全日本ロードレースin筑波テスト二日目のJSB1000クラス、わずか2キロ程のサーキット、一周あたり一分を余裕で切るタイムにて周回を重ねる中でのメカニック業務は全国を転戦する中でも一番過酷な部類に入ると言えるでしょう。
このサーキットできっちり仕事をこなせれば・・・きっとどんなサーキットでもきっちり仕事が出来るに違いない。
現在の所、テストの成果は大きなトラブルも無く??順調です。
大変なのはやはり花粉&黄砂・・・何度くしゃみをした事でしょうか?
サーキット内でマスクをしていたり、くしゃみをしている関係者を多々見かけます。
レースメカニックは1日の走行の中でどんな仕事をしているのでしょうか?
実は知っているようであまり知られていないかもしれないので、今回は少しそんな話もしてみましょう。
たった一台(Tカー含めて二台)のバイクを走らせる為には、全てデーターの積み重ねが求められて来ます。
走らせる上で絶対に必要なのは、まずガソリン。こいつが無くては腹が減っては戦は出来ぬ。燃費を知る事も大切です。
バイクにおけるガソリン=彼らのエネルギー。
次にタイヤ。コンパウンドや空気圧、全てが重要な要素です。もし一つ間違えばそれが即転倒に繋がる、しかもそれが自分ではなく選手が見舞われてしまうのです。その代償は計り知れない。
↑一番上の画像。
用意されているホイールとタイヤの本数を見て頂きたい。(これが全てじゃないですよ)
もちろん全て超軽量マグホイール&スペシャルタイヤ。
ホイール単体の重さは・・・軽すぎて表現出来ません。普通に購入したら・・・二桁確実。
雨が降ったりやんだり、路面が濡れたり乾いたりするような状況で天気の予測がつかない時にはこれにレインタイヤも何本か加わり、管理はさらに大変になる。1日で何回ホイール&タイヤ交換しているのでしょう??数を数える余裕もありません。
そして足回り=サスセッティングや車高、これまた速く走らせる上では絶対欠かせない。
走行テストを重ねる中で、どれがベストなセッティングなのか、ありとあらゆる方向へトライしながら、ベストセッティングを探り出す。
これだけでは無く、管理されるデーターはとにかく膨大。ブレーキや吸気系、とにかく限られた走行時間の中で、秒単位の仕事が求められてくる。
選手が走行中は、サインボードを出し、ストップウオッチで計時しながらそれらを記録し、次にピットインする時のタイヤを用意したり、次にいかにしたらタイムが上がるかを考えたり、と同時に、ガソリンはまだ足りているか?タイヤは大丈夫なのか?
いかにしたら作業効率が上がるのか?とにかく心配事や問題解決のプロセスは尽きませぬ。
まるで機械のように正確に周回を重ねる中でほんのコンマ何秒ですら遅かったりすると何かトラブルがあったのか?
もしかして・・・???と脳裏を過りつつも、走行中のメカニックは選手を信じる以外に何も出来ない。
そう、走り出したが最後、オートバイとは孤独な乗り物なのである。
選手もメカニックも、絶えず先の事を考えながら、現在求められる仕事をとにかく確実に消化していくのだ。
時に半端じゃない程に高温のマフラーやブレーキ=ディスクローターで火傷をしたり、気付かぬうちに怪我をしていたり、足を挫いたり、腰を痛めたり、とにかく全てが闘い。
足は挫いても心は挫けず。最後にチェッカーが振られるその瞬間まで一瞬足りとも気は抜けない。
1日の予定が終わった後の安堵感もまた計り知れず。これに炎天下が加われば・・・想像するに容易い。
戦いを終えた後は、メカニックグローブが傷だらけ、あまりにもの高温で、作業中にグローブ自体が溶けてしまうのです。
あーあ、せっかくのグローブがボロボロだよ。
↓下画像参照
☆青いグローブ(こいつは有名だよね)は耐熱対策が施されていないため、人指し指の付け根部分が空気圧を計ったりする際に、大径のディスクローターに微妙に触れ瞬時に溶け出すのが見て解る。(↓下画像参照)作業しやすい反面、指や手の甲を火傷する。瞬時に溶け出し、最悪は高温のディスクローターがジュッと皮膚を焦がす。これで何度火傷したことか・・・とほほ
☆赤いグローブは耐熱対策を施したプロトタイプのスペシャルグローブ。去年シーズンから続けており、今現在もグローブのテストは進行中で、グローブメーカー&工具屋さんと意見を交え改良を加えつつデーター収集中、とにかく使い倒せ!!
過酷な環境に手を突っ込め~!!
作業製と難燃性を両立させたオールラウンダーがこいつなのだ。(=他2モデルのグローブの良いとこ取り=現在開発中)
☆少し地味な濃紺のグローブ(反射してピッカリしているグローブ)は、消防士が使うようなスペシャル素材で出来た超耐熱バージョン。難燃性のグローブではあるが、細かな作業が苦手だけどタフなヤツ。
1日のメカニック作業の中で、要所要所にこれらグローブを使い分けたり分けなかったり・・・
でもきっちり走行テストが終わった後には熱で溶けてしまったグローブも勲章なのだ。
走行中のマシンだけじゃなしに、ピット内の環境やメカニックの動きを細かくチェックしてみるのも、コンマ1秒を争うレースにおける醍醐味かもしれません。とにかくいろんなアイディアや経験がそこかしこに凝縮されて成り立っている。
そうなのだ!!飽くなき探求に終わりは無いのである。
まだまだ今シーズンは始まったばかり、テスト&レースは続きます。
いつまで経っても初心忘るべからず初志貫徹。
さぁ、明日も早朝から頑張るぞ~!!
以下おまけ