労働安全衛生マネジメントシステム(OSHMS)の導入の少なさに思う
法令担当相談員 玉泉孝次
OSHMSは、平成11年に旧労働省から「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」が、更にILOによって平成13年に「ILOガイドライン」が出された。
厚生労働省、中災防、建災防等によって、導入が勧められている。
しかし乍ら、中災防のOSHMS認定事業場は現在全国で僅かに64、建災防の認定(評価)事業場は16にとどまっている。(2005/10)
建設業では、大手ゼネンコン5社すら認定(評価)を受けていない。(2005/10現在)
6年間も厚生労働省が旗を振っているにも拘らずである。
中災防のマネジメントシステムリーダー研修修了者は3,200名、
リスクアセスメント実務研修修了者は4,700名、
システム監査実務研修修了者は1,800名に達しているにも拘らず、導入・認定企業がこれ程までに少ない原因は何故だろう
KYT運動やゼロ災運動などに比べて 導入にならなかった原因は
(1)労働災害の減少とそれによる経営者の安全衛生への関心の低下、
(2)災害の減少による安全衛生担当者の発言力の低下、
(3)経営資源の安全衛生活動への分配率の低下、
(4)強度率重視視点のOSHMSと、度数率重視視点のゼロ災運動との整合性への戸惑い、
(5)ISO9000、14000の経験による疲労感
OSHMS導入事業場増加への手法を2つ
一つ目は、OSHMSの簡易版の策定。
二つ目は、経営者への説得の方法
目的は労働災害の防止なのであるから、初めから水準(費用も)の高いOSHMSではなく、中小企業が気軽に、安価に導入できるOSHMS簡易版が必要ではないか。
二つ目の経営者の説得の方法
(1) 経営資源の効率的な配分としてOSHMSの導入によりリスクを軽減する、
(2) リスクの軽減により重大災害を防止する、
(3) 重大災害の防止によりさらに経営資源を効率的に配分できる、
(4) OSHMS手法は生産管理に転用できる、
という「風」(労働災害の防止)・「桶」(経済効果)の説得。
安衛法を改正してOSHMSの導入により88条の届出を省略というインセンティブが付与されたが、それだけでOSHMS導入を促進するのは難しい。