経理・経理・経理マンの巣窟

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きりのない軽減税率論争

2015-09-08 11:19:43 | 経済ニュース編

 やっと動き出したかなと思ったら、余りにもいい加減な消費税軽減税率の代替案が飛び出してきた。そして軽減税率を見送り代替案を創った経緯が非常に酷い。なんと麻生財務相に言わせると、「面倒くさいから」というふざけた理由なのである。

 その『面倒くさい代替案』の中味を簡単にまとめると次のようになる。
増税差額相当額を所得に応じて消費額を推計し、増税相当額を計算して還付するというもので、この方法は前回増税の際に提案された低所得者に対する一律還付と全く同じ手法である。(その後所得の把握が難しいということで一律還付に変わった)
 それにしても、増税を18月繰り延べ軽減税率の検討期間も延長したのに、その間政府や官僚は一体何をしていたのか。税金泥棒!と大声で叫びたくなってしまうではないか。

さらに推計で還付額を計算するのは不公平だと批判されると、それをかわすように、今度は将来予定されているマイナンバー制を利用して、実際の買い物額を計算するのだと言うのだ。
 冗談じゃない。バカも休み休みにして欲しい。まだ本当に実施出来るかどうかも分からんマイナンバー制に、そんな重大な期待をしてもはじまらないぞ。また百歩譲って万一実施されたとしても、インフラ等の整備が追い付かないし、買い物のたびにマイナンバーカードの提示なんていうのも非現実的である。(住基ネットさえ、導入から12年以上が経過し、導入費用に約400億円も費やしたにも関わらず、住基カードの普及率はいまだに約5%程度に留まっているのだ)

 結局は代替案のほうが遥かに面倒くさいし、後付け還付では値ごろ感が悪く消費に結びつかない。さらには企業や地方自治体等の人件費が大幅増加することも目に見えているではないか・・・。
 さてさて文句だけなら誰でも言える、じゃあお前ならどうするのだ?と問われるかもしれない。もちろん批判する以上は、それなりの解決案は持っているに決まっている。

 そもそも欧州のVATが多段階税率で構成されているのに、なぜ日本では実施できないのだろうか。それは欧州では買い物の都度、インボイスを発行してVATを個別管理するシステムを構築しているからである。
 ところが当初我が国は強引に消費税を導入したため、欧州のようなきめ細かな仕組みをとらず、第二法人税的とも言えるやっつけな仕組みでこの税制を構築してしまったのだ。

 だがあくまでもこの仕組みは一時しのぎであり、いずれは多段階税率にするためにインボイス方式を採用するつもりだったはずである。ところがいつの間にか、1989年の消費税法施行から26年も経過してしまい、その間政府が何もしないまま放置していたため、一時しのぎだった現行システムが企業や国民に完全に根付いてしまったのだ。
 そしてもう、いまさらインボイス方式はとれなくなってしまった。しかしだからと言って増税しないわけにもいかない、と言うジレンマに陥ってしまったのである。たぶん麻生財務省の面倒くさいとは、このあたりの経緯を理解し、分かり易くかつ誤解のなきよう、国民に説明することが出来ないと言うことなのであろう。

 それではそろそろ結論を急ごう。私に言わせれば、多段階税率もインボイス方式も必要とせず、現行のシステムもほとんど変更することもなく、消費税率をアップさせ、かつ生活必要品等には税負担をさせない方法があるのだ。
 まず以下の現行の非課税取引をざっと見て欲しい。
(1) 土地の譲渡及び貸付け
(2) 有価証券等の譲渡
(3) 支払手段の譲渡
(4) 預貯金の利子及び保険料を対価とする役務の提供等
(5) 日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡及び地方公共団体などが行う証紙の譲渡
(6) 商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
(7) 国等が行う一定の事務に係る役務の提供
(8) 外国為替業務に係る役務の提供
(9) 社会保険医療の給付等
(10) 介護保険サービスの提供
(11) 社会福祉事業等によるサービスの提供
(12) 助産
(13) 火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
(14) 一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け
(15) 学校教育
(16) 教科用図書の譲渡
(17) 住宅の貸付け

 現在でもこれだけの非課税取引があり、この非課税取引に対する処理方法は既にシステム化されている。従ってこれに今後以下のような生活必需品等を新しい非課税取引として認知・追加すればそれで良いのだ。
 以前にも本ブログにて同様の提案をしたことがあるが、実に簡単ではないか。政治家や官僚の皆さん!是非ご一読あれ。
新・非課税取引案
1.電車、バス、飛行機などの運賃
2.電話、電気、ガス、水道、郵便料金などの公共料金
3.住居用建物の譲渡
4.医薬品、美容整形以外の自費診療
5.新聞、書籍、雑誌
6.食料品全般とすると、その区分が煩雑となり実務的ではないので、ほとんど加工をしていない生鮮食料品の譲渡に限定する(米・野菜・肉・魚・果物など限定列挙する)
 ほかにもまだあるかもしれないが、少なくともこれらの品目は、欧州でも非課税あるいは軽減税率としているところが多い。また国民感情的にも納得出来るし、システムなども混乱させないシンプルな取引品目ではないだろうか。とにかくやたら複雑で、判断の難しい軽減品目範囲の設定や、多段階率は誰も望んでいない。ここは政府の柔軟な対応を期待したいものである。

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