童話と絵本の会

楽しい童話や絵本を集めています。気にいった童話や絵本があればお知らせください。

童話と絵本の会 2023.12.9 赤い鳥 二生生 まほう

2023-12-09 21:55:38 | マ行の絵本

2023年 12月 9日(土)晴れ  6.5℃  70%RH am8:15

 

童話と絵本の会の準備をしています。 お気に入りの童話や絵本があれば教えてください。

 

今日の絵本

_まほう =坪田譲治 え井口文秀

__赤い鳥 二年生  赤い鳥の会 代表 坪田譲治 与田準一 鈴木珊一 

___1980  株式会社小峰書店 

_____私の蔵書

 

「にいちゃん、 おやつ。」と、 さけんで、 三平が にわに

かけこんで いきますと、

「ばかっ。 だまってる。 いま、 おれ、 まほうを つかっ

てる ところなんだぞ。」

 あにの 善太が 手を あげて 三平を とめました。

「まほう?」

 三平は なんのことだが わからず、 ただ びっくり

しましたが、 善太は 大とくいで ひげを ひねるよう

な まねをして いいました。

「へん、 まほうだぞう。」

「まほうって なにさ。」 

「まほうを しらないのかい。 どうわに よく でてく

るじゃないか。 まほうつかいって いうのが あるだろ

う。 にんげんを ひつじにしたり、 いぬに したり

それから じぶんで 小鳥に なったり、わしに なったりさ。

わしおに なるの いいなあ。 ひこうきのように 空が

とべるんだ。」

「ふうん、 それで にいちゃん、 いま わしに

なるところなの。」

 

(つづく)

                                                                                    

   

御来訪ありがとうございます。

 


童話と絵本の会 2023.12.2 赤い鳥 二生生 ぶたの 子

2023-12-02 18:29:04 | ハ行の絵本

2023年 12月 2日(土)晴れ  6℃  63%RH am8:00

 

童話と絵本の会の準備をしています。 お気に入りの童話や絵本があれば教えてください。

 

今日の絵本

_ぶたの 子=与田準一 え=早川良雄

__赤い鳥 二年生  赤い鳥の会 代表 坪田譲治 与田準一 鈴木珊一 

___1980  株式会社小峰書店 

_____私の蔵書

 

ぶたの子は

目が しょぼしょぼだ、

まばゆそうに

日に てられている。

 

はなは はな

うえを むいている。

なんだ ぷう

わらを つけている。

 

でも、 みみは

いいな, ももいろ、

ぴらぴらと

なにか、 きいている。

 

あたたかで

こやは、 からっぽ、

げんげたば、

日に しなびてる。

 

 

(おわり 

 

                                                                                    

   

御来訪ありがとうございます。


童話と絵本の会 2023.5.5 赤い鳥 二年生 ふうせんだまうり

2022-02-11 20:10:14 | ハ行の絵本

2023年  5月  5日(金)晴れ 18℃ 78%RH am7:05

 

童話と絵本の会の準備をしています。 お気に入りの童話や絵本があれば教えてください。

 

今日の絵本

_ふうせんだまうり=木内高音 え=小沢良吉

__赤い鳥 二年生  赤い鳥の会 代表 坪田譲治 与田準一 鈴木珊一 

___1980  株式会社小峰書店 

_____私の蔵書

 

あるところに、きみょうな、ふうせんだまうりの 男

が ありました。 その男は、 こうえんの 大きな 木の

上に すんでいました。 そうして ひるの あいだは、

町を あるきまわっては、青や 赤や みどりや、 むら

さきや、いろんな 色の ふうせんだまを うっていま

した。 そうして ゆうがたに なると、 木の 上の 

お家へ かえるのでした。

 ふうせんうりは、 いつも、 その かえり道で、 どんな

みせでも さいしょに とびこんだ みせ 一けんだけで、 

ばんの しょくじに たべるものを かうことに

きめていました。 ですから、 ときどき みょうなものばかり 

かわなければ ならないことが ありました。 また、 

ふうせんうりは、 じぶんの しょうばいに むすび

つけて、 なるべく かるい

しょくじを することに

していました。 で、 その

かいものも たった 二しなと

きめて いました。 

ですから、 その みせによって、 

キャラメル と ビスケットだけの

こともありますし、 また、

いちじくと ぶどうだけの こともあります。 また、 

にんじんじんと たまねぎの だけの こともあります。 

しかし ふうせんうりは、 かえって それを おもしろがって 

いました。 なんでも かったものを ポケットへ 

いれると、 にこにこしながら、 お家へ かえりました。 

その お家にしている 木と いうのは こうえんじゅう

で いっとう 大きく、 いっとう 高い、 それは それ

は みごとな 大木でした。

 

ふうせんうりは、 かえり道では、 いつも きまって、 

口ぶえを ふきました。 それから かんがえだしてみました。 

じぶんの ふうせんを かってくれた かわいい 女の

子や、 かっぱつな 男の子の ことを ひとりひとり

おもいだしました。 そうして 口ぶえを ふきながら、

にこにこして あるいているうちに、 ふうせんうりの 

こころは ひとりでに、 だんだんと かるくなって いくのでした。 

れいの 木の 下へ くるじぶんには、

ふうせんうりは、 からだまでも、 ふわふわと かるくなって、

もっている うれのこりの ふうせんだまの 力で、

かるがると 高い 木の てっぺんへ まいあがることが

できるのでした。 だから ふうせんうりは、

そんな 高い 木の 上に すんでいることも できたのです。 

そこには、 こんもりとした はの しげみの 中に、

ふっくりとした しんだいのように ぐあいよく

えだの はった ところが ありました。 ふうせんうりは、

そこで つかれた からだを よこに するのです。

 ふうせんうりは、 ふうせんだまを しっかりと 木のえだへ

むすびつけて、 それから ゆっくりと、 かってきたものを

たべました。 どんなものが ポケットからでても、

おいしい おいしいと にこにこして たべました。

あおむけに ねれば 星が ピカピカと 光ります。

ふうせんうりは うたを うたったり 口ぶえを

ふいたりしているうちに、 いつも いいきもちになって

とろとろと ねむって しまうのでした。

 

 朝は 小鳥たちの こえで めが  さめます。 それから

ふうせんだまを えだから ほどいて、 りょう手に

はんぶんずつ わけて もって とびおりますと、

ふわふわと かるく じびたへ おりることが できます。

 それから ちかくの やたいみせへ いって 朝の

ごはんを たべると、 また 一日じゅう ふうせんだまを

うっては あるくのでした。 こうして まい日 まい日が

ぶじに すんでいました。 ところが あるばんのこと、

ふうせんうりは、 どうしても 木の 上の お家へ

かえることが できなくなって しまいました。 いったい

どうしたのでしょうか。 これから その わけを おはなし

いたしましょう。

 

 その日は、朝から あつくるしくって、 しめっぽい 風が

ふきまくり、 ほこりっぽくて それは いやな 日でした。

だもんですから、 町じゅうの 人は、 みんな いらいらして

おこりっぽく いじが わるくなって いました。

ふうせんうりは、 いつものように 家へ かえろうとしても、 

なにひとつ「いいこと」を おもいだすことが できませんでした。 

小さい 女の子は、 おかあさんが、 青いのの かわりに 

みどり色の ふうせんを かったのが わるいと いっては 

じだんだを ふんで なきました。 男の子は、 あいての 子が、

「ぼくの ふうせんだまの ほうが きみのよか 大きいや」と

いったと いっては おこって その子を けとばしました。

小さな きょうだいは、 ふたりとも ふうせんだまの うばいあいをして

ふたりとも ふうせんだまを 空へ とばしてしまって なきました。

ほかの 子どもたちも ひとりとして、 いいことをしたものは ありませんでした。

 

 ふうせんうりは、 そんなことばかり おもいかえして いるうちに

じぶんも なんだか はらがたって むかむかしてきました。 いつもは

朝から ばんまで にこにこしていた ふうせんうりが きょうは いちども

わらったことが なかったのです。 そのうえに 風は いじわるく

ふうせんだまを あちこちと ふきとばそうと します。 ふうせんうりは、 すっかり

ふきげんになって しまいました。

 おまけに、 ふうせんうりは、 ばんの たべものを かうのに まちがえて、 かなものやへ とびこんで しまいました。 まえにも いったとおり ふうせんうりは さいしょ  はいった みせより ほかでは かいものを しないことに きめていたのですから こまりました。

「 ええと …… くぎを 二ほん ください。」 ふうせんうりは しかたなしに そう いいましたが、

きゅうに おもいなおして、「いや、 くぎを 一ぽんと ……びょうを一ぽんと。」と いいました。

おなじ かたい ばんめしでも 二しなのほうが  すこしは ましだろうと おもったからです。 

で それを ポケットに いれると、 くらい 道を 力なく とぼとぼと あるきだしました。

「なにか、 おいしいものでも  たべて げんきを つけようと おもっていたのに、 くぎを

たべなければならないとは、 なんということだ。」 ふうせんうりは つぶやきました。

 

木の 下に きても、 星は みえませんでした。 ふうせんうりの こころは、 

だんだんと おもくなって きました。 れいの 口ぶえを ふくことさえも 

できませんでした。 だから いつものように ふうせんうりの からだは 

かるくなっては くれないのです。 いくら じぶんでとびあがっても どしんと 

おもたい 足が じびたに ぶつかるばかしです。

ふうせんうりは くぎを ポケットから だしてすてました。 いくらかでも からだを

かるくしようと おもったのです。 しかし おなじことでした。 足は ぴったりと

 じびたに くっついたまま はなれようとも しません。 しかたなしに 

ふうせんうりは 木の みきを よじのぼろうと しました。 ところが みきは

 三かかえも 四かかえもある ふとさなので、 ふうせんうりは ただ じびたへ 

おっこちて はなのさきを うっただけでした。

 「えっ、 いまいましい。」ふうせんうりは、 ぷんぷんして いいました。

「こんなことでは いつまでたっても 家へ かえれはしない。 ふうせんだまよ、

 なぜ もっと つよくひっぱらないんだ. この おれ ひとりぐらい もちあげて 

くれても よさそうなものだ。」

 そこで ふうせんだまたちは しにものぐるいになって ぐいぐいと ひっぱりました。

 しかし ふうせんふりの からだは なまりにように おもたいのです。 プスン! 

とうとう いとが きれて ふうせんだまは、 みんな ちりぢり ばらばらに 

とんでいって しまいました。

 

「ああ、 もう なにもかも おしまいだ。」そう いって

ふうせんうりは からだを なげだしたまま、 じぶんの

頭の けをでも かきむしるように、 そこいらの 草を、

むしりとっていました。

「そんなことを していたって なんんも なりゃし

ないじゃないか。」

 そのこえに おどろいて みあげると、 それは ふう

せんうりと 木の 上で 良く 顔を みしっている

一わの ふくろうでした。

「じゃあ、 どうすれば いいんだ。」

「ふうせんだまを さがしに でかけたら いいじゃないいか。」

「どうして。 ……さがすなんて できやしない。」

「いったい きみは、 かえってくるときに、 いつもの

口ぶえを ふかなかった。 それが いけないんだよ。」

「だって ふきたくないんだ。 おもしろくなくって

むしゃくしゃして なさけrなくって しょうがありゃし

ない。」

「なにが なさけないことが あるもんか。 それが

いけないんだ。 みんな きみが ふきげんに なったから

おこったんだよ。 ふせんだまを なくしたのも 家へ

かえれないのも みんな。」ふくろうは いいました。

「さぁ、 まず 口ぶえでも ふいて みたまえ。」

 

ふうせんうりは おきあがりました。 しかし はじめは 

どうしても 口ぶえを ふこうと いうきには、 なれませんでした。

しかし、 とうとう しまいに、 よわよわしい かすかな

音が ふうせんうりの くちびるから もれでました。 それは じつに 

ひんじゃくな こっけいな 音だったので、 もし ふきげんになって

いなかったら、 ふうせんうりは、 たぶん じぶんで ふきだして

しまったことでしょう。 

 ふうせんうりは、 もういちど ふいてみました。

こんどは すこし よくなりました。

 「だんだん よくなるじゃないか。」 ふくろうが いました。

ふうせんうりは こんどは、 おとくいの うたを ひとつ

ふいてみました。 すると、 すっかり きが かるくなってきました。

「ばんめしの かわりに、 くぎを かうなんて アッハッハ。」

ふうせんうりは、 とうとう 大きな こえで わらってしまいました。

 

★★★★★★★★★★★つづきはここから★★★★★★★★★★★

 

「どうして これが おかしくなかったんだろう。」

「アッハッハッハ。」

「アッハッハッハ。」

ふうせんうりと ふくろうとは こえを そろえて

わらいました。 それから ふうせんうりは ふくろうに

てつだってもらって ふうせんだまを みんな ひろい

あつめました。

 ふうせんうりの からだは いつのまにか かるくなって

いたと みえて、 こんどは らくらくと 木の 上

へ かえることが できました。

 

 それからのち、 ふうせんうりは、 もう どんなに 

おもしろくないことが あっても、 かえり道には、 きっと

口ぶえを ふくことを わすれなかったそうです。

 

(おわり 長い間ありがとうございました。)

 

                                                                                    

   

御来訪ありがとうございます。


童話と絵本の会 2022.1.14 赤い鳥 二年生 風

2022-01-14 21:29:17 | カ行の絵本

2022年  1月 14日(金)雪のち晴れ -0.5℃  76%RH am4:55

 

童話と絵本の会の準備をしています。 お気に入りの童話や絵本があれば教えてください。

 

今日の絵本

_風=寺田宋一 え早川良雄

__赤い鳥 二年生  赤い鳥の会 代表 坪田譲治 与田準一 鈴木珊一 

___1980  株式会社小峰書店 

_____私の蔵書

 

とおりの 風と

よこちょうの 風と、

いぬの せなかで

あいました。

 

――たかい マストの てっぺんで

   はたと ひらひら まいましょう。

――ひろい のはらの まんなかを

   ふわり ふわり ゆきましょう。

 

――月の いい 夜は ながれましょう。

――虫や 小鳥と ねむりましょう。

 

――海へ ゆきましょ、 さようなら。

――原へ ゆきましょ、 さようなら。

 

いぬの せなかで

さよういなら。

 

   

御来訪ありがとうございます。


童話と絵本の会 2021.12.31 赤い鳥 二年生 おふろ

2020-11-23 15:53:21 | ア行の絵本

2021年 12月 31日(金)晴れのち曇り 4℃  60%RH am11:50

 

童話と絵本の会の準備をしています。 お気に入りの童話や絵本があれば教えてください。

 

今日の絵本

_おふろ=堤 文子 え 渡辺三郎

__赤い鳥 二年生  赤い鳥の会 代表 坪田譲治 与田準一 鈴木珊一 

___1980  株式会社小峰書店 

_____私の蔵書

 

れい子ちゃんと、きみ子ちゃんは 七つと 六つの、

きょうだいです。 ある ゆうがた、 おかあさまが、

「きょうは、 わたしは いそがしいから、 ふたりで

おふろへ いってらっしゃい。 もう 大きく なったんだから、

それくらい できるでしょう?」と おっしゃいました。

「ええ ええ。」

「ねええ。」と、 ふたりは 大よろこびで、 とびあがりました。

ふたりだけで おふろへ いくんですから、

もう 小さな 子では なく、 すっかり、 おねえさまに

なったような きがして、 うれしくて たまりません。

ふたりは おおいそぎで、 シャボンばこ、 あらいこ、 

おかさまが、 えりから あごへ おつけになる クリーム、

それから、 おしろいと、 はけと、 くしとを、 がちゃがちゃと、

メッキの さげものに いれ、 手ぬぐいかけから、 

手ぬぐいと、 ゆあげの 大タオルを ひっぱり おろしました。

 おかあさまは、 いつも おむこうの 赤ちゃんを

つれていって おあげになります。 れい子ちゃんと 

きみ子ちゃんは、 その まねをして、 キューピーちゃんを

つれていくことにしました。

 

 ふたりは、 キューピーちゃんに、 水色の、 ろの、 ちゃんちゃんこに、 

くろじゅすの えりを かけた、 よそゆきのを きせました。

 それから、 おかあさまに お金を いただくと、

「いってまいりまぁす。」

「よく 気をつけてね。」

「いってまいりまぁす。」と 大よろこびで とびだして、

おふろやの まえまで、 いきも つかずに はしりつづけました。

 ふたりとも、 きょうは、 おかあさまが なさるとおりに

じょうずに やってこなければ、 と おもいながら、

きどって、 ばんだいへ お金を おきました。

 れい子ちゃんは てばやく、 きものを いれる ざるを とって、

「どうぞ。」と、 きみ子ちゃんに あげました。

「あら、 どうも。」と、 きみ子ちゃんは、 すまして

えしゃくをしました。 ふたりとも、 きょうは 活動の ビラや、

うりだしの こうこくなぞを みあげたりなんか しません。

 ながしばへ はいると、 いつも おかあさまの なさる

とおりを おもいだして、 そのとおりに しました。 

 

 ふたりは、 いちど おゆに つかると、 ながしばの

いっとう おくへ ばしょを とって、 まず、 せなかを

ながしあいました。 それが すむと、 れい子ちゃんが

キューピーちゃんを お手ぬぐいに つつんで、 また

おゆに はいりました。

「すこし、 ぬるめて あげましょうね。 赤ちゃんには、

ちっと、 おきつうござんすね。」と、 きみ子ちゃんは、

いっぱし、 おばさまが なんかのように こう いって、

水道の せんを ひねりました。

「まあ、 おそれいりました。」と、 れい子ちゃんは

おれいを いいました。

 そして、 お手ぬぐいで キューピーちゃんの おかおを、

じゃぶじゃぶと あらって、 「ちょいと、おねえさま、 

だっこしていてよね。」と、 キューピーちゃんを きみ子ちゃんに 

わたしました。

そして、 じぶんは、おかあさまが いつも なさる とおりに、

あごが すれすれに なるまで おゆに しずんで、 お手ぬぐいで、

えりから,  かたを こすりこすり しました。

 ふと みますと、 じきまえの よこの ながしばに

おとなりの おばさまが、 うしろむきになって、 足を

こすって いらっしゃるのが めに つきました。

 

「きみ子ちゃん、 おとなりの おばさまが いらっしゃるわよ。 あすこ。」

「ああ、 そうね。」

 おばさまは、 からになった おけと、 おゆが 

シャボンだらけになっている おけを ならべて おいでです。

「おゆを くんで あげなくちゃ わるいでしょう?」と、

きみ子ちゃんが 小さな こえで ききます。

「むろん、 くんで さしあげるのが ほんとうですわ。」と、

れい子ちゃんが いいました。 おとなの 人たちは

しりあいの 人が いると、 おゆを くんであげっこを

するのが きまりです。 ふたりは、 キューピーちゃんを、

さげものの 中へ ねかせておいて、 ひとつずつの

おけへ おゆを くんで 「おばさま どうぞ。」と、

いって そばへ ならべました。 おばさまは、

「あらあら、 これは どうもありがとうさま。

すみませんね。」と、 おじぎを なさいました。

「どういたしまして。」と、 れい子ちゃんが いいました。

 

ふたりは、また ひとつずつ くんで、 おかおを まっかにしながら、 

えっさえっさと かかえて いきました。

おばさまは。

「あら、 もう けっこうでございます。 どうも ありがとうさま。

すみませんですね。」と おっしゃいます。

こんどは きみ子ちゃんが、「どういたしまして。」と いいました。 

ふたりは なんだか じぶんたちが、 すっかり 頭を そくはつにでも

ゆった 大きな 女の人に なっているような きがしました。 

ふたりとも、 とても、 しとやかに たちふるまって、

にこりとも しませんでした。

 ふたりは、 ながしの 上に ひざを たてて すわりました。 

れい子ちゃんは ぬかで えりを こすりだしました。 

きみ子ちゃんは、 キューピーちゃんの からだを、 あらいこで

つるつる あらいながら、 おばさまに おゆを、

くんであげようと いいだしたのは わたしだわと おもって、 

ひとりで、 とくいになって いました。

 

 しかし、れい子ちゃんは、 やっぱり ほんとうの 

おねえさまだけあって、 もっと おねえさまらしいことを

かんがえつきました。 れい子ちゃんは、 手ぬぐいと、

あかすりと、 シャボンを もって、 おばさまの ところへ

いきました。

「おばさま ちょっと おせなかを おながし いたしましょう。」と

いいますと、おばさまは びっくりして、

「いえいえ、 もう けっこうでございます。 どうぞ どうぞ。」と 

おっしゃいます。

「ごえんりょなんか、 どうぞ。」と れい子ちゃんは、あかすりを

手ぬぐいにくるんで、 おばさまの おせなかを ごしごし 

こすりました。 その おせなかの はだの いろは、 すこし、 

うすちゃいろです。 たいそう ふとって、 はばの ひろい 

おせなかです。 まん中の ところに、 大きな赤い、 

おきゅうの あとが ふたつ ならんでいます。

なんだか みても いたそうなので、 そこは よけて

こすりました。

 

 「はいはい、 もう、 ありがとうさま。 もう けっこうです。」と、 

おばさまが、 むせるような こえで  おっしゃるので よしました。

そして 手ぬぐいを ひろげて ふたつに たたんで、 おばさまの

かたへ かけて、 上から、 さあっと、 おけの ゆを かけてあげました。

 おばさまは、 うつむきこんで、 ていねいに おれいを おっしゃいます。

 れい子ちゃんは、

「どうしていたしまして。」と ごあいさつをして、 もとの ところへ かえりました。

 なんだか じぶんが すっかり  えらくなったようで、 うれしくて、 むねが

どきどきしました。

 

まもなく、ふたりとも あがりました。 ゆう日が、 おもてがわの

高まどに はまった、 くもりガラスを うすぎいろく そめています。

きみ子ちゃんは キューピーちゃんを きれいに ふいてやって

ちゃんちゃんこを きせました。 そして、あせもが でないように、

しろいこなを ふるかわりに おしろいを おでこに つけてやりましたした。

しかし、 キューピーちゃんの ひたいは、 つるつるですから、

いくらやっても つかないで、 きみ子ちゃんの お手が しろくなるばかりでした。

れい子ちゃんは、 大きなタオルを かたに ひっかけて、

かた手で うちわを つかいながら、 すましていました。 みると、 むこうの

かがみに じぶんの すがたが すっかり うつっています。

 

と、 そこへ、 おふろやの 女中さんが おくから でてきました。

いつも、 ももわれに ゆっている、 いろのしろい、 えくぼのある、

おとなしい 人です。 きょうは、 しろっぽい ゆかたに、 あかい おびを

しめて、 レースの ついた エプロンを かけています。 女中さんは、

「まあ、 おじょうさんがた、 おふたりだけで いらっしゃいましたの?  

おえろうございますこと。 さあ、冬やが おべべを おきせして あげましょう。」と、

にこにこしながら、 ざるを ひきよせます。 ふたりは びっくりして、

「いいえ、 いいのよ。」

「あら、 いいのよ。」と いっしょに こえを たてました。 女中さんは

そんなことは、 耳へも いれないように、 きみ子ちゃんの きものを

とりあげて きせにかかりました。

 

★★★★★★★★★★★つづきはここから★★★★★★★★★★★

 

きみ子ちゃんは、

「あらぁ、 いいのよう。 きょうは ふたりだけで きたんだから、 いいのよ。」と、

くるくる まわって にげかけました。 女中さんは かまわず、

つかまえて、 どんどん きせてしまいました。 れい子ちゃんも

つかまって、むりやりに きせられました。 女中さんは、 そのうえに、じぶんの くしを ぬいて、 ふたりの かみまで なでつけて くれるのです。 そして、

「まあ、 おかわいいこと。」 と ふたりの おかおを みくらべました。 ふたりとも もう なきだしそうになっていました。 あんなに おとならしく、 えらくなっていたのに、こんなことを されたので、 まるで、 小さな 女の子に なってしまいました。 おふろやの 女中さんに おべべを きせてもらったりする 大人がどこに あるでしょう。 ほんとに くやしいわと、 ふたりとも、 そう おもって、 ふくれかえって たっていました。 なんて おせっかいな 女中でしょう。 いつもは、 すきな、 人だと おもっていたのですが、 あんなこと されたので、 その かおも、 ひきがえるみたいに いやらしく みえました。 

「さ、 ころばないで おかえりなさいまし。」と、 とを あけてくれます。 これでは、 まるで、 赤ちゃんに なってしまいます。

 ふたりは そとへ でると、 おもわず かおを みあわせました。 きみ子ちゃんは、 なみだぐんで、 いまにも、ああんと、 いいそうな かおを しています。 れい子ちゃんも、 ぷりぷりして、 のろり のろり あるきだしました。 

(おわり)

                                                                                      

   

御来訪ありがとうございます。