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英語脳をつくる!~日本人はいかに効率良く英語を学べるか~

英語学習に関する事いろいろです。日本人がいかにすれば実用英語を身に付けられるか、その最短距離を考察!

英語学習法(65)

2005年03月16日 | 動詞
EG60、EG61、EG64の続きで、二重目的語の構文ですが、今回は、ちょっとその変則性について考えてみたいと思います。以下、見ましょう。

(1)Roy explained the theory to Sally. (〇) (ロイはサリーにその理論を説明した。)
(2)Roy explained Sally the theory. (×) (訳同上)

(1)では、‘explain A to B’「AをBに説明する」の構文が使われています。そしてOKになっていますね。一方、(2)では、‘explain B A’「AをBに説明する」、つまり、二重目的語の構文が使われていまが、アウトになっています。

二重目的語の構文に関して、基礎編にあたる、EG60で確認したのは、‘explain’「説明する」は、二重目的語のカタチで使うことはできない、という決まりがあることでしたので、結局、そのまんま暗記しなさい、ということでした。ですので、(2)がアウトになるのは仕方ないんですが、でも、そんなこと言われても、ちょっと納得いきません。というのは、以下のような例があるからです。

(3)Roy explained her the theory. (〇) (ロイは彼女にその理論を説明した。)

(3)は、(2)の二重目的語の‘Sally’「サリー」(=B)を、代名詞‘her’「彼女に」、に置きかえてみたんですが、何と、OKになるということなんです。これは、一体どういうことなんでしょうか?英語の辞書など調べてみると、(3)は、「非標準的」だが、まれに使われる、などとコメントしてある場合もあって、シブシブ、(3)を認めているようなフシもあるんです。

でも、本当は、(3)の使用は、シブシブ認めて、やっと「非標準的」なんてもんじゃないんだそうです。英語話者なら、誰が聞いても、全くOKだと判断するほど、(3)はフツーに感じられるんだそうです。ですので、「英語脳」的には、(3)は、現実の世界ではOKで、学校でのペーパー試験の世界などでは、アウトにしておくという、ちょっと、変な措置を取ることにします。そこで、問題となるのは、なぜ、(2)と(3)のような差が生じてしまうのか、ということなんですが、これは、他の動詞を使った場合も考慮した方が良さそうです。

(4)Roy opened Sally the door. (×) (ロイはサリーにドアを開けてやった。)
(5)Roy opened her the door. (〇) (ロイは彼女にドアを開けてやった。)

(4)と(5)では、‘open B A’「BにAを開けてやる」を使っていますが、Bに‘Sally’「サリー」を使うとアウトで、一方、‘Sally’を代名詞‘her’「彼女に」、に置きかえた(5)は、やはりOKだそうです。ここで、EG64で話した、「情報の新鮮度」が、二重目的語の構文の容認度に与える影響を思い出してほしいのですが、EG64の傾向(14)では、二重目的語、「動詞 B A」のカタチでは、Bが、「不定」解釈になるほど、「情報の新鮮度」が高すぎるものであってはならない、という傾向があるのを確認しました。

そこで、割とOKになる傾向がある、(3)や(5)の、「動詞 B A」のカタチでは、Bが代名詞であり、情報的な価値としては、一般的に低いと見られる傾向がある、という点がポイントになると思います。つまり、二重目的語の構文、「動詞 B A」のカタチでは、Bの「情報の新鮮度」が高すぎると、容認度の低下をまねく要因になるけど、一方で、逆に、Bの「情報の新鮮度」が低ければ低いほど、本来、二重目的語を取らないとされる動詞が、二重目的語を取りやすい状態になるのではないか、と推測されます。

(6)Roy donated the Red Cross a few dollars. (×) (ロイは赤十字に数ドルの寄付をした。)
(7)Roy donated them a few dollars. (〇) (ロイは彼らに数ドルの寄付をした。)

‘donate’「寄付する」も本来、(6)のように、二重目的語は取らず、‘donate A to B’「AをBに寄付する」というカタチで使うのが正しいとされているのですが、やはり、(7)のように、Bを代名詞にしてやると、二重目的語を取りやすくなるようです。

以上、こういった傾向は、ヒトがコトバを使う際の、心理的な側面からは自然なことだと思います。本来は正しい使い方ではない、とされているような表現でも、何らかの一定の条件をクリアしてしまえば、一種の転用現象が起こるということですね。上で例にあげた、‘explain’「説明する」、‘open’「開ける」、‘donate’「寄付する」は、比較的、二重目的語の用法が、最近になって、数多く確認されてきている代表的なものです。

しかし、上であげた動詞以外にも、本来は二重目的語を取らないとされている動詞で、実際には、二重目的語の用法が確認されている動詞があり、よく調べてみると、やはり、ある一定の条件が複合的に重なると、OKになるようです。

例えば、「動詞 A for B → 動詞 B A」の、Bが「利益」を受ける、とされていることを表すカタチの場合、上であげた代名詞の条件以外に、他の面からも、積極的に、Bが「利益」を受けるような意味になるようにサポートしてやれば、本来、二重目的語の構文で使えない動詞も、「動詞 B A」のカタチを取るようになったりします。

(8)Roy killed Sally the snake. (×) (ロイはサリーにヘビを殺してやった。)
(9)Could you kill me the snake? I am very scared. (〇)
  (そのヘビ殺してよ~、すごく怖いんだもん。)

(10)Roy cut Sally her hair. (×) (ロイはサリーに髪を切ってやった。)
(11)Could you cut me my hair? It is too long. (〇) (髪切ってくれる?長すぎるのよ。)

‘kill’「殺す」や‘cut’「切る」は、(8)や(10)のように、本来、二重目的語を取らない動詞ですが、(9)や(11)のように、「動詞 B A」のカタチになっても、積極的に、Bの側に、「受益」が表現されていれば、OKになります。(8)からは、サリーがヘビ嫌いかどうかはわかりませんので、目の前のヘビを殺すことが、サリーにとって利益となるかどうかはわかりません。

しかし、(9)のように、サリーがヘビを怖がっている描写の中では、目の前のヘビを殺すことは、サリーにとっての利益となります。加えて、プラスの効果として、Bに代名詞が使われていることも一役かっていますので、(9)は、‘kill B A’のカタチをOKにしやすい環境が整っていると言えるでしょう。

(10)も同様に、サリーの髪を切ることが、サリーにとっての利益となるかどうかわからない状況なので、アウトになります。しかし、(11)のように、サリーが、自分の髪が長すぎると感じている描写があれば、切ってもらいたいという、サリーの希望が表現されていることになり、髪を切ることは、サリーにとっての利益と見なせますので、二重目的語のカタチをOKにすることができます。ここでも、やはり、プラスの効果として、Bが代名詞であることが、(11)をOKにしやすくする手伝いをしています。

今回のポイントは、以上、見たように、二重目的語のカタチは、構文そのものが内側にもつ意味的な特性以外に、外側からのサポートによって課せられる意味的な条件が整うと、動詞によっては、結構な新造力があり、非常に「生産的」な構文だと言えるということです。二重目的語には、こういった「生産性」があるため、使用上の扱いが非常に流動的です。

各動詞の、二重目的語がOKか否かの問題で、辞書などに、ゴニョゴニョと中途半端で例外的な注意書きしかしていないのは、このためで、動詞そのものの意味的な問題もあるのですが、その他に、使用する上での文脈などの外的な環境も問題となったりするので、個々の動詞に、「〇・×」をハッキリとラベル付けするのが困難なのです。ですので、実際の例で、意外な動詞を用いた、二重目的語の構文らしきものを見かけたら、まず、どの程度の外的な援助がはたらいているのかを考慮するという視点が必要になってきますね。

■注 :たまに見かける解説本などで、二重目的語を取る動詞と、取らない動詞の特徴を、1音節の動詞がどう、2音節以上の動詞はどう、といったように、動詞の「音節」に求めるといったものがありますが、反例が多く、大した説明力はありません。そして、何よりも、今回のように、「意味的」な環境を、内側と外側のトータルで考えて、二重目的語の可否が、流動的に決定されるという事実があると、「音節」でによる説明では、その「生産性」に対して、全く動きがとれなくなるという点で、決定的に今後の発展性も期待できないものと思われます。

●関連: EG60EG61EG64

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