花森えりか My Room

─愛と官能について語る部屋─

頬のキスの予感

2010-01-19 14:54:33 | 告白手記
 プラトニック・ラブの男性から、頬にキスをされた時は、とっても幸せな気持ちだったんです。
 結婚の約束をした男性とは肉体の交わりをしていて、当然、ディープ・キスの習慣がありました。
 舌と舌をからませるディープ・キスと違う感じの、頬へのキス。異性というより、肉親にするみたいなキスですけど、不満も、もの足りなさもありませんでした。
 もし、頬ではなく、額(ひたい)なら、どうだったでしょう。
 額にキスをされた経験は、1度も、ありません。
 もし、額にキスをされたのだったら、
(私を愛しているのではないんだわ……)
 そう思ったでしょう。額のキスは、何か、純真で敬虔(けいけん)な感じがします。
 祈りをこめてするようなキスです。
 または、祈りをこめられたような気がするキスです。
 もし、相手の男性を好きだったら、少なくとも異性を意識していたら、額にキスをされた瞬間、その想いは一瞬にして醒(さ)めてしまい、
(私のことを、異性として好きっていうわけではないのね)
 と、失望してしまうでしょう。
 逆に、私のほうから、相手の男性が唇を私の唇に重ねようとした時、そうされたくない相手だったら、
「あ、唇はダメ、おでこに、して」
 と、言うかもしれません。何故なら、額に押しつけられた男性の唇の感触は、すぐ忘れてしまうと思うからです。
 「唇はダメ、ここに、して」
 と、右か左の頬を指ささないのは、頬は、唇に近いからです。相手の男性が、私の頬に押しつけた唇を、少し、ずらせば、私の唇。
 それに、額より頬のほうが、男性の唇の感触は、ずっと残るような気がします。
 だから、キスをされたくない男性から、そうされそうになった時、頬にして、なんて絶対に言わないでしょう。
 それで──。
 そのプラトニック・ラブの彼から、頬にキスをされるようになった時、
(いつか、きっと、唇にキスされるわ……!)
 と、ワクワク、ドキドキしながら、そんな予感が、かすめたんです。
 やはり、男女の愛は、唇のキスで表現し合うもの──。
 そして、唇にキスされるという予感は的中したんです。 

プラトニック・キス

2010-01-07 11:07:02 | 告白手記
 彼との関係が、プラトニック・ラブだからといって、全く触れ合わないわけではありません。2人きりで過ごしていて、そんなことは不可能ですよネ。
 もちろん、愛がなければ、身体のどこも触れないでいることは可能ですけれど。
 手紙を交換したり、お喋りしながら手と手を触れ合ったり、握り締め合ったりしていて、お互いの気持ちを伝え合っていたんです。
 でも、それだけでは、やはり不満が残ります。小さな小さな不満です。
 私より彼のほうが、不満が残ったと思います。彼は35歳です。それなりの恋愛経験も性体験もあるはずですから、なおさらです。
 だから、
(いつか、きっと……)
 キスされるかもという予感はあったんです。
 セックスまでは考えられなくても、愛を確かめ合うために、キスしたくなるのは当然のことでしょう。
 そして、予感は的中しました。
 ある時、彼の部屋を出る間際(まぎわ)に、私の前に立ち、私の両肩を抱くようにして、私の頬に、軽いキスをしたんです。
 身体の前面は触れ合わずにです。
「こういうことしちゃ、駄目かな」
 と、彼は、<こういうこと>をした直後に言ったんです。
 私は羞恥と歓びに包まれながら、黙って首を横に振りました。
 そうしたら彼は、もう片方の頬にも、軽いキスをしたんです。
 そして、私の眼をじっと見つめて……。
 プラトニック・ラブのプラトニック・キス──。
 頬に触れられた彼の唇の感触は、その夜、眠りにつくまで忘れられず、私をとても幸せな気分にしたんです。