金曜日の日経の夕刊のあすへの話題に鬼平軍団の魅力と題して成果主義の話が書いてあった
「鬼平軍団では活動費はたっぷり支給されるが手柄をたてたからといって報酬があがるわけではない。ただリーダーである長谷川平蔵は、部下がそれぞれの得意技を存分に発揮できるように仕事を割り振り、その仕事振りをしっかり見極めている
だから、事件が解決した夜、一緒に軍鶏鍋をつつきながら、お頭が「ご苦労だった。まあ一杯やれ」と言って差し出す茶碗酒に手下たちは感激して、次の捕り物にも命懸けで飛び出して行くのだ。」
といい、こんな上司の下で仕事をしたいという思いが、この小説の人気なのだろうと述べ、最後に
「「お頭は分かってくださる」という上司と部下の信頼関係こそ、成果主義を成功させる秘訣があるように思う。」
と結んでいる。
成果主義を導入する際に大事なのは、各自が高いフィーをもらうことよりも、評価が公正であると各自が感じることだとよく言われます。
また、モチベーションの観点から言えば、評価に対するフィードバックは金銭である必要もなくたとえば、若手や中堅にトップが「○○君、××の件とてもいい仕事をしてくれたね」と声をかけるだけでも、十分に彼らは鼓舞され仕事に対する情熱を持ってさらに頑張るし、上は見てくれているという気持ちで組織への帰属意識も増します。
また、鬼平のように、各自の能力を存分の発揮できる仕事で報いるというのが、旧来の日本での成果を各自に報いる仕組みでした。
しかし、日本で新たに賃金での成果主義を導入する企業は、すでに傾いている企業が多いため、成果主義を導入しても、ギスギスした職場環境の中では納得性の高い評価はできないのでしょう。
私が以前いた支店もまさにそんな感じでした。
しかしシャインの組織文化論あたりでもドラッカーでも、組織の文化を変革するためには評価に手を入れるということは非常に重要だといっています。
組織の構成員は評価を通じて、この組織が重きを置いている価値とは何かというメッセージを受け取るわけです。
トップがいくら新しい理念を訴えても、旧態の手法で仕事をしている人が評価され続ければ、構成員は新しい理念ではなく、旧態のルールで動くようになります。
支店では、大昔に成果を挙げた部課長に力があり、その政治力でその下の部下たちの高い評価をもぎとってくるという社内政治で成果が決まっているのを、末端の社員まで理解していました。
そういう部課長のマネージメントができないなかで、あたらしい評価システムで頑張ってくれたまえとトップが言っても、組織はまわらないんですよね。
(理念があり人間としても敬意に値する支店のトップが私にはとても不幸に思えました)
ところで、そのシャインは「組織文化を簡単に変革できるというえせ組織文化論者がいるが、私は組織文化は簡単に変わらない言っている」と述べています。
エセってまさに「ITを入れれば組織文化を風通しよくできますよ♪」などといっていたコン猿だよなぁって思いますが、人の行動や心理に対する十分な観察があれば、容易には人や組織の行動様式が変わらないことぐらい理解できるのでしょうが、キャッシュしか見ない人たちや、IT万能論者には、人の行動や文化なんて関係ないのでしょうね。
さて、支店にいたときに、
「・会社は社員を研修に行かせ、
・社員は自分のスキルの不足を悩み、
・業界大手であるという立場から、多くのベンダーさんも製品勉強会をさせてくださいとおっしゃっていただける
この状況下で、このSEや営業はどうしてこうも無能で馬鹿なのか?」と悩んでいたのですが、一つは旧態のブルーカラーのカルチャーからIT企業へと変革しようとしていても、現場のマネージャーはそういう組織で評価をされた経験も評価をした経験も乏しいために、新しい企業風土の中での評価者としての役割を十分に果たせないから という理由が一つ挙げられると思っています。
それで、組織論の教授にそれを聞いて、どうしたら組織を新しい風土に変えられますかね?と聞いたら、
「そういうマネージャーをクビにするしかないだろう」
とのことでした。
わが社ではリストラはありません。
どうやらわが社の事業部のカルチャーが変わるのはあと10年か15年ぐらいはかかりそうです。
それまで会社が健全に存在しているかはわかりませんが。
補足:それでも、私が今勤めている会社はIT業界の中ではかなりまともだと思います。
富士通は論外としても、IBMあたりでも社内の満足度は低下の一途のようですし、
おそらく日本全体で同じような状況と問題を抱えていて、その文脈の中では自分がみてきた事例はまだまだましなほうだと思います。
銀行や建設業などのような超旧態の仕事や、傾いている企業での社内の状況は想像を絶するだろうなと思うので、来年、僕がいた会社に入る方は、そこそこ安心して来てくださいね。
当面の課題は来週のレポートなので、これから泣きながら英語の組織文化論の論文読みます。
英語は本当に苦手です。