不動の動

洞察しましょう――(観相学的)断章(フラグメント)。。う~ん、、洞察には至らない印象を書き留めるメモ、いや落書きかな。

水朝

2017-07-05 | Weblog
朝日社説
国税長官人事 政権の体質の象徴だ
2017年7月5日(水)付
 「指摘があれば、その都度説明責任を果たす」。森友学園や加計学園を巡る問題が大きなテーマとなった通常国会の閉会直後、安倍首相は記者会見でそう語った。
 しかし、本当に国民への説明の大切さがわかっているのか。疑問符を付けざるを得ない人事である。
 新しい国税庁長官に佐川宣寿・財務省理財局長が5日付で昇任する。森友学園問題を追及する野党からの国会質問に対して何度も答弁に立ち、徹底調査を拒み続けた人物だ。
 佐川氏は大阪国税局長や国税庁次長を歴任しており、麻生財務相や菅官房長官は「適材適所」と口をそろえる。役所の通常の人事異動の発想で財務省が案を固め、首相官邸もすんなり認めたのだろう。
 しかし安倍政権には大事な視点が抜け落ちていないか。納税者、さらには国民がどう受け止めるか、という問題である。
 大阪府豊中市の国有地はなぜ、周辺と比べて9割安で森友学園に売られたのか。安倍首相の妻昭恵氏を名誉校長とする小学校の建設用地だったことが、財務省の対応に影響したのではないか。森友学園問題では、国民の財産を巡って不透明で不公平な行政が行われたのでは、と問われ続けている。
 佐川氏はどう答えてきたか。
 森友との交渉記録については「売買契約締結で事案は終了しているので破棄した」などと繰り返し、職員への調査を求められても「いちいち指摘を職員に確認することはしていない」と突っぱねた。国会議員とその背後にいる国民に真摯(しんし)に向き合う姿勢からほど遠かった。
 国税庁は524の税務署を持ち、5万人余の職員が日夜、個人や企業の金の動きに目を光らせている。国民から税金を徴収する権力は絶大で、税金を使って政策を行う他の役所以上に説明責任が求められる。
 その組織のトップに、国民への説明を拒絶し続けた人物をすえる。理解が得られるとは思えない。麻生、菅両氏、そして安倍首相はどう考えているのか。
 佐川氏のかたくなな態度の背景に政権の意向や指示があったとの見方は多い。今回の人事についても「森友問題で政権を守った論功行賞」と見る向きもある。「とにかく官邸の意向に沿わねば」との空気が官僚の間でさらに強まることが心配だ。
 調べない。説明しない。押し切る。政権はそうした体質を改めるべきだ。疑問が依然として残ったままの森友学園問題への対応は、試金石の一つになる。


安倍政権と官僚組織 過剰な情報統制をただせ
毎日新聞 2017年7月5日 東京朝刊

 東京都議選での自民党敗北の一因は、官僚組織に対する安倍政権の過剰な情報統制と見られている。

 政権に不都合な文書の存在を認めない。確認されると内容がうそだと言う。さらに都合の悪い情報に「守秘義務」の網をかぶせようとする。

 安倍晋三首相が「反省」を口にするなら、こうした「政と官」のゆがみを正さなければならない。10日に行われる予定の閉会中審査でまずそれが試される。

 学校法人「加計学園」の獣医学部新設に絡み、萩生田光一官房副長官が、文部科学省幹部に手続きを急ぐよう迫ったことを示す文書が判明した。その後、萩生田氏は「正確性を欠いたものとのおわびが文科省からあった。強い憤りを感じている」とコメントし、官僚批判を展開した。

 全体の奉仕者である公務員は、政治家とは立場が異なる。官僚作成の文書が政治家の意のままにならなくてもおかしくはない。

 不都合な内容だからといって政治家が一方的に官僚を攻撃するのは身勝手ではないか。

 これに先立って、義家弘介副文科相が、国家公務員法(守秘義務)違反を持ち出して、職員をけん制するかのような発言をしたのも不見識だった。「総理のご意向」と書かれた文書の存在を告発した職員が公益通報者に当たるかを国会で質問された際の発言だ。

 組織の不正を告発する手続きなどを定めた公益通報の制度と、守秘義務違反は、全く別の問題であり、論点のすり替えと言うしかない。

 刑罰もある守秘義務違反を問うハードルは高い。最高裁の判例では、罪が成立するのは、保護に値する秘密情報を漏らした場合だけだ。国家戦略特区をめぐる議論の過程は秘密ではないはずだ。

 一方、公益通報者保護法は、通報対象を刑事罰がある刑法など460の法律違反に限定している。それでも法律違反に限らず通報対象を幅広くとらえるのが法の精神だ。公文書の作成や公益通報など広く公共の利益にかかわる問題への政権の感度が問われている。

 萩生田氏は内閣人事局長として、今夏の官僚人事にもかかわっている。人事権によって行政をゆがめることは許されない。


NHK
行政文書の管理適正化へガイドライン見直し 有識者は
7月5日 4時46分
国家戦略特区での獣医学部新設などをめぐって行政文書の管理の在り方が議論となり、政府は、管理の適正化に向けてガイドラインを見直すことにしています。有識者からは、共有された文書は行政文書であり、公開の対象だという指摘の一方、責任の所在が不明確なものまで公開すれば混乱を招きかねないとして、慎重な対応を求める意見も出ています。
国家戦略特区での獣医学部新設などをめぐって、中央省庁の職員の間で共有された文書やメールの管理の在り方などが議論になり、政府は、管理の適正化に向けてガイドラインを見直す方針です。

この中では、業務に関して作成されたメモやメールなどの電子データのうち、どこまでを行政文書と認定するかや保存期間などが焦点となる見通しです。

これに関連して、公文書管理に詳しい東洋大学の早川和宏教授は、共有された文書は行政文書であり、公開の対象だとしたうえで、「将来の国民が検証できるかどうかという観点で管理することが必要で、行政の対応を第三者がチェックできるようにすべきだ」と指摘しています。そして、ガイドラインの見直しで対応する場合、各省庁の恣意(しい)的な運用によって不都合な情報を隠すことが可能になりかねないとして、公文書管理法の改正が必要だとしています。

これに対し、経済産業省出身で中部大学の細川昌彦特任教授は「現場では生煮えの意見や未確認の情報でも日常的にメールでやり取りすることがあるが、そのまま世の中に出ると無用の混乱を招く。情報公開自体は大事だが、自由かったつな議論を萎縮させてはならない」と指摘しています。そのうえで、明確な基準を設けて、意思決定過程がわかる重要な文書は長期間保存して公開する一方、備忘録など責任の所在が明確でないものの公開は慎重に対応すべきだとしています。



朝日社説
対北朝鮮政策 試される日米韓の連携

 北朝鮮がきのう再び、ミサイル発射の暴挙に出た。
 国営メディアは、金正恩(キムジョンウン)・朝鮮労働党委員長の命令で大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射し、成功したと宣伝した。
 ミサイルは高度約2800キロに達し、39分間飛んで900キロ以上離れた日本海に落下したとしている。日本の排他的経済水域内だった可能性がある。
 核爆弾の開発とともに、核を運ぶミサイルの射程を米本土にまで延ばす。そこで初めて米国と対等な交渉に臨める――そんな考えのもと、北朝鮮は開発に国力を注いできた。
 だが、それは世界の安保環境をかき乱す蛮行であり、自らの首を絞めるだけだ。米国のトランプ政権の当面の選択肢を、対話ではなく圧力強化に向かわせることになろう。
 このミサイルにどんな能力があるのかは、日米韓当局の分析を待たねばならない。
 ただ、ICBMか否かを問わず、射程の拡大がつづく事態は地球規模の脅威である。その技術が中東など紛争地域に広がる恐れもはらんでいる。
 それだけに、国連安保理決議への長年の無視と侮辱をやめさせるための国際行動を、安保理は改めて考えるべきだろう。
 今回の発射後、友好国の中国政府も「安保理決議違反だ」と非難した。だが、もはや言葉だけでは済まされない。中国が実効性のある抑止策を打たねば、事態は変わらない。
 日本については、すでにかなり前から北朝鮮の中距離弾道ミサイルでほぼ列島全土が射程に入れられている。ICBMの開発が進んでも、ただちに脅威が変わるわけではない。
 むしろ射程の拡大に最も敏感なのは米国であり、日本、韓国との3カ国の枠組みとしての対応策を大きく左右するのはトランプ政権の反応である。
 韓国の文在寅(ムンジェイン)政権は北朝鮮との対話も視野に入れるが、トランプ政権はそもそも外交の軸足が定まっていない。日米韓の結束を最優先するために、日本政府は冷静な情勢分析に徹し、調整役を果たすべきだ。
 今週、ドイツで主要20カ国・地域(G20)の会合があるのを機に、日米韓、中国、ロシアの首脳が集う。各種の会談は、朝鮮半島問題への姿勢をすり合わせる格好の機会である。
 日米韓は、核・ミサイルの綿密な解析と監視をつづけ、中ロと包囲網を築く努力を強めるべきだ。北朝鮮の挑発に乗るような緊張や動揺は避けつつ、事態の改善をめざす厳しい外交の知恵を模索し続けるほかない。



毎日新聞社説
北朝鮮「ICBM成功」 危険極まりない挑発行為
2017年7月5日

 落下地点に漁船がいなかったのは偶然にすぎない。

 北朝鮮がまた日本海へ向けてミサイルを発射した。日本の排他的経済水域(EEZ)への落下は昨年8月からの1年弱で既に5回にもなる。

 北朝鮮国営メディアは「特別重大報道」として、大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星14」の発射に成功したと発表した。「核兵器と共に世界のどの地域も攻撃できる最強のICBM」だと主張している。

 北朝鮮の発表によれば、ミサイルは高度2802キロまで上昇し、933キロ先に着水した。5月に発射された「火星12」より約700キロ高い地点まで上昇したことになる。

 通常より高角度で打ち上げる「ロフテッド軌道」と呼ばれるものだ。2000キロを超える地点からの落下速度はマッハ15を超えるとされ、海上で逃避できるものではない。

 金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は年初から、ICBM開発が最終段階にあると表明してきた。金委員長の指示を完遂したと国内にアピールする狙いがあるのだろう。

 国際社会の制止を無視して核とミサイルの開発を続ける北朝鮮の身勝手な行動は、決して許されない。特に、日本海へ向けた相次ぐミサイル発射は危険極まりない行為だ。

 昨年から数えても北朝鮮は30発以上の弾道ミサイルを予告なしで日本海へ向けて発射してきた。

 日本海では日本や韓国など各国の漁船が操業している。上空には日本と欧州を結ぶ航空路が設定され、毎日100機近い旅客機が通過する。漁船や航空機にミサイルが衝突したら大惨事になってしまう。

 北朝鮮の弾道ミサイル着弾を想定した避難訓練が、今年3月に秋田県男鹿市で初めて行われた。その後、日本海側を中心に多くの自治体が訓練を行うようになった。日本国内での不安の広がりを反映した動きだ。

 不安心理は北朝鮮に対する世論をより悪化させる。北朝鮮はその点をきちんと認識すべきである。

 北朝鮮が米本土に達するミサイルを本当に開発すれば、米国は強い対応を取るだろう。そうなれば朝鮮半島を巡る軍事的な緊張が一層高まってしまう。国際社会は協力して、北朝鮮に核・ミサイル開発の断念を迫らねばならない。


読売