ECOさんが帰る場所

(有)ビオプラス西條デザインのエコハウス♪
住宅誌『住まいネット北海道』内の連載のつづきです。

WEBでもECOさん!⑱ Nさんファミリー

2015-01-08 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所⑱ 
◆家じゅうまるごと、安全地帯。

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あなたは新築の家やお店に入ったとき、薬品やビニールの匂いを感じて息苦しくなったり、目や頭が痛くなったりした経験はありませんか?

石油化学製品を使った建築資材やインテリアから揮発する、様々な化学物質。家電・電線・通信機器の基地局やアンテナなどから発せられる、電磁波。

そんな“文明の利器”に潜む人体への危険を敏感に察知してアレルギー反応を起こす“化学物質過敏症”“電磁派過敏症”に悩む人々が増加中の昨今ですが、今回訪問したお宅は、その二つの問題をクリアすべくビオプラス西條デザインさんが設計・施行した「健康住宅」。

ここで暮らすようになる以前、10年以上もの間、化学物質過敏症と電磁波過敏症に苦しみ続けてきたというこのお宅の奥さまは、「この家にいるとまったく症状が出なくて、自分が病気だってことを忘れちゃうんです」とニッコリ。

はてさてこの家には、いったいどんなしかけがあるのでしょう?

さっそくおじゃまして、そのヒミツに迫ってまいりましょう!

こちらは、無垢のまま使われている天然木と白壁のコントラストが美しい玄関先。

現代の住宅では、このような白壁はビニールクロス貼りの場合がほとんどですが、こちらはホタテの貝殻を漆喰風に有効利用した塗り壁。

よく見るとほら、職人さんが手で塗った、風合いのあるハケ目模様が。光の加減で、まるで木肌のようにも見えてきますね。

安価でナチュラルな塗り壁材として一般的な「漆喰」ですが、その主成分の石灰は、珊瑚や貝殻などの屍骸が積み重なって石化した堆積岩。

ホタテの貝殻は石灰によく似た性質を持ち、石灰に勝る利点も多いため、漆喰に代わる新たな自然素材の塗り壁材として使われるようになり、ビオプラス西條デザインも独自の配合で、オリジナルのホタテ貝殻塗壁材「うみびと」を開発しました。


「うみびと」は、ホタテの貝殻粉末に天然糊と紙すさを加えただけのシンプルな調合で石灰や樹脂接着剤を一切含まないので、石灰を扱うときに懸念される木材焼けの心配もなく、手についても安心。

ほどよい粘り気があって素人でも塗りやすく、色つきの壁にするための天然顔料を混ぜ合わせてもムラになりにくく仕上がりがきれい。

しかも、ゴミとしてやっかいモノ扱いされていた貝殻を有効に活用できる、とても理にかなったエコロジカルな道産“財”なのです。


こちらの格子の引き戸は、無垢材で作ったオリジナル。一見和風なのに和風すぎない、絶妙なセンスがステキですね。


玄関を進み、ゆったりした雰囲気のリビングルームへ。

全体的にウッディで心安らぎを感じるNさんのお宅ですが、実際、ビオプラス西條デザインの“木づかい”には、安らぎを生む方策がたくさん施されているのです。


リビングからつづくダイニングキッチン。

まず、使用している木材はすべて道産・国産の天然木の無垢材。できるだけ身近で信頼し合っている取引先から、防腐剤や殺虫処理をしていない天然木を調達。

化学的な接着剤で貼り合わせた合板や集成材の構造材は一切使わないのが信条で、表に見えない構造材をはじめ、壁・床・天井から建具や家具に至るまで、木材はすべて無垢の木を使用。

Nさん宅では断熱材にも、古紙の繊維断熱材木の繊維を分厚いマットレス状にしたものを二重に使いました。


アイランド型のオシャレな調理台。タイルの目地材も自然素材です。

呼吸をつづける木材である無垢材にこだわり、木が持つ自然なあたたかさや調湿効果を最大限に活かした森の安らぎ空間を再現する家づくりがビオプラス西條デザインのスタンダードですが、Nさん宅には敏感な奥さまの快適を目指し、さらにいくつかのスペシャルな対策が施されていました。



まず一つ目は、使う木材の種類。

天然木にはヒノキなど匂いの強いものも多く、化学物質過敏症の方にとっては天然の匂いであってもアレルギー反応を引き起こしてしまう場合があるため、この家には、匂いの少ない性質を持つ「タモ材」が多く使われているとのこと。

化学物質対策には、人工物対策に限らない様々な知識や配慮が必要なのですね。


白いカーテンは、電磁波カット効果がある布で作られたもの。「薄いのに一枚引くだけで違うんですよ」と奥さま。

また、このお宅には同じ平米数の通常の家づくりに使う2倍以上の木材で厚みを持たせ、外界の電磁波をがっちりブロックしているのだそう。

木は電気を通さない性質を持ちマイナスイオンを出しているため、森に行ったり生きている木に抱きついたりすると体内にたまった電磁波が“アース”されスッキリ爽やかな気分になりますが、切ってしまった木材も無垢のまま使えば、森で得られるような恩恵にあずかれるのですね。


オーガニックの畳+和紙の壁でできた客間。障子のデザインは奥さまの要望で設えたもの。「こうすれば桟を掃除する手間がかからないな、と思って、西條さんにお願いして作ってもらったんです」。

そして、もう一つの大きなスペシャル対策は、建物から発生する電磁波(電場)を導電性シートを使ってカットし、「オールアース住宅」にしていること。



現代の住宅では、以前は一家に一台あるかないかだったTVやエアコンなどの家電が一部屋に一台置かれるなど、家電のためのコンセントや照明のスイッチが部屋のあちこちに設置されるようになり、見えない壁の内側は電気の配線でいっぱい!



電気の使用量はこの40年で5倍以上になり、外の電柱から各室内へ電気を運ぶ配線も急増。

25年前は2階建ての住居1軒あたりで150mほどだった屋内配線が今は1000m以上(約7倍!)になったとも言われ、そのぶん電磁波による体調不良を訴える人も増えています。



が、Nさんのお宅ではこの室内配線を“オールアース”しているので、「電気の鳥カゴから開放された気分」だそう。


「寝たとき頭の近くにコンセントが来ないようにするなどあちこちに細やかな配慮もしてくださって、ほんとうに助かっています」とのこと。

心と技術、両方の成果が、笑顔と安らぎを生み出しているのですね。


2階にあるお子さんとだんな様のそれぞれの部屋には、吹き抜け部分に面してこんな小さな窓が。冬は階下の薪ストーブの暖気がこの窓から両方の部屋に流れ込み、夏は吹き抜けの窓を開けることで風が通ります。

「この家は外より呼吸がしやすくて、空気がいいように感じるんです。換気の努力は特にしていないのに、空気がよどまない気がするんですよね」


階段をのぼってきた先にあるここは、奥さまの「ホッとスペース」。吹き抜け窓の向こうに見える大きな松の木を眺めながらお茶を飲んだり、読書をしたりするそうです。

…という奥様の言葉を伝えると、設計の山田さんは笑いながら、「そこが設計士の腕の見せ所なんですよ」とのこと。


吹き抜けにはストーブの煙突が。二重煙突なのでここから出る暖気は微少ですが、真下から昇ってくる薪ストーブの熱が2階を暖め、壁や階段を伝って家の中をゆるやかに対流します。

「冬は空気が動くと寒く感じるので緩やかな換気が望ましいのですが、夏はその逆で、風の通りを感じる換気が涼しくて快適なんです。Nさんのお宅は、吹き抜けの窓がその調整に役立っているのではないかな」と山田さん。


薪ストーブは、だんな様の念願だったそう。薪は西條さんから建築廃材をもらっているとのこと。それなら化学物質もなく安心でオトク。ラッキーですね!

「建てたのは3年前ですが、冬はとっても暖かくて結露の心配もなく、夏はよく風が通って涼しくて気持ちいいんですよ」と大満足のご様子なので、山田さんの設計がバッチリ功を奏しているのですね。



「この家で暮らして3年。家にいると完治したような気分ですが、街に行くとまだダメでがっかり(笑)。でも、この家で暮らすまでの自分を思えば、信じられないくらい幸せです。家族にも本当に支えてもらったし、主人の理解があったからこその今だと思って、本当に感謝しています。

ここまで来るのに10年以上かかりました。以前はいつも頭痛やめまいがしていて、目はまっかっかでサングラスとマスクが手放せなかったし、特に発症したての頃は不調の原因がわからないのでとにかく不安で、毎日が地獄のようでしたね……

女性はホルモンバランスの崩れで免疫力が落ちると発症しやすいし、化学物質と電磁波へのアレルギーは連動しているので、たとえ発症していなくても、食べものや生活環境にはふだんからできるだけ気をつけているに越したことはないと思います。

西條デザインさんのことは友人からの情報で知り、話を聴きに行って建てられた家を見た結果、『ここでしか建てられない!』と思いました。めぐり逢えてほんとうによかった。施行の途中でお目にかかった暖房のスペシャリストの方が『ここに住んだら健康になるよ~!』とおっしゃっていたけれど、本当でしたね。

主に社長の西條さんと設計の山田さんには本当にお世話になり、家を建ててからもずっと、いろいろとおつきあいさせていただいています。

西條さんは率直でダマシがない人。
できないことはできないとハッキリ言ってくれるところも信頼できました。でも、山田さんには西條さんとは違う男気があって、西條さんがムリだと言ったことも『ぼくが何とかしましょう!』と言って、ほんとにものすごくがんばってくれるんです。あのお二人はいいコンビですね(笑)。

お二人ともずっとお忙しくて、以前からお願いしているガレージづくりが進まず困っていますが、西條さんが菜園で育てている美味しいオーガニックトマトやお野菜を持ってちょこちょこ顔を出してくださるので、今のところ許してあげています(笑)。

この家にいるとこんなに元気でいられるのだから、ここで暮らし続けたら少しずつ抵抗力を取り戻していって、いつか病気自体も治るかもしれない。そうなったらいいな、と思っています」



奥さまのお話をうかがいながら、ここまでの道のりを想い、胸がいっぱいになりました。心身ともにリラックスできる空間での生活は、きっとどんな薬にも勝る治癒の道ですね。

“過敏症”と診断された方々は、私たちが現代生活で多用している製品の多くが、自然物である人体と相容れないことを敏感に察知し、身を持って警鐘を鳴らしてくれている正常な感度の持ち主たち。私にはそう思えてなりません。

「取り込んできた化学物質や電磁波がその人にとっての飽和量に達すると、突然、誰でも発症する」と言われているこの現代病。

『この病気を治すために欠かせないのは、化学物質や電気に依存しすぎている現代人の意識と暮らし方が、少しでも自然に還ることだよ』。Nさんの家の自然素材たちが、そう教えてくれている気がします。

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雑誌「住まいの提案~北海道」掲載ページ
ビオプラス西條デザインHPリンク

◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
◆designer:森川瞬(寺島デザイン制作室
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ