このブログ2016.7.31に、夫馬信一『幻の東京五輪・万博1940』を記したが、本当に幻になるのではないかと思う。シンボルマークの盗作、国立競技場の再設計、各競技場の場所と建設費用、そして費用負担ともめ事が続いている。皆が開催に消極的なのだったらいっそのこと中止を宣言すればいいと思うが、そんな勇気のある政治家もいないのだろう。否、本質は利権漁りにあると考えれば合点がいく。鼻の利く小池知事からもプンプンと臭って来るぞ。
戦後左翼史その34 1949年② 『下山・三鷹・松川事件と日本共産党』
『下山・三鷹・松川事件と日本共産党』(佐藤一著 三一書房 1981年刊)を35年ぶりに再読。著者は、東芝労組の幹部で日共党員。松川事件では20名の被告メンバーの一人とされ、1審、2審で死刑、3審でアリバイが成立し無罪となった。獄中にあって怒りと極限の苦しみに耐え抜いた人と思える。
あらためてこの3大事件の背景を振り返る。1948年1月、米陸軍長官ロイヤル、「日本を共産主義に対する防壁にする」と演説、12月、GHQは経済安定9原則(*内容は大合理化方針)を発表。12月19日、日共は9原則に支持を表明(*何を根拠にこのような判断に至ったのか?)
1949年1月、第2回衆議選で社党の分裂による敵失ながら日共35議席を獲得。ここから吉田内閣打倒、民主人民政府の樹立すなわち9月革命と呼ばれる幻想に日共は取りつかれる。国鉄をはじめ各企業における合理化提案に対して、労組の闘いが先鋭化する。6月5日付け『アカハタ』、国鉄におけるストライキは止めろ!社会党・民同派のスト挑発に乗るなと主張。(*1964.4.17ストを敵の挑発に乗るなと中止に導いた構造と全く同じ)
1949.7.5、下山事件発生。著者は、現場の情況や周辺の目撃情報などから自殺説をとる。しかし、政府、公安警察、東大法医学教室などは他殺説を唱え、背後に政治団体の存在があると匂わせる。朝日・読売は他殺説を報道する中、毎日だけが自殺説をとる。明らかに、ターゲットは合理化に反対する国鉄労組、日共であり、弾圧の口実にしたいのだ。現在では、時効が成立し未解決事件に。
1949.7.15、三鷹事件発生。国鉄の労組員10名が逮捕される。1950年8月、東京地裁は、被告9名に細胞会議への出席というアリバイが成立し無罪判決。ひとりだけ日共党員でなかった竹内景助氏の単独犯行として無期懲役判決。高裁で死刑判決。最高裁上告棄却、死刑確定。再審請求もかなわず、1967年1月18日東京拘置所で獄死。これを良いことに、日共は関与していないとして竹内単独犯行を大宣伝!非党員の竹内を切り捨てた。
1949.8.17、松川事件発生。読売は事件後、東芝労組幹部が行方不明と記事を捏造。国労赤間勝美氏の自白により、国労10名(全員日共党員)、東芝労組員10名(8名が党員)が逮捕される。1950年12月6日、1審では全員有罪、うち死刑5名(著者も含まれる)、無期懲役5名、有期懲役10名合計で95年6か月。1953年12月22日2審、死刑4名(著者も含まれる)、無期2名、有期84年、無罪3名。新証拠のメモ発見、1959年8月10日、原判決破棄、差し戻し、1961年8月8日、高裁、全員無罪。現在では、時効が成立し未解決事件。
*(*は僕の考え)以上のことから、日共は、労働者全体の利益のために活動しているのではなく、党員のための組織であることがわかる。では、あくまで党員の利益を優先すると考えていいだろうか。僕は、違うと思う。その後起こる白鳥事件などの例からも、党組織の防衛が第一であることがわかる。たとえ党員であっても組織防衛のためには理不尽であっても切り捨てることを厭わない。まして、党を支持しない一般労働者のことなど歯牙にもかけないのだ。このような狭い度量を以って、社会を変えるとは一体どのような社会のありようを展望しているのか。
*人気作家で社会派と言われていた松本清張氏の『日本の黒い霧 下山国鉄総裁謀殺論』(1960.1文芸春秋)は、GHQ謀略説を唱え、世の中にかなりのインパクトをもたらした。この説によると、日共も被害者となることから日共にとっても都合の良い理論であった。後に、清張氏は日共のイデオローグということが明らかになっている。作家の作品が、特に清張氏は推理作家でもあり、読み物としての創作なのか、真実の解明作業なのか不明確である。著者の佐藤氏は清張氏の説を否定している。なお、『日本の黒い霧』で伊藤律氏を「官憲のスパイ」としているが、現在、出版元の文藝春秋社は、伊藤の証言の引用とスパイ説を否定する文献への参照を促す注釈を入れている。