風通庵-直言

ヨモヤマ話

「カスバの女」の作曲家が韓国人であったとは

2008-10-25 10:12:42 | Weblog
 <海を越えて>のタイトルで、玄界灘をはさんで日韓の大衆歌謡は影響を与え合うと、産経新聞に連載中の「埋もれた日韓歌謡史」。その中で一つ、戦前、「木浦の涙」を作曲し、戦後はエト邦枝らのヒット曲「カスバの女」を作曲した久我山明は日本での活躍で知られているが、これはペンネームで本名は孫牧人。韓国人である、(原文のまま)と。戦前から日本と韓国をまたにかけての活躍で、戦後の一時期は日本を拠点に活躍し、例の「カスバの女」の作曲、鶴田浩二の歌った「ハワイの夜」も作曲。昭和32年に帰国したが、平成11年1月、東京を旅行中に病死した。韓国の古賀政男と呼ばれた人。


     カスバの女

            作詞 大高ひさを
            作曲 久我山明
            うた エト邦枝
            (のち 緑川アコ)

  一、涙じゃないのよ 浮気な雨に
    ちょっぴりこの頬 濡らしただけさ
    ここは地の果て アルジェリア
    どうせカスバの 夜に咲く
    酒場の女の うす情け

  二、歌ってあげましょ 私でよけりゃ
    セーヌのたそがれ 瞼の都
    花はマロニエ シャンゼリゼ
    赤い風車の 踊り子の
    いまさら帰らぬ 身の上を

  三、あなたも私も 買われた命
    恋してみたとて 一夜の火花
    明日はチェニスかモロッコか
    泣いて手を振る うしろ影
    外人部隊の 白い服

 この歌、なんともスケールの大きな日本人離れの感がある。歌った歌手のエト邦枝からしてがそうだ。ここは地の果てアルジェリアと文明の廃墟か荒廃の地、落ちぶれた人間の吹き溜まり、夜の酒場で働く流れ者の女、もとはフランスのムーランルージュの踊り子であったか、そこに一時の慰めをもとめて訪れる、これももはや見捨てられたも同然の外人部隊の男たち。ここに登場する捨てられた存在の男女、重苦しさ、陰鬱、地の果てと、エト邦枝のハスキーボイスの息をつめたような歌い方が、歌のテーマ、雰囲気をたくみの表現して印象深い。
 この曲を聴いて、ゲイリークーパー主演のアメリカ映画「モロッコ」、ジナ・ロロブリジータ主演のフランス映画「外人部隊」をそれとなく思い出すが、おそらく作詞の大高ひさを氏もこんな所をイメージして作詞したのではなかろうか。 


     
     

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