ECOさんが帰る場所

(有)ビオプラス西條デザインのエコハウス♪
住宅誌『住まいネット北海道』内の連載のつづきです。

WEBでもECOさん!⑬ Sさんファミリー

2013-07-02 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所⑬ 
◆なるほど!1,5世帯住宅。

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●お待たせしました!
とうとう7月がスタートしましたが、
今回はまだ雪が残る季節に取材させていただいた
札幌市内のSさん宅をご紹介します。


住宅街の中に現れたるは、外壁に道南の杉材を使った、
ちょっと山小屋風ルックスのSさん邸。

見た目からナチュラルなこのお宅には、
家の外側にも内側にも、「なるほど~!」 と膝を打ちたくなる、
「くらしのナチュラルエネルギー」 を活用した
お役立ちアイデアがいっぱいでした。

さぁ、ではまず家の外側から、探検とまいりましょう!


●まずはコレ、何だと思います?

雪国ならではのお役立ちシステム、「融雪槽」 です。

道内なら どこのお宅にもあると便利なスグレモノなのに、
実際に設置されているお宅はあまりないこの融雪槽、
Sさんのお宅では、お風呂の温排水で雪を溶かすつくりで、
ムダなエネルギー消費もないエコ設計。さすがです。


ほらね、冬はこうやって雪を穴に落とすだけ
お風呂の残り湯が庭の雪を自然と溶かしてくれるから、
雪捨て場に困る心配もありません。

しかもこの作業を 「楽しみ♪」 と冬の日課にしていらっしゃるのは、
なんと今年80になるというお姑さん!


「運動しなくちゃ体が弱るでしょ。
 集めて穴に落とすだけだからおもしろくてね。
 前に雪を押してくから、足とか腰とか丈夫になるんでないかしら」

と、ご本人はエレガントなシルバーグレーヘアでニッコリ。

ふつうは頭痛のタネになりかねない雪かきを
体力づくりの日課に活用していらっしゃるとは、
さすがエコさん! いや~見習いたいです!!!

「以前私も姑さんといっしょに暮らしていたの。
 もともと何でもできる人だったのに、
 洗濯から何からすっかり私に任せるようになって自分が動かなくなったら
 76くらいからだんだんおかしくなってきて、
 結局 全然動けなくなっゃったの。

 だからカラダ動かさななゃダメなんだ、って、勉強になりました。

 ラクしちゃダメなのよ。年寄りはね、
 手取り足取りされちゃダメなんですよ」


う~む…具体的で身につまされるお言葉ですね~!
動かさないと動かなくなる…いや~ごもっともです。

「姑は本当によくできた人で、
 雪かき、私の分も残しといてくださいね~
 っていうくらいよく動いてくれるので、
 とっても助かっています(笑)。
 
 窓が大きくて、外で雪かきしている様子を
 うちの中から見ていられるのも安心ですね」


と、お嫁さんのMさんもニコニコ。


●リビングダイニングの窓だけでなく
お姑さんの趣味の作業部屋にもなっている和室の窓も大きいので、
おうち全体が明るく開放的で、ゆったりした雰囲気。


通りに面した窓は、道行く人々から内側を見られないように、と
閉ざされた設計を望む方も多いように思いますが、
Sさんファミリーは、ちょっと違う観点をお持ちのようです。

道行く人や訪ねて来る人の様子が見えるので、安心なんです。
 
 作業している様子が外から見えるので
 防犯にも役立っていると思いますし、
 明るくて作業もしやすいですしね」。


もしかすると立地をポジティヴに活用したこの設計も、
前向きで心やわらかなSさんファミリーのくらし作りに
一役かっているのかもしれません。

第三者としても、大きな窓からこんな手仕事の様子が見えたら、
それだけで豊かな気持ちにさせてもらえる気がします。


●同居して6年になるというSさんファミリーですが
旦那さまは単身赴任中でウィークデイはいらっしゃらないので、
日常的にはお嫁さんと義理のご両親の3人住まい状態。

ともすると気詰まりな状況が予測されそうですが(笑)、
お互いのプライバシーを保ちつつ感謝がめぐる
自然な心の通い合いがジワ~ンと伝わってきて、
ほっこり温かな気持ちにさせられました。

●このお宅の個性を表したキーワードである
“1,5世帯住宅” という発想は、
2世帯住宅を建てた周りの人々の情報から出てきたものだそう。

大きなキッチンやお風呂場を2つずつ作っても、
年を取るにつれ結局はどちらか1つしか使わなくなってゆく
という いろんなお宅の実情を知り、

2Fには将来拡張することも可能な必要最低限のキッチンのみ設え、
お年寄りにとって使いやすい1Fに、
2世帯で共有することを前提にした
メインのキッチンやバスルームを作ることに。

建築費も光熱費も2倍かかる2世帯住宅ではなく、
お互いのプライバシーを確保しつつ費用が抑えられる、
改装や拡張も可能なフレキシブル設計の家。 

それが、“1,5世帯住宅”のココロだそうです。


●火を使っている様子が見えやすいよう、
キッチンとダイニングの間は壁のないオープン設計に。

「2人でキッチンに立っていてもぶつからないし、
 とっても使いやすいの。仲良くやってますよ」

と、お姑さん。


「シャケ一匹が丸ごと入る大きさがいい!」

というお嫁さんのリクエストに応えた大きめシンクは、
見るからに使いやすそう。

古いおうちでもお使いになっていたという
調理台にもなるシンプルなテーブルも、しっかり現役で活躍中です。

こんな馴染みの道具も活かした必要充分なシンプルデザインこそが、
円満生活の重要ポイントなのかもしれません。


●特筆ポイント満載のこのお宅、
お母さまのクラフトルームにもなっている和室にも、
あっと驚く一工夫がありました。


一見、何の変哲もない和室ですが……


オーガニックの畳を上げると……この通り!
広~い収納スペース兼 通気スペースになっているのです!

一人で考え事をしたい時などにピッタリの(笑)、
ゴロンと横になりたくなるような快適空間が広がっていて、
単身赴任生活の旦那さまの荷物一式が収納できる広さとのこと。

断熱もバッチリなので、モチロン冬も
冷気に悩まされる心配はありません。

この家が建ってすぐ入居したので、
入居したての時期は土台のコンクリートがまだ水を含んでいて
カビてしまったとのことですが、

その後 換気してコンクリートが乾いてからは、
6年間まったく結露ともカビとも無縁とのこと。

ジメジメしがちな床下をはじめ家全体がまったく結露しないという実績に、
「結露しない家が夢だった」 というMさんも大満足のご様子です。

結露しないということは、
 断熱と換気がきちんとできているということ。


 だから室内の温度差がなくて、
 居間に比べてトイレやお風呂場が寒くて体に負担がかかってしまう、
 “ヒートショック” もありません。

 結局、お年寄りにやさしい家は、
 誰にとってもやさしく暮らしやすい家なんだと思います。


 同居のおかげで、この家も自分たちも年を取ることを頭に入れて
 建てることができました。

 いっしょに暮らしているといろんなことを教わることができ、
 本当にありがたく思っています」


とMさん。


●ドア部分もレール溝のないフラットなデザインで
足が引っかかる心配もなく、お掃除もラクそうです。

ドアを閉めても中の気配がわかるよう、
各所の扉には建て替え前の家に使われていた古いガラスを再利用し、
見るたび懐かしい、オリジナルの安心ドアができました。






●玄関とタタキは滑りやすいタイル張りを避け、
滑りにくいようハケ跡を付けたコンクリ床に。


玄関に入る前に一呼吸置ける屋根付きのタタキの向こう側には
夏は涼しく冬は暖かい 断熱バッチリの納屋があり、
雨や雪に塗れず行き着けるのでとっても便利。


●天然ガスで電気をつくる 『エコウィル』 という自家発電システムも、
「投資だと思って」 いち早く導入し、
自宅の1キロワット分の電力を自前でまかなっていらっしゃるとのこと!


機能と精神とライフスタイルが日常に結実した、
すばらしい都市型エコライフを送っていらっしゃるんだな~!
と感動しました。

「不便じゃなければいいし、寒くなければいい。
 余計なことをしない自然な家を建てたくて、
 知人の紹介で西條さんにお願いしました。

 床材は室内の熱を蓄える性質を持つ水楢の無垢材だから、
 足ざわりも冷たくないし、床暖房がなくても心地いいんです。


 不便じゃない。
 冷たくない。
 寒くない。

 これって大切なことなんじゃないかと思うんですよ。

 うんとあったかい必要はない。
 うんと便利じゃなくていい。

 自然の心地よさがあれば、快適に過ごせるんですよね


核心を突いたMさんのお言葉に感服。

きっとそんな “ほどほど” こそが、
私たちの心身が鈍ることなく地球環境と折り合って暮らしてゆける、
みんなの快適ベストラインなのでしょう。

●ちなみにこれは、そんなMさんお手製の日用品。


カマボコじゃありませんよ~
このレシピでつくられた、食べれる廃物利用の手づくり石けんです!




原料は、なんと食用のお肉の脂身!


「あるものいかす」 がモットーの私も、これにはビックリ&大感激でした。

「スゴイでしょ~! 
 この人はね、なんでもこうやって作っちゃうの。
 本当に勉強家で、私もパソコンを教えてもらってるのよ。
 また教え方がわかりやすくて上手なの!」


とお姑さん。

木彫り名人のお姑さん、版画名人のお舅さん、生活名人のMさん、
……と来たら、旦那さまは一体どんな方なのかしらん…?(笑)

豊かなくらしのヒントをたくさん教わり、
またまた嬉しい発見いっぱいの取材体験でした。


「庭にあるあの西国三葉ツツジの木はね、建て替え中
 西條デザインの山田さんのお宅に里子に出ていたんですよ。

 濃いピンク色のとってもキレイな花が咲くんだけれど、
 花の時期が来るたびに、汗だくで根っこから掘り出して運び出し、
 また戻して植え直してくれた山田さんの一生懸命な姿を思い出します」


と、山田さんとの思い出を愛しげに話してくださった、
お姑さんとMさん。

雪が残る取材時にはまだ枯れ枝状態だったツツジは、
もう満開を過ぎた頃かもしれません。

夏のツツジと旦那さまにご挨拶がてら、
石けん修行に伺えたらいいな……なんて、
記事を書きつつ、みなさんを懐かしく思い出している私です。


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◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
(雪の融雪槽に関する写真2枚は、Mさん撮影のものを拝借しました)
◆designer:森川瞬(寺島デザイン制作室
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ

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