職業、鍛冶手伝い。

現代の迷工、未来の虚匠

鉄蔵.com

2010-12-19 07:51:30 | お知らせ
岩手県を拠点として活動されている「BUNCRAFT」(http://www.buncraft.net/introduction.html)代表、中村文明さんが南部鉄瓶・南部鉄器専門販売サイト「鉄蔵.com」(http://www.tetsuzou.com/)を設立されました。
中村さんは数件の鉄器工房の店舗ホームページも手掛けていらっしゃり、南部鉄器についての造詣も深い方です。「鉄蔵.com」の設立にあたって、私も中村さんよりお声を掛けていただきました。
今のような時代、手仕事が黙っていても仕事として成り立つ時代ではないことは私も重々承知しております。かといって販売力に特化しすぎたため、手仕事の手仕事らしさを完全に失ってしまった伝統産業や地場産業も国内には少なくありません。これでは本末転倒な話です。要はバランスなのですが、手仕事の現場に立つ作り手が生産から宣伝・広報、販売まで全て担うことは正直限界があります。中村さんのような新しい意識で手仕事と向き合っていただける方のご協力があってこそ、手仕事の分野が成立している時代でもあります。「鉄蔵.com」が新しい南部鉄器の発信源となりますよう、私も微力ながらご協力できたらと思っております。
「鉄蔵.com」では盛岡市内の工房、職人さんの作品を扱っていらっしゃいます。現在は鉄瓶を主としていらっしゃいますが、今後の商品展開にも期待ております。

「岩手の工芸 手仕事展 2010 in Tokyo」のお知らせ

2010-12-12 19:11:30 | お知らせ

12月22日(水)から24日(金)の3日間、東京北青山のセレクトショップ「Rin」で「岩手の工芸 手仕事展 2010 in Tokyo」に今年の1月に引き続き、M-color’s(http://blog.goo.ne.jp/forginer1984/e/56790af7ce3d74befe01291747e25a0d)として参加させていただきます。直前のお知らせとなってしまい大変申し訳ありません。ぜひ皆様、足をお運び下さい。

「岩手の工芸 手仕事展 2010 in Tokyo」
http://www.isop.ne.jp/zibasan/iwatewaza/
平成22年12月22日(水)~24日(金) 11:00~19:00(最終日24日は11:00~17:00)
会場/Rin 3Fギャラリースペース 
Rin(http://rin.smrj.go.jp/)


「森のてつびん屋 高橋大益 作品展」のお知らせ

2010-12-12 18:31:10 | お知らせ

12月17日(金)~12月27日(月)まで、雫石町「野の花舎」にて私の尊敬する先輩の鉄器職人さん、高橋大益さんの作品展が開催されます。
高橋さんは盛岡市内の工房から今年の春に独立なさり、今はお一人で鉄瓶を主とした素敵な鉄器の作品を制作されています。私のような経験の浅い者が口にすることは憚られますが、とても高い技術と表現力をお持ちで、繊細で完成度が高く、それでいて高橋さんのお人柄を感じさせる温かみのある作品を作られております。
高橋さんの作り手としての姿勢や思いは作品から強く伝わってきます。仕事の上でも私事でも、多くの事を教えていただいております。産地からも信頼の厚いこれからのご活躍が期待される鉄器の作り手さんです。
ぜひ皆様、足をお運び下さい。



「森のてつびん屋 高橋大益 作品展」

2010年12/17(金)~12/27(月)

10:00~16:00 火曜定休 

野の花舎(雫石町長山 花工房らら倶楽部向かい)
http://shizukuishi.machitane.net/machipedia.php?init=%E3%81%AE
(野の花舎/雫石まちのたね通信)

辛酸

2010-12-06 05:40:26 | 私事
「袋釜環」

写真は親方の作「袋大角豆環」です。

釜環(釜釻)とは茶の湯釜の環付に掛け、釜を持ち上げたり持ち運ぶための道具です。湯釜の両側面にある環付に環を掛け両手で持つので、釜環は2つで一対(一組)です。
茶の湯釜に注ぎ口と取っ手(鉉)が付けられた「手取釜」や「鉄瓶」が使われるようになってからも、茶道具としての茶の湯釜は確固たる地位を保っています。それに伴い、釜環も全く需要が無くなるということはないようです。釜環のオーソドックスなものは金属製のある程度の重なった合わせ目を持つ輪の形状ですが、その他にも色々な形があります。多くの釜環は無垢の丸棒などから鍛造で作られるようですが、鉄瓶の鉉と同様に「袋打ち(袋張り)」で作られたものもあります。こちらは国内でも制作できる作り手の方、職人さんは少ないです。
無謀にも、とあるきっかけで「私事」として挑戦してみることになりました。失敗することが前提ですので、とにかく1つでも得るものがあればと考えての挑戦です。好奇心で貴重な仕事の時間を浪費するには及びませんので、自身への課題として休日に時間を作りました。

今回使用する材料は向かいの木工の工房の親分さんからいただいた木工用切断工具の替え刃で、鋼種(材質)は不明です。焼き鈍し状態で弾力に富んだ、弾性・靭性の高そうな材料です。厚さはノギスで1.4mm。通常は加工のし易い軟鋼に近い素材を使い、材料の厚さも2㎜強のものですが、これもとある理由で今回は鋼系統の薄手で弾力があるものを使用します。短冊状に切断、鍛造します。その後、端から袋打ちをしていきます。

少しずつ、断面の形を気に掛けながら合わせ目を閉じていきます。鋼系統の素材なので、冷めてしまうと硬度が高くなかなか言うことを聞いてもらえません。普段軟鋼を中心に扱っているので適温で鎚を当てているつもりですが、鎚が撥ね返される感じです。2㎜以下の薄鉄板に翻弄されるとは思いもしませんでした。

片側をある程度袋状にして、反対側を袋打ちします。釜環は2つで1組ですので、片方の材料を打っている間にもう片方の材料を火床で加熱します。一本ずつ手を掛けた場合、火床の炭と時間を倍の量浪費することになります。片方を打ち終わる頃に火床の中のもう片方の材料が適温になっているのが理想ですが、なかなか上手くはいきません。火床の温度管理、打ち始めから打ち終わりの時間やタイミング、その他にも様々なことに気を掛けながら、なおかつ自身のペースとして体で覚える、長く密度の高い経験を積み重ねる他、道はないと常々思います。

破れかぶれで鎚を打ち重ね、あと少しです。

一通り袋打ちが終わりました。



真の恐怖はこれからです。

曲げている最中は全く写真を撮る余裕もなく、何度も挫折しそうになりました。無垢の釜環と全く違い中が空洞で、合わせ目もあります。材料の加熱や曲げる際の力の入れ方を少しでも間違えると、今までの工程が全て水の泡になる場合もあります。

材料が薄すぎたかもしれません。弾力は十分有り、袋打ちですので非常に軽いのですが、全体の形が上手く取れておらず、変形している箇所もあります。まっすぐに揃えたはずの合わせ目が、曲げることでよれてしまったりと散々でした。

今回はとりあえずここまで形になったので、最後まで仕上げてみたいと思います。
初めから上手くいくはずがないと覚悟しての挑戦でしたが、次回は舐める辛酸が少なくなるよう、今回の反省点を活かして挑みたいです。