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島根県庁林業課林業普及スタッフからのお知らせ

「災害に強い森林づくり」現地調査会・講演会の開催

2015年06月11日 | 森林・林業関係の情報

 吉賀町主催で「災害に強い森林づくり」に向けた現地調査と講演会が平成27年6月7日に開催され、町内外から30名の参加者がありました。

 近年、ゲリラ豪雨による山地崩壊が全国的に発生しており、平成25年度には吉賀町に接する津和野町において激甚災害が発生しました。また、平成26年度には広島市八木地区では多くの人命を奪う災害が発生しています。

 こうした状況を踏まえ、吉賀町は山地崩壊発生のメカニズムや防止策につながる森林整備の方法について正しい知識を町民に習得してもらうことを目的に、日本林業技士会島根県支部の協力と島根県林業研究グループ連絡協議会の後援を受け、開催しました。

 講師には、「土砂流出防止機能の高い森林づくり指針」(平成26年度林野庁作成)づくりにかかわられた、国土防災技術株式会社の田中賢治氏と森千夏氏を招きました。

 研修内容としては、午前に2箇所の森林を見て回り、災害発生危険箇所の把握方法や災害を発生させないための施業方法についてアドバイスを受けました。午後からは吉賀町柿木公民館に移動し、全国初となる「土砂流出防止機能の高い森林づくり指針」についての説明を受けました。

現地において説明をされる田中賢治氏

人家裏にある森林は山地崩壊を起こした場合、土砂を捕捉する役割を担ってくれるので重要であるとの説明がありました。

スギ林であれば直径30㎝以上あり、ある程度の幅があると土砂を捕捉することができる。

地形の変化や立木の形状、下層植生、湧水の有無、土壌など森林から発している情報をしっかり把握し、災害に強い森林づくりをしてほしい(田中氏)

崩壊する可能性の高い箇所では、スギやヒノキは生長が悪く、劣勢木が多くなる。そうした箇所の立木を一度に伐採すると山地災害を引き起こす誘因になりかねない。特に、列状間伐を実施する場合、崩壊方向に向かって列を入れるようなことはしないでほしい。(田中氏)

耳をすまして地中を流れる水音を聞く参加者(機会があれば是非、聞いてみて下さい。人によって聞こえる音の表現の仕方は異なりますが、「コポ、コポ」、「コロ、コロ」と聞こえます。)

指針作成にあたり、全国の山地崩壊箇所等の森林土壌調査をされた森氏(中央)。森林調査したデータを最近ではGPSを使用して蓄積でき、その情報をもとに森林施業を実施することができることを紹介されました。(国土地理院ホームページから5mメッシュの地図情報を無料でダウンロードして活用している事例紹介)

現地でのアドバイスを受けた後、室内で全国発となる指針(簡易版)の説明会がありました。

幅が狭く、土壌が浅く崩れる山地崩壊は森林整備を確実にした土砂捕捉林で食い止めることはできる。大規模な崩壊に対しては幅が広い捕捉林を整備しておかなければ、大きな被害を発生させてしまう。(田中氏)

全国各地で森林の伐採が進んでいるが、森林の状況を把握し、皆伐に適する森林と、間伐を繰り返し災害防止に備えなければいけない森林があることを理解してほしい。(田中氏)

 

当日参加者に配布された指針の簡易版です

指針の中には整備目標の設定や整備指標値のめやすなどが記載されています

参加者からは、「先祖から裏山のスギ林を伐るなと言い伝えで聞いていた話の意味がわかり、大変勉強になった。今後は山の状況を確認して、施業に生かしたい。」との感想がありました。

吉賀町は町民全体に災害に強い森林づくりを普及するため、今後もこのような研修会を開催したいと考えています。

 



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