2023年 5月 5日(金)晴れ 18℃ 78%RH am7:05
童話と絵本の会の準備をしています。 お気に入りの童話や絵本があれば教えてください。
今日の絵本
_ふうせんだまうり=木内高音 え=小沢良吉
__赤い鳥 二年生 赤い鳥の会 代表 坪田譲治 与田準一 鈴木珊一
___1980 株式会社小峰書店
_____私の蔵書
あるところに、きみょうな、ふうせんだまうりの 男
が ありました。 その男は、 こうえんの 大きな 木の
上に すんでいました。 そうして ひるの あいだは、
町を あるきまわっては、青や 赤や みどりや、 むら
さきや、いろんな 色の ふうせんだまを うっていま
した。 そうして ゆうがたに なると、 木の 上の
お家へ かえるのでした。
ふうせんうりは、 いつも、 その かえり道で、 どんな
みせでも さいしょに とびこんだ みせ 一けんだけで、
ばんの しょくじに たべるものを かうことに
きめていました。 ですから、 ときどき みょうなものばかり
かわなければ ならないことが ありました。 また、
ふうせんうりは、 じぶんの しょうばいに むすび
つけて、 なるべく かるい
しょくじを することに
していました。 で、 その
かいものも たった 二しなと
きめて いました。
ですから、 その みせによって、
キャラメル と ビスケットだけの
こともありますし、 また、
いちじくと ぶどうだけの こともあります。 また、
にんじんじんと たまねぎの だけの こともあります。
しかし ふうせんうりは、 かえって それを おもしろがって
いました。 なんでも かったものを ポケットへ
いれると、 にこにこしながら、 お家へ かえりました。
その お家にしている 木と いうのは こうえんじゅう
で いっとう 大きく、 いっとう 高い、 それは それ
は みごとな 大木でした。
ふうせんうりは、 かえり道では、 いつも きまって、
口ぶえを ふきました。 それから かんがえだしてみました。
じぶんの ふうせんを かってくれた かわいい 女の
子や、 かっぱつな 男の子の ことを ひとりひとり
おもいだしました。 そうして 口ぶえを ふきながら、
にこにこして あるいているうちに、 ふうせんうりの
こころは ひとりでに、 だんだんと かるくなって いくのでした。
れいの 木の 下へ くるじぶんには、
ふうせんうりは、 からだまでも、 ふわふわと かるくなって、
もっている うれのこりの ふうせんだまの 力で、
かるがると 高い 木の てっぺんへ まいあがることが
できるのでした。 だから ふうせんうりは、
そんな 高い 木の 上に すんでいることも できたのです。
そこには、 こんもりとした はの しげみの 中に、
ふっくりとした しんだいのように ぐあいよく
えだの はった ところが ありました。 ふうせんうりは、
そこで つかれた からだを よこに するのです。
ふうせんうりは、 ふうせんだまを しっかりと 木のえだへ
むすびつけて、 それから ゆっくりと、 かってきたものを
たべました。 どんなものが ポケットからでても、
おいしい おいしいと にこにこして たべました。
あおむけに ねれば 星が ピカピカと 光ります。
ふうせんうりは うたを うたったり 口ぶえを
ふいたりしているうちに、 いつも いいきもちになって
とろとろと ねむって しまうのでした。
朝は 小鳥たちの こえで めが さめます。 それから
ふうせんだまを えだから ほどいて、 りょう手に
はんぶんずつ わけて もって とびおりますと、
ふわふわと かるく じびたへ おりることが できます。
それから ちかくの やたいみせへ いって 朝の
ごはんを たべると、 また 一日じゅう ふうせんだまを
うっては あるくのでした。 こうして まい日 まい日が
ぶじに すんでいました。 ところが あるばんのこと、
ふうせんうりは、 どうしても 木の 上の お家へ
かえることが できなくなって しまいました。 いったい
どうしたのでしょうか。 これから その わけを おはなし
いたしましょう。
その日は、朝から あつくるしくって、 しめっぽい 風が
ふきまくり、 ほこりっぽくて それは いやな 日でした。
だもんですから、 町じゅうの 人は、 みんな いらいらして
おこりっぽく いじが わるくなって いました。
ふうせんうりは、 いつものように 家へ かえろうとしても、
なにひとつ「いいこと」を おもいだすことが できませんでした。
小さい 女の子は、 おかあさんが、 青いのの かわりに
みどり色の ふうせんを かったのが わるいと いっては
じだんだを ふんで なきました。 男の子は、 あいての 子が、
「ぼくの ふうせんだまの ほうが きみのよか 大きいや」と
いったと いっては おこって その子を けとばしました。
小さな きょうだいは、 ふたりとも ふうせんだまの うばいあいをして
ふたりとも ふうせんだまを 空へ とばしてしまって なきました。
ほかの 子どもたちも ひとりとして、 いいことをしたものは ありませんでした。
ふうせんうりは、 そんなことばかり おもいかえして いるうちに
じぶんも なんだか はらがたって むかむかしてきました。 いつもは
朝から ばんまで にこにこしていた ふうせんうりが きょうは いちども
わらったことが なかったのです。 そのうえに 風は いじわるく
ふうせんだまを あちこちと ふきとばそうと します。 ふうせんうりは、 すっかり
ふきげんになって しまいました。
おまけに、 ふうせんうりは、 ばんの たべものを かうのに まちがえて、 かなものやへ とびこんで しまいました。 まえにも いったとおり ふうせんうりは さいしょ はいった みせより ほかでは かいものを しないことに きめていたのですから こまりました。
「 ええと …… くぎを 二ほん ください。」 ふうせんうりは しかたなしに そう いいましたが、
きゅうに おもいなおして、「いや、 くぎを 一ぽんと ……びょうを一ぽんと。」と いいました。
おなじ かたい ばんめしでも 二しなのほうが すこしは ましだろうと おもったからです。
で それを ポケットに いれると、 くらい 道を 力なく とぼとぼと あるきだしました。
「なにか、 おいしいものでも たべて げんきを つけようと おもっていたのに、 くぎを
たべなければならないとは、 なんということだ。」 ふうせんうりは つぶやきました。
木の 下に きても、 星は みえませんでした。 ふうせんうりの こころは、
だんだんと おもくなって きました。 れいの 口ぶえを ふくことさえも
できませんでした。 だから いつものように ふうせんうりの からだは
かるくなっては くれないのです。 いくら じぶんでとびあがっても どしんと
おもたい 足が じびたに ぶつかるばかしです。
ふうせんうりは くぎを ポケットから だしてすてました。 いくらかでも からだを
かるくしようと おもったのです。 しかし おなじことでした。 足は ぴったりと
じびたに くっついたまま はなれようとも しません。 しかたなしに
ふうせんうりは 木の みきを よじのぼろうと しました。 ところが みきは
三かかえも 四かかえもある ふとさなので、 ふうせんうりは ただ じびたへ
おっこちて はなのさきを うっただけでした。
「えっ、 いまいましい。」ふうせんうりは、 ぷんぷんして いいました。
「こんなことでは いつまでたっても 家へ かえれはしない。 ふうせんだまよ、
なぜ もっと つよくひっぱらないんだ. この おれ ひとりぐらい もちあげて
くれても よさそうなものだ。」
そこで ふうせんだまたちは しにものぐるいになって ぐいぐいと ひっぱりました。
しかし ふうせんふりの からだは なまりにように おもたいのです。 プスン!
とうとう いとが きれて ふうせんだまは、 みんな ちりぢり ばらばらに
とんでいって しまいました。
「ああ、 もう なにもかも おしまいだ。」そう いって
ふうせんうりは からだを なげだしたまま、 じぶんの
頭の けをでも かきむしるように、 そこいらの 草を、
むしりとっていました。
「そんなことを していたって なんんも なりゃし
ないじゃないか。」
そのこえに おどろいて みあげると、 それは ふう
せんうりと 木の 上で 良く 顔を みしっている
一わの ふくろうでした。
「じゃあ、 どうすれば いいんだ。」
「ふうせんだまを さがしに でかけたら いいじゃないいか。」
「どうして。 ……さがすなんて できやしない。」
「いったい きみは、 かえってくるときに、 いつもの
口ぶえを ふかなかった。 それが いけないんだよ。」
「だって ふきたくないんだ。 おもしろくなくって
むしゃくしゃして なさけrなくって しょうがありゃし
ない。」
「なにが なさけないことが あるもんか。 それが
いけないんだ。 みんな きみが ふきげんに なったから
おこったんだよ。 ふせんだまを なくしたのも 家へ
かえれないのも みんな。」ふくろうは いいました。
「さぁ、 まず 口ぶえでも ふいて みたまえ。」
ふうせんうりは おきあがりました。 しかし はじめは
どうしても 口ぶえを ふこうと いうきには、 なれませんでした。
しかし、 とうとう しまいに、 よわよわしい かすかな
音が ふうせんうりの くちびるから もれでました。 それは じつに
ひんじゃくな こっけいな 音だったので、 もし ふきげんになって
いなかったら、 ふうせんうりは、 たぶん じぶんで ふきだして
しまったことでしょう。
ふうせんうりは、 もういちど ふいてみました。
こんどは すこし よくなりました。
「だんだん よくなるじゃないか。」 ふくろうが いました。
ふうせんうりは こんどは、 おとくいの うたを ひとつ
ふいてみました。 すると、 すっかり きが かるくなってきました。
「ばんめしの かわりに、 くぎを かうなんて アッハッハ。」
ふうせんうりは、 とうとう 大きな こえで わらってしまいました。
★★★★★★★★★★★つづきはここから★★★★★★★★★★★
「どうして これが おかしくなかったんだろう。」
「アッハッハッハ。」
「アッハッハッハ。」
ふうせんうりと ふくろうとは こえを そろえて
わらいました。 それから ふうせんうりは ふくろうに
てつだってもらって ふうせんだまを みんな ひろい
あつめました。
ふうせんうりの からだは いつのまにか かるくなって
いたと みえて、 こんどは らくらくと 木の 上
へ かえることが できました。
それからのち、 ふうせんうりは、 もう どんなに
おもしろくないことが あっても、 かえり道には、 きっと
口ぶえを ふくことを わすれなかったそうです。
(おわり 長い間ありがとうございました。)
御来訪ありがとうございます。