蛯澤毅税理士事務所の事務所通信

北海道苫小牧市の税理士。税に関する情報や日々のことを発信します。

8月の税金ニュース 退職金

2007年08月23日 | 税制改正
8月9日の日本経済新聞によると、政府税制調査会は来年へ向けた税制改革論議で、退職金への課税強化を検討する考えを示しました。
退職金に対する課税は他の所得に比べて優遇されているので、それを見直しましょうという趣旨ですが、退職金はどれだけ優遇されているのでしょうか?

まず、退職金に対する所得税の額は次の計算式で計算します。
① 退職所得の金額=(退職金-退職所得控除)×1/2
② ①×税率

そして、退職金に対する優遇処置には次の2つがあります。
① 退職所得控除
   ・勤続年数20年以下の場合・・・40万円×勤続年数(最低80万円)
   ・勤続年数20年超の場合・・・800万円+{70万円×(勤続年数-20年)}
② 2分の1課税
   ・所得税は所得金額が大きくなるほど税率が上昇する仕組みなので、所得金額を半分にする効果は大きいです。

尚、退職金は、給与などの所得と合算せず単独で計算する分離課税方式のため、税率の上昇が抑えられるという優遇もあります。

見直しの背景には、終身雇用制度が崩れ、就職や転職に対する考え方の変化や、派遣など新たな雇用形態の増加で退職金制度をなくす企業があるなど、社会構造の変化が上げられます。
又、一部の企業には短期間で従業員を退職させて、退職金の課税制度を利用し税負担の軽減を図るケースがあった事も一因だと思われます。

以前から話題に出ていたとはいえ、参議院選挙の敗戦により消費税の増税が難しくなった現在、それじゃあ退職金から取ろうという安易な考えでなければいいのですが・・・ 。

FXって??

2007年08月08日 | 税務のこと
FXから得た所得を申告しないで所得税を脱税したとして、東京国税局は所得税法違反で不動産賃貸業を営む男性など3人を東京地検に告発した事件がありました。
その額はなんと・・・3年間で約9億7千万円。

FX(外国為替証拠金取引)は、元手(証拠金)の数倍から数百倍のドルやユーロなどの外貨を売買し、為替差益を得る金融商品です。(FXによる利益は雑所得となります)
少ない元手で多額の利益を期待できるため最近人気の取引ですが、反面リスクも高く、預け入れた元手が元本割れすることもあります。

FXを取引所で取引をする場合には、仲介業者は取引関係書類を税務署へ報告する義務があります。従って税務署はFXによる利益を把握することができます。(取引所で取引した利益は20%の申告分離課税となります)
しかし、取引所に登録していない仲介業者は、取引関係書類の報告義務がないため、取引の実態が把握しづらく、申告漏れとなるケースが相次いでいました。(店頭取引で取引した利益は他の所得と合算して総合課税となります)
そこで国税庁は報告義務がない仲介業者にも報告を義務づける方向で検討しています。

サラリーマンの確定申告

2007年08月01日 | 税務のこと
完全に季節はずれの話題ですが・・・。

サラリーマンの方の多くは、勤務先で年末調整が行われるので確定申告をする必要はありません。
しかし、例えば次のように給与収入の他に所得がある人は、確定申告をする必要があります。
(他にも確定申告を必要とする場合はあります)

(1)給与収入が2,000万円を超える場合

(2)1か所から給与を受ける人で、給与所得と退職所得以外の所得金額が20万円を超える場合(アパート収入や、申告漏れで話題になったFXなどの所得)

(3)2か所以上から給与を受ける人で、①主たる給与以外の給与収入金額と②給与所得及び退職所得以外の所得金額との合計額が20万円を超える場合(本業以外にアルバイトをしている場合など)

ただし、上記の場合は「所得税」の確定申告は必要としませんが、「住民税」の申告は必要となる場合があります。
住民税とは居住している市区町村と都道府県に納める税金のことです。通常は、市区町村が税金を計算し納税者に通知をする賦課課税方式をとっていますので、基本的には納税者の申告は不要となっています。

それでは市区町村はどうやって住民税の計算をしているのでしょうか?

サラリーマンの場合、年末調整として「源泉徴収票」を会社から渡されます。 この源泉徴収票には、1年間に支給された給与金額、控除される社会保険料、扶養控除などが記載されています。会社がその源泉徴収票と同じ様式である「給与支払報告書」を市区町村に提出することによって、市区町村は税金を計算することができるのです。

サラリーマンがアルバイトをして給料をもらった場合には、本業とアルバイト先の両方から「給与支払報告書」が提出されるので住民税の申告は不要となりますが、副業のネットオークションで15万円儲けた場合には、所得税の申告は不要となりますが、住民税の申告は必要となりますのでお忘れなく。