アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

Time Machine Tour

2011-04-16 12:03:45 | 音楽
『Time Machine Tour』 Rush   ☆☆☆☆

 4月10日の日曜日、マディソン・スクエア・ガーデンで行われたラッシュのコンサートに行ってきた。うちは田舎なので日曜の夜にマンハッタンまで出かけるのは面倒なのだが、まあラッシュのコンサートとあれば仕方がない。

 今回のツアーは「Time Machine Tour」と銘打たれていて、目玉は人気作『Moving Picures』のコンプリート演奏ということになっている。ただ『Moving Pictures』は別にコンセプト・アルバムでもないし、収録されているのはライヴの定番曲ばかりなのでほとんどはすでに生演奏で観たことがある。だから個人的には「へーそうなの?」程度の期待感だった。どうせ「Time Machine Tour」なんて言うんだったら、「Cygnus X-1」と「Cygnus X-1 Book II」のコンプリートぐらいやってくれればいいのに。そしたら昔からのラッシュ・ファンは狂喜乱舞だ。

 さて、会場に入ると私の席は上の方のすごく左側、ほぼステージの真横である。昔、来日コンサートを武道館で観た時もちょうどこれぐらいの場所だったなあ、と思いながら開始を待つ。それにしても開演前のBGMはイエス、クリムゾン、EL&P、UKとプログレ大特集である。

 会場が暗転すると、例によって三人が出演しているビデオが始まる。前より長くなっている。おまけに機材の不調だか何だか知らないが途中で止まってまた最初から始まったので、ますます長い。が、演奏開始秒読み段階の興奮からか、行儀が悪いニューヨーカー達もブーイングせずに従順に待っている。ビデオの中で「The Spirit of Radio」が流れ、ライヴもこの曲で始まる。観客はいきなり大盛り上がりだ。うーむ日本公演もこうだったなあ、と思いながら観る。

 セットリストは以下の通り。

The Spirit of Radio
Time Stand Still
Presto
Stick It Out
Workin' Them Angels
Leave That Thing Alone
Faithless
BU2B (from Clockwork Angels)
Freewill
Marathon
Subdivisions

(休憩)

Tom Sawyer
Red Barchetta
YYZ
Limelight
The Camera Eye
Witch Hunt
Vital Signs
Caravan (from Clockwork Angels)
Love 4 Sale(Drum solo)
Alex Solo
Closer To The Heart
2112 Overture / The Temples of Syrinx
Far Cry

アンコール:
La Villa Strangiato (with polka intro)
Working Man (with reggae intro and Cygnus X-1: Book I outro)

 「The Spirit of Radio」の次に間髪いれずに「Time Stand Still」が始まった時はテンション上がった。この曲はいいよお。元気がいいしサビは美しいし演奏も盛り上がる。ベースも弾きまくり。そういえばこの曲はライヴ音源が出ていないなあ。今回のツアーの音源が出るとしたら目玉曲の一つになるだろう。(と思ったら、『A Show Of Hands』の中に収録されていた。このライヴ盤は個人的に印象が薄いのです)

 続く「Presto」はこれまた珍しい。レア曲だ。地味だけど透明感があって渋く盛り上がる。「Stick It Out」はヘヴィーに、「Workin' Them Angels」は重厚にキめ、私の大好きなインスト曲「Leave That Thing Alone」へつながる。しかし今回、ゲディのベースの音はひときわバキバキいってるな。ギターの音もいつものことながら非常にソリッド。そして「Faithless」を挟んで、次のアルバムに入る予定の新曲「BU2B」が披露される。私がこれまで観たコンサートでは、まだ発売されていないアルバムの曲をやったのはこれが初めてだ。曲の感じはやはり『Snakes & Arrows』と似ていて、ヘヴィーなリフが印象的だ。

 そして「Freewill」が始まり、観客のテンションは一気に上りつめる。私が思うにこの前半のラスト三曲、「Freewill」「Marathon」「Subdivisions」の三連発がこのコンサートのハイライト、最高潮だった。 客の盛り上がりもすごかったし、なんといっても曲そのものがどれもドラマティックだ。演奏、メロディ、構成力、多様性とラッシュの醍醐味を見せつける三連発だった。

 後半は目玉の『Moving Pictures』コンプリートだが、やはりどれも定番曲なので「おお!」というほどの感動はなかった。珍しかったのは「The Camera Eye」ぐらいだ。ただこうやって続けて演奏すると、やっぱりいい曲ばかりが揃っていることが分かる。

 それからもう一つの新曲「Caravan」。これもやはりヘヴィーな曲。最近の曲は悪くはないんだが、歌メロの感じがどれも似ているなあ。そこからドラム・ソロ、「Closer To The Heart」「2112(冒頭部分のみ)」「Far Cry」で一旦おしまい。この終わり方はいま一つ地味な気がする。

 アンコールは、ポルカみたいな妙な演奏から「La Villa Strangiato」につながる。これも大好きな曲なので、メドレーじゃなくコンプリートでやってくれたのが嬉しい。それからまたヘンなレゲエのイントロから「Working Man」。しかしこの「Working Man」のギター・ソロはすごかった。アレックス・ライフソンが血管ぶちきれそうな勢いで延々引きまくるのである。やはりこの人達は同世代の他のミュージシャンたちとは違う、とつくづく思わされた。「現役」感がまったく違うのである。

 ところでステージのすぐ下にアリーナ席に向かって警備員のおじさんが椅子に座っていたが、このおじさん最初はじっと座って観客席を眺めていたけれども、アンコールの時には音楽に合わせて体を揺らしギターを弾くまねをしていた。うーん、さすがラッシュ。警備員のおじさんも思わずエア・ギタリストになってしまう。

 まあそんなこんなで、個人的な印象は前回のツアーの方が強烈だったが(レア曲が多かったし)、非常に愉しめたコンサートだったことは間違いない。やっぱラッシュはええね。次はニューアルバム、そして本ツアーのライヴ音源のリリースに期待いたしましょう。


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