ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ザ・ダンサー

2017-06-01 22:56:48 | さ行

リリー=ローズ・デップの
小悪魔っぷりといったら・・・(笑)


「ザ・ダンサー」70点★★★★


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1862年。アメリカの田舎町に生まれた
ロイ・フラー(ソーコ)は
ニューヨークに出て女優になることを夢見る。

が、チャンスはなかなかやってこない。

だが、あるとき舞台で偶然踊ったダンスで
彼女は喝采を浴びる。

それはブカブカのスカートをたくし上げて
くるくると回るダンス。

このダンスに天啓を受けた彼女は
衣装や舞台装置、照明を自ら設計し
大きな布をまとって踊る、前衛的なダンスを開発する。

パリに渡り、時の人となった彼女だが
そんな彼女の前に
まだ無名のイサドラ・ダンカン(リリー=ローズ・デップ)が現れて――?!


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19世紀末、
ロートレックやコクトーらのミューズになった
伝説のダンサー、ロイ・フラーの物語。


ロイ・フラーのことはまったく知らなかったけれど、
単なる「伝記」でなく
“女性”を深ーいところまで描いていて
そこがすごくいいと思いました。


女優を目指し、でも芽が出なかった彼女は
ある偶然から、たっぷりした布のドレスをまとい、
風をはらみながら舞う、誰もやっていなかったダンスを発案し
大ブレークしたんですね。

その後、
舞台装置や照明まで自分で考え、
前衛的ダンスに磨きをかけていった。

でもそんな彼女の前に、
若きダンスの天才、イサドラ・ダンカンが現れる・・・というわけ。


「そこにいるだけで人を魅了する」イサドラと
超・努力型のロイ。

神が与えた
その不公平さに身もだえするけど

それよりも
「女を助けるのは、やはり女」っていうのが
ワシには強烈に響いた。

最初、誰にも相手にされなかったロイに
発表の場を与えてくれたのは
のちに彼女のマネージャーとなる女性ガブリエルだし

無名のイサドラ・ダンカンの才能を認め、
発表の場を与えたのはロイ自身。

性的嗜好やら損得やらにとりあえず関係なく
本能で人に手を差し伸べられるのは
経験からしても女性に多くみられる、よい特性だと思う。

まあ反面、不公平さがバッチリ明らかになるのも
女と女、なんですけどね(苦笑)


映画ではハッキリとは描かれていないけれど
雑誌「AERA」の取材で監督&主演ソーコにインタビューしたところ

やはりロイは同性愛者で
イサドラとの出会いで、自分と向き合い、自分を発見したのよ――ということでした。

やっぱりこれは
女による、女たちの解放のストーリーでもあるってことが
よくわかった。


骨太さで、人生に不器用なロイを演じきった
ソーコも素晴らしいけれど
ジョニデ娘のリリー=ローズの
イサドラ・ダンカン役は、キツいほどハマリ役(笑)

“持ってる”人間が
そうでない人間を突き落とす残酷さを
まさに素質で演じているって感じました。


余談ですが
コッポラ監督の妻、エレノア・コッポラ監督の初の劇映画
「ボンジュール・アン」(7/7公開)で、リュミエール博物館に行くシーンがあって
そこにあったシネマトグラフ(だと思う)に写ってたのが
このロイ・フラーだった!
つながってて、おもしろいですね。

※「AERA」ステファニー・ディ・ジュースト監督×主演ソーコのインタビュー記事は
来週6/5(月)発売号に掲載予定です。
ぜひご一読くださいませ~。


★6/3(土)から新宿ピカデリー、シネスイッチ銀座、Bunkamuraル・シネマほか全国で公開。

「ザ・ダンサー」公式サイト
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