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ヤマハGX250 エンジン腰上オーバーホール

2008年11月23日 | XS250XS400GX250GX400探求


UCGにとっての全て、そして探求の原点とも言うべき、ヤマハXS&GX250エンジン。
これまでに通算で何台見て来たでしょう・・・何十台、いえ何百台??

しかし、このエンジンを調子良く維持する事も本当に大変な時代になってきた。
いわゆる現代のマシンで走行距離や維持の問題等でエンジンが不調になってしまい、オーバーホールするならば、社外部品が存在しなくとも、各部を計測&点検し、純正部品を用意して、それに見合った内燃機加工と組み付けで作業は終了する。

だが、古いマシン、特に社外部品の供給もほとんど無いような状態のマシンだと、様々な問題点が発生する。
このGX250エンジンも同様の部類であろう。

兄貴分のXS650シリーズはかなり部品の供給が豊富な事もあり、条件はかなり優遇されている。
4ストロークエンジンは部品点数が多い事もあって、より細かな検証と手間が必要になってくるのだが、この250エンジンはオーバーホールする為の最低限の部品しか既に供給されておらず、オーバーサイズのピストンやピストンリングはいずれかのサイズでしか供給されないので、注意が必要。

なので、エンジンを開けないままに過走行するよりも、エンジンの状態的に怪しくなり、明らかに不調の症状が出る前にオーバーホールをするのが結果的に大幅なコストダウンに繋がる。

きっちりと管理し乗り続ければオーバー10万キロも全く夢ではないこのエンジン。
では、その秘訣とは・・・ずばりエンジンオイルに尽きます。ベストなのはオイル交換時期を2500キロ~3000キロ。
真夏の過酷な高温地獄や渋滞等でオーバーヒートさせない事。

空冷マシン全てに言える事は、走行風を当てない限り、エンジン温度は上昇するという点。
我々乗り手が、エンジンに歩み寄って管理出来る事は、油温計を装着し、一定以上、大体120度以上になり始めたら休憩させる事くらいしか出来ないのです。水冷車の場合、それらの管理はある状況までは、冷却水や電動ファンで管理されている。

少し話が逸れてしまったが、エンジンオイルを定期的に交換する事は本当に長く乗り続ける為には全ての生命線なのである。
ちなみに、もしこのオイル交換をさぼり、乗り続けた場合、どうなってしまうのか。

100分の1mm台の精度で管理されるシリンダー周りやヘッド関連の部分は、オイルの潤滑に100%頼って摩耗を極力減らし、また熱を外部に伝えている。それと同時に、削れた微細な金属粉を洗い流す。

これらのバランスがオイルの摩耗や劣化によって崩れ出すと、シリンダーは本来の指定クリアランスよりも広がり始め、使用限度値に至る頃には白煙を吹き始める。

当然、新車時や、オーバーホール後にははっきり確認出来たシリンダーホーニングのクロスハッチ(編目模様)は全て消える。
この事は、摩耗が始まり出すと、より加速度的に進行する。

オイルを抱え込んで、滑らかに潤滑させようとするこのクロスハッチの役割は非常に大きく、これらが消え始めると、シリンダーとピストンリングはよりダイレクトに接触し、オイルを掻き出してしまうので、さらに顕著に摩耗は進む。

当然、摩耗したオイルがエンジン各部に回るという事を考えれば、そのダメージはカムシャフトやロッカーアーム、吸排気のバルブ、ミッションやクランク等全てに深刻なダメージをもたらす。

またオイルの上り下がりにも十分に気を配っていただきたい。
ちなみに、毎回3000キロでエンジンオイルを交換しているが、どうも抜いた時のオイル量(GX250の場合、約2.0リッター)が、注入した時のオイル量と比べても明らかに少ない場合(1.0リッター前後)の場合は要注意。
この走行距離で約1リッターが燃えてなくなってしまっている。(オイルの漏れが無い場合)

よくこういう質問が有る。とりあえず走っているけれど、このままオイル上がり下がりが発生したままで乗り続けたらどうなるのか?

その行く末はと言うと、そのまま走り続ければ、オイルをさらにマフラーから吐き出すようになり、圧縮も低下、ブローバイガスからもどんどんオイルを噴き出すようになる。

それでもなんとか走っていたとして、最終的にはプラグがエンジンオイルで濡れるようになり、まともな点火は期待出来なくなり、走行困難。もしくは、そのプラグかぶりをキャブレターセッティングと誤診断し、セッティングを薄くしているのに、濃いままの状態で、結局始動困難になり、不動になる。

これが物理的な部品の破損が無い状況での、回り続けたエンジンの終わりを迎える。
どうもキャブレターの調子が悪くて・・・という状態で入庫しても、結局のところ、エンジンの状態が悪く、キャブレターオーバーホールではどうにもならない状態の事が多々有るのも事実。

はたまたエンジンもキャブレターも問題が無いのに、キャブレターオーバーホールを・・・という依頼もよくあるが、結局は添加の問題だという事も多々ある事実。

それらを短時間で見抜くにはやはり、多くの経験と勘所、そして今起きてる現象が、何故そうなってしまったのか?という仮説&推理を立て、修理した後に、その仮説&推理が正しかったかどうかをしっかりと振り返り検証し、判断する必要がある。

ということは、より細かなデーターで管理が出来るように、様々な計測器も必要になる。

↓画像は、シリンダーのボアサイズ(直径)を計測する為のシリンダーゲージ。100分の1mmの世界を知る為の道具とオーバーホール中で、また走り出す日を楽しみに待つGX250


こういった測定器具でデーターを測り、各部目視し、また時に手で触り、開けたエンジンの状態を隅々まで把握しながら、これまでの長い年月でどのような維持がされてきたのか?その全てが暴かれて行くのです。
バラして行くと、そのエンジンがメーカー出荷後に開けられた事があるのか?無いのか?それは見れば必ず解ります。
ちなみにこのXS&GX250&400の場合、100%判断出来ると言ってなんら過言ではない。(はっきり断言!)

↓ばらした状態の腰上の大物部品。オイルスラッジのこびりついた汚れ具合や摩耗&テカリ具合などでこれまでの維持され方が見えてくるなんて・・・恐ろしい


↓シリンダーの内径を計る事によって、摩耗度合いを知り、ホーニングで直せるのか?はたまたオーバーサイズで組み直す必要があるのか献立を組み立てます。吸排気バルブやバルブガイド等も同様。(注意 画像では吸排気バルブがまとめて置いてあるが、その全てのセット位置は解るように管理してあります。)


それでは、そういう類いの部品が供給されないこのXS&GX250の場合、このバルブの摩耗や、ロッカーアーム&シャフトの既に起きてしまっている摩耗にはどうやって対処するのでしょうか?
日進月歩、技術はより進歩しています。減ってしまった部品を完全に新品の状態に戻す事は出来ないが、ある摩耗範囲内であればコーティング技術で再コーティングする事によって実は大幅にフリクションを減らし、より良い状態に組上げる事も可能です。これらの技術はもちろん極限のレースシーン、(二輪だけでなく四輪の世界でも)採用されています。

↓特殊なコーティングされたGX250ロッカーアームと吸排気バルブ。もし大きく摩耗が進んでしまって使い物にならないからと気軽に捨てちゃダメですよ!手直し出来る場合が多く有ります。


もうダメだと諦めてしまう前に、まだやれる事はある。騙し騙し乗るなんて、もううんざりなんだよ。

XS&GXに乗っていて、ショップに頼ってみても、「うちでは見られない」と断られてしまった経験があったとしても、それは仕方が無い事だとも言えます。とにかく部品がほとんど揃わず、データーも無いし、これまでに見た実績も無かったりしては無理も無いのです。それと同時に言える事は、近年式のエンジンを見るのとは、比べ物にならない程に手間もかかるのです。

※要注意 本来ならば、エンジンはしっかりとした精度のクランクがあることが大前提、これなくして何一つ語れない。本来は腰下から全て見てあげるのが基本とも言えます。燃焼室で発生した力でピストンがクランクを押し、ピストンの上下運動が回転運動に変わる、それらが、よりムラなく狂い無く行われれば行われる程、熱の発生も抑えられ、振動も減り、ガソリンの消費も抑えられ、寿命も長くなる。

予算の都合で最低限=腰上オーバーホールのみの作業もありますが、もし腰下=クランクに何か問題が潜んでいる場合は、やはり腰上の寿命も著しく短くなります。また、よく腰上はオーバーホールしましたという話を聞きますが、ピストンリングをただ交換しただけというような話も多くあり、それは単なる部品交換だけになってしまいます。当然、ピストンリングの寿命は、油膜を保ち難いツルツルテカテカのシリンダーを往復するので、短くなります。

ここに書き連ねて来た事は、まだまだエンジンという一つの構成体の中でのほんの一握りに過ぎない事ではあるが、また一番修理の中でもコストが掛かる部分であり、走行している以上は中身を実際に見る事が出来ない箇所でもあるのが一番厄介であり、どうしても見た目で明らかにわかる部分のカスタムに走りやすいのも昨今の事実。

時間をかけて、組み直すエンジンとはなんと手間が掛かり、だがしかし、何も表面上は違いの出ない部分なのであろうか?
それでも信じている。きっちりと組まれたエンジンがどれほど滑らかで、走る喜びに繋がるのか?と言う事を・・・
見た目をかっこ良くする事は、重要だ。だけど、それでは速く走らないんだよ。

結果があるからこそ、大変な作業だって、いくらでも手を動かす事が出来る。

XSやGXが遅いなんて事、あるわけがない。空想ではない、妄想ではない、どれだけのパフォーマンスを叩き出すのか?きっと一緒に走った事のある盟友ならば知り過ぎてしまっている。

遅い遅いと嘆く前に、それは真の状態では無いと言う疑いから始めてみて何が悪いと言うのだろうか。
探求の原点が、そこに凝縮されている。

長くなったが、この話はまた次回に続けてみたい。


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