今回、変な英語をやっちゃう前に、その予防策です。以下、見ましょう。
(1)a picture of Mary (メアリーが写っている写真)
(1)のように、‘a picture of ~’「~ の写真」は、普通、「~ が写っている写真」、というような意味で、表現することができます。ですので、意外と単純で、あまり、ゴチャゴチャ考える必要がなくて、便利ですね。さらに、以下を見ましょう。
(2)John's picture of Mary (メアリーが写っているジョンの写真)
(2)では、所有格である、‘John's ~’「ジョンの ~」が、(1)の冠詞、‘a’に、置きかわっています。そして、その意味としては、「ジョンが持っているメアリーが写った写真」、とか、少し、余計に意味が付加されて、「ジョンが撮影したメアリーの写真」、というくらいの意味になります。
(3)Tom saw a picture of Mary. (トムは、メアリーが写っている写真を見た。)
(4)Tom saw John's picture of Mary. (トムは、メアリーが写っているジョンの写真を見た。)
そこで、(1)と(2)を使って、(3)と(4)のような、ごく普通の文にしてみたんですが、もちろん、全く問題なく、OKになります。ここまでは、大したことはありません。ところで、以下の日本語を、英語で表現すると、どうなるんでしょうか。
(5)トムは、誰が写っている写真を見たの?
(6)トムは、誰が写っているジョンの写真を見たの?
これは簡単。もう、おわかりでしょうが、まず、(3)を手掛かりにして、(5)を考えれば、よいわけですね。そして、同様に、(4)を手掛かりにして、(6)を考えれば、よいわけですね。どうやら、‘Mary’「メアリー」が、疑問詞‘who’になるような疑問文をつくってやれば、よいみたいです。では、最初に、(5)を、英語にしてみましょう。
(7)Who did Tom see a picture of _ ? (〇) (訳同(5))
(7)は、(3)の‘Mary’を、‘who’に変えて、文の先頭まで移動しました。こういった、疑問詞を使った疑問文は、英語では、日本語とは違って、その移動がルールとして決まっているので、それに従って、そのまま、(7)のように、文の先頭まで‘who’「誰」を移動しただけです。そして、それは、何も問題ありません。では、今度は、(6)を、英語にしてみましょう。 (疑問詞の移動に関しては、EG47、参照)
(8)Who did Tom see John's picture of _ ? (×) (訳同(6))
ん?アウト?何でデスカ?そうですね。やっぱり、(8)は、アウトなんだそうです。これは、かなり悪い英語なんだそうで、もう諦めるより仕方ありません。そこで、(7)との比較になるんですが、その違いは、‘picture’の前にある、‘a’か、‘John's’か、でしかないわけで、そこに原因を求めるしか、他に方法はありません。ところで、以下もあわせて、比較してみましょう。
(9)Tom saw the picture of Mary. (〇)
(トムは、メアリーが写っているその写真を見た。)
(10)Who did Tom see the picture of _ ? (×)
(トムは、誰が写っているその写真を見たの?)
OKである(9)から、(10)の疑問文をつくってみましたが、(10)は、ちょっと、おかしく感じるらしく、アウトです。そこで、(3)は、‘a picture ~’、(4)は、‘John's picture ~’となっていましたが、一方、(9)では、‘the picture ~’というように、定冠詞‘the’になっていますね。
そこで、(8)と(10)を比較してみて、両方とも、アウトになってはいますが、実は、(8)が、かなり悪い、と判断される一方で、(10)は、おかしく感じられる、といった程度の判断を受けるので、アウトである、とは言っても、同じ程度でアウトになる、とは言えません。ですので、(10)は、(8)ほどには、悪くはない、と言えそうです。そこで、さらに、以下の比較材料を、見てみましょう。
(11)Tom saw that picture of Mary. (〇)
(トムは、メアリーが写っているあの写真を見た。)
(12)Who did Tom see that picture of _ ? (×)
(トムは、誰が写っているあの写真を見たの?)
今度は、(11)ですが、‘that picture ~’「あの ~ 写真」としてみました。ここでも、やはり、‘Mary’を、‘who’に変えてから、文の先頭に移動させて、(12)のようにしてみました。そこで、(12)も、結果はアウトですが、その判断の中身としては、(8)よりは、マシだが、(10)よりは悪い、ということになるようです。では、以下に、(7)、(8)、(10)、(12)の文法性に関する要点を、まとめてみます。
(13)不定冠詞‘a’ > 定冠詞‘the’ > 指示代名詞‘that’ > 所有格‘John's’
(13)では、‘a’>‘the’>‘that’>‘John's’の順番に、単語を並べてありますが、最も左がOKで、そこから右に行くにしたがって、悪いと判断される度合いが、強くなっています。そこで、ハッキリ言えるだろうこととして、「定・不定」の度合いに、強弱がある、ということですね。
つまり、不定冠詞‘a’よりも、定冠詞‘the’の方が、名詞を特定する力が強いのは、もちろん、当たり前なんですが、一方で、その‘the’よりも、‘that’の方が、特定する力は強いのです。例えば、ただ、話の中に出てきた、「その写真」、よりも、具体的に、目で見て、指差しながら、「あの写真」、という場合の方が、特定している感じが強い、と言えますね。
そして、これが、‘John's’、ともなると、直接、そのまま、誰であるか (何であるか) を指していますから、「特定」感が、最も強い、ということになるわけですね。つまり、こういった「特定」感が、強ければ強い名詞ほど、その中からの要素の移動に対して、障壁となりやすい、というようなことが、英語にはあるんです。 (「特定」の詳細は、EG72、参照)
今回のポイントは、英語の疑問詞の移動と、「特定」の概念との関わり合いです。英語の疑問詞は、移動しなくてはならない、というルールがあるクセに、その一方で、それを妨げるような要因も、同時に内在しているという、何だか、ヘソ曲がりなところのあるコトバなんですが、学校では習わない、こういったことは、実用英語の世界では、重要と思われます。
英語の名詞は、不定冠詞‘a’が付いたり、定冠詞‘the’が付いたりして、よく、「不定」か「定」か、を問題にしやすい傾向がありますので、面倒ではありますが、多少は、こういったことにも、注意しておかなければならない場合があります。
特に、英語に特有の、「疑問詞の移動」は、意外にも、そういった、「特定」感の強さに影響を受ける、といった側面があることが、今回、明らかになりました。疑問詞を使った文を練習する際には、こういったことも考えながら、変な文にならないように、注意して下さいませ。
●関連: EG47、EG72
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(1)a picture of Mary (メアリーが写っている写真)
(1)のように、‘a picture of ~’「~ の写真」は、普通、「~ が写っている写真」、というような意味で、表現することができます。ですので、意外と単純で、あまり、ゴチャゴチャ考える必要がなくて、便利ですね。さらに、以下を見ましょう。
(2)John's picture of Mary (メアリーが写っているジョンの写真)
(2)では、所有格である、‘John's ~’「ジョンの ~」が、(1)の冠詞、‘a’に、置きかわっています。そして、その意味としては、「ジョンが持っているメアリーが写った写真」、とか、少し、余計に意味が付加されて、「ジョンが撮影したメアリーの写真」、というくらいの意味になります。
(3)Tom saw a picture of Mary. (トムは、メアリーが写っている写真を見た。)
(4)Tom saw John's picture of Mary. (トムは、メアリーが写っているジョンの写真を見た。)
そこで、(1)と(2)を使って、(3)と(4)のような、ごく普通の文にしてみたんですが、もちろん、全く問題なく、OKになります。ここまでは、大したことはありません。ところで、以下の日本語を、英語で表現すると、どうなるんでしょうか。
(5)トムは、誰が写っている写真を見たの?
(6)トムは、誰が写っているジョンの写真を見たの?
これは簡単。もう、おわかりでしょうが、まず、(3)を手掛かりにして、(5)を考えれば、よいわけですね。そして、同様に、(4)を手掛かりにして、(6)を考えれば、よいわけですね。どうやら、‘Mary’「メアリー」が、疑問詞‘who’になるような疑問文をつくってやれば、よいみたいです。では、最初に、(5)を、英語にしてみましょう。
(7)Who did Tom see a picture of _ ? (〇) (訳同(5))
(7)は、(3)の‘Mary’を、‘who’に変えて、文の先頭まで移動しました。こういった、疑問詞を使った疑問文は、英語では、日本語とは違って、その移動がルールとして決まっているので、それに従って、そのまま、(7)のように、文の先頭まで‘who’「誰」を移動しただけです。そして、それは、何も問題ありません。では、今度は、(6)を、英語にしてみましょう。 (疑問詞の移動に関しては、EG47、参照)
(8)Who did Tom see John's picture of _ ? (×) (訳同(6))
ん?アウト?何でデスカ?そうですね。やっぱり、(8)は、アウトなんだそうです。これは、かなり悪い英語なんだそうで、もう諦めるより仕方ありません。そこで、(7)との比較になるんですが、その違いは、‘picture’の前にある、‘a’か、‘John's’か、でしかないわけで、そこに原因を求めるしか、他に方法はありません。ところで、以下もあわせて、比較してみましょう。
(9)Tom saw the picture of Mary. (〇)
(トムは、メアリーが写っているその写真を見た。)
(10)Who did Tom see the picture of _ ? (×)
(トムは、誰が写っているその写真を見たの?)
OKである(9)から、(10)の疑問文をつくってみましたが、(10)は、ちょっと、おかしく感じるらしく、アウトです。そこで、(3)は、‘a picture ~’、(4)は、‘John's picture ~’となっていましたが、一方、(9)では、‘the picture ~’というように、定冠詞‘the’になっていますね。
そこで、(8)と(10)を比較してみて、両方とも、アウトになってはいますが、実は、(8)が、かなり悪い、と判断される一方で、(10)は、おかしく感じられる、といった程度の判断を受けるので、アウトである、とは言っても、同じ程度でアウトになる、とは言えません。ですので、(10)は、(8)ほどには、悪くはない、と言えそうです。そこで、さらに、以下の比較材料を、見てみましょう。
(11)Tom saw that picture of Mary. (〇)
(トムは、メアリーが写っているあの写真を見た。)
(12)Who did Tom see that picture of _ ? (×)
(トムは、誰が写っているあの写真を見たの?)
今度は、(11)ですが、‘that picture ~’「あの ~ 写真」としてみました。ここでも、やはり、‘Mary’を、‘who’に変えてから、文の先頭に移動させて、(12)のようにしてみました。そこで、(12)も、結果はアウトですが、その判断の中身としては、(8)よりは、マシだが、(10)よりは悪い、ということになるようです。では、以下に、(7)、(8)、(10)、(12)の文法性に関する要点を、まとめてみます。
(13)不定冠詞‘a’ > 定冠詞‘the’ > 指示代名詞‘that’ > 所有格‘John's’
(13)では、‘a’>‘the’>‘that’>‘John's’の順番に、単語を並べてありますが、最も左がOKで、そこから右に行くにしたがって、悪いと判断される度合いが、強くなっています。そこで、ハッキリ言えるだろうこととして、「定・不定」の度合いに、強弱がある、ということですね。
つまり、不定冠詞‘a’よりも、定冠詞‘the’の方が、名詞を特定する力が強いのは、もちろん、当たり前なんですが、一方で、その‘the’よりも、‘that’の方が、特定する力は強いのです。例えば、ただ、話の中に出てきた、「その写真」、よりも、具体的に、目で見て、指差しながら、「あの写真」、という場合の方が、特定している感じが強い、と言えますね。
そして、これが、‘John's’、ともなると、直接、そのまま、誰であるか (何であるか) を指していますから、「特定」感が、最も強い、ということになるわけですね。つまり、こういった「特定」感が、強ければ強い名詞ほど、その中からの要素の移動に対して、障壁となりやすい、というようなことが、英語にはあるんです。 (「特定」の詳細は、EG72、参照)
今回のポイントは、英語の疑問詞の移動と、「特定」の概念との関わり合いです。英語の疑問詞は、移動しなくてはならない、というルールがあるクセに、その一方で、それを妨げるような要因も、同時に内在しているという、何だか、ヘソ曲がりなところのあるコトバなんですが、学校では習わない、こういったことは、実用英語の世界では、重要と思われます。
英語の名詞は、不定冠詞‘a’が付いたり、定冠詞‘the’が付いたりして、よく、「不定」か「定」か、を問題にしやすい傾向がありますので、面倒ではありますが、多少は、こういったことにも、注意しておかなければならない場合があります。
特に、英語に特有の、「疑問詞の移動」は、意外にも、そういった、「特定」感の強さに影響を受ける、といった側面があることが、今回、明らかになりました。疑問詞を使った文を練習する際には、こういったことも考えながら、変な文にならないように、注意して下さいませ。
●関連: EG47、EG72
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Who did Tom see John's picture of _ ?
Who did Tom see the picture of _ ?
Who did Tom see that picture of _ ?
それではこれらはどう言い直したらいいのでしょうか?
Whomは使えないのですか?
質問ばかりで申し訳ありません。
これからもがんばってください。
コメント、ありがとうございます。
質問の件、詳述する余裕はありませんが、よく、旅行先で、‘Could you please take our picture?’「写真撮ってもらえますか。」という英語を使いますから、そこから判断して、実は、‘Mary's picture (which was) taken by John’「ジョンが撮ったメアリーの写真」は、OKなんですね。他の意味なら、‘a picture of Mary which belongs to John’「メアリーが写ったジョンの写真」なども、OKです。
(1)Whose picture taken by John did Tom see ?
(2)A picture of whom did Tom see which belongs to John ?
しかし、要は、「定」性が強いと感じられる名詞句内部から、その外への疑問詞移動を避ければよいだけで、学校の試験問題でもない限り、例文の、「書きかえ」にこだわる必要はないと思います。
(3)I heard John took pictures of a girl. Tom saw them. Who is in the pictures?
(4)Tom saw John's pictures of girls. Who did John take pictures of ?
結局のところ、どういった英語を使うか、よりも、どういった英語を避ければよいか、の方が、知っていて役立つ知識だと思いますんで、避けるべき表現がわかっていれば、あとはどんな英語でも自由に使えばよいと思いますよ(笑)。ではでは。