妖しい亜熱泰

タイと東京、アジアと和の話題など。
出かけたついでに一枚をつづります。

興福寺、猿沢池辺り

2008-07-30 | Weblog
宿は猿沢池の近くだった。昼間は池面に興福寺の五重塔が映り、夜になるとライトアップされた五重塔のそばに月が輝いていて古都の趣き満点の立地。

興福寺で昔ながらの堂内に入れるのは国宝の東金堂だけだが、運良く夜間特別公開中で、宿に戻る途中に寄ってみた。文殊菩薩、維摩居士、十二神将等の小さな国宝が安置されていて、外観からの想像以上に充実していた。中金堂が再建工事中なので、境内のただずまいは物足りないが、南円堂から坂を下りて、三重塔を回るとかつての隆盛の一端がうかがえる。
国宝館は、味気ないコンクリート造りで、中に入っても蒸し暑い。クーラーがないのだ。それでも、中央にどっしりと構える千手観音や、左手の阿修羅像を含む八部衆が目に入ってくるとさすがに足が止まり、じっくりと見入ってしまう。さらに奥に回ると、旧山田寺仏頭がさりげなく鎮座していて、思わず学生時代に読んだ歴史の本を思い出した。

興福寺の周囲は時として、人よりも鹿のほうが多い。鹿は春日神社ゆかりの天然記念物。早朝、早めに出て春日神社本殿に詣でると、何人もの巫女さんが境内を掃き清めていて、すれ違うたびに挨拶をしてくる。寺院とは違った独特の静寂の空間に神聖さを感じる。
この春日大社も興福寺も藤原氏が作ったものだ。時の為政者の力をまざまざと見せ付けられるようだ。

春日大社の拝観時間を待たずに、奈良国立博物館に向う。この日は「国宝・法隆寺金堂展」の最終日にあたり混雑が予想されていたからだ。案の定、開館時間前から長蛇の列が続いていたが、中に入るとメインの四天王像はじっくりと鑑賞することができた。やや優しい顔立ちの広目天と鋭い表情の持国天が対照的。常設展示に行ってみると、こちらは拍子抜けするほど人が少ない。元興寺の薬師如来や十一面観音など見所はたくさんあるのにもったいない。特別展だけ見て帰ってしまうなんて。

さて、そろそろ戻らないとチェックアウトの時間だ。奈良ではいくつもの仏を見てきた。それなりに楽しめた旅だった。ただ、国立博物館の入場料と寺院の拝観料は締めて、6,600円もとられた。これでは、いくつかの寺で外国人の姿がほとんど見られなかったのも当然かもしれない。

坊主丸儲け…一瞬、嫌な言葉が脳裏をよぎった。

秋篠寺

2008-07-29 | Weblog
「あっ、あのバスだよ」 大和西大寺駅を降りて、バス停を探していると前を歩いていた二人連れの声が聞こえた。どうやら同じ行き先らしい。周遊ルートからちょっとはずれているので、それほど訪れる人はいないだろうと思っていたので、意外だった。

門前の道は幅が狭く、バス会社の警備員が交通整理をして交互に一方通行状態にしてバスを通していた。停留所からはすぐに秋篠寺の入口が見える。住宅街からちょっと入っただけなのに、あたり一面緑に覆われた竹林の世界に。下ばえの苔の緑色が美しく、厳かな寺の境内にふさわしい空間を演出していた。

奈良時代の様式を受け継ぐ本堂が国宝に指定されていて、堂内には薬師如来等が安置されているだけの小さな古刹だ。しかし、人気を博しているのは堂内左端に控えめに立つ技芸天(重文)があるからで、首を傾け、右手をあげた独特のポーズは、古来、西行をはじめ会津八一、虚子、秋桜子など多くの文化人を魅了してきた。
この仏を見ていると、たたずまいとともに、この寺が宮家の由来となったのがわかるような気がする。

「駅に行くバスを待っているんですか?だったら、そこの日陰で待っていて下さい。バスが来たら呼びますから」
炎天下のバス停に立っていたら、交通整理をしていた警備員の人が声をかけてくれた。
さりげない気遣いが嬉しい。 おじさん、ありがとう。

斑鳩、西ノ京を歩く

2008-07-27 | Weblog
五重塔と金堂の組合せ…。世界最古の木造建築として知られる法隆寺ではこのふたつの建物が圧倒的な存在感を示している。

興福寺前から朝一番のバスに乗って一時間ほど、斑鳩の里、法隆寺に着いた。連休だというのに参拝客は予想以上に少ない。参道に並ぶ土産店も多くないのにガラガラだし、世界遺産の門前とは思えない光景だ。

金堂に入る。奈良の仏像はあまりにも多すぎて、いくら有名な国宝とか言っても一度に何体も見てしまうと見分けがつかなくなるが、ここに安置されている釈迦三尊像と薬師如来像(ともに飛鳥時代)は北魏様式とも呼ばれた独特の細面の顔立ちで、小ぶりにもかかわらず強烈な光を放っている。
細長くのびた境内を歩くと大宝蔵院にたどり着く。ここでは、やはり細身の百済観音と玉虫厨子だろう。他にも国宝があるのだがいちいち鑑賞していると混乱しそうになるくらいだ。さらに東院伽藍に進むと、八角形の夢殿や鐘楼があって、まったくいにしえの人々はとてつもないものをこしらえたものだと感心するばかり。

すぐ脇には、「ここは別料金」という無粋な看板があって内側は中宮寺だ。再建された本堂の建物自体には目を引くものはないが、堂内の如意輪観音半伽像がお目当てだ。独特の微笑が疲れた心を、ひととき癒してくれる。もっともっとじっくりみたいのだが、一時間に一本のバスの時間が迫っているので、先を急ぐ。

法隆寺前から唐招提寺まではバスで40分足らずで着く。鑑真大和上で有名な寺だが、生憎金堂が修理中で入れないのが残念だ。教科書に載っていた講堂を確認し、裏手の国宝、宝蔵・経蔵に回るがあまりにも地味でひっそりと建っているので、拍子抜けしてしまった。

このあたりは西ノ京と呼ばれている。唐招提寺から薬師寺へ抜ける道はなかなか風情がある。どっしりと建つ年代物の木造屋の玄関先ですいかを売っていた。10分もしないうちに薬師寺に到達。ここは聖観音と東塔(ともに白鳳時代)が秀逸。その他の建物が再建されたもので、全体的なバランスがよくない。東塔と金堂の間に大量の蓮の鉢があって、ややげんなりした気分をやわらげてくれる。
東院堂のそばに茶店を見つけた。抹茶とお干菓子をいただく。汗だくで歩いてきた後にいただく、一服がなんともいえない。とても美味しかった。

東大寺境内を歩く

2008-07-26 | Weblog
暑い中を歩いて南大門に着いた。東大寺への入口だ。人がいっぱいだ。それ以上に鹿、鹿、鹿が行く手をふさいでいる。どうしても気になってしまう。前を歩いている人が鹿せんべいを持っていると鹿が集まってきて、これは、写真にとておきたいな、と常に思わせてしまうくせものだ。だから、なかなか前に進めない。

大仏殿周辺は、さすがに世界遺産だけあって国内外からの観光客で埋まっていた。しかし、拝観料を払って中に入るとそれほどでもない。実はかなりの人がいるのだが、大仏建立当時から、これだけ大きな大仏を造るのだから、器もそれなりに大きくないと駄目だろうと、すべて大仏サイズに造ったので、相対的にそう思えるだけのような気がする。
盧舎那仏にしても、たいして大きくないなと錯覚してしまうほどだった。脇を固める広目天、多聞天の大きさを確認して改めて比べると、よくもまあ1,300年も前にこんなとてつもない大事業をちっぽけな島国がやってのけたのだろうかと思えるようになった。大仏殿には入れ替わり立ち代わり参拝客やら、観光客らが拝んだり、写真を撮っては出て行くが、堂内を一回りしたあとも、なぜか立ち去りがたい感じがして、外へ出てからも何度も振り返ってしまった。

大仏殿から少し歩くと、驚くほどあたりから人影が消えていた。大仏殿は中央に位置しているので、境内をひととおり見ておこうとすると同じ道を一旦もどるという効率の悪い歩き方になってしまうがやむをえない。東に歩いて、お水取りで有名な二月堂と法華堂(三月堂)に向った。隣りあわせで建っていて、二月堂のほうが人気があるようで、清水の舞台のような坂を参詣客が登っていく。なるほど舞台の上に立つとなかなかの眺望だ。時間があれば、ベンチで小1時間ぼうっとしていたいくらいだ。
法華堂は外見はさりげないが、国宝だ。安置されている仏像も豪華で、中央に不空羂索観音がどっしりと構え、脇に穏やかなお顔の日光菩薩、月光菩薩が配され、その外側に四天王が睨みを聞かせている。まさに天平芸術の宝庫だ。

水分を補給しながら、来た道を戻り再び大仏殿前を通って、今度は西に向う。境内の外に出てしまったのかと思う頃、丘の上の戒壇院に着いた。鑑真大和上所縁の建物だが、現在のは再建されたものだ。三段になった堂内上段の四隅に立つ、四天王像がここのメインだ。小ぶりだが、独特の距離感を保って安置されているのがなんともいえない。同じ像を見たくて何回もぐるぐる回る羽目になってしまう。
堂内ぐるぐる。そして境内もぐるぐる。東大寺は国宝を見て回るだけでも目が回りそうになる。

最後にこれまた国宝に指定されている転害門までぐるっと回って行ったが、門だけが残っているだけで、やや落胆。炎天下のバス通りを歩いて戻る。先ほどまでの興奮が徐々に醒めていく。再び奈良公園に入り、視界に鹿が入ってきたのでほっとする。やがて興福寺の五重塔が見えると、改めて奈良へ来たのだなと実感が湧いてきた。

奈良、旅の計画

2008-07-24 | Weblog
今回は久々の国内旅行ということで、結構戸惑った。
京都に出かけた知人から、ネットでパック旅行が探せると聞いたので調べると鉄道、宿泊がセットになったパックが奈良方面でもあることがわかった。

ところが、予約をしてみると新幹線の列車によって加算料金が発生してくるややこしいものだった。
簡単に言えば、現地滞在時間を長くしようとすると加算料金がかさむというもの。だからと言って、たった3日間なので夜着いて、午前中に帰路に着くという日程ではもったいない。そこでぎりぎりの妥協点という選択になった。
東京発10時以降発なら加算料金1,200円で済むので、往路は品川発10時10分のひかり号にして、帰りは京都発15時台だと加算料金なしなので、15時23分発ののぞみ号に決定。但し、のぞみ号を選択すると1,200円の追加料金が発生するが、のぞみ号に乗ったことがないので、これは記念乗車ということにした。

そして、京都と奈良間の近鉄は追加500円で特急に乗れるので、こちらは迷わず特急を選択して往復1,000円がさらに加算。結局当初の料金よりも3,400円の上積みとなり、全部で36,000円。現地での観光、食事代、みやげ代などを考えると、3年前までならバンコクに行けましたね。

現地での移動には、奈良交通の「奈良・西ノ京・斑鳩フリーきっぷ」が便利だ。春日大社から、薬師寺、法隆寺周辺を含む区域が1日乗り放題で1,600円。奈良市内から法隆寺までが760円だから、一回途中下車して、市内まで戻ってくるだけでほぼ元が取れる勘定だ。だが、ほとんどの寺社は夕方5時ごろには閉門となってしまうのでとても、1日で回れきれないのですね。どちらにとっても、うまく出来た商品ではあります。

いずれにしても、ボーナスが支給される前に予約を入れておいて正解でした。
ボーナス出てからじゃ、とても旅行にいけるような気分じゃなかったわけですから。