道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

ラファエル前派展(森アーツセンターギャラリー)

2014年03月21日 | 美術道楽
六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催中のラファエル前派展に行って参りました。
一度、休日に出かけましたが、もう芋を洗うような大混雑で、まともに鑑賞できる雰囲気とはほど遠かったので、平日夜に出直しました。六本木ヒルズは、森アーツセンターギャラリーも森美術館も展望台と同じエレベーターに乗り、しかも森美術館に至っては展望台とチケットが同じなので、いつも美術に関心のない、遠隔地からの観光グループと一緒に美術鑑賞を強いられるので、とてもストレスがかかります。六本木ヒルズの美術館は是非とも夜行くことがお勧めです。

さて、本題です。
まずはHPから企画趣旨についての引用です。
(引用初め)「英国を代表する絵画の殿堂、テート美術館が所蔵する名品72点を通し、ラファエル前派を紹介する展覧会を開催します。
1848年、ロンドン。ジョン・エヴァレット・ミレイ、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハントを中心とする若い作家たちは、ラファエロを規範とする保守的なアカデミズムに反旗を翻し、それ以前の初期ルネサンス美術に立ち返るべく「ラファエル前派兄弟団」を結成しました。古典的な形式や慣例にとらわれない彼らの芸術運動は、英国のアート界にスキャンダルを巻き起こしました。
本展は、グループの結成から1890年代までのラファエル前派の歩みを歴史、宗教、近代生活、風景、詩的な絵画、美、象徴主義の7つのテーマに分けて紹介します。ロンドン、ワシントン、モスクワ、と各地で話題を集めた展覧会がいよいよ東京に巡回します。どうぞご期待ください。」(引用終わり)

今回の企画展は、テート美術館の所蔵品が世界を巡回するというもののようです。

ラファエル前派というと、ラファエルに影響を受ける前の絵画に戻ろうという組織的な活動のようなイメージを持っていたのですが、実は当時の絵画に反旗を翻す若者のスローガン程度で、実は個々の画家によって作風も目指す方向もバラバラであって、活きのいい若者のグループというのが実態であったようです。

展示は、「歴史」、「宗教」、「風景」、「近代生活」、「詩的な絵画」、「美」、「象徴主義」とテーマごとに整理されていました。
特に宗教画や中世の伝説、古典的な小説(シェークスピアなど)からとったテーマが多かったような気がします。

ミレイの「オフィーリア」は夏目漱石のおかげで非常に有名でありますが、同じくミレイでも「両親の家のキリスト」はおよそ宗教がとは思えない雰囲気の作品で、とても印象的でした。

ウィリアム・モリスの「麗しのイズー」も見ました。モリスが画家として描いた絵というのを見たのは初めてであったような気がします。

このほか、何といってもダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの作品が充実しています。同じダンテつながりで「神曲」に出てくる「ベアトリーチェの死の幻影を見るダンテ」、「ベアタ・ベアトリクス」(ロセッティの妻でアヘン中毒で死亡したエリザベス・シダルの鎮魂のための絵)、「アーサー王の墓」などとても印象的な作品が並んでいます。
そして、何よりもロセッティの「プロセルピナ」です。プロセルピナ(ローマ神話。ギリシャ神話のペルセポネー)は、冥界の神プルートーに誘拐され、冥界のザクロの種を食べてしまったため、1年のうち半分を冥府で、残り半分を地上で過ごすこととなったということで、この絵でも食べかけのザクロの実を持っています。このプロセルピナ、私には一目見るだけで見る者を釘付けにして、その絵の前で動けなくなるほどの魔力を持っているように思えます。いかにもfemme fataleというオーラが漂う絵であります。実はこのモデルは、ウィリアム・モリスの妻とジェーン・バーデンということです。ジェーンとモリス、ロセッティは簡単に言えば三角関係にあったようです(詳しくいうと、もっともっと複雑なようですが。)。つまり、モリスとロセッティの間で、揺れ動くジェーンの難しい立場のジェーンを表現しているのだそうです。描かれたプロセルピナに男を虜にする不思議な魔力を感じる訳です。

展覧会の最後にはエドワード・バーン=ジョーンズの「愛に導かれる巡礼」が展示されています。この展覧会のエピローグにふさわしい絵です。

ラファエル前派の画家達は、プロセルピナの絵に現れているように、不思議で複雑な(男女にまつわる)人間関係もあるようです。途中でこうした人間関係が図で整理されているコーナーがありました。このコーナーが一番強烈な印象として残りました。

最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今、見ておきたい (Moritz)
2014-03-23 05:43:41
こんにちは、久しぶりです
やはり東京、1300万都市、次々に色々と開催されうらやましい限りです

私はミレイの「オフィーリア」には縁がなく
2回のテート・ブリテンでも外部へ出品中でした
しかも一度は日本に! 美術館の係員が残念がっておられました
わざわざ日本から来たと思われたのです


Schirn Kunsthalle は企画展だけで常設はなく、狭いです
6月1日まで開かれているモンマルトルのエスプリ と称する展示会に3回行きました
19世紀末から20世紀初頭にかけての
主に 洗濯船 (Le Bateau-Lavoir) を中心とした画家約25人の作品が200点余り
殆どが個人所有の絵です
個人所有だけあって ヴィラの居間に掛けてあれば素敵だと想像できる
小ぶりの軽いタッチの絵が多く 見ていて楽しいのです
ぷっと吹き出したくなる絵も
ゴッホの全く雰囲気の違う作品だったり
ピカソの作品は30点近くあって風景画 少女画、裸体画、 どれもタッチが軟らかく
他、ルシニョール、ドンゲン、ユトリロ、カザス、ラファエリ、ボルディーニ、
ドガ、トゥールーズ=ロートレック、ローランサン、ボナール等々
ヴァラドンの作品を見ることが出来たのは幸運でした
まだ何回か通うつもりです

この4、5年来、これで最後という気持ちがだんだん強くなり
個人所有ともなれば尚更もう一生見ることはない
そう思うとますます気合が入るというか、寂しいというか・・・焦りでしょうか?
返信する
モンマルトルいいですね (Frederick Maus)
2014-03-24 06:21:47
こんにちは。

モンマルトルのエスプリ、良さそうですね。
実は私はSchirn Kunsthalleには行ったことがありません。
企画展だけの美術館はドイツでは珍しいような気もしますが。

フランクフルトにある美術館にさっと行くことができるっていいですね。日本からドイツには年に何回も行くことはできませんから。


個人蔵の作品は確かに、一期一会かなと思いながら見てしまいますよね。
関心のない作品ならいいのですが、特に気に入った作品ですと、作品の前から動けなくなってしまいます。
返信する

コメントを投稿