P子の1人エッチ未遂の話じゃ、もの足りないので、ズバリ、聞くことにしたんです。
「P子の不倫相手の旦那様って、確かに写真見ると素敵な熟年紳士だけれど、あっちのほうは、どうなの? 熟年て言えば男性は、そろそろ中折れ現象になったりするんでしょう?」
ちょっと残酷な質問です。
「そうなの。それが問題なのよ」
案外、素直なP子の答え。酔うと感情がすぐ表れるP子、悄然となった顔つきです。
「中折れ現象になった時の女の心理って、きっと男性には理解できないでしょうね」
「失望、落胆、不満……そんな気持ちになるって、男性にも想像つくんじゃない?」
「あなたみたいな単純な女は、その程度の心理かもしれないけど」
「私と違う意味で単純なP子としては、どんな心理状態になるってわけ?」
「ああ、こんな日が来るなんて──っていう、言いようのない寂しさだわ。がっかりしたとか不満とか、そんなものじゃないのよ。もっと深い深~い心理」
「ふうん、寂しさね」
「あたしの体と愛する旦那様の体をひとつにして甘美な動きに夢中になって性感が熱く上昇中に、ふと、醒めかかった意識が一瞬、よぎる、彼のアレが中折れ現象になった瞬間、あたしが気づく時は、彼も気づく時、一心同体だから、あたしたち。次第に動きが緩やかになり、そして静止する。彼のアレが、あたしの秘部のヒダの中から押し出されるようにしてはずれる時の気持ち──何か信じ難いような気持ち、言いようのない気持ち、自分の心をどうしていいかわからなくなるような……」
「それで」
「そんな言いようのない寂しさを感じたくないために、彼のアレが、あたしの秘部のヒダの中から押し出されるようにしてはずれないうちに、彼の唇か顎にチュッてするの。そのキスって、体を離す時の習慣だけど、いつもはエクスタシーになった後なのに、中折れ現象による中断のキス、この瞬間もまた、言いようのない寂しさに襲われるわ」
「その時、彼は何て言うの?」
「ちょっと休憩」
「ふふ」
「1回終わってイカされた後の休憩じゃないのよ。もっとカタチンになるための休憩だわ。ううん、正確に言えば、休憩するほど甘美な動きが持続してない時もあったり」
「P子の気持ち、何となくわかる」
「わからないわよ。体を離し、たとえ中折れ現象になっても愛してるっていう証拠に、やさしくやさしくグニャチンに触ってあげるの。愛撫じゃなく、愛といとしさをこめて、やさしく触る。愛撫だと催促してるみたいでしょ」
「プレッシャーで、いっそう萎縮しちゃうものね」
「飲物飲んだり、ピロー・トークしたりしてると、グニャチンはフニャチンになって……それでも時間がたてば、また少しずつ気分が高まって、どちらからともなく休憩終了という感じに互いの体を触ったり愛撫したり……今度こそという感じで次第にフニャチンがグニャチンを経てカタチンになり、昂ぶって甘美な結合をして……」
「ようやくという感じに」
「ま、失礼ね。その表現、あんまりだわ」
「ごめんなさい。でも、フニャチンからグニャチンからカタチンてなる過程があるみたいだから」
「もっと正確に言うと、超カタチンと、超フニャチン、ていうのもあるわ」
「3段階じゃなく5段階ね、ふふふふふ」
「あたしを腕の中に抱いたとたん、まだキスもしないうちから超カタチンになったのは、ついこの間って感じだけど、超がつかないカタチンでも、それを受け入れるのが愛かしらって思うの」
何となく、心許ないようなP子の口調に、内心、おかしくなってしまいました。彼女の揺れる心が、伝わってきたからです。
「仕方ないわよ、加齢……じゃなく」
「歳月の流れと言って欲しいわ」
「そうそう。そういうことよね」
素敵な熟年男性と愛し合っているP子にも、酔わなきゃ言えない心と体の迷いがあるみたい──そう思ったんです。
◆花森えりか 電子書籍◆
「P子の不倫相手の旦那様って、確かに写真見ると素敵な熟年紳士だけれど、あっちのほうは、どうなの? 熟年て言えば男性は、そろそろ中折れ現象になったりするんでしょう?」
ちょっと残酷な質問です。
「そうなの。それが問題なのよ」
案外、素直なP子の答え。酔うと感情がすぐ表れるP子、悄然となった顔つきです。
「中折れ現象になった時の女の心理って、きっと男性には理解できないでしょうね」
「失望、落胆、不満……そんな気持ちになるって、男性にも想像つくんじゃない?」
「あなたみたいな単純な女は、その程度の心理かもしれないけど」
「私と違う意味で単純なP子としては、どんな心理状態になるってわけ?」
「ああ、こんな日が来るなんて──っていう、言いようのない寂しさだわ。がっかりしたとか不満とか、そんなものじゃないのよ。もっと深い深~い心理」
「ふうん、寂しさね」
「あたしの体と愛する旦那様の体をひとつにして甘美な動きに夢中になって性感が熱く上昇中に、ふと、醒めかかった意識が一瞬、よぎる、彼のアレが中折れ現象になった瞬間、あたしが気づく時は、彼も気づく時、一心同体だから、あたしたち。次第に動きが緩やかになり、そして静止する。彼のアレが、あたしの秘部のヒダの中から押し出されるようにしてはずれる時の気持ち──何か信じ難いような気持ち、言いようのない気持ち、自分の心をどうしていいかわからなくなるような……」
「それで」
「そんな言いようのない寂しさを感じたくないために、彼のアレが、あたしの秘部のヒダの中から押し出されるようにしてはずれないうちに、彼の唇か顎にチュッてするの。そのキスって、体を離す時の習慣だけど、いつもはエクスタシーになった後なのに、中折れ現象による中断のキス、この瞬間もまた、言いようのない寂しさに襲われるわ」
「その時、彼は何て言うの?」
「ちょっと休憩」
「ふふ」
「1回終わってイカされた後の休憩じゃないのよ。もっとカタチンになるための休憩だわ。ううん、正確に言えば、休憩するほど甘美な動きが持続してない時もあったり」
「P子の気持ち、何となくわかる」
「わからないわよ。体を離し、たとえ中折れ現象になっても愛してるっていう証拠に、やさしくやさしくグニャチンに触ってあげるの。愛撫じゃなく、愛といとしさをこめて、やさしく触る。愛撫だと催促してるみたいでしょ」
「プレッシャーで、いっそう萎縮しちゃうものね」
「飲物飲んだり、ピロー・トークしたりしてると、グニャチンはフニャチンになって……それでも時間がたてば、また少しずつ気分が高まって、どちらからともなく休憩終了という感じに互いの体を触ったり愛撫したり……今度こそという感じで次第にフニャチンがグニャチンを経てカタチンになり、昂ぶって甘美な結合をして……」
「ようやくという感じに」
「ま、失礼ね。その表現、あんまりだわ」
「ごめんなさい。でも、フニャチンからグニャチンからカタチンてなる過程があるみたいだから」
「もっと正確に言うと、超カタチンと、超フニャチン、ていうのもあるわ」
「3段階じゃなく5段階ね、ふふふふふ」
「あたしを腕の中に抱いたとたん、まだキスもしないうちから超カタチンになったのは、ついこの間って感じだけど、超がつかないカタチンでも、それを受け入れるのが愛かしらって思うの」
何となく、心許ないようなP子の口調に、内心、おかしくなってしまいました。彼女の揺れる心が、伝わってきたからです。
「仕方ないわよ、加齢……じゃなく」
「歳月の流れと言って欲しいわ」
「そうそう。そういうことよね」
素敵な熟年男性と愛し合っているP子にも、酔わなきゃ言えない心と体の迷いがあるみたい──そう思ったんです。
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