「虚無僧は幕府の隠密の役目を果たした」と、一般に云われていますが・・・。
吉川英治の『鳴門秘帖』(昭和元年「大坂毎日新聞」に連載)などから、
そう思い込まれているようですが、幕府が虚無僧を雇って探索した したというような事実はありません。
『鳴門秘帖』の主人公法月(のりづき)弦之丞は、七千石の旗本の倅。
白面の貴公子、美男で多情多恨の青年剣士。
弦之丞は、隠密の宗家甲賀世阿弥の娘お千絵に恋をして、
虚無僧姿で阿波の国に入り、囚われていた甲賀世阿弥を救いだす。
しかし他国者の入国を厳しく禁じている阿波に潜入するのに
虚無僧姿は目立ちすぎです。虚無僧が幕府隠密と判っていたなら、すぐ
捕らえられてしまいます。また刀はどうやって隠し持ったのでしょう。
ついでに、甲賀忍者の服部家の系図にとして、能の観阿弥、
世阿弥と楠木も一族として書かれています。その系図が発見
されたのは、戦後のことだすが、吉川英治の『鳴門秘帖』で
甲賀の宗家を世阿弥としています。吉川英治は、この
系図の存在を知っていたのか、思いつきの偶然なのか、
これも不思議な謎です。