職業、鍛冶手伝い。

現代の迷工、未来の虚匠

愛すべき道具たち①「火床」

2012-04-22 17:35:43 | 仕事
ようやく盛岡も春めいてきました。暖かい日が続いています。
4月に入り、私もこの仕事に就いて丸5年になりました。鋳物の勉強をしていた大学時代の4年間を含めると丸9年「金属」という素材と向き合ってきたことになり、感慨深い気持ちになってきます。少し今までのことを振り返りつつ、今までもこれからもお世話になっている仕事道具について簡単にですがご紹介していきたいと思います。

今回は「火床」です。そのまま「ひどこ」と読んだり、鍛冶屋さんによっては「ほど」と言う方も結構いらっしゃいます。材料の鉄を熱するための場所で、これがなくては鍛冶屋を名乗れないと言っても過言ではない鍛冶屋の三種の神器の一つです。

この形式の火床は「掘り込み式」と呼ばれていて、外枠の中に灰を敷き詰め羽口(送風口)付近の灰を掘り込んだ部分で炭などの燃料を燃やすという、小規模な鍛冶屋さんでは多く使われている形です。
左側にあるのが送風機(電動)と陶製の羽口(送風口)、右側に風を受けるレンガをそれぞれ適度な深さで灰に埋没させています。火床の広さや深さ、羽口の角度(向き)などの条件によって同じ風量でも燃焼効率は大きく変化します。基本的に左側の羽口から近い位置が高温域、遠くなるにつれて低温域となります。

送風機と陶製の羽口の接続部分に風力調整用のスライド蓋があります。

私の火床は主にコークス(石みたいにごろごろしているものです)を使いますが、炭の使用も可能です。

送風機は外装がアルミ鋳物製(?軽くて磁石付かないので)の昭和の香りのする代物ですが、なかなか優等生で問題なく動いてくれます。たまに分解して内部の埃などを落としてグリスアップしてあげます。

電源はこうなっています。

線はつないだままでソケット側のスイッチでON/OFFをします。



こちらは親方の火床です。同じ掘り込み式ですがこちらは「炭専用」です。



こちらは「吹き上げ式」の火床です。

炉底に格子状の鉄製枠が埋め込まれていて、ここから送風機の風を吹き上げます。面積や体積が広いものや、一度に多くのものを均一に熱する作業に適しています。その代わり、同じ風量の掘り込み式に対して燃料の消費はとても早いです。

この吹き上げ式の火床は、当ブログのサブタイトルでもある「恋人」のすぐそばにあります。鉉の延ばしの仕事では丸一日「火床」と「恋人」に相手をしてもらうこともしばしば…。



ついでですがお知らせを。

2012年4月28日(土曜日)から2012年6月10日(日曜日)まで「第41回盛岡芸術祭」が開催されます。毎年美術展や舞台発表が催されますが、私も盛岡市民の一人として美術展の工芸部門に出展しました。1期から4期まで様々な分野の展示がありますので、多くの方にお越しいただければと思います。

 
 第41回 盛岡芸術祭 美術展

盛岡市民文化ホール 展示ホール  各期10:00~17:00(最終日16:00まで)、月曜休館

第1期 書道・川柳  4月28日(土)~30日(月)

第2期 日本画・工芸 5月3日(木)~6日(日)

第3期 洋画・彫塑  9日(水)~13日(日)
 
第4期 写真・俳句  16日(水)~20日(日)


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