その中に軍隊手帳等を入れて腰にぶる下げて点呼場に集まるのだが、私もいよいよこの歳になってこんなものを必要としなければならないと思うと情けなくなった。具体手帳なんていっても何か軍歴でもあれば別だ。充分な体力、腕力ががあればまだ良いがこんな弱兵ではさっぱり自信がない。私が招集されるのはないと思っていた。
そもそも国民兵は検査で第一乙、第二乙の者で観閲点呼えを受けるのが丙種は免除であった。しかし戦局とともにご奉公しなければならなくなったのだ。そしてまづ奉公袋を用意しなければならないのだ。街で買って見たら昔と違って濃い緑色のスフ製の御粗末な物になっていた。
軍隊では「知らない」ことも「忘れた」と言わなければならないらしい。戦場で命にかかわることだから「知らないはずはない」教えてあるはずであると言う事になる。しかし「はい忘れました」とは多少抵抗感があった。長い時間がたったような気がするがとにかくやっと解放された時はほっとした。