ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「容疑者Xの献身」

2005年09月26日 | 書籍関連
ゴールデンイーグルス田尾監督が、今季限りで解任される事となった。3年契約で在りながら、1年目で切り捨てられた訳だ。契約期間中に監督が解任される事自体は、過去にも多く見られた事だが、1年目での解任となると極めて異例と言えるだろう。

以前にも記事にしたが、開幕前から戦力が著しく劣っていると看做されていたチームを率いていた訳で、幾ら「勝負の世界は結果が全て。」とはいえ、1年だけで責任を問われるのは非常に酷だと思う。既存のチームで在っても、新監督が実状把握した上で方向性を打ち出して行くのに1年はかかるというのに、新規参入チームで且つ監督経験の無い田尾氏を据えた以上、最低3年はチームを任せるべきだろう。(百歩譲って、1年目と全く進歩の無いチーム状況で、2年目での解任というのならば未だ理解出来るが。)

開幕早々にGMの解任やコーチの入れ替えを行ない、その挙句に1年で監督を切り捨てる。こんな遣り方をゴーンルデンイーグルスのファンは望んでいるのだろうか?GMや監督、そしてコーチの能力不足を理由にするのならば、そういった人間を抜擢したフロントの責任は問われるべきではないか?現役時代から田尾氏のファンという事も在るが、それ以上に人材を使い捨てる発想しかないこのチームのフロントに憤りを禁じ得ない。こんな理不尽な事を平気でしている様では、ファンは離れて行くだけだと思う。

理不尽と言えば、先日読み終えた東野圭吾氏の「容疑者Xの献身」という作品もそんな思いが残るものだった。ストーリーは、「天才的な数学者で在りながら、冴えない高校教師甘んじている石神。そんな彼は、アパートの隣人女性で在る花岡靖子に密かに思いを寄せ続けていた。或る日、靖子とその娘が前夫を殺害してしまった事に気付いた彼は、愛する彼女に『力を貸したい。』と申し入れ、完全犯罪を目論む・・・。」

「数学だけが生き甲斐だった男の純愛ミステリー。」とか、「運命の数式。命懸けの純愛が生んだ犯罪。」といった惹句が並ぶこの作品。作者の東野氏自身も「究極の純愛小説。自分が今迄書いて来た作品の中で、間違い無くベスト5に入る。」と語っているし、週刊誌では大人が泣ける作品として推薦している著名人も居た。

決して悪い作品ではない。でも、「そこ迄高評価を下せる作品だろうか?」と感じる。半ば辺りでトリックが読めてしまった事も在るが、幾ら愛する者の為とはいえ、相手が自分に思いを寄せているかも全く判らない状態、否、思いを寄せている可能性が著しく低い状態で、そこ迄自分を”犠牲”に出来るものだろうか?という思いがどうしても在り、それがストーリー展開に無理さ加減を感じてしまうのだ。又、純愛と書くと美しいが、「その為だったら何をしても許されるのか?他者がどんな目に在ってもOKなのか?」という部分で、どうしても同調出来ない理不尽さが残った。

東野作品の良さは、読後感に漂う何とも言えない理不尽さ&物哀しさに在ると思ってはいるのだが、この作品に関してはその理不尽さの方向性が一寸違っている様な気がして残念だった。彼の力量を高く評価しているからこそ、65点という厳しい評価を下したい。

コメント (11)    この記事についてブログを書く
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11 コメント

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>マヌケ様 (giants-55)
2008-10-08 21:35:27
書き込み有難う御座いました。

救いが全く感じられない作品も世の中には存在しますし、あくまでもフィクションですから、其処迄感情移入してしまうのもおかしな話なのもしれません。東野氏も逆説的な意味で「純愛」と評したのかもしれず、読者にその判断を委ねたとも言えますね。
ストーリーがわかっていながら見てしまいました (マヌケ)
2008-10-08 21:10:18
釈然としない、納得がいかないのも一つの作品なのです。 作品は現実の道徳や倫理とは別の世界にある作家や芸術家による産物ですから。 納得のいかないものを創作したわけで、それを鑑賞して議論することや、社会に何かを投げかけることをも意図しているのです。 井坂の重力ピエロも映画化されますが、レイプされた母親から生まれた自分がレイプ犯である生物学的に、遺伝学的に父親である犯人を殺害して仇を討ちます。 それを育ての父親や兄は許します。 社会はおまえの罪を許さなくても家族は許すという終わり方をします。 感動という終わり方なのですが、明らかに倫理違反していました。 物語だから許せるのですが、もし現実で自分が当事者なら、もしかして許すかもしれないと思いました。 それが作者の投げかけたボールで、それをキャッチして受け止めた多くの人がそれぞれにどう感じるか、それは作品そのものには責任はないと思います。 ただし、今の世の中は未熟化して、未熟であるにもかかわらず、ネット上では未熟な意見が主流となって世論を形成したりする傾向があるものですから、危ない面もあるだろうなと懸念するところです。 ただし、あくまでもフィクションはフィクションとして楽しみたいですね。
>翡翠様 (giants-55)
2008-10-08 20:17:43
書き込み有難う御座いました。

この記事で「純愛と書くと美しいが、『その為だったら何をしても許されるのか?他者がどんな目に在ってもOKなのか?』という部分で、どうしても同調出来ない理不尽さが残った。」と自分は書いたのですが、翡翠様も全く同じ気持ちを持たれたのだと思います。あれは「献身」でも無いし、「純愛」でも無いと。そういった点で、東野作品にしては辛い点数を付けた次第です。
Unknown (翡翠)
2008-10-08 15:56:55
何の関係もない、罪も無い人を巻き添えにするのが納得がいかない、というか
それは本当の犠牲的精神ではないと思います。
しかし、それも単なる「サスペンスドラマ」で
終わるならアリかもしれないのですが
「献身」としてしまうところが
不愉快なのです。本当に相手の事を思うなら
実は警察へ行かせるべきです。
そうすればあの状況だと、情状酌量も考えられなくもなかったのではないかと。
なんか、うまく綺麗な言葉で誤魔化された気がしますから、多くの人が感動した、というのに
納得がいきません。しかし、話としては
確かに面白くはありました。
もっと、ドライに描いてくれた方が良かった気がします。感動モノみたいにしない方が良かったと私は思います。

同感です (saheizi-inokori)
2006-02-02 21:25:44
何で関係ない「技師」を?マイナス点です。
>西野警護様 (giants-55)
2005-12-24 02:00:14
初めまして。書き込み有難うございました。



比喩、成る程です(笑)。確かに「無償の愛」、「見返りの無い愛」をテーマにしている訳ですから、「相手が自分に思いを寄せているかどうか」は意味を為さないと言えますね。ここは、自分の中での常識で捉えてしまって、あくまでもこの小説のテーマ(概念)から視点をずらしてしまっていたと思い至りました。



恐らく、この小説を読んでシックリ来ない人の多くは、自分と同じ様に”一般的な概念”に縛られてしまっているからこそ、何か違和感を覚えてしまうという面が在るのかなあと思ったりもします。



これからも宜しく御願い致します。
おいおい、 (西野警護)
2005-12-24 00:38:47
>相手が自分に思いを寄せているかも全く判らない状態



そんなことおかまいなしに身を捧げた行為を描いた小説じゃない。

お相撲さんに「あんたそんなに太って日常生活困らない?」」と問うようなもの
はじめまして (モーラ)
2005-12-11 00:59:10
TBさせていただきました。

この作品、かなり考え込める要素がありました。
こんばんわ。 (nene)
2005-10-08 23:16:17
読み終えました。

私の感想を記事にしました。

TBさせていただきました。

よろしければご一読ください。
自己犠牲というもの (syuu)
2005-09-28 07:22:52
 田尾さんの心中はいかばかりでしょうか。選手達はそれでいいのでしょうか。それでよし、と思うのであれば、彼らに発展という未来はないように思います。上の首をすげかえれば事態は変わる、というものではありません。それは普通の会社にしたってそうですよね。そこに根付く体質を変えない限り、誰が上に立っても大して変化しないでしょう。

 楽天イーグルス、全くの白紙から立ち上げようと地域の人たちと一緒にがんばる姿に好感を持っていたのですが、ちょっとがっかりです。これでは地域の方々の気持ちを踏みにじった形でしょう。

 東野さんの本、読んだわけではないので、内容について何かを述べるのはおこがましいのですが、「自己犠牲」とは一体どういうものなのか、ちょっと考えてしまいました。周りのことにも気を配れない自己犠牲は、ただの迷惑にならないだろうか・・・。今度本を読んでまた感想書きますね。ちょうど、秋の夜長ですからね。
TBありがとうございます。 (t-higu)
2005-09-26 19:38:56
個人的には割と好きな方だったのですが、今までの作品ほど

読後の余韻が強くないかもしれないですね。



前作(だったかな)の「さまよう刃」とかは読み終わってからかなり暗い気分になったりしました。

もちろん、小説自体がよかったからなのですが。



実際問題、自分だったらやらないだろうなとは思いますが、本当にこんなことをやって

のける人もいるかもしれない、なんて思ったりもします。

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