての感覚、とりわけ人権感覚を置き去りにして労働する現場としては自治体もそのようである。弁護士ドットコムが伝えたニュースに下記のようなものがある。
 
 <引用>・・・首都圏のある市の福祉事務所で今年1月、生活保護を申請しに来た40代の妊婦に対し、職員が「産むの?」など堕胎をほのめかす発言をしていたことが分かった。女性の支援団体が3月8日、記者会見で明らかにした。
 市は弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「確認をしただけで、中絶を求める意図はなかったが、そのように受け止められてしまった点については配慮が足りなかった」と回答。女性に対してはすでに謝罪しているという。
 支援団体「POSSE」スタッフの今岡直之氏によると、行政が対応の不備を認め、謝罪する例は珍しいという。
 ●生活保護受けずに5年間頑張ったが…
 「POSSE」によると、女性は日本の永住権を持つフィリピン人のシングルマザーで、高校生の息子が1人いる。約5年前、日本人の夫と離婚し、スーパーの深夜パートなどをしながら、生計を立てていたという。しかし、今年に入って妊娠が発覚。腹部に痛みがあり、品出しなどの作業が困難になったとして1月中旬、生活保護を申請しに福祉事務所を訪れた。
 職員から「産むの?」などの言葉をかけられた女性はショックを受けて、そのまま帰宅。2月に入って再度、申請に行ったときも、長男のアルバイトを増やすことなどを勧められ、申請できなかったという。しかし、同日中に「POSSE」のスタッフと再訪したところ、市は申請を受理した。
 今岡氏によると、生活保護をめぐり、妊婦と行政との間でトラブルが起こることは珍しくないという。今回の事例を受けて、POSSEは3月12日午前11時〜午後3時まで、妊婦を対象にした生活保護関連の無料電話相談を実施する。電話番号は、0120-987-215。
・・・<引用終わり>
 (弁護士ドットコムニュース)よりhttps://www.bengo4.com/internet/n_5812/

 自己のために社会を潰そうとする組織も恐ろしいが、その意を汲んで労働する労働者もかなり恐ろしい。

 
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相対的弱者に配慮している記事・・ヤフーニュース「熊本地震 女性が安心できる避難所を!」

2016-04-23 00:59:51 | Weblog
 避難生活で配慮が必要だとする記事があったので、参考までに掲載したいと思う。

 先ず、参照したい資料は下記の通り。
・男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針http://www.gender.go.jp/policy/saigai/shishin/index.html
・避難所チェックシートhttp://www.gender.go.jp/policy/saigai/shishin/pdf/shishin_hinanjyo_checksheet.pdf

 あと、ヤフーニュースで下記のものがある。http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20160422-00056920/

 引用開始・・・今月14日から続いている熊本地震でこれまでに48人の死亡が確認され、2人の行方が分からなくなっています。避難者は約9万人にのぼっています。
・死者48人
・地震の影響で亡くなったとみられる人11人
・行方不明2人
・重傷214人、軽傷891人
・住宅被害は9千棟以上の恐れ
・11万人余に避難指示や勧告
・避難者約9万人
・断水2万2100世帯
・震度1以上の地震は799回
(NHK、22日午後まとめ)

英BBC放送では、熊本地震の被災地でパニックを起こさず避難生活を送る日本人の態度について「ストイシズム(克己禁欲主義)」という言葉を使って報じています。しかし我慢のし過ぎは禁物です。問題を見えなくしてしまう恐れがあるからです。
東日本大震災では、被災地で強盗や強姦などが多発しているという流言飛語が飛び交い、被災者の不安をあおる状況がみられました。このため警察がチラシやポスター、ホームページを通じて正確な犯罪情勢を発信して、対策に努めました。
警察の目から見た治安とは別に、被災地で女性の権利やプライバシーが完全に守られているかと言えば、生活環境が不安定になることで女性が置かれている立場はさらに弱いものになっているのではないでしょうか。
東日本大震災女性支援ネットワーク(2014年3月解散)が11年10月~12年12月にかけて行った「災害・復興時における女性と子供への暴力」に関する事例調査(82件)http://oxfam.jp/gbvreport.pdfがあります。

被災地では女性がさらに弱い立場に置かれていることが分かります。国連開発計画(UNDP)、セーブ・ザ・チルドレンなどを通じ中東・北アフリカで子供の支援活動に携わってきた田邑恵子さんは「女性が安心できる避難所を!」と提言しています。

「皆、大変なんだから、文句は言えない」
[田邑恵子]普段は当たり前だと思っていることが配慮されない状態となってしまうのが、避難所です。そして、避難所生活をしていると「皆、大変なんだから、文句は言えない」という雰囲気が生まれてしまうこともあります。
本来だったらしなくてもいい不快な思いや、危険な思いをしなくてもいいように、いくつかのアイデアをご紹介したいと思います。さて、ここで、ひとつ質問です。下の4つに共通していることは何でしょうか?
・フェリー
・電車
・カプセルホテル
・ホテル
答えが思い浮かびましたか?「旅でお世話になるもの?」。いいえ、違います。正解は「女性専用のスペース(フロア)がある」。当りましたか?
就寝を伴うフェリーやカプセルホテルでは、女性専用のスペースがあると安心して眠ることができますよね。カプセルホテルは、そもそも、男女別しか存在しないのではと思います。
ビジネスホテルでも、女性専用フロアを設けているホテルが多いですね。スタッフの客室フロアへの立ち入りが極めて少なく、目が行き届かないビジネスホテルでは、特に安心に感じます。ところが、避難所ではどうでしょうか?
最近は、徐々に授乳室などを設けている避難所も多くなってきましたが、女性だけで眠ることのできるスペースを設けている避難所は極めてまれでしょう。
避難所では、通常、家族単位で固まって居場所を作り、そこでご飯も食べ、眠りにつきます。家族でいる方が安心するという方もいるでしょうし、高齢者の親についていなくてはならないという人もいるでしょう。
それでも、避難所内のスペースをやりくりし、昼間は家族と一緒に過ごし、希望する人は、夜だけでもいいので「女性専用スペース」で眠ることができるようにすると安心です。夜間、そこに近づく男性は目立ちますから、性暴力の危険を抑制することができます。

「女性専用スペース」があれば、着替え、授乳、下着の乾燥にも活用することができます。また、生理用品、下着などの置き場としても使えます。
子供さんがいる家族、高齢者を抱える家族が集まるというように区画割りにすることを検討してもいいでしょう。複数の家族で協力し合って、気兼ねを少なくしたり、交代で自宅に戻ったり、避難所での仕事をすることができます。

性暴力の被害にあわないために
自然災害は性暴力のリスクを著しく増加させます。残念なことに、急ごしらえで作られた避難所には、数々の危険な場所ができてしまいます。男女別に分かれていないトイレやシャワー、物資の置いてある部屋、階段の下の暗がり、物置、屋外で寝ている校庭など。
暗がりができないように照明を設置できると良いのですが、停電が頻発する可能性もあります。防犯ブザーがない場合、できるだけ一人で行動することを避け、懐中電灯や笛を携帯するようにしましょう。特に家の片付けなどでは、どこからでも侵入できる状態となっていることもあるため、特別に注意が必要です。
そして、性暴力は女性だけの問題ではありません。子供や男性にも危険はあります。

性暴力の被害にあってしまったら
望まない妊娠を避けるためには72~120時間内に、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染することを防ぐためには72時間以内に処置を受ける必要があります。大変なショックの中で混乱していたとしても、すぐに処置を受ける事が必要です。
難民キャンプなどには、そのための処置キットが常備されていますが、日本の避難所にはない可能性が高いでしょう。性暴力被害者への対応は、日本であれば医療関係者が一番知識を持っている可能性が高いです。まずは、医療関係者に助けを求めるようにしましょう。
また、性暴力の連鎖を断ち切るためにも、被害を受けた方がさらなる嫌がらせを受けないためにも、避難所を運営する人たちが、正しく対応することが必要です。性暴力は許さないという断固とした姿勢を表明し、それを実施することが求められます(巡回の実施、被害報告した人を守る仕組みなど)

生理用品の置き場所と捨てる場所
生理用品は配布だけではなく、それがきちんと処理できる環境が整っていることが大切です。トイレ個室内に捨てる場所がなくてはなりません。男性から手渡されるのに抵抗がある人のために、トイレに備え付けたり、女性専用スペースに置いたりするのでもいいですね。
また、個室内にウェットティッシュ/デリケートゾーン用ウェットティッシュを常備しておき、汚れた手指を拭くことができると、さっぱりするし、人目を気にする心配が減るでしょう。

なぜか改善されないトイレの問題
自動的に便器のフタが上がる、水が流れる、音楽がなる、照明の色が変わるなど、日常生活では、あれだけハイテクかつ快適な、世界に誇る日本のトイレ。
それなのに、災害発生時のトイレ問題がこれほど長い間改善されていないのは、なぜなんだろうと不思議です。どの大災害でも、トイレ問題はベスト3にのぼるくらいの課題とされてきました。そして、トイレの不足/不衛生さは、エコノミークラス症候群などの様々な健康問題を引き起こしてきました。
水がなくても快適に使用できる「バイオトイレ」をご存知でしょうか。微生物が排泄物を分解してくれて、汲み出しの必要もなく、悪臭も発生しません。
「ホント?」と思うかもしれませんが、本当です!
私は、おがくずを撒くタイプのバイオトイレを何度も使用したことがありますが、臭いも全然なく、快適でした。使い方も簡単です。内装も木目で統一され、とてもおしゃれで、にわかにはそれが仮設トイレであるとは信じ難いくらいでした。
こういったバイオトイレを製造している会社は複数あります。かつ、それが自走式(車と一体化している)であり、必要なところに簡単に移動もすることもできます。台所のコンポストを転用したユニークなバイオトイレを開発している会社もあります。
しかし、全然普及していません。東日本大震災でも、ほんの一部の避難所にしか設置されませんでした。使用者の感想は「汲み取り式の仮設トイレよりも臭くない!」でした。
自走式バイオトイレを避難所に設置する、あるいは、地域の指定避難所には、最初からバイオトイレを設置しておき、人々が普段から使用することに抵抗がなく、正しい使い方を知っているのが望ましいかもしれません。

「声なき声」を届けるには避難所運営に参加するしかない
避難所では、様々な担当グループが結成されます。食料配布、清掃、物資配布、ボランティアの受け入れ、安全のための見回りなどです。こういった避難所運営は、被災された方の自治組織が支援に入った市町村職員などと共同で活動するのが一番望ましいです。
そして、避難所で女性が安心して過ごせるようにするためには、この運営組織に女性が参加することが求められます。乳幼児のお母さん、学齢期の子供を持つお母さん、介護が必要な親と避難されている女性など、それぞれ、気づく点は異なります。
こういった方々がバランス良く、適切な人数で避難所運営に参加することで、隠れたニーズ、語られないニーズが初めて議論の場にのぼります。
また、同じ状況にある方と相談することで、思ってもみなかった解決策が見つかる可能性もあります。そのためにも、一人で参加するのではなく、複数の女性が参加することが望ましいです。

内閣府でも指針を出しています。残念なことに、この指針は、男女共同参画局のサイト内にあり、防災担当のサイトには掲載されていないため、なかなか今、避難所運営をしている人たちの目には留まりづらいでしょう。
少しでも女性が安心して過ごせるように。まずは「何に困っているか」を近くにいる方と話し合うことが最初の一歩になります。

(おわり)

熊本地震に関連した緊急エントリー
報道とボランティアの皆さんも「心理的応急措置(PFA)」を忘れずに
非常用持ち出し袋には「心の栄養になるものを!」
「賢い」支援をするために 善意を届ける前に考えてほしいこと
なぜ日本の防災計画は「子供に優しくない」のか

田邑恵子(たむら・けいこ)
北海道生まれ。北海道大学法学部、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス大学院卒。国際協力の仕事に従事。開発援助や復興支援の仕事に15年ほど従事し、日本のNPO事務局、国際協力機構(JICA)、国連開発計画(UNDP)、セーブ・ザ・チルドレンなどで勤務。現在はフリーランスとして活動している。中東・北アフリカ地域で過ごした年数が多い。ブログ「シリアの食卓から」

・・・引用終わり。

 上記の発言者は、私と同郷らしいので、何か親近感があるというわけではないが、合理的に考えても、人命救助、食糧確保など、避難所で今より少しでも余裕が出て来たら、上記意見の通り、被災・避難当事者の意見を聞くなどして、子ども、高齢者、女性などへの配慮がより良い方向に向かうことを願う。少数派とか、声の小さい者の意見を、うまく吸い上げる工夫が必要だと思うし、外側から支援する我らの側にも、そうした配慮が必要であると自戒したい。そのような声が多数派になれば、また、別な事情によって埋もれる弱者が出てくる可能性すらも考えたいと思う。
 
 多数や大声にに紛れたり、埋もれることのない、即ちニーズを掘り起こす支援とは如何なるかを不断に考えながら行動したい。ただ、現場で救助支援に当たっている人には頭が下がる。ただ、我ら被災地に行けない外の人間も、その分、事故を起こさないように注意するなど、既存の公共インフラや災害対応機関への負荷を少しでも少なくすることも支援につながるであろう。

 あと、男女共同参画局http://www.gender.go.jp/は、その権限によってどんどん支援に取り組み、関係機関にも助言すべきだ。
・男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針http://www.gender.go.jp/policy/saigai/shishin/index.html
・避難所チェックシートhttp://www.gender.go.jp/policy/saigai/shishin/pdf/shishin_hinanjyo_checksheet.pdf

 ILO勧告ではないが、女性リーダーを避難所の機関として設置すべきだと思う。
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劇場(公の施設)における被災建築物応急危険度判定とその後の使用について/再掲載

2016-04-21 23:15:49 | Weblog
 この数日、以前東日本大震災後に書いた表記エントリの閲覧が多いので、再掲載するもの。
 但し、フリーの音響エンジニアである小生が調べた素人程度のものであるので、以下を読まれた方に、もし劇場関係者がおられた場合には、自治体担当者や専門家等に確認されてほしいことをお断りしておく。あくまで、安全調査や法的整理、その後の改修などのきっかけとしてほしいための投稿である。


被災建築物応急危険度判定制度と劇場のその後の運用については、自治体(直営施設)や個々の指定管理者によっては誤った制度理解に基づく施設運営がなされる懸念もあると思われるので、下記に資料を提示したいと思う。なお、特に今回の震災において比較的軽微な被災か、若しくは被災していないように見える施設において、一日も早い通常運営を行おうとしている場合に特に注意が必要だと考えられる。
 
 さて、知立市のHP(http://www.city.chiryu.aichi.jp/0000004872.html)に掲載されている整理が判り易いので、引用させていただこう。(追記・・なお、知立市のHPはリニューアルされ、現在はまとまった形での文章は掲載されていない・・因みに検索するとhttp://www.city.chiryu.aichi.jp/material/template/result.htmlとなっており、いくつかの記事にわけて夫々掲載されているようだ・・)

○応急危険度判定とは
応急危険度判定とは、大地震により被災した建築物を応急危険度判定士(下記参照)が調査して、その後に発生する余震などによる建物の倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの落下、エアコンの室外機などの付属設備の転倒などの危険性を判定することにより、人命にかかわる二次的災害を防止することを目的としています。
 判定した結果は、建築物の見えやすい場所に、「危険」(赤紙)、「要注意」(黄紙)、「調査済」(緑紙)の三種類の判定ステッカーのいずれかを、見やすい場所に掲示し、居住者はもとより付近を通行する歩行者などに対してもその建築物の危険性について情報提供することとしています。
また、これらの判定は建築の専門家が個々の建築物を直接見て回るため、被災建築物に対する不安を抱いている被災者の精神的安定にもつながります。

○応急危険度判定士とは
応急危険度判定は、市町村が地震発生後の様々な応急対策の一つとして行うべきものですが、阪神・淡路大震災のような大規模災害の場合には、判定を必要とする建築物の量的な問題や被災地域の広域性から行政職員だけでは対応が難しいと考えられます。  そこで、ボランティアとして協力していただける民間の建築士等の方々に、応急危険度判定に関する講習を受講していただくことなどにより、「応急危険度判定士」として都道府県が養成、登録を行っています。応急危険度判定士は、活動時には、ヘルメットシール、腕章、判定士登録証等により身分を明らかにします。平成21年度は知立市では27名の応急危険度判定士が登録されています。

○応急危険度判定と罹災証明のための被害調査は意味合いが違います
応急危険度判定士は、地震後の余震等による二次災害を未然に防止するため、応急的に建物の安全性をチェックするものであり、被害調査は、建築物の資産価値的な面(損傷の程度)を調査するので、応急危険度判定とは、視点・内容が異なります。建築士には、応急危険度判定は、罹災証明のための被害調査ではない旨の周知も行います。また、この判定についての責任は判定実施主体の地方自治体にあります。

★震災後に行われる被災建築物の調査や判定には、主に次の三つがあります。

●被災建築物応急危険度判定
応急危険度判定とは、余震による建物の倒壊や落下物などから人的被害を防止するために、建物の安全性を応急的に判定し、建物への立ち入りの可否を住民に情報提供するものです。判定は、被災市町村の要請により資格を持った判定士が行いますが、緊急を要するため震災直後から速やかに実施されます。

●被災建築物の被災度区分判定
被災度区分判定とは、地震により損傷を受けた建物が修理により恒久的に継続使用が可能かどうか、また、どの程度の修理が必要か等、構造的視点から建物の復旧の要否について判定するものです。判定は、基本的に、建物の所有者が建築構造技術者等に依頼して行われることになります。

●罹災証明のための被害調査
被害調査とは市町村に提出された「罹災届」に基づき、被災した建物の損傷の度合いを資産価値的な視点から調査し、「罹災証明」として認定するために行われます。調査は、主として市町村職員が行います。

 ・・・引用終わり。

 これらを要約すると・・・

 「被災建築物応急危険度判定」は、被災した建物が二次災害を引き起こす危険度について判定するものであって、その目的は、建物への立ち入りや建物付近の危険の有無を判定しようとする制度だといえよう。したがって、建物がその施設の目的を果たす機能が失われていないかという判定を行うことではないことになる。

 したがって、例え上記の応急危険度判定が安全であるとされたとしても、施設の使用に際しての安全性やその機能(の一部)について判断しようとする場合には、少なくとも、その次の段階である「被災建築物の被災度区分判定」を待つ他はないということである。
 その上、劇場の場合には、少なくとも、①舞台機構、②照明装置、③音響装置、④反響板や、その他の付属設備・特別な電気設備やその他の機構などについて安全性の判断を行うことが必要なのである。
 なお、「罹災証明のための被害調査」については主に財産価値としての調査になるので、ここでは省略する。

 具体的な手順としては、

 1・被災後の復旧の第1段階・・・被災建築物応急危険度判定

 2.その次に・・・・・・・・・・被災建築物の被災度区分判定

 3.そして・・・・・・・・・・・舞台機構・照明と音響・その他の付属設備等

 ・・・となろう。

 上記をクリヤーしてはじめて施設の運用が可能になると考えられる。
 劇場の機構を持つ施設は、平時でさえかなり特殊であるので、施設運用の開始には慎重を期すべきだと思う。

 《追記》

 応急危険度判定と、その後の被災度区分判定のフローについては以下の東京都の資料が参考に意なると思われるので、是非参照されたい。なお、詳しくは都道府県建築担当課または特定行政庁(建築指導)に問い合わせていただきたい。くれぐれも運用には慎重を期すべきだと思う。

 http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kenchiku/bousai/kn_t08_01.htm

 大変な困難に直面している関係自治体の職員の方、公の施設の指定管理者の関係者には、心からエールを送りたいと思う。
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指定管理者はみなし公務員か?ではないか? いくつかの論点

2016-04-15 19:43:18 | Weblog
 第一の論点として、先ず、指定管理者の法的性格についてであるが、国の解釈によれば(というか、既に総務省HPから削除されており、国会図書館で検索したがなかなか出てこないので、洋々亭さんの過去ログ「指定管理業務は請負業務では無い?」http://yoyotei.opal.ne.jp/cgi-yybbs/yoyybbs.cgi?mode=past&pno=36&subno=3993の自分の投稿から引用・・)、総務省の地方公共団体における民間委託の推進に関する研究会報告書(平成19年3月)P.25でも、「指定管理者の「指定」という行為自体は「契約」ではなく行政行為とされている」と記載されている。指定管理者の「指定」という行為自体は「契約」ではなく行政行為とされているが、「指定」に伴い地方公共団体と指定管理者の間で合意された事項を確認する「協定」の法的性質について整理を行う必要がある。「協定」の法的性質については、「行政行為の附款」とする考え方と「契約としての法的性質を有する協定」とする考え方がある。ここで、協定を「行政行為の附款」ととらえると、行政行為の条件として地方公共団体が一方的に決めていることになるが、協定締結の過程及び協定に含まれる内容を考慮すると、法的拘束力のある契約条項的な規定部分を含むことから、「契約としての法的性質を有する協定」とするほうが適当であると考えられる・・・と言う理論である。

 また、上記所論によれば、「行政行為の附款」と「契約」としての規定部分を含むと言うのである。これはこれで一つの見解だとしておこう。
 また、“附款”にも、「法定附款」と「裁量的な附款」が考えられるが、“附款”自体が、何らかの合意による場合もあると考えられよう(なお、付款が交渉の結果として付されることがあり得ることについては、塩野宏『行政法Ⅰ(第3版)』有斐閣、2003年161頁を参照)。
同所論では『「協定」が契約としての法的性格を有するとした場合、地方自治法第234 条の契約に関する規定や第142 条等の兼業禁止の規定との関係が問題となるが、これらは契約相手先を決定する際の規定であることから、これと対応関係にある「指定」という行政行為には適用されないものである。』
 『“兼業禁止”については「指定」という行政行為には適用されない』と結論づけてはいる。これも一つの見解だとしておこう。

 しかしながら、この所論をもって「民法」とこれを修正する「経済法」・「労働法」をさらに修正するものとはならないであろう。
 例としては、行政権限の下級庁への委任の場合には、一般に、委任した上級庁が受任庁に対し、指揮監督権を有していると考えられているが、指定管理者の場合には、これを「協定書」に委ねているものと考えられるからである。もし、指定管理者に対する指揮監督権を委任庁(指定する側)に認めれば、職業安定法や労働者派遣法との整合性が問題となってくる。

 所論は、労働法(労働者派遣法)について一部のみ触れてはいるが、しかしながら従来の上級庁・下級庁のような関係に対し、法人格の異なる機関(自治体と民間法人)間の私法関係(とこれを修正する経済法・労働法)についての検討がなされているとは言いがたい。
 また、個人情報の保護についても、従来の管理委託制度における実施機関(行政機関)からの委任と同等の取り扱いとなっており、指定管理者から再委託された場合には罰則の適用はない規定になっているのである。
 これは指定管理者(私人)と行政機関(公務員)の決定的な違いだと思われる。
 個別に判断すれば刑法7条の“みなし公務員”の可能性は排除はされない。しかしこれが結論ではない。

 
 第二として、先ずは、刑法7条の規定に関して、自治体が独自に公務員的用罪の範囲を広げることは、罪刑法定主義に反し、憲法(デュープロセス)条項にも反すると解すべきであろう。念のため、刑法の規定は「第七条 この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。
2  この法律において「公務所」とは、官公庁その他公務員が職務を行う所をいう。」となっている。

 なお、法律(法令)の規定に基づく「みなし公務員」は、デュープロセスの原則により、明文の根拠が必要なところ、例えば、国の指定機関については、行政庁から委任を受けた民間人が「公権力の行使である公務を行う」とする明文規定が「みなし公務員」の法源となっている(ただし明文により“みなし公務員”とは書いてないものが多い)。
 これを援用すると、地方自治法の法任意規定(244条の2の3)である指定管理者は、これを採用する自治体の条例(使用許可等の公権力の行使が長から委任された場合)によって、公務を行う者となることから、「みなし公務員」だと言い得る法源である余地はあることとなる。
 つまり「法任意(出来る規定)」でもって民間人に委任が可能な公権力行使(自治体に留保されている)は、これを条例により規定した場合に限り、条例が個別法となり「みなし公務員」であると解することも一応可能ではある、ということだ。

 ところで、よく対比されるというか、類似の構造を持つ、公共サービス改革法の「みなし公務員規定」については、解釈が少し厄介である。

 即ち、
 第二十五条 公共サービス実施民間事業者(その者が法人である場合にあっては、その役員)若しくはその職員その他の前条の公共サービスに従事する者又はこれらの者であった者は、当該公共サービスの実施に関して知り得た秘密を漏らし、又は盗用してはならない。
2 前条の公共サービスに従事する者は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。

 この規定では「公共サービス実施民間事業者若しくはその他の前条の公共サービスに(1)」に従事する者は「法令により公務に従事する職員とみなす(2)」となる。
 しかし、公共サービス実施民間事業者で括ったすべての者が“みなし公務員である”と解すには、なお疑問があるのである(同条が「前条の~」と名指しした者は、個別化するとされる刑法責任論においては、どの個人なのか?が得に疑問である)。

 ここで確認しておきたいが、刑法は根拠法ではないから、法源はあくまで該当「法令(の明文規定)により公務を行う者」であって、この者に対する料罰規定として刑法7条が適用され「~公務員とみな~」されるわけである。
 そうすると、公共サービス改革法が規定する「みなし公務員」と言い得るような法源は、同法の34条以降条文に列挙された業務(公務)に求められるものであろう。つまり、法令により公務に従事すればみなし公務員なのだから、公共サービス25条2項は得に必要ないことになる。ダメ押し規定である。

 また、(やぶ蛇だが)同法54条の料罰規定については、刑法に規定される料罰規定と競合した場合には、これは択一関係により「公共サービス改革法二十五条第一項違反罪」になると思う。

 結局のところ、指定管理者は、みなし公務員である可能性はあるが、確定的ではない、ということである。また、刑法の公務員適用罪を適用するだけの責任については、身分保障(例えば失われた権利に対する対価)という点でも疑問はあるわけである。
 しかしながら、私の意図としては、刑罰に威嚇されて護られる法益の価値については無視できないわけであって、指定管理者に与えられた施設利用の許可不許可の行政処分に対しては、職権乱用罪や贈収賄罪の威嚇がある(=刑法7条に言う「みなし公務員」たる身分である)、という前提に立たないとすれば、自治体や個別の施設によっては自治体が直営でやっているわけであり、また少数ではあるが利用の許可を自治体(の公務員)に留保している場合もあるのであるから、地方自治法244条に言う『公の施設』の平等利用と公共性を担保するには足りないわけである。
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派遣法違反?職安法44条違反?・・・どっち?

2016-03-30 21:53:53 | Weblog
 このお題、記事とも焼き直しであるが、訪問数が多い(お読みいただきありがとうございます)ので、再掲載するもの。

 かねてより疑問に思うことがある。派遣法と職安法44条の違反は、条文を見る限り、競合していないように思われるが、そうであろうか。私見によれば、構成要件的行為において相当に重なっているように思われる。素人ゆえ誤りかもしれないが、下記を読んでいただきたいと思う。


 その1.

 請負・委任契約のなかで、偽装請負が行われていた場合、国(労働局需給調整担当)の法解釈によれば、派遣法2条1項(「自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないもののする。」)を法源に、職安法を適用せず、派遣法違反とし、主に派遣元について是正指導を行っている。勿論、派遣先にも指導はあるのだが、この点、私の見聞きした実態では、派遣元にはある程度しっかり指導(親分・子分関係など封建的な取り扱いをやめるよう促したり、労災保険や雇用保険に加入するよう指導したり)してはいるが、どうも派遣先(派遣元にとっては顧客であるためか)やや緩やかだと思う。
 どうも国(労働行政)は、派遣法に当たらないものを抜き出して職業安定法違反、即ち、一方が成立すれば他方は論理的に成立しえない排他(排除)関係としているようである。尤も、職安法の条文には確かに文理上そう書いてはある(故に、2重派遣のみを職安法44条違反として告発するなど)が、しかし、私は、職安法と派遣法との関係は、一般法と個別法の関係にあると解すべき場合があるのではないか、と理解している。即ち、立法過程上や、派遣法と職業安定法との役割分担上で、下記の様な事情からそのように解せる余地があるということである。

 さて、よく考えてみれば、労働者派遣、労働者供給とは法的にどういうものであろうか。
「労働者派遣法第2条第1号・自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないもののする。」
 これに対し「職業安定法第4条第6項・労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣法第2条第1号に規定する労働者派遣に該当するものを含まないものとする。
 これは文理解釈すれば、「労働者派遣」も「労働者供給」も他人の指揮命令を受けて労働に従事させることではおなじである。使用については派遣先、供給先ということであろう。
 また、雇用については、派遣元、雇用を含む事実上の支配関係がある先は、供給元となろう。
 さらに、労働者派遣では、「当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないもののする」といっており、出向は含まない。

 結局、“雇用”ということと、事実上の“支配関係”の違いでしかない。これは、どちらも労働力の処分権限を他人に委ねるという点では同じである。いわば行為無価値論的考え方である。これは、例えば、結果無価値の立場であれば、被害者(違法派遣や違法挙給される労働者)の同意によって保護すべき法益は存在しなくなるから、違法性が阻却されるという話にもなり得よう。
 これに対し、行為無価値の立場なら、同意を得た動機・目的等も考慮して、法秩序全体の立場から社会的相当性が認められるか否かで条文を読み、違法性を検討することとなる。

 そうすると、形式上、雇用(例えば派遣)に見せかけておいて、実質的労働関係では派遣元派遣先双方の事実上の支配を行って、このうちの派遣先に指揮命令権があるような労働者派遣(請負・委任契約での偽装請負など)の場合、どう考えても「職安法44条違反(職安則4条各号に照らせば)」というように考えられるが、。

 もっと、労働関係の様態・性質・強弱などを勘案して実質的に如何なる法規範・規律に服せしめるかの基準が問われるべきだと思う。


 その2.

 試論だが、違法な1次派遣をすべて職安法44条違反ではない派遣法違反とすることは不当だと思う。
 
 理由の1つは、労働局でも「契約類型の判断は当事者が用いた用語に拘束されることなく、実質的な内容の判断による」と言っているのである。
 されば、1次の雇用関係について判断する際にも、労働者との契約関係において「意思の合致(所属認識,認容の態度等)」を根拠にすべきと考えられる。
 民法の権利の乱用法理も適用されるから、1次派遣元とその労働者の雇用契約自体が問疑され、揺らぐこととなる。例えば、雇用主ではない他人の指揮命令を受けて労働することを条件に雇用契約を結ぶ場合や、雇用主とその労務提供先である他人の双方の支配を受けることを訳さなければ雇用が実現されない場合などである。このような場合、労働条件等が不明なため雇用契約自体が揺らぐこととなるであろう。
 そうすると、ここで職安法44条違反の可能性が問疑されなければならない。

 理由の2つ目は、既に雇用している労働者を違法に派遣した場合と、新たな顧客(事業場所等)へ偽装請負を行うことを目的として労働者を形式的に雇用することとは、故意責任(構成要件的故意)において区別されるだろう。労務提供先(顧客)が行為支配していれば、そちらが正犯だと評価される。
 始めから他人に貸し出しすることを約して労働者と契約することを“雇用”とは呼ばないだろう。画して、ここでも職安法44条違反の可能性が問疑されなければならない。

 蓋然性として、偽装させようと立ち上げた子会社や中小零細な請負事業者の故意責任よりも、派遣先・供給先が正犯(主犯格)であることが多いのではないだろうか。

 刑罰規定のある「労働法違反」は、刑法総則(1条~8条)の適用がある“罪”であるから、“行為は連帯するが、責任は個別化する”である。派遣法違反も職安法44条違反も必要的共犯であるわけであるし、派遣労働者保護法といっても、違法派遣の被害労働者の雇用継続は実際には無理なのであるから、そのようなお題目(派遣法の正式名称=「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」というもの)だけの法益均衡を計るべきではなく、主観的違法要素を相当取り入れて検討されるべきだと思う。

 端的に言えば、派遣先・供給先の故意責任を問うべきなのである。
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この国の、一部の指導者と教育者について

2016-03-15 22:21:58 | Weblog
 ひとつ前のお題「男女平等を求める公開状に著名な歌手・女優陣らが署名」を書いたばかりのところ、この国の一部の指導者と教育者があまりにも低レベルなので、揚げ足を取るつもりはなかったが、忘却緑として、下記の2例の発言を付記したい。

 1例目・・・「俳優の福山雅治さんと吹石一恵さん結婚の感想として、菅義偉官房長官が「ママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれれば」と発言したそうだ。ーー毎日新聞2015年10月8日 東京朝刊ーー

 2例目・・・大阪市立中の男性校長(61)が2月29日、全校集会で「女性にとって最も大切なことは子供を2人以上産むこと。仕事でキャリアを積む以上に価値がある。子育てをした後に大学で学べばよい」と発言していたことが、市教委関係者への取材で分かった。市教委は「不適切な発言」として処分を検討している。
 今月初め、市教委への匿名の電話で発覚した。市教委の聞き取りに、校長は発言を認める一方、間違ったことは言っていないとの認識を示したという。校長は2015年3月に定年退職したが、再任用されていた。【大久保昂】毎日新聞 3月11日(金)22時46分配信

 さて、何が問題なのかというと、「間違ったことは言っていない」と悪ぶれないことだろう。
 全校集会(生徒の前)での発言だということが問題なわけで、これは個人の思想良心(内心の自由)の問題ではない。公人、それも教育者として言い放った事実を理解していない点において間違っている。自分の考えを述べる機会が欲しければ、自費で街宣車でも買った上で、私的な時間に行うべきだろう。それでもなお、教育者や公務員(大阪市立なのでこの人は公務員だろうから)の政治的基本権や表現の自由といった外形的・啓示的行為は、その職務に内在する制約が課されているわけである。よって、このような考えを自己の思想として他者に表示するには、校長を辞してからでないと認められないと考えられる。発言の濃淡はあるが、同趣旨に受け取れるから、官房長官も同様だと思う。
 教員の職務における国旗国歌の取り扱いも、当にそのような筈(公務員の内部解釈)であった。尤も、この職務内在制約(説)を拡大解釈することには反対だが、最小限度でこの考え方は妥当であろう。そして、この考え方で教員らを規制し得る校長(校長の権限は主として校務であるから、その教育権能にはなおさら控えめさが要求される)の職務権限もある。これを悪用して児童生徒に自説を説くのは行為として卑しい。
 校長も、官房長官も、これでは、自己矛盾も甚だしい。彼らはいつから全体の奉仕者という認識や認容の態度がなくなったのだろう。〝能ありて識なし〟だ。


 ≪追記≫

 問題発言の校長が答弁(発言趣旨説明)をしたので、不平等になるといけないの紹介しておくこととしたい。

 大阪市立中学校の校長が全校集会で「女性にとって最も大切なことは子供を2人以上産むこと」などと発言したとして、市教育委員会が処分を検討している問題で、校長が14日、産経新聞の取材に応じ「出産が義務と言っているわけではない。子供たちに将来、親や保護者、社会への恩返しを考えないといけないよ、という観点から話した」と発言の趣旨を説明した。
 発言したのは市立茨田(まった)北中学校(鶴見区)の寺井寿男校長(61)。寺井校長はさらに、「子育てが煩わしいもの、損なもの、という考えもある現状を変えたい、それだけではないということを、子供たちに伝えたかった」と話した。
 寺井校長は「一部を切り取られ誤解を招かないように」として、2月29日の全校集会での発言要旨を同校のホームページで12日朝から公開したが、同日夜、市教委の削除依頼があり、13日朝に掲載を取り下げた。
・・・とのこと。

 ただ、自分のHPではない、学校のHPで、趣旨説明をすべきではなかったと思う。
 持論を展開するのなら、例えば、自費で新聞広告を出すとか、自分で作ったビラでも駅前で配って、説明をすべきであったように思う。紙を丸めたメガホンでもよいと思う。弁明であっても、公費や公共施設の器具を用いタダで弁明を公表するのは、他人のフンドシであって、過のソクラテスの弁明も、民衆の雑踏にかき消されて効果がなかった(当然だが、古代にはマイクやスピーカーのような電気音響装置はなかった。そのうえ、雑巾のようなぼろをまとい裸足で弁明したという)わけで、この校長のように、自分だけ効果的な方法を使うのは、卑怯の誹りを受けるわけである。

 この学校のHPという〝効果的な弁明〟の、削除を要請した教委の判断は妥当だと思う。
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男女平等を求める公開状に著名な歌手・女優陣らが署名

2016-03-08 23:51:28 | Weblog
 本日3月8日は国際女性デーだが、これを前に、テレビ司会者のオプラ・ウィンフリー、歌手のメアリー・J. ブライジ、女優のシャーリーズ・セロン、メリル・ストリープほか多数の著名芸能人たちが、世界の指導者たちに向けた全世界の男女平等を求める公開状に署名した。との報道があったので以下に照会したい。
 なお、記事は Billboard Japan 3月8日(火)20時10分配信 ヤフーニュースから引用させていただく。
 元URLは http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160308-00035930-exp-musi

 引用開始・・・
3月6日に発表されたこの公開状では、世界で6,200万人の少女たちに教育を受ける権利が認められていないことや、5億人の女性が文字を読めず、155か国に女性を差別する法律があることに言及している。「女性が男性と同等の機会を有する場所は地球上のどこにもありません。どこにもです。男女平等の闘いは世界規模なのです」と述べている。
 署名している著名人にはこの他、エルトン・ジョン、女優のティナ・フェイ、アシュレイ・ジャッド、エイミー・ポーラー、ダナイ・グリラ、コニー・ブリットン、パトリシア・アークエット、俳優のロバート・レッドフォード、コリン・ファレルに、ションダ・ライムズ(脚本家)、モハメド・アリ(元プロボクサー)、シェリル・サンドバーグ(Facebookの最高執行責任者)、ショーン・パーカー(Facebookの初代CEOで実業家)などがいる。この活動は、U2のボノが共同設立者となり極貧と病気の撲滅のために設立したONE Campaign(ワン・キャンペーン)が企画したものだ。
 ブロードウェイの舞台『Eclipsed』の脚本を務めたダナイ・グリラはインタビューで、「この時代においても、世界でもっとも貧しく恵まれないのは、明らかに女性や少女たちです。世界の女性や少女たちの光と可能性は閉ざされているのです」とコメントしている。
 8日の“国際女性デー”を前にして発表されたこの公開状では、少女たちと女性のエイズや栄養不良との闘いや、女性が経済的権限を持つことを支援するよう指導者たちに呼びかけている。
 長年、女性を擁護してきたグリラは、8日に連邦議会に赴いて議員たちと面会する予定だ。
 グリラは、「もうたくさんです。このギャップを埋めなくてはなりませんし、我々は一丸となって集中的に取り組まなくてはならず、それには、変化をもたらす力のある世界のリーダーたちと直接話す必要があるのです。性別による抑圧構造の中にいる人々に発言権を与え、できる限りのことをして闘うことは私自身の延長線上にあるものなのです」と話す。
 なお、一緒に添えられた“Poverty Is Sexist 2016(貧困は性差別)”と題するレポートでは、「あまりにも多くの国で、女性および貧しく生まれることは不平等・抑圧・貧困の終身刑を意味しており、多くの場合は死刑宣告をも意味します」と述べている。

・・・引用終わり。

 関連して、あらためて「女性差別撤廃条約」を読んでみたいと思う(なお、1979年の第34回国連総会において採択され、1981年に発効し、日本は1985年に締結)。なお前文が大事なので、そこも紹介したい。直訳に近いため句点がないので、適当に段組みをしてみた。

 
 この条約の締約国は、国際連合憲章が基本的人権、人間の尊厳及び価値並びに男女の権利の平等に関する信念を改めて確認していることに留意し、
世界人権宣言が、差別は容認することができないものであるとの原則を確認していること、並びにすべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳及び権利について平等であること並びにすべての人は性による差別その他のいかなる差別もなしに同宣言に掲げるすべての権利及び自由を享有することができることを宣明していることに留意し、
 人権に関する国際規約の締約国がすべての経済的、社会的、文化的、市民的及び政治的権利の享有について男女に平等の権利を確保する義務を負つていることに留意し、国際連合及び専門機関の主催の下に各国が締結した男女の権利の平等を促進するための国際条約を考慮し、
 更に、国際連合及び専門機関が採択した男女の権利の平等を促進するための決議、宣言及び勧告に留意し、
 しかしながら、これらの種々の文書にもかかわらず女子に対する差別が依然として広範に存在していることを憂慮し、女子に対する差別は、権利の平等の原則及び人間の尊厳の尊重の原則に反するものであり、女子が男子と平等の条件で自国の政治的、社会的、経済的及び文化的活動に参加する上で障害となるものであり、社会及び家族の繁栄の増進を阻害するものであり、
 また、女子の潜在能力を自国及び人類に役立てるために完全に開発することを一層困難にするものであることを想起し、窮乏の状況においては、女子が食糧、健康、教育、雇用のための訓練及び機会並びに他の必要とするものを享受する機会が最も少ないことを憂慮し、衡平及び正義に基づく新たな国際経済秩序の確立が男女の平等の促進に大きく貢献することを確信し、
 アパルトヘイト、あらゆる形態の人種主義、人種差別、植民地主義、新植民地主義、侵略、外国による占領及び支配並びに内政干渉の根絶が男女の権利の完全な享有に不可欠であることを強調し、国際の平和及び安全を強化し、国際緊張を緩和し、すべての国(社会体制及び経済体制のいかんを問わない。)の間で相互に協力し、
 全面的かつ完全な軍備縮小を達成し、特に厳重かつ効果的な国際管理の下での核軍備の縮小を達成し、諸国間の関係における正義、平等及び互恵の原則を確認し、外国の支配の下、植民地支配の下又は外国の占領の下にある人民の自決の権利及び人民の独立の権利を実現し並びに国の主権及び領土保全を尊重することが、社会の進歩及び発展を促進し、ひいては、男女の完全な平等の達成に貢献することを確認し、国の完全な発展、世界の福祉及び理想とする平和は、あらゆる分野において女子が男子と平等の条件で最大限に参加することを必要としていることを確信し、
 家族の福祉及び社会の発展に対する従来完全には認められていなかつた女子の大きな貢献、母性の社会的重要性並びに家庭及び子の養育における両親の役割に留意し、
 また、出産における女子の役割が差別の根拠となるべきではなく、子の養育には男女及び社会全体が共に責任を負うことが必要であることを認識し、
 社会及び家庭における男子の伝統的役割を女子の役割とともに変更することが男女の完全な平等の達成に必要であることを認識し、
 女子に対する差別の撤廃に関する宣言に掲げられている諸原則を実施すること及びこのために女子に対するあらゆる形態の差別を撤廃するための必要な措置をとることを決意して、次のとおり協定した。

第一部

第一条
 この条約の適用上、「女子に対する差別」とは、性に基づく区別、排除又は制限であつて、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、女子(婚姻をしているかいないかを問わない。)が男女の平等を基礎として人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする効果又は目的を有するものをいう。

第二条
 締約国は、女子に対するあらゆる形態の差別を非難し、女子に対する差別を撤廃する政策をすべての適当な手段により、かつ、遅滞なく追求することに合意し、及びこのため次のことを約束する。
  (a)  男女の平等の原則が自国の憲法その他の適当な法令に組み入れられていない場合にはこれを定め、かつ、男女の平等の原則の実際的な実現を法律その他の適当な手段により確保すること。
  (b)  女子に対するすべての差別を禁止する適当な立法その他の措置(適当な場合には制裁を含む。)をとること。
  (c)  女子の権利の法的な保護を男子との平等を基礎として確立し、かつ、権限のある自国の裁判所その他の公の機関を通じて差別となるいかなる行為からも女子を効果的に保護することを確保すること。
  (d)  女子に対する差別となるいかなる行為又は慣行も差し控え、かつ、公の当局及び機関がこの義務に従つて行動することを確保すること。
  (e)  個人、団体又は企業による女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとること。
  (f)  女子に対する差別となる既存の法律、規則、慣習及び慣行を修正し又は廃止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとること。
  (g)  女子に対する差別となる自国のすべての刑罰規定を廃止すること。

第三条
 締約国は、あらゆる分野、特に、政治的、社会的、経済的及び文化的分野において、女子に対して男子との平等を基礎として人権及び基本的自由を行使し及び享有することを保障することを目的として、女子の完全な能力開発及び向上を確保するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとる。

第四条
  1  締約国が男女の事実上の平等を促進することを目的とする暫定的な特別措置をとることは、この条約に定義する差別と解してはならない。ただし、その結果としていかなる意味においても不平等な又は別個の基準を維持し続けることとなつてはならず、これらの措置は、機会及び待遇の平等の目的が達成された時に廃止されなければならない。
  2  締約国が母性を保護することを目的とする特別措置(この条約に規定する措置を含む。)をとることは、差別と解してはならない。

第五条
 締約国は、次の目的のためのすべての適当な措置をとる。
  (a)  両性のいずれかの劣等性若しくは優越性の観念又は男女の定型化された役割に基づく偏見及び慣習その他あらゆる慣行の撤廃を実現するため、男女の社会的及び文化的な行動様式を修正すること。
  (b)  家庭についての教育に、社会的機能としての母性についての適正な理解並びに子の養育及び発育における男女の共同責任についての認識を含めることを確保すること。あらゆる場合において、子の利益は最初に考慮するものとする。

第六条
 締約国は、あらゆる形態の女子の売買及び女子の売春からの搾取を禁止するためのすべての適当な措置(立法を含む。)をとる。

第二部

第七条
 締約国は、自国の政治的及び公的活動における女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、女子に対して男子と平等の条件で次の権利を確保する。
  (a)  あらゆる選挙及び国民投票において投票する権利並びにすべての公選による機関に選挙される資格を有する権利
  (b)  政府の政策の策定及び実施に参加する権利並びに政府のすべての段階において公職に就き及びすべての公務を遂行する権利
  (c)  自国の公的又は政治的活動に関係のある非政府機関及び非政府団体に参加する権利

第八条
 締約国は、国際的に自国政府を代表し及び国際機関の活動に参加する機会を、女子に対して男子と平等の条件でかついかなる差別もなく確保するためのすべての適当な措置をとる。

第九条
  1  締約国は、国籍の取得、変更及び保持に関し、女子に対して男子と平等の権利を与える。締約国は、特に、外国人との婚姻又は婚姻中の夫の国籍の変更が、自動的に妻の国籍を変更し、妻を無国籍にし又は夫の国籍を妻に強制することとならないことを確保する。
  2  締約国は、子の国籍に関し、女子に対して男子と平等の権利を与える。

第三部

第十条
 締約国は、教育の分野において、女子に対して男子と平等の権利を確保することを目的として、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保することを目的として、女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。
  (a)  農村及び都市のあらゆる種類の教育施設における職業指導、修学の機会及び資格証書の取得のための同一の条件。このような平等は、就学前教育、普通教育、技術教育、専門教育及び高等技術教育並びにあらゆる種類の職業訓練において確保されなければならない。
  (b)  同一の教育課程、同一の試験、同一の水準の資格を有する教育職員並びに同一の質の学校施設及び設備を享受する機会
  (c)  すべての段階及びあらゆる形態の教育における男女の役割についての定型化された概念の撤廃を、この目的の達成を助長する男女共学その他の種類の教育を奨励することにより、また、特に、教材用図書及び指導計画を改訂すること並びに指導方法を調整することにより行うこと。
  (d)  奨学金その他の修学援助を享受する同一の機会
  (e)  継続教育計画(成人向けの及び実用的な識字計画を含む。)、特に、男女間に存在する教育上の格差をできる限り早期に減少させることを目的とした継続教育計画を利用する同一の機会
  (f)  女子の中途退学率を減少させること及び早期に退学した女子のための計画を策定すること。
  (g)  スポ-ツ及び体育に積極的に参加する同一の機会
  (h)  家族の健康及び福祉の確保に役立つ特定の教育的情報(家族計画に関する情報及び助言を含む。)を享受する機会

第十一条
  1  締約国は、男女の平等を基礎として同一の権利、特に次の権利を確保することを目的として、雇用の分野における女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。
  (a)  すべての人間の奪い得ない権利としての労働の権利
  (b)  同一の雇用機会(雇用に関する同一の選考基準の適用を含む。)についての権利
  (c)  職業を自由に選択する権利、昇進、雇用の保障ならびに労働に係るすべての給付及び条件についての権利並びに職業訓練及び再訓練(見習、上級職業訓練及び継続的訓練を含む。)を受ける権利
  (d)  同一価値の労働についての同一報酬(手当を含む。)及び同一待遇についての権利並びに労働の質の評価に関する取扱いの平等についての権利
  (e)  社会保障(特に、退職、失業、傷病、障害、老齢その他の労働不能の場合における社会保障)についての権利及び有給休暇についての権利
  (f)  作業条件に係る健康の保護及び安全(生殖機能の保護を含む。)についての権利
  2  締約国は、婚姻又は母性を理由とする女子に対する差別を防止し、かつ、女子に対して実効的な労働の権利を確保するため、次のことを目的とする適当な措置をとる。
  (a)  妊娠又は母性休暇を理由とする解雇及び婚姻をしているかいないかに基づく差別的解雇を制裁を課して禁止すること。
  (b)  給料又はこれに準ずる社会的給付を伴い、かつ、従前の雇用関係、先任及び社会保障上の利益の喪失を伴わない母性休暇を導入すること。
  (c)  親が家庭責任と職業上の責務及び社会的活動への参加とを両立させることを可能とするために必要な補助的な社会的サ-ビスの提供を、特に保育施設網の設置及び充実を促進することにより奨励すること。
  (d)  妊娠中の女子に有害であることが証明されている種類の作業においては、当該女子に対して特別の保護を与えること。
  3  この条に規定する事項に関する保護法令は、科学上及び技術上の知識に基づき定期的に検討するものとし、必要に応じて、修正し、廃止し、又はその適用を拡大する。

第十二条

  1  締約国は、男女の平等を基礎として保健サ-ビス(家族計画に関連するものを含む。)を享受する機会を確保することを目的として、保健の分野における女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。
  2  1の規定にかかわらず、締約国は、女子に対し、妊娠、分娩及び産後の期間中の適当なサ-ビス(必要な場合には無料にする。)並びに妊娠及び授乳の期間中の適当な栄養を確保する。

第十三条
 締約国は、男女の平等を基礎として同一の権利、特に次の権利を確保することを目的として、他の経済的及び社会的活動の分野における女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとる。
  (a)  家族給付についての権利
  (b)  銀行貸付け、抵当その他の形態の金融上の信用についての権利
  (c)  レクリエ-ション、スポ-ツ及びあらゆる側面における文化的活動に参加する権利

第十四条
  1  締約国は、農村の女子が直面する特別の問題及び家族の経済的生存のために果たしている重要な役割(貨幣化されていない経済の部門における労働を含む。)を考慮に入れるものとし、農村の女子に対するこの条約の適用を確保するためのすべての適当な措置をとる。
  2  締約国は、男女の平等を基礎として農村の女子が農村の開発に参加すること及びその開発から生ずる利益を受けることを確保することを目的として、農村の女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、これらの女子に対して次の権利を確保する。
  (a)  すべての段階における開発計画の作成及び実施に参加する権利
  (b)  適当な保健サ-ビス(家族計画に関する情報、カウンセリング及びサ-ビスを含む。)を享受する権利
  (c)  社会保障制度から直接に利益を享受する権利
  (d)  技術的な能力を高めるために、あらゆる種類(正規であるかないかを問わない。)の訓練及び教育(実用的な識字に関するものを含む。)並びに、特に、すべての地域サ-ビス及び普及サ-ビスからの利益を享受する権利
  (e)  経済分野における平等な機会を雇用又は自営を通じて得るために、自助的集団及び協同組合を組織する権利
  (f)  あらゆる地域活動に参加する権利
  (g)  農業信用及び貸付け、流通機構並びに適当な技術を利用する権利並びに土地及び農地の改革並びに入植計画において平等な待遇を享受する権利
  (h)  適当な生活条件(特に、住居、衛生、電力及び水の供給、運輸並びに通信に関する条件)を享受する権利

第四部

第十五条
  1  締約国は、女子に対し、法律の前の男子との平等を認める。
  2  締約国は、女子に対し、民事に関して男子と同一の法的能力を与えるものとし、また、この能力を行使する同一の機会を与える。特に、締約国は、契約を締結し及び財産を管理することにつき女子に対して男子と平等の権利を与えるものとし、裁判所における手続のすべての段階において女子を男子と平等に取り扱う。
  3  締約国は、女子の法的能力を制限するような法的効果を有するすべての契約及び他のすべての私的文書(種類のいかんを問わない。)を無効とすることに同意する。
  4  締約国は、個人の移動並びに居所及び住所の選択の自由に関する法律において男女に同一の権利を与える。

第十六条
  1  締約国は、婚姻及び家族関係に係るすべての事項について女子に対する差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとるものとし、特に、男女の平等を基礎として次のことを確保する。
  (a)  婚姻をする同一の権利
  (b)  自由に配偶者を選択し及び自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利
  (c)  婚姻中及び婚姻の解消の際の同一の権利及び責任
  (d)  子に関する事項についての親(婚姻をしているかいないかを問わない。)としての同一の権利及び責任。あらゆる場合において、子の利益は至上である。
  (e)  子の数及び出産の間隔を自由にかつ責任をもって決定する同一の権利並びにこれらの権利の行使を可能にする情報、教育及び手段を享受する同一の権利
  (f)  子の後見及び養子縁組又は国内法令にこれらに類する制度が存在する場合にはその制度に係る同一の権利及び責任。あらゆる場合において、子の利益は至上である。
  (g)  夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)
  (h)  無償であるか有償であるかを問わず、財産を所有し、取得し、運用し、管理し、利用し及び処分することに関する配偶者双方の同一の権利
  2  児童の婚約及び婚姻は、法的効果を有しないものとし、また、婚姻最低年齢を定め及び公の登録所への婚姻の登録を義務付けるためのすべての必要な措置(立法を含む。)がとられなければならない。

第五部

第十七条
1  この条約の実施に関する進捗状況を検討するために、女子に対する差別の撤廃に関する委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、この条約の効力発生の時は十八人の、三十五番目の締約国による批准又は加入の後は二十三人の徳望が高く、かつ、この条約が対象とする分野において十分な能力を有する専門家で構成する。委員は、締約国の国民の中から締約国により選出されるものとし、個人の資格で職務を遂行する。その選出に当たっては、委員の配分が地理的に衡平に行われること並びに異なる文明形態及び主要な法体系が代表されることを考慮に入れる。
  2  委員会の委員は、締約国により指名された者の名簿の中から秘密投票により選出される。各締約国は、自国民の中から一人を指名することができる。
  3  委員会の委員の最初の選挙は、この条約の効力発生の日の後六箇月を経過した時に行う。国際連合事務総長は、委員会の委員の選挙の日の遅くとも三箇月前までに、締約国に対し、自国が指名する者の氏名を二箇月以内に提出するよう書簡で要請する。同事務総長は、指名された者のアルファベット順による名簿(これらの者を指名した締約国名を表示した名簿とする。)を作成し、締約国に送付する。
  4  委員会の委員の選挙は、国際連合事務総長により国際連合本部に招集される締約国の会合において行う。この会合は、締約国の三分の二をもって定足数とする。この会合においては、出席しかつ投票する締約国の代表によって投じられた票の最多数で、かつ、過半数の票を得て指名された者をもって委員会に選出された委員とする。
  5  委員会の委員は、四年の任期で選出される。ただし、最初の選挙において選出された委員のうち九人の委員の任期は、二年で終了するものとし、これらの九人の委員は、最初の選挙の後直ちに、委員会の委員長によりくじ引きで選ばれる。
  6  委員会の五人の追加的な委員の選挙は、三十五番目の批准又は加入の後、2から4までの規定に従って行う。この時に選出された追加的な委員のうち二人の委員の任期は、二年で終了するものとし、これらの二人の委員は、委員会の委員長によりくじ引で選ばれる。
  7  締約国は、自国の専門家が委員会の委員としての職務を遂行することができなくなった場合には、その空席を補充するため、委員会の承認を条件として自国民の中から他の専門家を任命する。
  8  委員会の委員は、国際連合総会が委員会の任務の重要性を考慮して決定する条件に従い、同総会の承認を得て、国際連合の財源から報酬を受ける。
  9  国際連合事務総長は、委員会がこの条約に定める任務を効果的に遂行するために必要な職員及び便益を提供する。

第十八条
  1  締約国は、次の場合に、この条約の実施のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する報告を、委員会による検討のため、国際連合事務総長に提出することを約束する。
  (a)  当該締約国についてこの条約が効力を生ずる時から一年以内
  (b)  その後は少なくとも四年ごと、更には委員会が要請するとき。
  2  報告には、この条約に基づく義務の履行の程度に影響を及ぼす要因及び障害を記載することができる。

第十九条
  1  委員会は、手続規則を採択する。
  2  委員会は、役員を二年の任期で選出する。

第二十条
  1  委員会は、第十八条の規定により提出される報告を検討するために原則として毎年二週間を超えない期間会合する。
  2  委員会の会合は、原則として、国際連合本部又は委員会が決定する他の適当な場所において開催する。

第二十一条
  1  委員会は、その活動につき経済社会理事会を通じて毎年国際連合総会に報告するものとし、また、締約国から得た報告及び情報の検討に基づく提案及び一般的な性格を有する勧告を行うことができる。これらの提案及び一般的な性格を有する勧告は、締約国から意見がある場合にはその意見とともに、委員会の報告に記載する。
  2  国際連合事務総長は、委員会の報告を、情報用として、婦人の地位委員会に送付する。

第二十二条
 専門機関は、その任務の範囲内にある事項に関するこの条約の規定の実施についての検討に際し、代表を出す権利を有する。委員会は、専門機関に対し、その任務の範囲内にある事項に関するこの条約の実施について報告を提出するよう要請することができる。

第六部

第二十三条
 この条約のいかなる規定も、次のものに含まれる規定であって男女の平等の達成に一層貢献するものに影響を及ぼすものではない。
  (a)  締約国の法令
  (b)  締約国について効力を有する他の国際条約又は国際協定

第二十四条
 締約国は、自国においてこの条約の認める権利の完全な実現を達成するためのすべての必要な措置をとることを約束する。

第二十五条
  1  この条約は、すべての国による署名のために開放しておく。
  2  国際連合事務総長は、この条約の寄託者として指定される。
  3  この条約は、批准されなければならない。批准書は、国際連合事務総長に寄託する。
  4  この条約は、すべての国による加入のために開放しておく。加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することによって行う。

第二十六条
  1  いずれの締約国も、国際連合事務総長にあてた書面による通告により、いつでもこの条約の改正を要請することができる。
  2  国際連合総会は、1の要請に関してとるべき措置があるときは、その措置を決定する。

第二十七条
  1  この条約は、二十番目の批准書又は加入書が国際連合事務総長に寄託された日の後三十日目の日に効力を生ずる。
  2  この条約は、二十番目の批准書又は加入書が寄託された後に批准し又は加入する国については、その批准書又は加入書が寄託された日の後三十日目の日に効力を生ずる。

第二十八条
  1  国際連合事務総長は、批准又は加入の際に行われた留保の書面を受領し、かつ、すべての国に送付する。
  2  この条約の趣旨及び目的と両立しない留保は、認められない。
  3  留保は、国際連合事務総長にあてた通告によりいつでも撤回することができるものとし、同事務総長は、その撤回をすべての国に通報する。このようにして通報された通告は、受領された日に効力を生ずる。

第二十九条
  1  この条約の解釈又は適用に関する締約国間の紛争で交渉によって解決されないものは、いずれかの紛争当事国の要請により、仲裁に付される。仲裁の要請の日から六箇月以内に仲裁の組織について紛争当事国が合意に達しない場合には、いずれの紛争当事国も、国際司法裁判所規程に従って国際司法裁判所に紛争を付託することができる。
  2  各締約国は、この条約の署名若しくは批准又はこの条約への加入の際に、1の規定に拘束されない旨を宣言することができる。他の締約国は、そのような留保を付した締約国との関係において1の規定に拘束されない。
  3  2の規定に基づいて留保を付した締約国は、国際連合事務総長にあてた通告により、いつでもその留保を撤回することができる。

第三十条
 この条約は、アラビア語、中国語、英語、フランス語、ロシア語及びスペイン語をひとしく正文とし、国際連合事務総長に寄託する。

 以上の証拠として、下名は、正当に委任を受けてこの条約に署名した。



 外務省で条約ができるまでの経緯を紹介しているので、これも参照されたい。http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/3a_001.html

 女性差別撤廃を目的としている条約だが、女子・妻・母親・親・子という単語をすべて「人間」と言い代えて読むこともできる。そうすると、当に、人間の尊厳と社会正義実現のことを言っているように思われる。


 ≪追記≫ 揚げ足を取るつもりはなかったが、この国の指導者と教育者があまりにも低レベル(尤も、ブログを書く自分のことは棚に上げ??・・)なので、忘却緑として、下記の2例の発言を付記したい。

 1例目・・・「俳優の福山雅治さんと吹石一恵さん結婚の感想として、菅義偉官房長官が「ママさんたちが『一緒に子どもを産みたい』という形で国家に貢献してくれれば」と発言したそうだ。ーー毎日新聞2015年10月8日 東京朝刊ーー

 2例目・・・大阪市立中の男性校長(61)が2月29日、全校集会で「女性にとって最も大切なことは子供を2人以上産むこと。仕事でキャリアを積む以上に価値がある。子育てをした後に大学で学べばよい」と発言していたことが、市教委関係者への取材で分かった。市教委は「不適切な発言」として処分を検討している。
 今月初め、市教委への匿名の電話で発覚した。市教委の聞き取りに、校長は発言を認める一方、間違ったことは言っていないとの認識を示したという。校長は2015年3月に定年退職したが、再任用されていた。【大久保昂】毎日新聞 3月11日(金)22時46分配信

 さて、何が問題なのかというと、「間違ったことは言っていない」と悪ぶれないことだろう。
 全校集会(生徒の前)での発言だということが問題なわけで、これは個人の思想良心(内心の自由)の問題ではない。公人、それも教育者として言い放った事実を理解していない点において間違っている。自分の考えを述べる機会が欲しければ、自費で街宣車でも買った上で、私的な時間に行うべきだろう。それでもなお、教育者や公務員(大阪市立なのでこの人は公務員だろうから)の政治的基本権や表現の自由といった外形的・啓示的行為は、その職務に内在する制約が課されているわけである。よって、このような考えを自己の思想として他者に表示するには、校長を辞してからでないと認められないと考えられる。発言の濃淡はあるが、同趣旨に受け取れるから、官房長官も同様だと思う。
 教員の職務における国旗国歌の取り扱いも、当にそのような筈(公務員の内部解釈)であった。尤も、この職務内在制約(説)を拡大解釈することには反対だが、最小限度でこの考え方は妥当であろう。そして、この考え方で教員らを規制し得る校長(校長の権限は主として校務であるから、その教育権能にはなおさら控えめさが要求される)の職務権限もある。これを悪用して児童生徒に自説を説くのは行為として卑しい。
 校長も、官房長官も、これでは、自己矛盾も甚だしい。彼らはいつから全体の奉仕者という認識や認容の態度がなくなったのだろう。〝能ありて識なし〟だ。
 
 
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労働者派遣法違反のメルクマール

2015-12-28 22:43:46 | Weblog
 本日、某官公庁から問い合わせがあったので、と言っても、小生の方から委託業務の方法について如何なものか?と疑問を呈したことが発端であったのだが、下記にその要点を整理したいと思う。

 まず、労働者派遣の定義は、労働者派遣法(「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」)の、下記の条文である。

 第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  労働者派遣 自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。
二  派遣労働者 事業主が雇用する労働者であつて、労働者派遣の対象となるものをいう。
三  労働者派遣事業 労働者派遣を業として行うことをいう。
四  紹介予定派遣 労働者派遣のうち、第五条第一項の許可を受けた者(以下「派遣元事業主」という。)が労働者派遣の役務の提供の開始前又は開始後に、当該労働者派遣に係る派遣労働者及び当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を受ける者(第三章第四節を除き、以下「派遣先」という。)について、職業安定法 その他の法律の規定による許可を受けて、又は届出をして、職業紹介を行い、又は行うことを予定してするものをいい、当該職業紹介により、当該派遣労働者が当該派遣先に雇用される旨が、当該労働者派遣の役務の提供の終了前に当該派遣労働者と当該派遣先との間で約されるものを含むものとする。

 次に、上記条文の解釈として、厚生労働省から発せられている「基準」(なおこの基準は通達《下命》の形式である。念のため)が下記のものである。

 労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準
(昭和61年労働省告示第37号)
(最終改正 平成24年厚生労働省告示第518号)
第一条 この基準は、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号。以下「法」という。)の施行に伴い、法の適正な運用を確保するためには労働者派遣事業(法第二条第三号に規定する労働者派遣事業をいう。以下同じ。)に該当するか否かの判断を的確に行う必要があることに鑑み、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分を明らかにすることを目的とする。
第二条 請負の形式による契約により行う業務に自己の雇用する労働者を従事させることを業として行う事業主であつても、当該事業主が当該業務の処理に関し次の各号のいずれにも該当する場合を除き、労働者派遣事業を行う事業主とする。
一 次のイ、ロ及びハのいずれにも該当することにより自己の雇用する労働者の労働力を自ら直接利用するものであること。
イ 次のいずれにも該当することにより業務の遂行に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
(1) 労働者に対する業務の遂行方法に関する指示その他の管理を自ら行うこと。
(2) 労働者の業務の遂行に関する評価等に係る指示その他の管理を自ら行うこと。
ロ 次のいずれにも該当することにより労働時間等に関する指示その他の管理を自ら行うものであること。
(1) 労働者の始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇等に関する指示その他の管理(これらの単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
(2) 労働者の労働時間を延長する場合又は労働者を休日に労働させる場合における指示その他の管理(これらの場合における労働時間等の単なる把握を除く。)を自ら行うこと。
ハ 次のいずれにも該当することにより企業における秩序の維持、確保等のための指示その他の管理を自ら行うものであること。
(1) 労働者の服務上の規律に関する事項についての指示その他の管理を自ら行うこと。
(2) 労働者の配置等の決定及び変更を自ら行うこと。
二 次のイ、ロ及びハのいずれにも該当することにより請負契約により請け負つた業務を自己の業務として当該契約の相手方から独立して処理するものであること。
イ 業務の処理に要する資金につき、すべて自らの責任の下に調達し、かつ、支弁すること。
ロ 業務の処理について、民法、商法その他の法律に規定された事業主としてのすべての責任を負うこと。
ハ 次のいずれかに該当するものであつて、単に肉体的な労働力を提供するものでないこと。
(1) 自己の責任と負担で準備し、調達する機械、設備若しくは器材(業務上必要な簡易な工具を除く。)又は材料若しくは資材により、業務を処理すること。
2
(2) 自ら行う企画又は自己の有する専門的な技術若しくは経験に基づいて、業務を処理すること。
第三条 前条各号のいずれにも該当する事業主であつても、それが法の規定に違反することを免れるため故意に偽装されたものであつて、その事業の真の目的が法第二条第一号に規定する労働者派遣を業として行うことにあるときは、労働者派遣事業を行う事業主であることを免れることができない。
 
 以上、元はこれ(「37号告示」)http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/h241218-01.pdf

 で、さらにこれを一般向けに下記の2つの「質疑応答集」などを公開している。
 ○第1集 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/haken-shoukai03.pdf
 ○第2集 http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/dl/haken-shoukai03_02.pdf

 なお上記URL元は「厚生労働省HP」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/hakenhourei.html
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/gigi_outou01.html などからご確認されたい。

 あと念のため、「労働者派遣法」条文 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S60/S60HO088.html
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妊娠を理由に女性職員を解雇し是正勧告に従わなかった茨城県牛久市のクリニックの実名を、厚労省が公表

2015-09-06 23:14:04 | Weblog

 前回のエントリで、労働局の調停に出てこないとは、日航、大したツワモノだと思うが、これよりも、さらにツワモノが居たようだ。
 以下は産経(産経新聞 9月4日(金)16時17分配信 )より引用・・・

・・・妊娠を理由に女性職員を解雇し、国の是正勧告に従わなかったとして、厚生労働省は4日、茨城県牛久市のクリニックの実名を公表した。男女雇用機会均等法に基づきマタニティーハラスメント(マタハラ)をした事業主の実名を公表するのは初めて。
 厚労省によると、是正勧告に従わなかったのは、牛久市のクリニック「牛久皮膚科医院」(安良岡勇院長)。安良岡院長は2月、正職員の20代の看護助手が妊娠したと報告したところ、約2週間後に突然、「明日から来なくていい。妊婦はいらない」と退職を迫ったという。看護助手は「妊娠したばかりで、まだ働きたい」と訴えたが、院長が認めなかったため、茨城労働局に相談。
 労働局は妊娠や出産を理由に解雇することは男女雇用機会均等法に違反するとして、口頭や文書で3回にわたって是正勧告したが、院長は解雇を撤回しなかった。7月には塩崎恭久厚労相が大臣による初の勧告を行ったが、「妊婦はいらない」「(男女雇用機会)均等法を守るつもりはない」などと応じなかった。
 男女雇用機会均等法は、妊娠を理由に女性労働者を解雇や降格などの不利益な扱いをすることを禁止している。違反した場合は労働局長や厚労大臣による勧告などの行政指導が行われるが、罰則はない。
 同クリニックは「院長の体調不良により休診中」などとして、取材に応じていない。・・・

・・・というもの。

 で、その厚労省の公表とは下記のもの。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000096409.html
報道関係者各位

男女雇用機会均等法第30条に基づく公表について
~初めての公表事案、妊娠を理由とする解雇~
 男女雇用機会均等法(以下「法」という)第30条において、法第29条第1項に基づく厚生労働大臣による勧告に従わない場合、その旨を公表できる制度が設けられていますが、このほど、初の事案が生じましたので、下記のとおり公表します。

事業所名 : 医療法人医心会 牛久皮膚科医院

代表者 : 理事長 安良岡 勇

所在地 : 茨城県牛久市牛久280 エスカード牛久4階

違反条項 : 法第9条第3項

法違反に係る事実: 妊娠を理由に女性労働者を解雇し、解雇を撤回 しない。

指導経緯 : 平成27年3月19日 茨城労働局長による助言
        平成27年3月25日 茨城労働局長による指導
        平成27年5月13日 茨城労働局長による勧告
        平成27年7月9日 厚生労働大臣による勧告

【参考:男女雇用機会均等法第9条第3項について】

法第9条第3項では、妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益取扱いを禁止しています。

○妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの例

1 解雇すること。

2 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。

3 あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。

4 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。

5 降格させること。

6 就業環境を害すること。

7 不利益な自宅待機を命ずること。

8 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。

9 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと。

10 不利益な配置の変更を行うこと。

11 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと。


・・・以上、厚労省HPより引用。

 なお、下記のような議論を同紙(産経デジタル)では掲載しているので引用させていただく・・・

・・・ 【日本の議論】http://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/150421/lif15042110000001-n1.html

 妊娠や出産を理由に職場で不利益な取り扱いを受けるマタニティーハラスメント(マタハラ)が社会問題化する中、被害者支援団体に女性から賛否両論が寄せられている。「女性が安心して働ける社会になってほしい」といった激励がある一方、「同性としていい迷惑」という声や、企業の女性採用への影響を懸念する意見も。団体が3月に公表した調査結果では、マタハラを受けた相手として「女性上司」が22%に上っており、「同性の無理解」という一面が浮かび上がった。(滝口亜希)

■「権利ばかり主張」…被害者団体に厳しい意見

 「妊娠したら今まで通りの仕事ができなくなるのが目に見えてるんだから、異動も降格も当たり前」

 「妊娠したら問答無用で特別扱いすべきだ、と思う人を理解できません」

 「私の夫の部下は妊娠して突然欠勤し、大変な目に遭いました」

 「出産に対して理解のある企業に入る努力もせず、女性であることを利用して権利ばかりを主張するのは、同じ女性として恥ずかしい限りです」

 マタハラ被害者らでつくる「マタハラNet」には女性からの厳しい意見が相次いで寄せられている。

 きっかけは昨年10月に最高裁が判決で「妊娠による降格などの不利益な扱いは原則として違法」との初判断を示した訴訟だ。昨年7月の団体発足から約5カ月間で、女性を名乗り、活動を批判する声が少なくとも10件以上寄せられた。

 マタハラ問題が注目されることで、企業が女性の採用を控えることを心配する意見もある。
 性別は明記されていなかったが、娘を持つ親から寄せられたのは「今後の女性の働く場所や就職活動などに影響するのではありませんか」というコメント。娘が就職活動中という男性は最高裁判決について「正直言えば、それほど優秀ではない娘を持つ父親としては、こんなに大騒ぎしてほしくなかったというのが本音です」とつづった。

 また、性別は不明だが「私の会社ではあなた方の活動が原因で女子社員の募集を当面打ち切ることになりました。本気で働きたいという女性にとっても迷惑千万な話だとは思いませんか?」という意見もあった。

■問題の根深さは「女性が一枚岩でない」

 「女性が一枚岩でないところがマタハラ問題の根深さ」と指摘するのは、マタハラNetの小酒部(おさかべ)さやか代表(37)。小酒部さん自身も、マタハラ被害に遭った経験を持つ。

 「契約社員は時短勤務ができない」

 「時短勤務ができないわけだから、どうしても仕事したい場合はアルバイトで来るしかないんじゃないの」

 契約社員として雑誌の編集に関わっていた小酒部さんは、2度目の妊娠中、上司から退職勧奨を受けた。

 「また何かがあって、穴空けられたり、現に今回も迷惑掛けていることは掛けているわけよ。実際に」

 約4時間に及んだ自宅での上司とのやり取りでは、当時、小酒部さんが切迫流産と診断され、約1週間、自宅静養していたことを「迷惑」と受け止めているかのような発言もあった。
 1度目の妊娠は、担当業務が忙しく、周囲に妊娠していることを言い出せないまま、深夜0時近くまでの長時間勤務を続けるうちに流産。2度目の妊娠でも、「おなかの赤ちゃんがどうなるか分からない中、仕事か妊娠かの選択を迫られ、非常に酷だった」(小酒部さん)という。結局、契約を更新してもらうために無理をして通常出社を続けたところ、再び流産した。

■マタハラドミノ倒し

 小酒部さんが立ち上げたマタハラNetでは、寄せられた被害体験を共有するため、ホームページ上などに公開。さらに、マタハラを(1)昭和の価値観押し付け型(2)いじめ型(3)パワハラ型(4)追い出し型-の4類型に分類し、被害実態を発信している。

 中でも小酒部さんが強調するのが、マタハラに端を発した悪循環である「マタハラドミノ倒し」だ。

 妊娠・出産を理由に職場を解雇されると、子供を保育園に入れることができなくなり、子供に手がかからなくなるまで10年近く働けない。収入が絶たれ、経済的にも困窮する…。

 「マタハラを受けることで、生活基盤が揺らぐ。1人の女性社員にマタハラをすると、それを見た他の女性たちは『自分もやられる』と感じるため、晩婚・晩産・少子化につながっていく」とマタハラの“伝染”にも警鐘を鳴らす。

■批判は「葛藤の裏返し」

 一方、マタハラは必ずしも「男性対女性」という構図ばかりではない。

 マタハラNetが被害女性186人を対象に調査を実施し、3月に公表した結果では、被害を受けた相手(複数回答)として「直属の男性上司」が53%で最多だったのに対し、「直属の女性上司」が22%、「女性の同僚」が18%だった。

 労働問題に詳しく、調査に携わった圷(あくつ)由美子弁護士(40)は「産休や育休をとるときに女性から心ない言葉をかけられるケースは多い。『自分にしわ寄せが来る』という同僚らの怒りの矛先は、本来対応を講ずべき主体である企業でなく、休む本人に向きがち」と指摘する。

 その上で、同性からの批判的な意見は「これまで、仕事と子育ての二者択一を迫られてきた女性たちの葛藤の裏返し」とみる。

 こうした厳しい見方とは対照的に、米国務省からはマタハラNetの活動が評価され、3月に小酒部さんが「世界の勇気ある女性」賞を受賞した。 受賞後、批判的な意見は減りつつあるというが「高齢化が進み、今後、男性上司も含めて介護休暇を取る人が増えていく中、妊娠したというだけで女性を切っていては企業は立ちゆかなくなる」と小酒部さん。「マタハラ問題を解決することが、女性のみならず労働者全体の選択肢を広げることにつながると訴えたい」と話している。

・・・引用終わり。

 「マタハラドミノ倒し」とは穏やかではないが、・・・「米国務省からはマタハラNetの活動が評価され、3月に小酒部さんが「世界の勇気ある女性」賞を受賞した」・・・というのは、皮肉なものだ。このような厳しい見方(同性や同僚からの批判)は、「葛藤の裏返し」というのは本当だろう。ただ、立法に際し、既に議論されたこと、当然その前には研究や調査、将来の労働力の問題、人口構成の問題など、あらゆる観点から立法の準備をして国会で成立したわけであって、このような事情を知らずに、批判の矛先を妊娠した当人に向けることは、幼稚で考えが浅い行為だと言える。
 個々の労働者自身も、普段から既に様々な労働法制度と社会福祉制度の恩恵を受けているのであって、これを維持するためにも少子化問題や、稼げる者は稼いでその資源を少しでも生産すべきは誰でもわかる自明の課題なのである。要するに、世の中、各人全てが、自分の食べるパンだけを得るために稼ぐのではだめなのであって、絶えず剰余の利益を富として生み出さなければならないわけだ。これが、各人のうちの誰かが病気やその他の都合で一時的に労働に従事できないとき、場合によっては身体の重大な損傷により労働できなくなっても、この剰余があれば生きてゆけるわけである。
 これを、単なる所得移転(ゼロサムゲーム)だとして足を引っ張る議論をするのか?、それとも、この相互の社会補完制度こそが社会全体の「富の増大」であるとして祝福されるべきなのかは、少し考えればわかると思う。そして、これは既に立法の際に織り込み済みなのである。

 そして、これに反するような事業主や経済活動の責任者には批判の矛先が向けられずに、休んだり、時短を利用する本人に向くのは、見当違いも甚だしいし、不幸なことだと思う。
 この点、・・・圷(あくつ)由美子弁護士(40)は「産休や育休をとるときに女性から心ない言葉をかけられるケースは多い。『自分にしわ寄せが来る』という同僚らの怒りの矛先は、本来対応を講ずべき主体である企業でなく、休む本人に向きがち」・・・と指摘している通りである。

 妊娠・出産・子育てを経験することになる労働者と、その労働者が持つスキルを利用しないことは大きな損失だと思う。だから、先ず企業が支える。その企業を消費を通じて社会全体で支えることが必要だと思う。この逆は、まさに「共有地のジレンマ(コモンズの悲劇ともいう)」というべきで、自分の事業だけ種まきをぜず、他人がまいた種と水と肥料で育った田畑で収穫だけをやっていることになる。よって破たんは目に見えている。
 このようなフリーライダーを許すべきではないと思う。種と水と肥料代、それに労賃を支払え!。


 追記(2015.11.17)

 本日「マタハラ降格裁判」の広島高裁差し戻し審判決が出たようだ。以下は、産経新聞http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG17H92_X11C15A1CC1000/より引用・・・

 広島市の病院に理学療法士として勤務していた女性が妊娠を理由に降格されたことが、男女雇用機会均等法に反するかが争われ、最高裁が違法と初判断した訴訟の差し戻し控訴審判決が17日、広島高裁であった。野々上友之裁判長は降格を適法とした一審・広島地裁判決を変更し、精神的苦痛による慰謝料も含めてほぼ請求通り約175万円の賠償を病院側に命じた。女性が逆転勝訴した。

 最高裁は昨年10月、「妊娠による降格は原則禁止で、自由意思で同意しているか、業務上の理由など特殊事情がなければ違法で無効」との初判断を示し、社会問題化しているマタニティーハラスメント(マタハラ)をめぐって行政や事業主側に厳格な対応や意識改革を迫った。

 差し戻し控訴審で病院側は、特殊事情として、女性に協調性がないなどと適格性を問題視したが、野々上裁判長はいずれの主張も退け「女性労働者の母性を尊重し、職業生活の充実の確保を果たすべき義務に違反した過失がある」と病院側の対応を厳しく批判した。

 また、復帰後の地位の説明がなかった点などを挙げ、降格を女性が承諾したことについて「自由意思に基づいていたとの客観的な理由があったとは言えない」と述べた。

 判決によると、女性は、広島中央保健生活協同組合(広島市)が運営する病院のリハビリテーション科で、2004年から管理職の副主任を務めていた。第2子を妊娠した08年、軽い業務への配置転換を希望すると副主任を外され、復帰後も管理職でなくなった。

 産休育休中を除き、降格後から11年の退職までの間の副主任手当計約30万円と、「職業人の誇りを傷つけられ、降格による職場での孤立やあつれきが退職を招いた」として慰謝料100万円などを認めた。

 一審や差し戻し前の控訴審では、ともに女性の請求が退けられていた。

 同組合は「上告するかどうか検討するが、最高裁が示した基準を重要な指針として病院運営に当たる」とコメントした。〔共同〕

・・・引用終わり。

 なお、判決文が検索できたらアップしたいと思う。
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日本航空の客室乗務員が同社を「マタハラ」で提訴

2015-09-02 22:03:02 | Weblog
 日本航空の客室乗務員、「マタハラ」で提訴 会社は争う姿勢と(フジテレビ系(FNN) 9月2日(水)20時50分配信)報じられている。以下は、その記事を引用。

 日本航空の客室乗務員・神野知子さん(40)は、2014年8月に妊娠が発覚すると、会社から一方的に休職を命じられる、「マタニティーハラスメント」を受けたとして、およそ340万円の慰謝料などを求め、東京地裁に提訴した。
日本航空には、妊娠した客室乗務員は、会社が認めた場合に限り、負担が少ない地上勤務へ異動できる制度があるが、神野さんの地上勤務は「ポストがない」との理由で、認められなかった。
神野さんは、法廷で「母を扶養している中、突然の無給で経済的に厳しくなった」と述べた。
神野さんは「これから妊娠・出産続く女性たちが、つらい思いをしないでいければいいなと思います」と話した。
日本航空は、「客室乗務員の本来的業務は、航空機に乗務することで、地上勤務は特別な対応」と争う姿勢。・・・引用終わり。

 少し調べたが下記のような報告があるので紹介したい。なお、関連個所だけを抜粋引用させていただく。
 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/004/006/shiryo/05020301/002.pdf
 航空機乗務員の疫学研究
(妊娠関連)
第5回 航空機乗務員等の宇宙線被ばくに関する検討ワーキンググループ2005年1月25日日本宇宙航空環境医学会 飛鳥田一朗

 客室乗務員の妊娠に関する疑問点
• 胎児死亡(流産率・死産率)は一般人に比
べて高いのか?
• 他の職業婦人と比べて高いのか?
• 妊娠中に被ばくする宇宙放射線量は?
• 妊娠している客室乗務員はフライトを中断
すべきか?、継続してもよいか?

文献から見た客室乗務員と妊娠
• 客室乗務員は非職業人に比べて胎児死亡の危険が高い。
‐ RR 1.9 (95%CI:1.3-2.7)
・Daniel, W.E. et al Aviat. Space Environ. Med., 61, 840-844, 1990
– RR 1.8 (95%CI:1.3-2.4)
・Vaughan, T. L et al J. Occup. Med., 26, 676-678, 1984
• しかし、職業婦人と胎児死亡率に差はない(RR1.3, 95%CI:0.9-1.9)。
・Daniel, W.E. et al Aviat. Space Environ. Med., 61, 840-844, 1990
• 低体重時(RR1.3、95%CI:0.6-2.6) 、未熟児(RR1.0、95%CI:0.7-1.5) 、アプ
ガースコア-1分値(RR0.8, 95%CI:0.7-1.3)、男女比(RR0.9、95%CI:0.8-1.1)
は、一般人と差を認めなかった
・Daniel, W.E. et al Aviat. Space Environ. Med., 61, 840-844, 1990
• 流産した客室乗務員は、出産した乗務員に比べて乗務時間が長かった。
(student’s t=-3.30, P=0002)
• Cone JE, Occup Environ Med. Mar;40, :210-6 1998
・妊娠確定後全員乗務停止
・妊娠結果の検討
- 1995年4月から2年間に妊娠が確定した474人の客室乗務員
- 全員既婚の日本人国際線乗務員
- 対象妊娠数480件(6人は2回妊娠)
- 妊娠確定時の平均年齢: 30.9 歳(22-42歳)
・35歳未満:392人(81.6%)
・35歳以上:88人(18.4%)
- 乗務から離脱した時期
・平均妊娠週数: 6.5 週(3週から24週)
- 乗務離脱後
・産前休職:415(86.5%)
・地上業務: 65(13.5%)

妊娠の結果(JAL)
• 胎児死亡率は14.8%( 71件)
• 胎児死亡と切迫胎児死亡の多くは妊娠12週未満で発生
– 全胎児死亡の中で早期流産の占める率は87.3%
– 全切迫胎児死亡中で切迫流産は75.6%(96件)

胎児死亡に関する報告
• 自然流産率(妊娠20週未満の胎児死亡)は
全妊娠の10-15%
– メルクマニュアル17版1999
• 自然流産全率(妊娠20週未満の胎児死亡)
は妊娠の15%
– 新女性医学体系23 異常妊娠1997

<中略>

妊娠確定後の地上勤務の影響
・対象:464人
- 妊娠確定と同時に流産したケースは除外
・胎児死亡率の比較
- 地上勤務群:11% (7/65)
- 産前休職群:12% (48/399)

まとめ(JAL)
・客室乗務員の自然胎児死亡率は14.8%(71件/480件)
で、早期流産は胎児死亡全体の87.3%を占めていた。
・妊娠確定時の年齢が35歳以上の対象者は全体の18%を
占め、胎児死亡の相対危険度は35歳未満の乗務員に比
べ2.92倍であった。
・流産の既往と喫煙は胎児死亡と関連性は認められな
かった。
・妊娠中の宇宙放射線被ばく量を最大に推定しても、対
象者の99%がICRP勧告の2mSv以下であった。
・産前地上勤務は妊娠の結果に影響を与えていなかった。

妊娠している乗務員はフライトを中断すべきか?
• 宇宙放射線被ばく量の観点
– ICRP勧告(2mSv/妊娠中) :妊娠18週まで乗務可能
– NCRP勧告(0.5mSv/妊娠中1ヶ月あたり):通常の太陽フ
レア活動であれば、超過する危険はほとんどなし
• 産業医学的観点
– 切迫流産のほとんどは妊娠初期に起こるため、妊娠確定
後、速やかにフライト停止すべきである。
– 産前地上勤務は、妊娠結果に影響を与えない。
• 希望者には、産前地上勤務は可能

・・・・以下省略。

・・・ということで、妊娠確定後は速やかにフライトを停止すべきだが、産前地上勤務については妊娠結果に影響を与えていないそうである。但し、上記報告には、切迫流産の危険が最も高いとされる妊娠初期における、他の業種とフライト業務との比較については、宇宙放射線被爆に限って報告され、なお且つ当該被爆と妊娠結果については報告がない。唯一、産業医学的観点として「切迫流産のほとんどは妊娠初期に起こるため、妊娠確定後、速やかにフライト停止すべきである」としているだけなので、この「フライトを中止すべき」とする、他の業務の危険と異なるような、フライト業務に関連する危険については、宇宙放射線被爆以外は何ら言及されていない。この点で当該「産業医学的観点たる『妊娠確定後、速やかにフライト停止すべき』との結論には疑問が残ることになる。
 尤も、飛行機に限らず、公共交通機関の船・車・航空機の乗務員には、密閉された空間における不特定多数の人員に対する、保護責任や警察権という特別行政権(船長や機長の指揮権から)をも含む保安要員(場合により逮捕等の有形力の行使も考えられる)としての業務があるわけなので、これら業務に内在する制約が法律上存在すると解すべき余地はあるだろうと思う。問題は、この内在する制約があるとすれば、その射程がどの程度なのか?ということになる《9.8追記》。

 ところで、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)第9条第3項や育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)第10条等では、妊娠・出産、育児休業等を「理由として」解雇等の不利益取扱いを行うことを禁止しており、その例外としては、平成26年10月23日の最高裁判所判決があるのでそのポイントを下記に整理すると・・・

・・・降格することなく軽易業務に転換させることに業務上の必要性から支障がある場合であって、
○その必要性の内容・程度、降格による有利・不利な影響の内容・程度に照らして均等法の趣旨・目的に実質的に反しないと認められる特段の事情が存在するとき
○軽易業務への転換や降格により受ける有利・不利な影響、降格により受ける不利な影響の内容や程度、事業主による説明の内容等の経緯や労働者の意向等に照らして、労働者の自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき・・・

・・・ということであるので、この判例が既に確定しており、これを厚生労働省もHPなどに掲載していることからすると、少なくとも行政解釈としても通用(少なくとも啓蒙のための資料として用いていることは間違いない)しているとみられる。http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000089158.pdf

 そうだとすると、少なくとも地上勤務に配置転換することは、母子保護(勿論、労働安全も)の観点からも、業務随行上の観点からも、必要な措置であることは間違いなさそうである。

 問題は、「地上勤務の枠がないから」という理由のみで、休職(これは、百歩譲っても「会社都合休業」にすべきところ休業ではない休職)扱い、即ち給与が無くなるか著しく減額という、明らかな不利益扱いが認められるかどうかということだが、この点、上記判例(判例に加えて行政解釈も同じと言ってもよい)に従えば、降格させる場合でも、①均等法の趣旨・目的に実質的に反しないこと、②軽易業務への転換や降格により受ける有利・不利の影響、降格により受ける不利な影響の内容や程度、事業主による説明の内容等の経緯や労働者の意向等に照らして、労働者の自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由・・・が必要なのである。
 なお、j前述の厚労省資料では下記のような違法の事例を示している。
不利益取扱い(「違法」となる例)
・解雇
・雇い止め
・契約更新回数の引き下げ
・退職や正社員を非正規社員とするような契約内容変更の強要
・降格
・減給
・賞与等における不利益な算定
・不利益な配置変更
・不利益な自宅待機命令
・昇進・昇格の人事考課で不利益な評価を行う
・仕事をさせない、もっぱら雑務をさせるなど就業環境を害する行為をする

 日航には、上述の通り『妊娠した客室乗務員は、会社が認めた場合に限り、負担が少ない地上勤務へ異動できる』とあるが、しかしこれでは、冒頭報じられたような・・・「地上勤務の枠がないとの理由による休職」・・・は、減給・不利益な配置変更・不利益な自宅待機命令・仕事をさせないという各例に当たる他、労働者の自由な意思に基づくと認められるに足る合理的理由がない降格=不利益扱いとなる(なお、降格には、一時的な配置換えや減給も含まれると解される)。
 また、もう一つ根拠法として、労基法の規定もある。即ち、労基法65条3項には、「使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。」 とあるから、事業者は、無給の休職扱いではなく、使用者の義務として、その他の軽易な作業を与えたうえ、引き続き所定の賃金を支払わなければならない、と、条理上は解されよう(http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=5&H_NAME=&H_NAME_YOMI=%82%A0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S22HO049&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1)。《9/12追記》
 よってこのような社内規定そのものが公の秩序に反していると思われるから、日航は、この点、誤った社内規定に基づいた(如何なる規定・労使合意があろうとも公序に反し無効な規定により)労務管理をしているように思われるが如何か。
 また、日航は、「客室乗務員の本来的業務は、航空機に乗務することで、地上勤務は特別な対応」と争う、というが、日航の事業(商行為)は、航空機に乗務する仕事だけではないから、この反応は普通ではないというか、公共の労働市場(=社会一般)に対する答えにはなっていないと思う。

 何れにしても、この裁判は注視していきたいと思う。
 なお、原告ご本人のコメントを含めて下記に掲載されているので参照されたい。
 http://www.kohkuren.org/99_blank032.html#CCU
・・・ はじめに相談に行ったのは市役所。雇用機会均等室の連絡先を教えられました。次に労基署。担当者は、「妊娠したらいきなり無給というのは社会問題じゃないですか」。労基法第26条には「会社都合で休職させた場合は、平均賃金の6割を支払わないといけない」とあります。さっそく会社に6割の賃金保障を請求することにしました。
 日本航空キャビンクルーユニオン(CCU)執行委員でもあった神野さんは同じような悩みを抱えている人がいるかもしれないと考え、組合ニュースに経過を報告しました。すると沢山の人たちから励ましの声が寄せられました。ところが喜びも束の間、いきなり始まった無給生活がズシリとのしかかります。給与天引きだった生命保険料は一括請求され、住民税の請求もウン十万円。社外の友人は「妊娠したら無給にして仕事も与えないなんて、ありえない会社だね。それってマタハラじゃない」。社内の友人は「無給では出産費用や生活費がまかなえないので、退職して退職金を費用に充てる人が少なくないようよ」。
 経営協議会では植木社長に訴えました。植木社長は「女性に少しでも輝いてほしい。希望すれば全員にというのは非常に難しいが、皆さんの期待に添えるような努力をするのが会社の務めだと考えています」。
 しかし一向に改善の兆しが見えないことから、神野さんは厚労省の雇用機会均等室に調停を申し込みました。調停はすぐに受理されました。そのまま進めば調停日に本人と会社側が呼ばれ、両者の言い分を調停委員が判断し和解案などが出されるはずでした。神野さんの要求は①出産日ギリギリまでの地上勤務、②妊娠がわかってから今まで本来働いていればもらえるはずの賃金満額。ところが会社は調停への出席を拒否。均等室の担当者は何度も会社を説得したようですが会社は拒み続け、結果、調停は打ち切りになりました。まれに、調停に呼び出されても出席しないブラック企業があるとのことですが、JALのような大企業が出席しないケースは驚きだったようです。
 神野さんは言います。「2010年の破綻後、2000名の客室乗務員を採用していますが、一方で年間600人も退職しています。女性が多く活躍するJALという会社で、本気で女性の活躍を考えているのであれば、妊娠による不利益などあってはならないと思います。多くの方が私と同じつらい思いをしないように、泣き寝入りをしないで、会社や厚労省に解決を求めていきます」・・・。

 しかし、労働局の調停に出てこないとは少々呆れた。まあ、日航としての姿勢は、会社と各労働者における個別紛争には自主的に取り組む姿勢がない、ということだと思う。これでは何れ社会から淘汰されるのではないかと思う。何故なら、個別的労働紛争の解決は、先ずは当事者同士の話し合いが基本である。調停をすっ飛ばして、「裁判でど~ぞ」というのは、普通の大企業では考えられないと思う。
 また、たくさんある日航の他の労組はどう考えているのかな。
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埼玉県労働委が正智深谷高校に救済命令

2015-04-28 22:07:20 | Weblog
 2015年4月18日(土)付け埼玉新聞によると、正智深谷高・非常勤講師が偽装請負で勤務の講師に対し、県労働委が救済命令を発したということである。

 以下引用すると…非常勤講師として正智深谷高校(深谷市)に勤めた女性(32)が違法な偽装請負の状態で働かされていたとして、不当労働行為の救済を申し立てていた問題で、県労働委員会は17日、女性側の主張をほぼ認める命令書を発令した。申立人の同校の教職員組合らは「学校側の違法性を認めた画期的な決定。不安定な雇用を強いられている教員をなくしていきたい」と話している。
 命令書などによると、女性は人材派遣会社と業務請負契約を結び、2010年4月から同校で非常勤講師として勤務したが、12年2月に同校から一方的に契約を打ち切られたとされる。女性の賃金は1コマ2250円で、月に14万4千円を受け取っていたが、採用の可否や勤務日数などは学校側が決め、生徒の補講などの時間外労働を求めていた。
 同校の教職員組合らは女性の雇用形態が多重業務委託関係にあったとして、13年1月、学校側に直接雇用などを求める団体交渉に応じるよう、県労働委に救済を申立てた。
 県労働委は女性の雇用形態が職業安定法で禁止されている労働者供給と判断。学校側に女性の直接雇用などに関する団体交渉に応じるよう命令した。
 県労働委の決定を受け、女性は「最初に教えた生徒が卒業する姿を見たくて闘ってきた。教育を大切にする学校にしてほしい」と訴えた。
 会見した同校教職員組合の西谷泰実書記長は「学校側は、教員の首を自由に切るために二重請負という雇用形態を取っており、教育現場においてあるまじき行為。私学での非正規雇用が増加傾向にある中、誇りを持って働ける学校現場を築き教育の質を守っていきたい」と話した。
 女性は13年、同校と人材派遣会社を相手取り、学校側への地位確認と損害賠償など約2090万円を求めて提訴し、現在係争中となっている。
 同校は県労働委の命令に「責任者が出張のため、コメントをしかねる」としている。
・・・引用終わり。

 厚生労働省の解釈によると、適正な請負とは「業務上必要な法的責任を(請負者が)自ら負う」もの(労務提供)でなければならないとされている。
 そもそも、他人からの指示があると、その分だけ責任は、指示をした者になることは自明の理である。これは、例えて言うなら、誰かが指示して犯罪を犯した場合、その犯罪行為の責任は行為者と連帯して指示を行った者にも及ぶわけである。これを刑法総論などでは「行為連帯」と言う。さらに、違法行為を実際に支配していれば、その者が正犯者であるということになる。民事の不法行為論でも、意志と行為が連帯している場合に不法行為が連帯していると評価されることになる。
 つまり、行為論から言うと、請負契約ににおいて、請負者が発注者から独立して業務を行い、その仕事を行う過程や結果に自ら責任を負うためには、完全に独立した自由な立場で業務を行わなければ、その法的責任を、労務提供した請負者に負わせることはできないということである。

 また、労働行政(厚労省職安行政)が、委任や準委任という用語(民法では「請負」の他に「委任」や「準委任」「管理」などがある)を使用せず、あえて「請負」として整理しているのにも意味があるように思えよう。
 即ち、私見によれば、これは仕事の完成を意味する「請負」こそが、事業主として独立して法的責任を負うものであって、受託した業務を行う者に真に裁量権があってはじめて法的責任を負うものであって、これは「労働関係」とは明らかに異なる役務提供の手段だという整理をしているのではないかと思う。それこそ、民法の立法意志の一つであるところの「利益と責任の均衡」に合致する考え方である。

 では、教師の仕事が学校法人やその内部の他の教師と独立して行い得る仕事であろうか?
 事前に契約書(や仕様書)により、どんなに詳細に契約したとしても、これはたぶん無理ではないかと思われる。
 教育実習生の面倒や、日々刻々と変化する学内環境に臨機応変に対応していくためには、校長・他の教員との協力関係がなければ為し得ないのが教育であろう。この点、似たように思える予備校の授業(予備校講師は請負が多いそうだが)のような、決められたカリキュラムを一定時間内で行う内容の性質とは異にするのが学校教育だと思う。
 このような意味で、学校教育は、当に、全人格的教育であり、国民が期待する公教育の要請である「生徒の発達保障」にほかならない。
 当然に、請負契約における仕様書などでは想定され得ない、教育機関の一員としての教育人格であり、臨機応変さであり、生徒・保護者との対話であり、そこには、教育機関の代表者である校長・経験や専門担当による職階制度(賃金という裏づけが必要でしょう)による協同と労働関係があり、日々発生する諸問題を臨機に判断する手段としての指揮命令も当然必要となろう。

 以上を実現するための、人間の共同の労務提供関係を消去法で考えたとき、労働関係=直接の雇用関係以外にないと考えられる。つまり請負(委託)や準委任では無理というほかはない。
 個々の具体的業務(例えばバスの運転や清掃業務・給食の調理)などと同値しては到底考えられない。

 そもそも委託・請負が可能かどうかよりも、学校法人としては、教育の質や、労働者としての教師の力量をどう発揮させるのかを考えるのがまともな学校経営者であろう。学校で働く人間(教師)の生活保障や教師として発達する方法を考えない学校法人は、いずれ社会から排除されることになる(スミスの言う”見えざる手”により)。何故なら、公共の労働市場から、教師という労働者の調達が直接できていないからである。

 正智深谷高校は、今後も教職員を雇い教育活動を行っていくうえで、この点を考え直すべきではないか。
 また、県労働委の命令書にある、労働者派遣法違反ではない職業安定法違反(供給元供給先の双方に罰則のある同法44条違反ということである)との指摘は、重く受け取るべきだと思う。

 追記・・・発せられた命令書全文が埼玉県HPに掲載されているのを発見した。リンクは下記
 http://www.pref.saitama.lg.jp/e2001/roui-gaiyou/meirei25-1c.html
 なお、上記ページの中・・・
『4.審査の経過調査11回、審問4回。平成27年3月26日の公益委員会議で命令を決定』と題した記載文があり、
『命令書(PDF:584KB)』・・・
というリンクをクリックするとPDFファイルが開くが、当方のブログから直接命令書PDFファイルにリンクができないので、一旦、この埼玉県HPから入っていただきたい。
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新年早々、新聞記事をみて思ったこと…厚労省という行政庁は仕事やる気あるの?

2015-01-05 20:02:37 | Weblog
 新年早々に愕然としたので、是非紹介しておきたい。下記は東京新聞より引用・・・
・・・

<2015年1月4日 朝刊> 国の障害年金の支給・不支給を審査するため都道府県ごとに置かれている医師(認定医)の人数にばらつきがあり、一人当たりの担当件数で見ると最も多い神奈川県と最少の鳥取県で約十四倍の差があることが三日、共同通信の調べで分かった。
 認定医の引き受け手確保が難しい地域が多く、国の対策も不十分なことが原因。認定医の負担が重い地域では、不十分な審査で支給されるべき人が漏れたり、基準に達していない人に支払われたりしている恐れがある。認定医からは「更新のケースでは書類一件を十数秒で見ており、まともな審査はとてもできない」との声が上がっている。
 障害年金を受け取るには、主治医の診断書などの書類を日本年金機構に提出する。人によっては一~五年ごとに更新も必要。審査はほぼ書類だけで、多くの人が受ける障害基礎年金の場合、機構の都道府県事務センターから委託を受けた各地の認定医が審査する。
 共同通信は、年金機構が開示した二〇一三年度の障害基礎年金の新規請求件数と、各都道府県の認定医数を基に、一人当たりの担当件数を算出。神奈川では認定医が四人しかおらず、審査に至らず却下されるケースも含め、一人当たり年間千百五十四件を担当する計算だった。鳥取は同八十件で、一四・四倍の開きがある。神奈川の人口は鳥取の約十五倍だが、認定医数は鳥取の方が多く、五人いる。一人当たりの担当件数の都道府県平均は三百四十三件だった。
 <障害年金(同紙による注釈)> 公的年金の加入制度に応じて障害基礎年金、障害厚生年金などがあり、障害の程度や保険料納付期間など要件を満たす必要がある。「基礎」は2階建ての年金制度の1階部分に当たり、障害年金受給者の多くが受け取る。「厚生」の場合は日本年金機構の本部が一括して審査するが、「基礎」は同機構の都道府県事務センターごとに審査している。支給額は「基礎」の1級で月8万500円、2級で月6万4400円。


<続く1月5日 朝刊> 国の障害基礎年金を受け取っている人が一~五年ごとの更新時に支給を打ち切られたり、金額を減らされたりするケースが二〇一〇~一三年度の四年間で六割増えていたことが四日、分かった。支給実務を担う日本年金機構が開示したデータのうち、一〇年度以降の分がそろっていた群馬など八県について調べた結果、判明した。
 年金機構は「支給を絞る意図はない」と説明しているが、障害年金の審査をする医師(認定医)や社会保険労務士からは「受給者増加に伴い、機構が支給を抑えようとしているのではないか」との指摘が全国各地で以前から上がっている。障害者の生活を支える年金が恣意(しい)的に減らされている可能性がある。
 百七十万人以上が受け取る障害基礎年金は、都道府県ごとに置かれている年金機構の事務センターが審査している。年金機構は更新に関するデータを一律に取っておらず、共同通信が情報公開請求したところ、独自に集計している事務センターについて〇九~一三年度のデータを開示した。
 一三年度は千葉、栃木、群馬など十七道県のデータがあったが、〇九年度は四県にとどまっていたため、一〇年度以降のデータがある秋田、石川、大分など八県について審査件数全体に占める支給停止と減額の割合を調べた。
 一〇年度の停止と減額の割合は平均2・3%だったが、年々増え続け、一三年度は六割増の3・7%となった。中でも岡山県は支給停止だけで一二年度に11・5%に達し、一〇年度から約五倍に増えていた。更新を申請した九人に一人が年金を打ち切られた計算だ。
 <障害基礎年金> 国の障害年金には、加入制度に応じて障害基礎年金と障害厚生年金などがある。身体障害の場合、大半は状態が変動しないため「永久認定」となるが、精神障害や神経、内臓の疾患などでは1~5年の「有期認定」となり、更新が必要になることが多い。最重度の1級から3級に分かれ、「厚生」は3級でも受けられるが、「基礎」は3級と判定されると、停止になる。支給額は基礎の1級で月8万500円。2級になると月6万4400円に減る。
・・・引用終わり。

 つまり、審査を担当している医師は非常に少ない、よって、適切な審査は出来ていない。認定医からは「更新のケースでは書類一件を十数秒で見ており、まともな審査はとてもできない」との声が上がっていることがその証左である。また、年金機構は更新に関するデータを一律に取っていない、ということらしい。

 特定社労士の「しのづか氏」も、自身のブログで下記のように警鐘を鳴らしているので、是非参照されたい。http://sr-partners.net/
<引用>・・・障害年金の審査をする医師(認定医)や社会保険労務士から、「受給者増加に伴い、機構が支給を抑えようとしているのではないか」との指摘が全国各地で以前から上がっているという。
 共同通信は、厚労省に情報公開請求を行い全都道府県における2009年度から13年度の障害年金不支給率を発表した。そこには明らかな差が確認できる。不支給率23%の県もあれば3%台の県もある。
 居住している都道府県によって国の認定にこれほどまでに差が出ることは完璧におかしいことだし、放置している国の責任は重大である。
 厚労省はこのことをことさらに問題視していないようであり、私としては不信感が募る。旧社会保険庁のような事なかれ主義や組織の内部だけを見る体質が残っているのではないだろうか。世間にさらされて問題にされない限り、少々おかしなことがあっても目をつむろうとするのだ。
 私は社会保険や労災の審査請求や再審査請求の代理業務を行う機会が多い。労働側を名乗っているため他の社労士よりも依頼される件数は多い。私は医学の知識はまったくないが、認定基準の不明確さから恣意的な運用になっているのではないかと以前から思っていた。
 年金機構から委嘱された認定医がたった数秒で判断をしている、とあれば、不満を持った申請人が審査請求や再審査請求に進む件数が増えるはずだ。
 昨年の行政不服審査法改正により今後は審査請求でダメだったら再審査請求を行わずすぐに訴訟を提起することができるようになった。総務省の資料に「不服申立前置について、国民の裁判を受ける権利を不当に制限しているとの批判もあり、裁判所の負担等も勘案しつつ、行政不服審査制度見直しの一環として見直し」た、とある。
 これにより労災や雇用保険などの労働保険に関する不服申し立てについては審査請求と再審査請求という「二重前置」は解消された。しかし、年金給付や傷病手当金などの社会保険に関する不服申立はそのままである。
 なぜ労働保険だけが二重前置をなくし、社会保険をないがしろにしているのかはさだかではないが、社会保険のほうが年間の不服申立件数があまりにも多いからであろう。しかし、早急に社会保険に関しても実現してほしい。セーフティネットに係る認定の誤りや無駄な時間の浪費は申請人の生活を破たんさせる可能性が大きいのだから。
・・・<引用終わり>

 しのづか氏の言う通りだと思う。
 さて、行政の原則(適正手続の原則、説明責任の原則、公正性・透明性の原則、国民参加の原則、効率性の原則、補完性の原則等)は、厚労省には期待できないということだ。まあ、法律による行政の原則くらいはやっているとは思うが、それ以外は自由裁量だと思っているのだろう。なお、他にも信義誠実の原則、権利濫用の禁止原則、比例原則、平等原則などが挙げられるが、これらのうち、適正手続の原則・公正性・透明性の原則と説明責任の原則は、憲法の観点からも重要だろうが、厚労省には馬耳東風なのであろうか。

 追記(1/7)…東京新聞では認定医の業務を、国からの「委託」だとしているが、しのづか氏は「委嘱」の語を使っている。仮に、非常勤特別職であれば『委嘱』が適切だと思う。即ち、法令に基づく行政庁の[付属機関]という位置付けではないかと思うからだ。審議し審査し調査し研究し答申するという、意志決定の前段で、行政庁の諮問に答え、決定に影響を与えるような意見表明をするのであるから、少なくとも刑法の贈収賄罪の適用でもって威嚇されなければならないと思うからだ。しかし、「社会保険審査官及び社会保険審査会法」を見ても「認定医」なる用語はみあたらなかった。
 結局、私が調べた範囲では「認定医」なる機関の位置付けは不明のままである。なお、厚労省HPの中を検索するとhttp://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002hjfm-att/2r9852000002hjih.pdf「障害認定基準(眼の障害)の検討課題について」と言う資料が見つかり、ここに「認定医」なる用語が存在している。おそらく、中央の審査会・研究会(所謂法に基づく「諮問機関」)の会議やその議事録にはたくさん出てくるのだろうな。

 追記の追記…社労士の宮里竹識(みやざとたけし)氏がHPに以下のような資料を掲載しておられるので、一部引用させていただく(感謝)。尚、同氏のHPはhttp://spartners.jp/blog/utsubyou-syougainenkin/etc/659.html
 <引用開始>・・・
【国民年金第1号被保険者(自営業者・学生・無職など)】
提出先:市町村
事務的な審査:都道府県ごとにおかれた日本年金機構の事務センター
障害等級の判定:国民年金障害認定審査医員
【国民年金第2号被保険者(厚生年金加入者)】
提出先:年金事務所
事務的な審査:日本年金機構本部の障害年金業務部
障害等級の判定:障害認定審査医員
【国民年金第3号被保険者(厚生年金加入者の被扶養配偶者)】
提出先:年金事務所
事務的な審査:都道府県ごとにおかれた日本年金機構の事務センター
障害等級の判定:国民年金障害認定審査医員

・・・<以上引用終わり>

 結局、厚労省という役所が、如何に多忙で多くの仕事を担わなければならず、且つ目の前の仕事を精一杯順番にこなしているとしても、それに追われるのみで、問題の重要性に気づいていないか、若しくは、気づいていながら(知りながら)今回、東京新聞で取り上げられたようなことが改善されていないということは、職務怠慢だと思う。そして厚労省の他の部署も同じように信頼を失っていることだろう。社会保障担当行政庁として誠に残念なお役所だと思う。万一、心当たりがないというのなら大臣が記者会見で反論なり釈明すべきである。
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AKB48、時給1000円で「バイトAKB」募集・・・えっ、AKBって労働者だったの?

2014-08-14 22:01:20 | Weblog
 以下は「オリコンスタイル」http://www.oricon.co.jp/news/2040819/full/からの引用・・・
 人気アイドルグループ・AKB48が“オトナAKB”に続き今度はアルバイトで新メンバーを募集することが10日、明らかになった。千葉・幕張メッセで行われた『AKB48グループ夏祭り』内のバイトル AKB48 スペシャルライブで「バイトAKB」企画がサプライズ発表された。
 通常、AKBグループに入るにはオーディションを経て研究生となるのが前提。そこで経験を積み、正規メンバーに昇格するのが通例だった。ところが、今年はグリコとのタイアップで“オトナAKB”が選ばれるなど新展開もあり、今度はアルバイト求人情報サイト『バイトル』とのコラボレーション企画が誕生した。
 バイトAKBは、プロダクションに所属していない中学生以上の女性を対象(経験不問)に、書類による1次審査と2度のオーディション審査を経て9月下旬にメンバーが決定。合格者は運営会社AKSと時給1000円でアルバイト契約を結び、AKB48の一員としてライブや握手会などのイベント、テレビ番組やCM出演など現メンバーと一緒に活動するため、日常的に都内のレッスン場へ通えることも条件となる。
 勤務時間は午前7時~午後9時内で法定労働時間を遵守。中学生は法定労働時間(修学時間を通算して1週間40時間、1日7時間)以内、中学卒業後18歳未満は同(1週40時間かつ1日8時間)以内、18歳以上はその限りではなく、深夜業務も発生する。活動期間は来年2月末までの約5ヶ月間で、その後3ヶ月契約更新になるほか、社保完備、交通費支給、衣装貸与、食事補助がつく。
 応募は10日午後9時よりバイトル公式サイトで開始。11日より渡辺麻友、指原莉乃、柏木由紀、松井珠理奈、松井玲奈、山本彩、島崎遥香が出演する新CM「バイトAKB募集告知」篇が全国で放映される。
・・・引用終わり。

 ということで、AKB正規メンバーが労働者であるのか、それとも個人事業者であるのかということとは無関係ではあるが、今回募集するのはアルバイトメンバーで、AKBメンバーと一緒に活動し、その活動をするのが「アルバイト」=労働者であるということらしい。
 なお、本日テレビCMでも流れたのを確認したが、少し気になるのは、>・・・勤務時間は午前7時~午後9時内で法定労働時間を遵守。中学生は法定労働時間(修学時間を通算して1週間40時間、1日7時間)以内、中学卒業後18歳未満は同(1週40時間かつ1日8時間)以内、18歳以上はその限りではなく、深夜業務も発生する・・・<ということで、これ、「所定労働時間」、「休日(若しくはこの反対解釈としての所定労働日)」が予め提示されているのかどうか?。少なくとも記事の説明やCMを見る限りでは、単なるアルバイト候補者の囲い込みかもしれないということ。つまり、実際にに労働させるかどうかや、労働日における所定時間を、使用者がほしいまま決めるということなのではないのだろうか。深夜労働についても、「法定時間外」なのか、「所定時間外」なのか、はたまた協定した時間外労働の上限に収まるのかどうかということである。
 例えば、今自治体で流行っている保育士や看護師資格者の「登録型パート」の亜種で、それもタレント性やそれに伴い現場交換性が無いことに起因して、仕事をいったん断ると干される。その代替えに次の労働者が既に囲い込まれた私的労働市場でスタンバイしているということではないのだろうか?。これは、直ちに違法となるものではないと思うが、しかし労働者募集の手前で応募しようとする労働者の不確定な期待利益を謳い事業者の私的市場にストックするよう囲い込むという点で、制度意志には反していると思う。とにかく、労働者を雇用する(=労働契約)なのだから、職安法に規定の「労働者募集原則」や労基法の「労働条件明示義務」には違反しないでもらいたいと思う。

 さて、AKB正規メンバー(おそらくは労働者ではない「個人事業主」扱い)に関係する話としては、例えばプロ野球選手についても芸能人と同じように、日本では個人事業者であるとされている。舞台部門でも劇団四季の役者やメンバー(キャストだけでなくその他のエンジニアもたしかそうであったように思う)。年収数千万や億単位の報酬額であれば、まあ納得できる部分はあろう(労務提供の代替え性の有無はさておいても)。
 ところが、アメリカではプロ野球選もNBAも労働者である。本人の代替え性の欠落や球団支配人・監督の指揮権限などはこれに基づいているそうである。これが我が国では、試合中の指揮権はルールブックでそれが一部は担保できる(そういうスポーツのルールだということで)ものの、練習や合宿キャンプ等での労働関係類似(というか労働者性が相当あるわけであり…)。ファーム選手、年収で言えば400万円でも、個人事業主である。私生活や球団キャンプまで公式試合のルールブックで規律できるわけもない。
 また別の事例では、新国立劇場なんかで度々問題になった合唱団メンバーなども、労組法の団結権があっても、雇用関係(労働法的には労働関係)は裁判で争っても一部しか認められてはいない。古くはフリーカメラマンの瀬川さんも労災で死亡し、事後に遺族が裁判で相当争ってようやく労災保険が下りた。
 このように、労基法上の労働者性についてはグラデーションの相当濃い場合であっても、労働者性を認めるのが困難な状況がある(何せ「個別に争え!」というわけである)。労働契約法が、ここいらをどれくらい整理したのか甚だ疑問である。法制度の直接の保護者も居ない(労基法における監督官や派遣法における需給調整官のような行政庁もない)。
 つまり現行制度では、労基法上の労働者であることと、労働契約(雇用契約)が成立していることと、実際に保護が発動されることとは、3つとも違うということになる。よって個別に裁判を起こすしかないわけである。

 ところで、hamachan先生ご紹介の宝塚歌劇団の例(記事は「ニュースポストセブン」)がものすごいので是非参照いただきたい。

http://www.news-postseven.com/archives/20110922_31197.html
>華やかで美しく心ときめく、日本を代表する歌劇団、宝塚。しかし、近年はその人気に陰りが差し、空席が目立つようになっており、タカラジェンヌたちもこれまでにない苦労を強いられている。いったい何が起きているのか。
元タカラジェンヌのA子さんは、トップスターや2番手ではないが、所属組での公演では、重要な役が与えられ、ファンも少なくなかった。
宝塚にはこんなタレント契約がある。劇団員は宝塚音楽学校に2年間通った後、歌劇団に入団。最初は阪急電鉄の社員扱いだが、6年目にタレント契約を結び、以後毎年更新されるというもの。
A子さんはその契約の際に、“クビ”をいい渡され、今年退団した。
この「タレント契約」ってのが、個人請負だということになっているのでしょうね。
>「私は劇団側からタレントとしての契約をしないといわれ、退団を余儀なくされました。理由は明確にはいってくれません。思い当たるのは、さばけるチケット枚数が少なかったことだけです」(A子さん)
A子さんによれば、明確なノルマはないものの、劇団員が公演のたびに一定枚数のチケットをさばかないといけない暗黙のルールがあるという。もちろん、そんなルールは「プラチナチケット」などという時代には必要なかったことだ。
「宝塚という世界で上に行くためには、容姿や人気だけでなく、チケット販売の実績も重要なんです。劇団側がノルマを直接的に強いることはありませんが、トップだったら1公演最低200枚だとか、2番手3番手は150枚、4番手5番手は100枚というように、実質的なノルマがあるんです」(A子さん)

・・・引用終わり。

 チケットのノルマが達成できないと「タレント契約」打切りだというもの。

 また、hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-6d6a.htmlにも、同氏の過去ログも含め詳しく掲載されているので参照されたいと思う。
 以下にその解説を一部引用させていただく。なお、本投稿自体hamachan先生に触発されたものであるので。。。また、小生、日頃より多くの情報をhamachan先生の書籍・論文(特に判例解説は勉強になる)・ブログから得ているもの。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-8a7f.html(ゆうこりんの労働者性)
この「実態は異なる」という表現は、労働法でいう「実態」、つまり「就労の実態」という意味ではなく、業界がそういう法律上の扱いにしている、という意味での「法形式の実態」ということですね。 そういう法形式だけ個人事業者にしてみても、就労の実態が労働者であれば、労働法が適用されるというのが労働法の大原則だということが、業界人にも、zakzakの人にも理解されていない、ということは、まあだいたい予想されることではあります。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-f75b.html(タレ・スポの労働者性と育成コスト問題)
これは、実は大変深いインプリケーションがあります。芸能人やスポーツ選手の労働者性を認めたくない業界側の最大の理由は、初期育成コストが持ち出しになるのに足抜け自由にしては元が取れないということでしょう。ふつうの労働者だって初期育成コストがかかるわけですが、そこは年功的賃金システムやもろもろの途中で辞めたら損をする仕組みで担保しているわけですが、芸能人やスポーツ選手はそういうわけにはいかない。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-d5d3.html(芦田愛菜ちゃんの労働者性)
ところで、それにしても、芦田愛菜ちゃんのやっていることも、ゆうこりんのやっていることも、タカラジェンヌたちのやっていることも、本質的には変わりがないとすれば(私は変わりはないと思いますが)、どうして愛菜ちゃんについては労働基準法の年少者保護規定の適用される労働者であることを疑わず、ゆうこりんやタカラジェンヌについては請負の自営業者だと平気で言えるのか、いささか不思議な気もします。 ゆうこりんやタカラジェンヌが労働者ではないのであれば、愛菜ちゃんも労働者じゃなくて、自営業者だと強弁する人が出てきても不思議ではないような気もしますが。
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/10/post-a7a8.html(ボワソナード民法と労働者性)
実は、ここには書いていないのですが、現行民法の前のいわゆる旧民法(ボワソナード民法)には、こういうスポーツ選手や芸能人の契約が、雇傭契約であるとはっきり明言されています。・・・もちろん当時は「労働者性」などという言葉はありませんが、少なくとも「角力、俳優、音曲師其他の芸人」は、この後に出てくる「仕事請負契約」などではなく、「雇傭契約」であることは明らかであったわけですね。
なお、このほかにも、「~~の労働者性」というのは、本ブログで繰り返し繰り返し取り上げてきているペットテーマですので、ご関心あれば検索してみてください。 そんな単純な話ではないことがわかるはずです。

・・・以上「hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)より」引用終わり。

 ボアソナード民法は、よくできていたと思う(これは「手段債務契約は全て雇用だ!」という意味であろう)。が、そもそも私人間(企業間)で労働力の売買ができるようになっていることが忘れられている(実際には昔から雇用以外の手段債務契約が存在している訳で…)。個人的には、人身売買も含め禁止すべきだと思う。今も昔も、手段債務(労働力の時間切り売り)は労働者性が濃くあるわけである・・・。

 あと一言、僭越ながらhamachan先生にお伝えしたいのは(釈迦説となるが…)、「労働者性」を本人が声を上げたとしても、それが通用するためには、個別の行為を、一々本人が取り上げ、これを裁判所がすくい上げるのを待つしかないということである。法的に保護されていることと、その法を使える労働者にはかなりのズレがあって、これをいいことに‶ならず者〟が非常に多いということである。
 これは、芸能業界や一部のサービス生産における供給側の思惑として、その制作者自身の責任による雇い入れる際の『オーディション』ではなく、実際に市場投入して『オーディエンス』にかける方が、相対的に価値交換が高くなる確実性があることは事実であり、制作者側のリスクを供給された労働者各人が背負うこととなる。この点、それ以外の労働者一般に言えるような育てるリスクをペイするための企業への囲い込み(これは所謂「メンバーシップ」型等々)や法外な契約金を支払ったからとか新人を売り出すため初期コストがかかったからということなど(確かにほんの一握りのスターはこの理屈による)よりも、寧ろ、実質的には雇い入れた後に「市場に合わない者を首切りする」という都合もあるわけであって、そこらへんもやはり学者先生には解っていないのか、それとも特段問題視することではないという意味なのかが不明である。とにかく、人生の大事な時期に幸か不幸か業界入りし、同種の仕事を行おうとする限り他の選択の余地なく、そこの事務所にしがみついていたい者(個々のタレントやフリーの舞台人)が、「労働者性」を言った途端に干されるのがオチである。これは、hamachan先生の言われることがいかに正しくても、そのような直接の警察権(=制度保護者)は無いわけなのである。今のところは・・・。

 ただ、hamachan先生こと濱田氏のブログで、ことあるごとに我々素人向けに紹介・解説されていることは確立した制度とその立法意志であって、我々フリーの舞台関係者(なお小生は音響エンジニアだが…)は、そこは是非押さえておきたい。
 個人請負人を多数使用して自らの事業を行う“プロフェッショナルな発注者”の場合、ここの労務提供者(=実演家)を労働者に組み込む形で整理しなければならないと思う。芸能家・スポーツ選手は、自らのモチベーションのためには自由度が高くなければならないことはあろう。しかし、実演家やプロ選手がこれを維持するためにも、その生活にはもう少し契約期間や賃金などの保障が必要だということ。あと一つは、喩え「タレント」という存在が一つの企画商品に過ぎないとしても、新たな優れた人が参入できるための競争だけでなく、投入されるのが生身の人間である以上、企画・試験段階の苦難の創造期を支えた故山の者を養っていくだけの社会的寛容さも必要だと思う。
 最後に、意志行為その後の責任論としては、市場による『オーディエンス』に責任転嫁する(これだと結果責任の「個人化」に持っていかれてしまう)のではなく、所属事務所が行った『オーディション』の結果採用したという責任(「原因者責任」)を採用者たる事務所・制作者が負っていることを忘れないことだ。
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再掲載 自治体による労働者派遣法違反は是正指導が可能か?・・・(地方自治法234条の射程)

2014-05-22 03:29:00 | Weblog
 表記のエントリについて、閲覧数が多いので再掲載したい。なお、少しでも小生の悪文をご理解いただけるよう、一部の語句を修正したもの。

 地方自治体が競争入札による委託契約などで偽装請負を行っていた場合に、労働局による是正指導、即ち“是正によって法益回復と社会的責任を果たす”ことは可能であろうか。

 以下は、「変更契約は可能か?」という北海道町村会「法務支援室」による質疑応答集(事例集)があるので、先ず引用して紹介する。http://houmu.h-chosonkai.gr.jp/jireisyuu/09/kaitou09-13.htm

変更契約書の適否について、少し長いが、引用開始・・・
《質問》
 当町では、契約を締結する際、所定の様式を定め、契約別にその様式に不要部分があれば2重線で抹消し、捨印を押して契約書とする扱いをしている。
 今回、上述から既に締結済みの契約について変更する必要が生じたため、別紙工事請負変更契約書により変更契約することとしたいが如何か。
《回答》
 本事案については、当初契約内容及び変更の事由等について詳細は存じませんので、契約の一般原則について検討することとします。
1 地方公共団体の契約
 地方自治法(以下「自治法」という。)第234条で「売買、貸借、請負その他の契 約は、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとする。」と規定しています。
 この契約について、「一般に地方公共団体が締結する契約とは、地方公共団体が私人 と対等の地位において締結する売買、貸借、請負等財産上に関する私法上の契約をいうのである。このように、地方公共団体が締結する契約がいわゆる公権力の主体としての権力行為ではなく、私人と対等の地位において締結する契約である以上、これを規律する実体法も、 また私人と同様に民法その他の私法であり、したがって、その効力その他の契約の実体については、すべて私法の規定の適用を受け、いわゆる契約自由の原則も適用される」(詳解地方公共団体の契約(ぎょうせい)13p)と解しています。
 また、契約自由の原則の内容には「①契約締結の自由、②相手方選択の自由、③内容決定の自由、④方式の自由がある」(基本法コンメンタール<第4版>新条文対照補訂版・債権各論Ⅰ(日本評論社)5p)と解していますが、普通地方公共団体においては、自治法第234条第5項で「普通地方公共団体が契約につき契約書を作成する場合においては、当該普通地方公共団体の長(又はその委任を受けた者)が契約の相手方とともに、契約書に記名押印しなければ、当該契約は、確定しないものとする。」と規定しています。
2 契約書の内容
 まず、地方自治法施行令第173条の2で「この政令及びこれに基づく総務省令に規定するものを除くほか、普通地方公共団体の財務に関し必要な事項は、規則でこれを定める。」と規定し、契約については、貴町財務規則(以下「財務規則」という。)第7章で規定し、契約書の記載事項については、同規則第135条で「契約書には、その必要に応じて次の各号に掲げる事項を記載するものとする。」と規定しています。
3 事案の検討
 まず、一般に地方公共団体が締結する契約とは、上記1から、地方公共団体が私人と対等の地位において締結する私法上の契約であり、民法の適用を受けるものと考えます。
 次に、本事案の工事請負契約についても、民法が適用され、契約の自由の原則に基づき行われるものと考えますが、上記1の後段から、自治体の契約については書面によらなければならないものと考えられ、契約書の内容については、上記2から、財務規則に基づいて行われるものと考えます。
 したがって、変更契約の方式については、契約の自由の原則に基づき、貴町の定めより行うものと考えます。
 なお、北海道では、契約の変更について、文書事務の手引<第4版>(北海道総務部文書課)299~300pで以下(1)及び(2)のように定めていますので、参考に記載します。
 (1) 意義
 当事者、契約金額など契約の一部を変更しようとするときは、原契約書自体に加筆、訂正するのではなく、原則として現契約書の内容を一部改正するための変更契約書を締結しなければなりません。
 (2) 変更契約の方式
 変更契約の方式には、「溶け込み方式」と変更部分について別に変更契約書を作成する方法があります。
 「溶け込み方式」による変更の方法は、条例、規則などの一部改正の方法の例によります。
 別に契約書を作成する方式による変更の方法は、「溶け込み方式」のように字句の一部を改めるのではなく、変更契約書自体にその変更部分の内容を取り入れるものです。
・・・引用終わり。

 上記(「北海道」の場合)によれば変更契約の方式には2つあって・・・
 ①「溶け込み方式」・・・現契約書の字句の一部を改める方式であり、自治体会計規則などによっては訂正(様式規定)の方式に限られる場合もありえる
 ②「別に契約書を作成する方式」・・・自治法第234条第5項の規定によって、契約を締結するものと考えられ、これは新たな契約・・・である。

 さて、引用したした上記事例では触れられていないが、競争入札(一般・指名も)を行っていた場合、話はそう簡単ではない。即ち、競争入札を行った意味が問われるのである。この点、参考書「詳解地方公共団体の契約(ぎょうせい)13p」の一部を引用しただけでは、自治体契約の説明としては疑問が残るのである。《5月18日追記》
 これは、例えばPFI事業者の選定の際の国の説明(内閣府と総務省ほか関係省庁の連絡会議でも議論され、下記のような「通知」となった)にも現れている。

 「PFI 事業に係る民間事業者の選定及び協定締結手続きについて」関係省庁連絡会議幹事会申合せhttp://www8.cao.go.jp/pfi/iinkai/shiryo_a14r41.pdf・・・
より引用・・・
4.落札者決定後の応募条件の変更について
(1)変更の最小化について
・落札者の決定の前段階において対話を行うことで、できるだけ発注者と応募者の認識の不一致を解消し、落札者決定後の契約書案等の内容の変更を最小化するよう努めることが重要。
・ただし、競争性の確保に反しない場合に限り落札者決定後の契約書案、入札説明書等変更は可能。
(2)競争性の確保に反しない例
・同じコストで質が向上する場合や、質が同じでコストが低減できる場合は、競争性の確保に反するものとはいえないこと。・・・引用終わり。

 つまり、ここで重要なのは業者選定の際に競争させた以上、その競争性に反してはならないという原則である。この原則はPFIだけでなく、地方自治法に規定される調達方法の原則である。落札した後の内容変更は、同じコストで質が向上する場合と、質が同じでコストが低減できる場合に限られるのである。尤もこの場合、コスト・質ともに等価交換と言えるような変更契約を行う場合、競争性を害するか否かという判断は難しいが、しかし、民間各社の競争性は、このような市場交換価値だけで判断されるわけではなく、一般に当該競各社がその個性に対応した契約内容の履行可能性とリスクの軽重なども関係するのであるから、例え経済価値が等価値である契約内容の変更も、原理的には競争性の確保に反する場合があると言わなければならない。即ち、自治法234条の競争入札や随意契約の趣旨には、果たして当該業務を業者が引き受けるか否か?、と言う自治体側のリスクも含まれるわけで“選ぶ側もまた選ばれることを予定している”からであり、交換価値だけの問題ではない。

 そうすると、労働局から是正指導が入り、仮に適法な請負(委託等)に変更しようとする場合には、自治体の調達原理とされる(自治法234条の条理だとされる上述「北海道町村会」の説明)に従う限り、偽装請負を行っていたときよりも、自治体にとって有利となる契約しか出来ないことになる。自治体(偽装請負の派遣先)が主導して設計した労働者派遣法違反(“官制偽装請負”)は、違反したことによってさらに違法派遣先であった自治体に有利な契約変更がされる結果となるのである。即ち、選ぶ側は選ばれない。
 これでは“火事場泥棒”、いや“火付け盗賊”である。
 違反事案に対し行政指導を行えば、『法の支配』(少なくとも私法制定の)の大原則である利益と責任の均衡、並びに、憲法の平等則に反する結果となるのである。労働局需給調整担当官はこれをどのように整理するのであろうか。
 言い換えれば、自治法234条の“射程”、即ち、同法の「刃(やいば)」は両刃であって、その一方は自治体を拘束(“契約自由の原則”を修正)し、もう一方は、当該規定により契約相手たる私人の人権を制限(自治法に基づき具体的業務を発注・調達する行政機関の法律行為には独禁法・下請法とも適用されない《公正取引委員会回答》ことがその証左であろう・・なお、代わりに公法関係による調達相手との関係を規定した「政府契約の支払遅延防止等に関する法律」《第十四条 地方公共団体への準用あり》が存在するが、これとて下請法で禁止されるような発注者からの減額要求や追加給付要求の禁止規定は無い・・)しており、たとえ委託(請負)契約と言えども、事実上自治体にだけ許された相手方への契約(協議による変更契約)の制限である以上、行政上の法律関係による公権力類似の作用(私人にとっての権力的または権力に準じた作用)である。
 因みに、よくある自治体の“業務委託用標準約款”などにあるような「・・この契約に定めのない事項、及び疑義が生じた場合には双方が協議して定めるものとする・・」との一条は、上述の官民契約における自治法234条の制限作用である「競争性の確保に反しない」行政行為を限度として修正されることになる。これは即ち、公法関係によって民法などの一般私法関係を一部排除ないし修正する『行政契約の権力的側面(一般権力関係)』であると言えよう。

 よって、自治体が適法な委託契約に変更することにより社会的責任を果たすことは難しいと思われる。

 ところで余談となるが、事業者同士で下請け法が適用され、公正取引委員会による勧告にいたった事例を次のURLで確認できるので参照されたい。下請法「勧告」一覧「 http://www.jftc.go.jp/shinketsu/sitaukekankoku20.html 」。また、特に「株式会社ホーチキメンテナンスセンターに対する勧告について(平成19年12月6日)」同HP「 http://www.jftc.go.jp/pressrelease/07.december/07120604.html 」は、公正取引委員会による調査が入った後に受託者に不利な変更契約を一方的に行ったことが、さらに違反事案とされ、これにより更なる勧告を受けたたところが興味深い。寧ろ、自治体には適用されないことに違和感すら感じるくらいである。

 では、“直接雇用”や“適法な労働者派遣”とすることにより是正できるであろうか?
 
 一般に、労働者派遣法に違反し、且つ派遣受入期間の制限に抵触した以降も労働者派遣を行っていた場合、労働局による是正指導では、派遣先に対して直接雇用させるなど労働者の雇用安定を前提に指導するが、地方自治体の場合には「地方公務員法」により任用の根拠が問題となる。即ち、「地方公務員法第15条(任用の根本基準)職員の任用は、この法律の定めるところにより、受験成績、勤務成績その他の能力の実証に基いて行わなければならない。」と。
 また、臨時職員・非常勤職員の任用についても任用権者の自由裁量ではなく、実質的必要性・公益性に合致することを要件とする。
 そうすると、自治体と民間事業者との間で偽装請負が行われた場合には、民間事業者間のそれとは異なり、直接雇用を含む雇用の安定を図ることで社会的責任と法益侵害を回復することが法制度上(地方公務員法、その他の公法関係により)不可能、若しくは著しく困難である。また、派遣受入期間の制限に抵触しない場合にも、労働局が行う是正指導において、適法な請負契約と適法な派遣契約に改善させるという選択肢のうち、後者の「適法な派遣契約」に改善させる方法をとることも、給与条例主義、給与直接払いの原則により出来ないであろう。

 そもそも自治体では、労働者派遣による労働者の調達は法制度上予定されていない。即ち、職員の任用根拠については上述の通りであるほか、自治体が行う公共調達(契約事務)については、地方自治法施行令により「第173条の2 この政令及びこれに基づく総務省令に規定するものを除くほか、普通地方公共団体の財務に関し必要な事項は、規則でこれを定める。」となっており、労働者派遣契約と言えども民間事業者との契約である限り自治体の長が定めた「規則」に必ず拠らなければならず、労働者派遣契約について“財務・会計等の規則”でもって定めている自治体は現在のところは無いであろう(少なくとも私はお目にかかったことが無い)。また、労務提供の種類には民法の契約類型上複数(委任・準委任・請負・事務管理・雇用・・等々)あるが、一方、地方自治法上の契約は既に述べた自治法234条によるか、若しくは労働関係であれば一般職に属する職種についてはすべて地方公務員法の定めに拠ることとなる。
 これは、即ち、自治体の少なくとも執行機関が行う全ての調達行為(労働者の調達《特別職を除き》と、その他の契約)は、①地方公務員法による『任用』と、②自治法234条に言う『契約行為』とにきれいに分けて整理できるわけであり、また、法秩序の構成原理上、それぞれの法の守備範囲を超えて運用することは出来ない。

 ちなみに、行政法学上、以下のような概念で捉えられているので、念のためまとめておきたい(町村法務支援室「法制執務概論」http://houmu.h-chosonkai.gr.jp/gakushuu/22%20gaironn.pdf 3ページより引用・・・。
 『法秩序の構成原理』法の形式にはさまざまなものがあるため、それぞれの法が抵触・矛盾することがあり得る。法の体系を維持し、法秩序の論理的体系を維持する必要から、次の4つの原理がある。
 1 所管事項の原理(守備範囲を逸脱すれば無効となる。)
 法令とか、政令とか、条例とかいう法形式の違いに応じて、それぞれの守備範囲を定め、互いにその分野を守らせ、他の分野に立ち入らせないようにすることにより、法令相互間の矛盾・抵触を生じないようにしていることをいう。
 2 形式的効力の原理(上位法は下位法を破る。)
 憲法を頂点として階層的秩序を構成している法体系においては、それぞれの法形式の間には上位・下位の原則が定められており、法形式を異にする法令相互の間でその内容に矛盾・抵触が生じた場合には、上位の法令が下位の法令に優先して適用される。
 3 後法優先の原理(後法は前法を破る。)
 形式的効力を等しくする2つ以上の法令の内容が相互に矛盾・抵触するときは、後から制定された法令が適用される。なお、後法優先の原理は、後法と前法とが、その内容において一般法と特別法の関係に立つ場合には、適用されない。
 4 特別法優先の原理(特別法は一般法に優る。)
 形式的効力を等しくする2つの法令が一般法と特別法の関係にあるときは、その特別法が規律の対象としている事項・人・地域等に関する限り、特別法が適用され、一般法は、その特別法と矛盾・抵触しない限度においてのみ適用される。
 特別法・一般法という場合における一般法とは、ある事項について広く一般的に規定している法令をいい、特別法とは、それと同一の事項について、特定の人・物、地域・場合・時間・期間等を限って適用されるような内容の定めを規定している法令をいう。
 ・・・引用終わり。

 なお、草加市と総務省・厚生労働省とのやり取りが、まさに本件で私が問題とするところを突っ込んで質問しているが、総務省・厚生労働省とも当初は正面から回答していないところが興味深い。即ち、草加市は「法令上、委託可能な事務が制限されるほか、指揮命令系統上の不都合が生じるなどの問題があるから、派遣労働者を派遣のまま任用したい」・・。これに対して総務省は「自治体が委託できる業務については労働者派遣の受入も可能(厚生労働省も同じ回答)」・・とすれ違っている。そこで草加市は「労働派遣法に基づく労働者派遣を受け、その派遣労働者を任期付一般職員、臨時職員、または嘱託員と同等の職務に従事させて良いが、受入期間によっては派遣元との契約関係を解消し、直接雇用することとするという解釈で良いか?」、これに対しまたもや総務省は「派遣職員は地方公共団体の「職員」ではなく任命権者が「任用」することはできないことから、仮に任命権者が当該派遣職員を採用する等任用行為を行う場合には、(受入期間にかかわらず)派遣元との雇用関係は消滅させ、地方公共団体の職員とする必要があることを確認的に述べたもの」、さらに同省は「なお、職員として任用する場合には、地方公務員法に基づき能力の実証を経て任用する必要がある」・・という具合である。http://www.city.soka.saitama.jp/hp/menu000008900/hpg000008809.htm (←参照:草加市HP)
 思うに、草加市の“任用と派遣労働者の受入を併用できないか”、という趣旨の質問は如何にも乱暴であるが、しかし総務省の回答も、法の守備範囲(射程)という違いがあるのであるから、わかり易く『任用』と、契約によって単に『指揮命令関係に入ること』との違いということをよく説明すべきであった。要は、“労働者派遣法”という制度は、公務員法制度の枠のなかには入り込めないのである。なお、総務省・厚生労働省とも、民間人と公務員との労働関係がある場合(総務省は、前述の通り「委託可能な業務」であれば「労働者派遣可能な業務」であるとしている)における「給与条例主義」と「給与直接払いの原則」、さらに「民間企業における派遣労働者の直接雇用の機会付与(これは期待可能性だけでなく、個別の労働者の雇用保護という意味もある)とのバランス」については、何れも十分に検討した回答とは言えないので、今後よく議論して整理されるべきであろう。何せ、公務員に指揮命令されて一定の事務を行う派遣労働者が、任用権者との権力関係(一般権力関係)から切り離されているという証拠は無い。

 結局、自治体の事務は上記のような法体系下にあって、“労働者派遣法”は、地方自治法・地方公務員法(少なくともこの2つの公法関係)を超えられないであろう。

 よって国の考え方を全面的に採用したとしても、希望や合意によって直接雇用に転換する方法で社会的責任を果たすことは不可能と言うべきである。
 また、適法な派遣に転換することも、上述のような派遣労働者に対する期間経過による直接雇用申込みという期待利益と労働者保護(派遣期間を超えることとなる場合の、派遣先への義務付け)が生じることが無いように運用しなければならず、少なくとも“利益と責任とのバランス”という点で問題がある。
 つまり、適法な労働者派遣に転換したとしても、その後の安全装置のうちの一つが外されているのである。このような労働者派遣制度の運用(派遣期間超過後の保護の欠落)は不当であろう。

 結局、地方自治体が労働者派遣法違反を犯した場合には、民間事業者同士の違反に比較して、行政指導による法益回復手段が著しく制限され、且つ、当該制限された部分につき上述の社会的責任を果たすことが出来ない以上、刑事罰(労働者派遣法の罰条の発動)によって社会的責任を果たさせる他ないのではないかと思う。
 況してや、自治体契約担当の公務員であれば、違法行為に至る前に反対動機の形成が可能であったわけであり、あえてこれに挑んだ自治体の契約担当者の責任(派遣労働者の保護装置を一つ取り外した責任)は重いと言えよう。
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困った判決…「徘徊事故、妻に賠償命令 JR監視不十分と支払いは減額、名古屋高裁」…

2014-05-01 23:07:06 | Weblog
 非常に困った判決が名古屋高裁で出た。以下は産経新聞の記事。

 徘徊事故、妻に賠償命令 JR監視不十分と支払いは減額、名古屋高裁

 認知症の男性が線路に立ち入って列車事故で死亡した事故。2審では減額されたものの妻の責任を認定、359万円を支払うように命じた。

 平成19年12月、愛知県大府市で徘徊症状がある認知症の91歳男性が電車にはねられ死亡した事故をめぐり、JR東海が遺族に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は24日、「見守りを怠った」などとして男性の妻(91)らに賠償を命じた一審名古屋地裁判決に続き、妻の責任を認定し359万円の支払いを命じた。長男の責任については一審判決を変更し、認めなかった。

 昨年8月の一審判決はJR側の請求通り720万円の支払いを命じたが、高裁は「JR側の駅利用客への監視が十分で、ホームのフェンス扉が施錠されていれば事故を防げたと推認される事情もある」などとして減額した。

 判決によると、認知症で「要介護4」の認定を受けていた男性は19年12月7日、JR共和駅構内で電車にはねられ死亡。同居していた当時85歳の妻と、近くに住む長男の嫁が目を離した間に外出していた。
…<引用終わり>(産経新聞 2014/04/24)

 この判決は、認知症による徘徊で鉄道事故を引き起こし、本人は死亡。保護責任者の妻は、JRに対して損害賠償を支払わなければならないというもの。見守りをせねばならないのが当時85歳の妻。この妻に‶見守りを怠った〟として責任を負わせるというわけである。

 さて、国は近年、在宅介護の方向へシフトしているが、しかしこれでは、徘徊の可能性のある老人を自宅に監禁しなければならないことになる。施設での介護にもう少し予算を配分できないものかと思う。消費税も上げたのに、これでは「人たるに値する介護」を受けられなくなる。
 若しくは、高齢者による事故(鉄道事故だけでなく)の損害賠償保険のようなものを国は用意すべきだと思うが、如何か?。

 もう一つ付言すると、そもそも鉄道は、特別法(例えば、鉄道営業法 第37条「停車場其の他鉄道地内に妄に立入りたる者は十円以下の科料に処す」など)、それも刑事罰付きの法令によって、軌道を横断するする際など、一般の往来者(人馬車両)よりも優位性が確保されているほか、当該軌道の敷設によって地域を分断するような土地利用が許されているのである。尤も、これはその性質(公共性)からくるものであって、適用される法令の立法意志もこのような理由から制定されたものと考えられよう。道路よりも優位性があるということである(勿論、一部「自動車専用道路」なども類似の性質があろうが…)。踏切で遮断機が下りている時は緊急車両でも停止しなければならないし、危険回避のための急停止の場合であっても数百メートル先でで止まれればよいことになっている。もし、ゴムタイヤ(摩擦係数が大きいもの)であれば、もう少し短い距離で停止することも可能となるかもしれない(強力な磁石ブレーキで制動することも可能だろう。尤もこの場合、乗車客が危険にさらされることにもなるかもしれないし、急停止でも数百メートルで停止することを前提にしている「立ち乗車」や「車内販売員」は非常に難しくなるかもしれないが…)。
 とにかく、経済性・利便性・公共性が、人身の安全よりも優位に立っていると言える余地はある。当に「合理性の基準」である。
 我々は、思考を停止せずに、果たしてそれ(即ち、他の利益と生命とを比較考量したり、功利主義的決定論に、人身・生命を持ち込んで決めるということ)で良いのかどうか?という疑問を持つことは必要だとも思う。また、そこまでいかなくとも、プラットホームの安全性も問題であり、これなど、乗降時以外に軌道に転落しない構造に改修することはすぐにでも出来ることだと思う。
 以上のように考えると、鉄道の設置・運行者は、その立場の優位性にあぐらをかいている可能性はないとは言えまい。
 唯、その大量輸送能力と公共性故に、一般の運送手段より優位性を残す意味はあると思われる。

 しかし、先般の如く、原子力発電の公共性や合理性には、少なくない疑問を持つこととなったことからして、これと類似の思考(それとは違うという考えもあろうが…)を巡らせれば、その犠牲がたとえ少数者であっても、ひとたび行動を誤れば、人身事故という取り返しのつかない事態が発生する蓋然性の高い鉄道事故について、今少し深く考えることは必要だと思う。航空機や船舶などと比べても、鉄道は人の生命圏にあまりにも近い危険でもあるし、そのような危険は最も高いレベルで厳格に遮断されるべきだ。個人の認識や認知能力に頼っているだけでは防ぐことができない事故には、フェールセーフや、事業者によるフールプルーフの考え方は欠かせない筈である。

 以下は試論だが、例えば、万一不幸にして事故が起きた場合も、行為者各人の責任能力に応じた法的・社会的な対応が必要であって、このような民事不法行為責任においても、刑事責任と同様の考え方を採用してはどうか?(利益と責任の均衡論というだけでなく、行為無価値論とか目的的行為論を、物質的社会的損害にもあてはめられないだろうか…)。勿論この場合、その分(責任非難の及ばなかった分)は鉄道交通の受益者を含め、法益回復は社会全体で背負うことにはなる。津波で2万人が死亡した結果をもって、その結果の全てを公務員の不作為責任だとまでは言えないのと同じだと思う。

 とにかく困った判決である。
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