カンヌで大絶賛された
テレンス・マリック監督の新作です。
「名もなき生涯」75点★★★★
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1936年、オーストリアの山間の小さな村で
農業を営む、若き夫婦フランツ(アウグスト・ディール)と
ファニ(ヴァレリー・パフナー)。
出会った瞬間から惹かれ合った二人は
子にも恵まれ、
つつましいながらも、平和に暮らしていた。
だが、そんな村にも
ナチスドイツの影が少しずつ広がりはじめる。
「いったい、この国になにが起きているんだ?」
そしてフランツは、ある決意をするのだがーー?!
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ナチスへの忠誠を拒否した実在の農夫を描いた
3時間のテレンス・マリック・マジック。
監督は46年のキャリアのなかで
初めて実在人物を描いたそうで
うーむ、まずはその意味を噛みしめずにいられない。
めくるめく時間の流れや、人と人の触れ合いなど
「感触」を大事にするマリック節は
「ツリー・オブ・ライフ」(11年)とかハマると、とてつもなく良いんだけど
はずれると「男女が延々とイチャイチャしてる」となってしまい
少々用心が必要なのですが
(「トゥ・ザ・ワンダー」(13年)とか「聖杯たちの騎士」(16年)とかね・・・。苦笑)
でも今回は、そこに大きな意味があったので
アタリでした。
1936年、オーストリアの山あいの村。
めまいがするほど美しい風景と光、
そのなかで仲睦まじく暮らす若い夫婦の触れ合いが
平和の尊さをモリモリと伝えてくる。
やがて不穏な雲がわき始め、
夫フランツが、ナチスに従わず、兵役を拒否する決断をする。
その高潔な姿に感銘もするんですが、
まず、彼の行いを果たして「善」と言い切れるのか。
ほかの村人たちだって、いやいやながら従ってるんだぞと、
家族を守るために妥協もしてるんだぞと
お前のせいで、もしも村や家族に害が及んだらどうするんだ?となり
フランツと彼の妻、その姉、幼い娘たちは、
小さい村で村八分にされてしまうんですね。
それでも彼は、意志を貫くことを選ぶ。
彼の抵抗、その鉄の意志は凄まじい。
でも、決してフランツをヒーロー、聖人としてるわけでもなく
「なんで、この人、こんなに意固地なんだろう」とすら思えてくる。
そこがまたミソで
多勢に屈しないこと、なびかないことが
いかに難しいことかを体感しながら
結果、彼のその姿がいまの世に、これだけ響くことの意味を
受け止めずにいられない。
「暗い時代に人々は、よりズルくなる」
「不正を働くより、不正を働かれるほうがいい」
と映画のなかの言葉を聞きながら
ケン・ローチが描いてもおかしくない題材を
みんなが描く。
それほどに、世界の現状は本気でひっ迫しているんだと
感じるのでした。
★2/21(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。