経理・経理・経理マンの巣窟

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帳簿がないところからバランスシートを創る秘術

2011-11-06 10:10:14 | 達人経理マンへの道

 大企業では考えられないことだが、創業以来帳簿を付けたことがないという異常な会社も存在する。もちろん帳簿がないのだから決算書もある訳がない。こんな状態では税務申告書も提出できないし、銀行も相手にしてくれないだろう。

 ともかくスタートラインもなく、途中経過も断面すらなにもない。事実そうした会社に入社して途方に暮れたことがある。このままでは永久に帳簿は出来ない。だからといって途中から帳簿を作成しても、残高が分からないのでバランスシートが創れない。ないないづくしの中で、とりあえず現断面でのバランスシートを創ることにした。(便宜上、現在日=決算期末日とする)

●現状での資産・負債・資本の棚卸をする

①まず資産項目から始める
 手提げ金庫の中の現金及び保管小切手などを数えて合計額を現金勘定残高とする。
 預金通帳を全て記帳し、銀行から残高証明書を手に入れる。双方をチェックし、合計額を預金勘定残高とする。
 銀行に取り立て依頼していない手持ちの受取手形と取り立て依頼しているが、いまだ期日の到来していない取立依頼済手形を集計し、合計額を受取手形勘定残高とする。]

 掛売りで未入金のものがないか、営業及び社長に確認する。あれば得意先別の残額合計が売掛金勘定残高となる。
 事務所、倉庫内にある商品在庫数を種類別にカウントする。いまそれを購入したら単価はいくらなのかを調べ、カウントした実在庫数にその単価を乗じ、それらの合計額を商品勘定残高とする。(製造業の製品は、もっと複雑になるためここでは省略した)

 社長を含め全従業員に貸付金残高または、未精算の仮払金残高がないかを聞きとり調査する。もし契約書やメモがあれば、それらとの整合性をチェックする。これらの残高があれば、それぞれ分類集計し、貸付金勘定残高または仮払金勘定残高、或いは前渡金勘定残高とする。

 事務所や倉庫が会社の資産の場合は、土地と建物を分離し、それぞれの固定資産税の評価額を土地勘定と建物勘定の帳簿価額とみなすしかないだろう。また賃借物件の場合は、賃貸借契約書に記載してある敷金(退去時に返却予定のもの)の額を敷金勘定残高とする。

 現在購入したら20万円以上と思われる備品類を個別にカウントし、現在の市場価格を調査して、それらの合計額を器具備品勘定残高とする。社有車等があれば、購入時の請求書から購入価額を計算できる。但し請求書等の証憑類も紛失してしまった場合は、購入したディーラーに聞いた金額を車両運搬具勘定残高とする。

 ほかに発見できた資産があれば、その性質により正規の勘定科目残高として分類・追加する。

②次に負債項目の調査を行う
 自社で手形を発行している場合は、手形帳の耳をみて期日未到来分があれば、その手形金額を集計し、その合計額を支払手形勘定残高とする。
 商品仕入先から届いている請求書金額のうち、いまだ支払いをしていないもの(手形を発行したものは除く)を、社長に確認しながらピックアップし、その合計額を買掛金勘定残高とする。

 その他商品以外の請求書も同様に確認し、未払額を集計して、未払金勘定残高とする。
 預金の残高証明書を銀行に発行してもらうとき、同時に借入金の残高証明書も発行してもらう。その残高があれば返済期日を確認し、1年以内のものを短期借入金勘定残高、1年を超えるものを長期借入金勘定残高とする。

 その他社長や従業員からの借入金があれば、借用証書等を参考にしながら、返済期日を確認して、前述した短期借入金勘定残高または長期借入金勘定残高に加算する。
 従業員等から預かった、源泉所得税、社会保険料等で未納付のものがあれば、預り金勘定残高とする。

ほかに発見できた負債があれば、その性質により正規の勘定科目残高として分類・追加する。

③最後に資本の部を計算する。
 簿記を知っている人なら、すぐに資産=負債+資本という計算式が頭に浮かぶだろう。法定資本金は会社の登記簿謄本をみればすぐに判るので、残っている剰余金(欠損金)の金額は、前述した計算式を分解し、資産-負債-法定資本金で導き出せるのである。

 従って、その逆算した剰余金が創業から現在までの利益の累計額ということになる。(但し過去に株主配当や役員賞与を支給していないことが前提となる)

 これで現在のバランスシートが出来たことになる。これで各勘定科目の残高が確定したので、今後継続して帳簿を作成出来るようになったのである。

 それから税務署に行き、作成したバランスシートの剰余金金額を、過去の累計利益総額として一括して税務申告書の提出をしたい旨を、誠意を持って相談することである。この方法が絶対とはいわないが、少なくとも私の経験の中では、その方法で税務署は了解してくれている。

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