東京 新宿 バイク修理 「探求」 ガレージUCGブログ

日々GARAGE-UCGで如何なる修理や探求が行われ、どんなガレージライフを過ごしているのだろうか?

全日本ロードレース選手権 開幕戦 筑波いよいよ開幕

2010年03月29日 | 全日本ロードレース選手権
写真はたくさん撮り貯めているのですが、全日本選手権コンテンツ更新さぼっててごめんなさい。
去年までの分も、いろいろUPしなくては・・・っと思いつつ、気づけばもう春です。


↑長い2ストロークの歴史の中で間もなくレースで見る事が出来なくなるであろう渡部選手の乗るTZ125、主にこのマシンを担当します。
カウル類はまだテスト中なので、レース用のチームカラーにはなっていません。


↑外装類をストリップした状態のTZ125。GPレーサーなので、いろんな整備が迅速に出来るように、市販公道車とは様々な箇所で作りが異なります。


↑横江選手が走らせるYZF-R6。

今シーズン「RT森のくまさん 佐藤塾 仙台」チームからはST600クラス ヤマハYZF-R6 #62横江竜司選手とJ-GP3クラス ヤマハTZ125 #62渡部裕貴選手が出走します。渡部選手は、現在中学生で、今シーズンが全日本初デビュー戦となります。

もちろんUCGもメカニックとして出場致します。早いもので森のくまさんチーム三年目の活動。
2ストロークレース最後の年、UCGは主にTZ125担当です。

先週は二日間、筑波サーキットで開幕テストが行われ、出張して参りました。

初日は真冬に逆戻りか?と思われる寒く雨の降りしきる中、テストが開始され、様々なデーター収集やセッティングに追われた二日間。全日本が開催される中でも、この筑波サーキットは暖気をさせたり、出走前後の準備や片付けが一番大変です。マシンや機材をサーキット内のガレージとピットで往復したり、走行中にピットからガレージまで足りない部品を取りに行ったり。なので一日を終えると、かなりぐったりするのが最大の特徴。ましてや雨だったりすると・・・

確かに通常のガレージ業務よりも環境的にも過酷です。選手もメカニックも限られた時間内でしっかりと結果を出して行かなくてはなりません。そんな限られたある種究極の世界では、メカニックとしても学べる事が本当に数多く有ります。全てが凝縮されています。

ガレージを休業させる事はもちろん皆様にご迷惑をお掛けしてしまう事であると理解しております。ではありますが、UCG自身が一番大切にしている「探求」をより追い求め、煮詰める為にはレースメカニックの仕事も欠かす事の出来ない活動と経験であり、何にも代えられない勉強でもあります。

いよいよ今週末レース開催です。なので今週は水曜日から日曜日まで出張です。(火水木曜はガレージUCG営業致します。)
ガレージの営業が通常とは異なり、営業時間の短縮や臨時休業させて頂きます。
その間、対応遅くなってしまいご迷惑お掛けしますが、メカニックとしてしっかりサーキットで仕事をして参りますので、何卒よろしくお願い致します。アツい念を、そしてアツい声援送って下さい!

と言う訳で

ガレージUCGスケジュール 今週は変則的な営業になります。
garage-ucg.comトップページでもお知らせしておりますので、ご確認下さい。

3月31日(水)午後4時まで営業
4月 1日(木)通常通り営業   →筑波事前テスト
   2日(金)臨時休業     →筑波事前テスト
   3日(土)臨時休業     →筑波レース予選日
   4日(日)定休日      →筑波レース決勝日
   5日(月)定休日
   6日(火)通常通り営業

ケイヒンFCR35Φキャブレター セッティング ヤマハSR400

2010年03月08日 | SR400 SR500探求


つい先日、2010年になったなぁ~なんて思いつつも、気づけば3月も半ばに突入。
卒業の季節です。そして巷では新しい門出の時期。

不景気だとか、少しだけ景気が改善してきたとか、そんなニュースに耳を傾けつつ、目の前に聳え立つ、日本経済の象徴とも言える、新宿副都心の高層ビル群を見上げ、いつも通りの作業が続いてます。

そうは言っても、これまでのガレージUCGを立ち上げてからの八年間の中でも、一番不景気風が吹いている事は肌で体感出来ます。だが、落ち込んでいる暇はない。依頼がある限り、一つ一つその瞬間を大切に、おそらくは想像以上に丁寧な作業を積み重ねております。

さて、今回の字数もまた莫大だ。

早く暖かくならないかな~ってバイクに乗るのが楽しい時期を間近に想像しながら、今回はFCRキャブレターを搭載したSR号のキャブレターセッティング。

このマシンは数ヶ月前にエンジン腰上をオーバーホールし、ようやく慣らしが終わった所で慣らしリミッターからようやく解き放たれるという事で、全開までのセッティングを見直し中。面白いのは、オーバーホールを終えた直後、低開度領域だけでセッティングを大まかに詰めておいても、ピストンリングやピストンが馴染んでくると、それだけで一気にセッティングの方向は変わり、もっともっととエンジンはガソリンを欲しがります。なので一番恐ろしい事は、オーバーホールする前からのセッティングのままの場合、その後のセッティングは大きく異なってくる事が大半なのである。

エンジンが馴染んできて、ガソリンを多く欲しがる=セッティング的に薄くなってしまう事は多々有り(内容によっては、逆も有り)それらをしっかり補正しなければ、エンジン寿命は著しく短くなってしまうのである。つまりは何の為のオーバーホールだったのか?という原点に帰着する。

もちろん、このオーバーホール後の慣らしを終える頃の距離にはエンジン的にもチェックしなければならない点がある。
大切なのはタペットクリアランス。特に吸排気バルブを交換したり、バルブシートカットを行った場合、要注意。
必ず距離を見計らって再調整&点検を行う。

バルブの当たり面がしっかり馴染んでくると、そのクリアランスが密になる事もあるので、再度クリアランスを調整しなければいけない。これが直押しバルブの場合、シム式なので、何気に面倒なのだが、ロッカーアーム式の場合だとその点はすぐに再調整できるので、作業的にはとても有り難い。

先ずはそんな前提作業をしっかり行った上で、いよいよ実走行しつつのセッティング。

セッティングも、賛否両論、いろいろな方法があるし、シャシーダイナモにマシンを載せてデーターを見ながらリセッティングするのもデーターとしては確実だが、レースの世界では、当然シャシダイがピットに有る訳ではないので、キャブ車の場合、気圧や湿度、気温や、そのライダーが伝えてくるインフォメーションの中で、いろいろ煮詰めるのだが、FI車が主流になり、コンピューター片手にマップを見ながらリセッティングしたり、エンブレを強めたり弱めたり、そんな変化をすぐにフィードバック出来るのは時代進化のお陰でもある。当然、その進化の中での車体自身のセッティングの方向や目的も異なってくる部分も当然ある。高出力を狙うのか?低燃費を狙うのか?それとも自主規制的な出力制限をするのか?

実際にはまだまだストリートではキャブ車の占める割合は多い訳で、そういう中では実走行やオーナーの乗り方&用途を考えつつ、セッティングを煮詰めて行く事が大切なのである。そういう細かな配慮までは機械では出来ない。

乗り手に因っても当然操作は異なる。一気にスロットルをワイドオープンにするのか?じわーっと絞り込むように開けて行くのか、それだけでもセッティングの方向性は大きく異なるのである。

それと同時に、よくあるキャブレターセッティングの相談としては、調子が悪い=セッティングと考えてしまう乗り手が非常に多い事。ただメインジェットを交換する事がセッティングでは無いのである。

何年もそのキャブレターを酷使してきて、リセッティングをするというのは本末転倒。まずはきっちりとキャブ自身の前提を作り出さなくてはいけない。それから初めてセッティングの領域に突入出来る。

だから良くありがちなのは、セッティングをいくら絞っても、プラグがカブるという場合。
各通路の気密性が悪くなってるのを無視して、カブってしまうからと、とにかくメインジェットの番手を小さくして行けば高速走行時にそのバランスは一気に崩壊し、エンジンが焼けてブローに繋がる。2ストローク=すぐに焼き付くというのは、それらの判断ミスによるところが非常に大きいのである。(何か大きな問題を抱えていればすぐに重大な結果となって現れるのは2ストローク車の事実。)

ということでしっかりとした前提条件を作れば、5番手~10番手もジェットを換えれば明らかに濃い薄いの判断がしっかり出来るのだ。そこを突詰められなければ、セッティングはおろか、土俵にすら上がれないのである。
なので改めて今後セッティングに向き合おうとしている探求者にはその点をしっかりと理解してもらいたいと切に願う。
もちろんその話については、ガレージに実際に来てもらえれば、うんざりする程に話は出来るし、原因や理由、そして結果までも明確に説明出来ます。というよりは、説明しなければならない義務がある。



画像に出ているジェット類はほんの一例。いろいろ合わせれば、数えた事はないが、ガレージ内にはこの4倍くらいはあったりします。この中のいずれかの部品を二つでも購入すれば、なんとそれは一食分の弁当が買えてしまうのである。
それもただの弁当では無く、高級幕の内弁当が買えるかもしれない。デフレだのなんだのと言われ始めて久しい巷では、このジェットを一つ購入するだけで、立派な弁当だって買えるであろう。悩む、その問題、実に悩む。飯とジェット、どちらかを選べと言われたら・・・なんじゃそら

メジャーなFCR、CR、PWK用のメインジェットと共に、FCRスロージェットもCRキャブのスロージェットも豊富に有ります。これ意外にもミクニ系のジェット類やらニードルやら、気づけば莫大な量になってしまった。おそらくはこういったセッティングパーツだけで二桁万円になっちゃうかも??ひょえ~(販売用の在庫ではなく、あくまでも依頼のある車輛用のテスト部品です。もちろん各社各種セッティングパーツや消耗品類も取寄せ可能なのでご相談下され。)

ありとあらゆる車種のキャブレターオーバーホールやセッティングを煮詰めるならばセッティングパーツはあってもあっても足らず、特に四気筒=マルチエンジンに対応しようとするとかなり大変なのである。

もし自分自身でセッティングを煮詰めてみたいならば、新品以外のキャブレターの場合、何度も語っているがしっかりした前提条件を作った上で、必要なジェットやニードル類は絶対にケチらない事。結果、もしそのジェットがテスト走行のみですぐ外されてしまったとしても、そのたった一度の為の探求が最高の経験であり価値なのだ。
(基礎無くして家は建たない。無論、エンジンの圧縮がしっかりあるのかも重要である事も付け加える。)

一つ二つ異なるジェットを用意して、これまでよりも調子が良くなっただって?え?それで終わりなのかい?
ジェットを買う予算が無いだって??でも出来る事はなんでも自分でやりたいだって?そんな都合の良い、矛盾した事言ってるんじゃないよ!苦労無いままに、誰も手は差し伸べてはくれない。助けを求めてこなくても、苦労している人には、大抵の場合、それを見ていたら、出来る限りでなんとかしてやろうって思うのが心情である。そもそもが、ノーマルから何かしらバランスを崩すという道=改造やチューニングに進む事自体が、文字通り「苦労」なのだ。なので決して簡単に事は進まない。

少し道は逸れるが、そう考えると、自分が働いて稼ぐ事と、誰かに働いてもらって、そこにお金を払うという事はまさに一体なのであるとはっきり感じられる。少しでもコストを節約したいのに、寿命はどんどん短くなり、破壊の道へ突き進み、いざそうなって大きな出費を目の当たりにし、結局は、さらに働かなくてはいけなくなる。あー、そんな悪循環は嫌だ~

やりたいのに、わからないからとりあえず軽く調べて、トライしてみれば、ぶっ壊す。さらに高い出費・・・うーむ、素晴らしい勉強代。

結局、それでは途中で身動きが取れなくなり、ノーマルに戻すのはプライドが許さず、ある程度コストを掛けたのに、全てが中途半端に終わる。予算が捻出出来ないどころか、最悪はマシンが動かないようになり、見なかった事にしよう的な結果になる。もし自分がそんな目にあったら、絶対にそうなると断言出来る。事実、学生時代にいろいろテキトーにバイクいじってた頃は、そうやって草むらのヒーロー化したマシンもあったっけ・・・唖然

以上の事は、別に誰かの事を思ってる訳では無しに、全てかつての自分の話し。中途半端に終わらせる事に納得出来ず、気づいてみれば、今のUCGが、はい出来上がり。

リプレイスキャブ、レーシングキャブを手に入れるならば、こういったセッティングの事まで必ず含みで考える事。もしキャブを買ってそのまま付けてはい終わり、あとは適当に走るからいいもんね~ってな感じならば、絶対にノーマルキャブのままがベスト。エアクリーナーも付いているし、煩わしいセッティングも無い。

そうでは無く、必ず行き過ぎてフィーリングが悪化する所を知った上で振り返ってみればピークが判るのではないだろうか?
現状よりも良くなったとしても、それがBestなのか?Better?なのか実証&確証はあると断言出来るのだろうか。
だがしかし、リッタークラスのバイクの場合、ある程度セッティングが出てくれば多少のズレがあってもガンガン走ってしまったりもするのもまた事実。

まだ上り調子の途中で、勝手にここがピークだと何を基準に判断出来よう。
登山とまるで同じ。ピークを越えて、振り返って初めてその結果が判るのである。
その為の苦労を惜しんではいけないと、まるで説教じみた居酒屋のオヤジlikeな語りになってしまったではないか。

何度もキャブを外しリセッティングを行い、かなり素晴らしいパワーを発揮するようになったこのマシン、これからもしっかりと走り続けてもらえたら、最高に嬉しい!!

キャブでもサスペンションでも、セッティングに「ハズレ」は存在しない。あくまでもその時々の過程にしか過ぎないのだから。環境によっては、それがベストな時だってある。
伝えにくい部分はいろいろとあるけれど、百聞は一見に如かず。到達した者にしか判らない世界。

真の探求者を自負するあまり、一人で無駄に遠回りをする必要は無い。
それは自分=UCG自身が散々に散財してきた事でもあるから間違いない事実でもある。
多分、そのコストは何十万円?うーん、多分それじゃ収まらないだろうな・・・
あのバイクに出会ったが故に、人生が変わっちまったよ・・・とほほ

大丈夫、そんな経験があったからこそ、あらゆる相談に対して、コスト面抜きでしっかり話を聞きます。費やす時間だってもちろん同じ。いきなり良い結果が出るかはわからないが、まずやってみる。そして探求する。それは実際の仕事でも同じ。
皆がやりたがらない、他で断られてしまうような依頼にこそ、最大のヒントが隠されている。
結果が伴わなかったら、あー、ダメでしたか~・・・トーンダウンしてしまう時も中にはあるかもしれない。
結果を出せるのにコスト面で対峙出来なかった依頼ももちろんある。(実はこれが一番難しいトラブルシューティングかも?)


かつてプライベーターだった頃の自分が一番求めていたのは、実はそこだった。頼むから、おいらのバイク、見ておくれ。もう何が調子悪いのか、それ自体が判らないんだよ~
正直言うと、当時の自分に、現在の自分が直に教えてあげたかった。知っていれば簡単な事も、知らなければ難しさは深まるばかり。どんな事だって、初体験ってのは存在する。大切なのは、その「初」という事をどれだけ増やせるか、それが最終的には大きな結果に繋がるのだと信じている。

なんだかかなりアツい事になってしまった。相変わらず、自覚症状の無い、ロックンロールは続くのだ。

そんな心の叫びを発しつつ、ガレージの業務は淡々粛々と行われる。