花森えりか My Room

─愛と官能について語る部屋─

フニャ・グニャ・カタ

2012-08-27 14:34:12 | P子の不倫
 P子の1人エッチ未遂の話じゃ、もの足りないので、ズバリ、聞くことにしたんです。
「P子の不倫相手の旦那様って、確かに写真見ると素敵な熟年紳士だけれど、あっちのほうは、どうなの? 熟年て言えば男性は、そろそろ中折れ現象になったりするんでしょう?」
 ちょっと残酷な質問です。
「そうなの。それが問題なのよ」
 案外、素直なP子の答え。酔うと感情がすぐ表れるP子、悄然となった顔つきです。
「中折れ現象になった時の女の心理って、きっと男性には理解できないでしょうね」
「失望、落胆、不満……そんな気持ちになるって、男性にも想像つくんじゃない?」
「あなたみたいな単純な女は、その程度の心理かもしれないけど」
「私と違う意味で単純なP子としては、どんな心理状態になるってわけ?」
「ああ、こんな日が来るなんて──っていう、言いようのない寂しさだわ。がっかりしたとか不満とか、そんなものじゃないのよ。もっと深い深~い心理」
「ふうん、寂しさね」
「あたしの体と愛する旦那様の体をひとつにして甘美な動きに夢中になって性感が熱く上昇中に、ふと、醒めかかった意識が一瞬、よぎる、彼のアレが中折れ現象になった瞬間、あたしが気づく時は、彼も気づく時、一心同体だから、あたしたち。次第に動きが緩やかになり、そして静止する。彼のアレが、あたしの秘部のヒダの中から押し出されるようにしてはずれる時の気持ち──何か信じ難いような気持ち、言いようのない気持ち、自分の心をどうしていいかわからなくなるような……」
「それで」
「そんな言いようのない寂しさを感じたくないために、彼のアレが、あたしの秘部のヒダの中から押し出されるようにしてはずれないうちに、彼の唇か顎にチュッてするの。そのキスって、体を離す時の習慣だけど、いつもはエクスタシーになった後なのに、中折れ現象による中断のキス、この瞬間もまた、言いようのない寂しさに襲われるわ」
「その時、彼は何て言うの?」
「ちょっと休憩」
「ふふ」
「1回終わってイカされた後の休憩じゃないのよ。もっとカタチンになるための休憩だわ。ううん、正確に言えば、休憩するほど甘美な動きが持続してない時もあったり」
「P子の気持ち、何となくわかる」
「わからないわよ。体を離し、たとえ中折れ現象になっても愛してるっていう証拠に、やさしくやさしくグニャチンに触ってあげるの。愛撫じゃなく、愛といとしさをこめて、やさしく触る。愛撫だと催促してるみたいでしょ」
「プレッシャーで、いっそう萎縮しちゃうものね」
「飲物飲んだり、ピロー・トークしたりしてると、グニャチンはフニャチンになって……それでも時間がたてば、また少しずつ気分が高まって、どちらからともなく休憩終了という感じに互いの体を触ったり愛撫したり……今度こそという感じで次第にフニャチンがグニャチンを経てカタチンになり、昂ぶって甘美な結合をして……」
「ようやくという感じに」
「ま、失礼ね。その表現、あんまりだわ」
「ごめんなさい。でも、フニャチンからグニャチンからカタチンてなる過程があるみたいだから」
「もっと正確に言うと、超カタチンと、超フニャチン、ていうのもあるわ」
「3段階じゃなく5段階ね、ふふふふふ」
「あたしを腕の中に抱いたとたん、まだキスもしないうちから超カタチンになったのは、ついこの間って感じだけど、超がつかないカタチンでも、それを受け入れるのが愛かしらって思うの」
 何となく、心許ないようなP子の口調に、内心、おかしくなってしまいました。彼女の揺れる心が、伝わってきたからです。
「仕方ないわよ、加齢……じゃなく」
「歳月の流れと言って欲しいわ」
「そうそう。そういうことよね」
 素敵な熟年男性と愛し合っているP子にも、酔わなきゃ言えない心と体の迷いがあるみたい──そう思ったんです。



花森えりか 電子書籍









P子の1人エッチ未遂

2012-08-08 14:16:07 | P子の不倫
 不倫の恋をしているP子とのお喋りで、愛だの恋だのについて理屈っぽい話より、エッチ談義のほうが面白いに決まっています。
 そこで、彼女に電話してから、国産赤ワインをおみやげに、彼女のマンションへ遊びに行ったんです。真夏の陽射しが少しはやわらいできた午後5時ごろ。
 夕食は宅配ピザを取ることになって、P子が用意してくれたチーズやスナック菓子をおつまみに、ワインを飲みながらの女同士のお喋りです。酔いが回ってきて、P子の顔が赤らんできた時、
「ねえねえ、何か面白いエッチな話、聞きたいわ」
 そう言ったんです。酔っていれば女同士だってエッチ話は盛り上がるんです。
「エッチな話……じゃ、1人エッチ未遂の告白しちゃおうかな」
「ま、ヤラシイ、1人エッチなんて」
「ヤラシイ話が聞きたいって言ったじゃないの」
「それはそうだけど、いきなり、そんなヤラシイこと言うから」
「ヤラシイヤラシイって言うけど、この世に1人エッチしない女なんていないでしょ。1人エッチという行為ほど、情緒不安定を緩和及び改善及び解消及び予防する最良の方法は、ないのよ。たとえば心療内科の薬なんか飲むより、心身の安定には最も効果的で安全で有意義で楽しくて健全な行為だわ」
「理屈はいいから、告白続けて」
「この間、暑くて暑くてパソコンやめて携帯手にしてベッドにゴロンと横になって、暑さのあまりショートパンツ膝まで下ろして……」
「具体的な描写はいいわよ」
「もちろん、具体的な描写なんかしないわよ」
「はいはい、それで」
「ショートパンツ膝まで下ろしたら少しは涼しくなって、顔の上にかざした携帯の、待受の旦那様の写真にキスしたり、受信メール見たり、昨夜、旦那様に送信したメールを読み返してたの」
「例のエッチ・メールね」
「そ。あーら、こんな淫らなこと書いちゃって、って、我ながら恥ずかしくなって、そのエッチ・メール読んだ旦那様の心理を想像してたら、お手々が、股間に……」
「だから、具体的な描写は、いいって」
「ショートパンツだけでなく、下着も膝まで下ろしたくなって……」
「私に聞かせて、どうするの」
「1人エッチしたい欲望が、この暑いのに身体を熱くして……ああ、したい、抱かれたいって悶々としてたら、何と、その時、以心伝心! 旦那様からメールが……」
「ええっ、ほんとにイ?」
「ほんとよう」
「それで」
「旦那様ってね、あたしのラブ・エッチメールで、1人エッチのメール文とデコメと、愛撫メール文と舌ペロペロ・デコメに弱いのよ、純情熟年紳士だから。うふふふふふふっ」
「ヤラシイ笑い方ね。1人エッチのデコメなんてある? 自分で作ったの?」
「旦那様とあたしだけに通じる1人エッチ・デコメがあるの。他の人には通じないデコメだけど。旦那様とあたしの感性がピッタリ一致して、それが1人エッチ・デコメになったの、クククッ」
「はいはい、その先は」
「今週逢う約束の日を、あたしのメール読んだら明日にしたくなったって書いてあるから、慌てて起きてショート・パンツはいて、洗濯物取り込んで、お掃除して、お風呂磨きして、スーパーへ買い物に行ったの。1人エッチどころじゃなくなったってこと」
「それが、1人エッチ未遂の話?」
「そ。つまりね、あたしにとって、性の欲望は、心の寂しさから生じるの。心が寂しくて満たされないと1人エッチしたくなる。浮きうきワクワク心が満たされてると1人エッチの欲望より、愛が胸に満ちてくるの。つまり、精神的な人間なのね、あたしって。最初に性の欲望ありきじゃなくて、最初に精神の愛、心の愛ありきなの。肉体の愛は、旦那様に逢ってから湧き上がるの。ね、わかるかしら」
「う~ん」
 わかるようなわからないような……。わからないと言うと、機嫌悪くなるから、心やさしい私、
「わかるような気がするわ」
 そう言ってあげたんです。



花森えりか 電子書籍