ECOさんが帰る場所

(有)ビオプラス西條デザインのエコハウス♪
住宅誌『住まいネット北海道』内の連載のつづきです。

WEBでもECOさん!⑰ 加藤さんファミリー

2014-09-03 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所⑰ 
◆オーガニックアパート、誕生!

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化学物質のしみこんでいない天然無垢の国産材と自然素材でできた家、というと、ほとんどが持ち家で賃貸物件はめったにないものですが、なんとこの北海道の、札幌駅からほんの40分電車に揺られた緑ゆたかな郊外に、そんな夢のオーガニックアパートが誕生しました。

その名も、菜園付きエコアパート「かたくりの里とうべつ」


ジャジャーン!
これが真正面から見たところ。シックな外壁に映える4色のアースカラーがステキですね~♪


一棟に4世帯が暮らせる、二階建てのメゾネットデザイン。


各世帯の外側には、菜園、縁側、雨水を貯めておけるタンク、カーポート、大きな物置き、木製のポスト……などが付いています。


↓こちらが、菜園と反対側、玄関口の前にあるカーポート。

上質な持ち家級の風格です。


↓こちらが玄関口。外壁も扉も、天然無垢の道産木材です。





中におじゃますると…おや?この家のお子さんと大家さんが。


「うちの子は大澤さん(大家さん)のことが大好きで、よく遊んでもらってるんです。ほんとによく面倒を見てくださって申し訳ないくらいで…いろんな面で親身になって相談に乗ってくださるので、とても助かっています」と、奥様の美沙さん。


「菜園と庭を隔てて向こう側の棟にぼくの部屋があるんですが、毎朝この子たちが『大澤さーん!、おはよ~!』って手を振ってくれるんですよ。それが嬉しくてね…まるで自分の孫みたいな気分で、かわいくてしょうがないんですよ」と、大澤さんもうれしそうに目を細めています。



美沙さんいはく、「ここのことは、私が偶然入ったお惣菜屋さんに置いてあった西條デザインさんのチラシで知って、『自然素材のアパートなんて、きっとステキだろうな~!』と憧れていました。

 待ちに待った見学会で初めてここに来て大澤さんとお話ししたら、それまであまりピンと来ていない様子だった主人も、大澤さんの熱いお話に一気に心動かされた様子で、『ここに住もう!』って、がぜん乗り気になってくれたんです」



「大澤さんは、嘘のない誠実な方。話してすぐそれがわかり、熱い想いに動かされました。入ってからもいろんなことを教えていただいています」と、だんな様の真郷(まさと)さん。

相思相愛のみなさんの表情に、第三者の私まで幸せな気持ちになりました。





↓ここは、だんな様のいちばんのお気に入りコーナー。


大きな窓から菜園やその向こうの風景を見渡しながらボーッとするのが、至福のひとときだそうです。


実はここ、菜園を見渡せるだけでなく、なんと畑からそのまま出入りできる土間になっているのです。


アパートなのに土間があるなんて、なんて便利でステキなんでしょう!土がついた格好で靴のまま行き来できてラクチン。

冬も外感覚で暖かい空間で自由に遊べる
ので、子どもたちにとっても嬉しいスペースです。


「うちの子たちは、ここにふとんを敷いて寝るのが好きなんですよ。自分で2階から枕とふとんを持ってきて寝るのがお気に入りなんです。自分のとっておきの場所、って思ってるみたい(笑)」と美沙さん。

さすが子どもは高感度!

実はこの土間には蓄熱性の高いタイルが使われていて、南向きの大窓から差し込む太陽光をたっぷりキープしてくれるよう設計されているので、夜はその熱がほどよく室内に還元され、まるでちょっとした天然の非電化オンドル(韓国式床暖房)のようになるのです。


菜園と室内をつなぐこの土間は、どうやらみんなの大切な和みスペースになっている様子。

しっかりしたペアガラス(二重ガラスの間にガスが仕込まれている、断熱性の高い窓)や、20センチもの厚さで壁に仕込まれている道産木材の繊維を使った断熱材、そして、このスペースの端に、炎が見えるペレットストーブが設えられていることも、ここが安らぎの温もり空間になっているゆえんなのでしょう。



この土間のもう一方の脇には、無垢板でできたステキならせん階段が。


この家の床には空気をたくさん含んだ温かな性質を持つ道産木材の無垢板が使われているので、素足にも優しい心地よさ。

断熱材もしっかり入っているので、冬も足元から冷えが来る心配がありません。


この階段をのぼっていくと…


キッチンや水周りスペースがないぶん、いい香りの無垢の木の温もり空間が1階の空間まるごとぶん広々と使える2階スペースが。


1階の土間部分の天上=2階のこの無垢木材のスノコ状の床になっていて、ペレットストーブの熱がダイレクトに上がってくるしくみ。

なんとこのスノコは取り外しも可能で、階下からベッドなどの大物もラクに上げられるようになっているそうです。

2階と1階の音や気配の流通もあり、子どもたちだけが2階で遊んでいても、様子がわかるので安心。

2階部分の片隅にある天井近くの壁には、目隠し用の無垢の木製扉がついた換気扇があり、上昇した暖かい空気を階下に下ろしてくれるつくりになっています。


実は窓の下に見える菜園の手前にある“アースチューブ”も、この換気扇と連動したこのエコアパート自慢の換気ツール。


冬の室内湿度を快適に保ち結露を防ぐためには、外気と内気の入れ替えが欠かせませんが、

ここから吸い込んだ外気を、床面から壁の内側を通り2階までつながる長いパイプの中を通して暖めながら室内に入れ、暖かい2階の空気をこの換気扇で吸い込み床下に下ろすことで、冬は暖かく、夏は涼しく過ごせるよう、工夫されているのです。


キッチン部分の床にも換気口が。家のあちこちに換気の流通をはかる設計が、さりげなく施されています。


持ち家でもなかなかないこのアースチューブは、シンプルなしくみながら、かなりのスグレモノ。設計を担当したビオプラス西條デザインの一級建築士・山田さんと大澤さんがこのエコアパートに込めた“こだわりポイント”のひとつです。

「備え付けられている小さなペレットストーブ一つで、冬も暖かく過ごせました」

夕食後はストーブを消して2階に上がると、朝までほんわり暖かく過ごせます」


と、奥様もだんな様も満足のご様子。


北海道産の木クズを圧縮して固めたペレット燃料は、石油ストーブとは違ってい~い匂い。デリケートな子どもたちの体にも安心で、暖かさも薪ストーブ並み。炎が見えるので、目にもあったかです。

「断熱がしっかりしているおかげもあるのか、うちの場合は、以前の住まいで石油ストーブを使っていたときより、ずいぶん暖房費が安くなりましたと美沙さん。

う~ん、イイコトづくめですね!



こちらは、床下収納や上部の棚も重宝な、気持ちのいい天然無垢材キッチン



何度もリニューアルできるホタテ漆喰の壁の一部には、こんな遊びを施すことも可能。

このエコアパートの、見えざるもう一つの大きな“こだわりポイント”は、北海道の噴火湾でとれたホタテの貝殻を活用したビオプラス西條デザインのオリジナル漆喰壁……の奥!

先ほどもチラリと紹介しましたが、一般の家づくりでも珍しい20センチもの厚い断熱材にあります。

その断熱材は、ドイツから技術を学び北海道の木材を使って北海道の工場でつくられた、木の繊維が原料の断熱材。

もともと断熱効果が高い木を繊維状にすることで空気がよりたっぷりと含まれ、断熱効果がアップ。

壁の内側に仕込む際に少し手間と技が必要ですが、つくるときも、廃棄されたあとも、化学的に製造された断熱材よりずっとエコロジカル

北海道の植林の森の木を活用することで森の荒廃を止め最後は土に還るという、一石何丁もの効果を秘めた素材なのです。


「断熱材の他にも、表面には見えない大きな工夫がもう一つあるんですよ」

と教えてくれたのは、ビオプラス西條デザインの一級建築士で、このエコアパートを設計した山田さん。

なんと、このアパート、壁の構造材の厚さも通常の2倍なのだそうなのです。

「木造の建物は鉄筋にくらべて音が伝わりやすいので、アパートの場合は隣同士の騒音がトラブルのもとになりかねません。大澤さんはその心配を軽減するために、構造材を2倍にする道を選んだのです。

 ふつうのアパート経営者はできるだけコストを削減しようとするので、こんなことはありえません。しかもこのアパートの構造材はすべて道産の無垢木材なので、一般的なアパートづくりより、もともとのコストも高いんです。

 大澤さんは環境への意識も高いし、コストより住まい手の健康や快適さを、未来への影響や自然環境ごと考え、優先している。ほんとうに希少ですばらしい施主さんであり、大家さんですね」
と、山田さん。 


壁材、断熱材、天井や床材、そして構造材……地元・北海道の土・海・森…にいただいた天然素材空間に満ちる空気は、ビニール・プラスチック・外国の木を接着剤で貼り合わせた合板や集成材などの、化学物質だらけの建物の中に満ちる空気とは大違い。

その違いは日々、住まい手の心身と、生きものすべての家である地球環境の両方に、目には見えないながら確実に影響を及ぼしてゆきます。



「以前住んでいた家は湿気や結露がひどくて、家にいるのがイヤで、外に出かけたくてしかたない毎日でした。

 でもこの家は、家にいても森の中みたいに気持ちよくて本当に幸せ。家にいるのが大好きになりました。

 雨水タンクが付いているから、『あ、雨水が貯まるな』と、雨の日もうれしくて(笑)」
と美沙さん。


だんな様も、「菜園づくりも楽しいし、会社に行かず家で仕事ができたらいいのに、と思うようになりました(笑)」とのこと。


「前からやりたかった家庭菜園を庭先に持つことができて、主人がいちばんハマッテいます。子どもたちが起きてくるとジャマされて作業できないので、朝いちばんで起きて作業したりして(笑)」


「子どもたちにとっても、この菜園と庭はいちばんの遊び場。まだ青いトマトを全部採っちゃったりと困ったこともありますが(笑)、土や虫や野菜に直接触れる日常になって、子どもたちなりにいろんなことを感じ、吸収していると思います」


「菜園の周りに広々とした空間があって、車を気にせず自由に走り回らせておけるのも、子育て中の身には本当にありがたいですね。

 ここに来る前は札幌に住んでいたのですが、当別に来たら空気はいいし静かだし、ご近所の方もみなさん本当に優しい方ばかり

 ご近所の方も、お店の方も、私たちの姿を見ると声をかけてくださるので、とても嬉しくて楽しい気持ちになります。

 しかも、今日も朝から、大家さんからは畑の小松菜、お隣さんからは食べきれないほどのサクランボをいただいたんですけれど、毎日いろんな方にいろんな作物やおかずをいただくので、ありがたくてビックリしています。

 田舎のくらしって、温かくて豊かなんですね


JRで札幌に通勤しているという真郷さんは、「通勤時間はひとりになれる貴重な時間。ラッシュもなく座れますし、ひとときの孤独を楽しんでいます(笑)」とのこと。


美沙さんの情報によると、JR石狩当別駅のすぐそばには、「当別ふれあい倉庫」という道の駅のようなお店があり、びっくりするほどおいしい地元産小麦のパスタ(乾麺)や、地産食品が並んでいるとのこと。

ここで無料でもらえる石狩当別のミニガイドマップをもらって町を散策するうちに、隠れ家のような絶品のケーキ屋さんや、こだわり天然酵母パンのお店など、通いたくなるスポットもいろいろ発見中だそうです。


実は大家さんの大澤さんも、長年の東京暮らしを経て、このアパートを建てるのを機に、実家に戻ってきたのだとか。

「当別には、長年培われてきた、都会にない豊かさとほどよい距離感の温かいコミュニティがしっかり息づいています。その風土と人間関係は、この土地の大きな財産

 私は、そこにこのエコアパートが、さらに新しい魅力を添える存在になれたらと思っているんですよ。

 そのために、この町の人々と一緒に、ワクワクする計画をどんどん実現させていきたい。考え語り合っている構想がいろいろあり、これからが本当に楽しみです」



これは建築中の一枚。実は、このアパートの棟梁を務めたのは、職人の技を大切にする武部建設で大工として働く、大澤さんの息子さん!

大澤さんの夢が、「ビオプラス西條デザイン」の設計力と、「武部建設」の職人技に結びつき、地元・北海道の健やかな天然エネルギーと職人魂が組み合わさって生まれた菜園付きエコアパート「かたくりの里・とうべつ」

そこで暮らす加藤さんご一家と、これから増えるであろう仲間たちが、大澤さんや地域の人々とどんなワクワクを響かせてゆくのか、私も今から、胸を高鳴らせています。

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菜園付きエコアパート「かたくりの里とうべつ」
 *賃貸料:78000円(2014年8月現在)
 *問合せ先:0133-27-5066(最新情報など、お気軽にお問合せください)

・設計:ビオプラス西條デザイン
・施行:武部建設


◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
◆designer:森川瞬(寺島デザイン制作室
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ


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