東京都美術館で開催中の「世紀の日本画」(後期)に行って参りました。
この展覧会は、前期と後期では総入れ替えになるので、完全に異なる作品を見ることになります。
菱田春草の「四季山水」、前田青邨の「京名所八題」や小茂田青樹の「虫魚図巻」などは連作のうち、前期で見ることのできなかった作品を見ることになるので、前期と後期を続けて見て、連作を見終わることになります。
横山大観の「屈原」、狩野芳崖の「悲母観音」など有名な作品が目白押しです。
前期でワンちゃんの絵で大いに楽しませてくれた小倉遊亀は、うってかわった作品を展示しています。「コーちゃんの休日」と題する絵は越路吹雪の絵だそうで、赤い背景など明らかにマチス風です。
各地の美術館を転々と見て回ってきた自分には懐かしい絵との再会もありました。
今回も足立美術館からの展示がありました。小林古径の「楊貴妃」です
前田青邨の「知盛幻生」は、確か島根県立美術館の前田青邨展で見た絵です。失礼なことなのですが、この絵は見た瞬間笑ってしまいました。この絵は、壇ノ浦で入水した平知盛が亡霊となって、船に乗って逃れる義経一行を苦しめるという話を描いた絵なのですが、この絵の登場人物の顔が皆同じなのです。以前に、青邨が、石橋山の合戦に敗れた頼朝一行を描いた絵(梶原景時に見逃してもらうあの話です。)を見たことがあり、そのときにもこの頼朝の絵は、甲冑の描写にはものすごくこだわっているというのに、登場人物(頼朝主従)が皆同じ顔になってしまっているという話を聞いたことを思い出したからです。今回も、知盛とゾンビの仲間達は皆同じ顔で、やはり青邨は人物の描写にはこだわっていないようです。
それと、展示会場の後半ではっとした絵がありました。何度も何度も繰り返し見た、見覚えのある絵を見たからです。その絵とは岩橋英遠の「道産子追憶之巻」です。その昔、私は北海道にしばらくの期間出稼ぎに行っていたことがありました。出稼ぎに出ている時の休日の楽しみといえば、北海道立近代美術館で開催される展覧会を見に行くことでした(小樽のペテルブルグ美術館によく出かけたのもその頃のことでした。)。当時は北海道に大きな美術館はまだ余り多くなく、札幌の総合的な美術館(個人の作品だけを収録した小さな美術館ではない総合的な美術館)といえば、道知事公舎近くの北海道立近代美術館でした。この美術館で企画展を見た後、最後に常設展を見ることになるのですが、常設展の最後の方にあったのがこの「道産子追憶之巻」という異常に長大な絵巻でした。北海道の四季の移り変わりが30m近い長さで描かれた作品です。やはり冬の部分が長いのですが、夏の時期のトンボなどもとても印象的でした。
もう何十年も前のことでしたが、何度も見た絵との再会にとても懐かしい気持ちになりました。
お土産には、前期で見た小倉遊亀のワンちゃんの作品(「径」というタイトル)のクリアファイルを買いました。
ワンちゃんの足取りの軽さが気に入り、妙にこの作品の魅力にとりつかれています。