狷介不羈の寄留者TNの日々、沈思黙考

多くの失敗と後悔から得た考え方・捉え方・共感を持つ私が、独り静かに黙想、祈り、悔い改め、常識に囚われず根拠を問う。

「職員・施設にとっての普通」を拒み、自由でマイペースな「自分にとっての普通」を望む利用者・・・「出口のない家―警備員が見た特別養護老人ホームの夜と昼」を読んで

2013-10-27 18:35:56 | 健康・医療・暮らし 2012~2017
 総タイトル:【「職員・施設にとっての普通」を拒み、自由でマイペースな「自分にとっての普通」を望む利用者・・・「出口のない家―警備員が見た特別養護老人ホームの夜と昼」を読んで】

 「『出たいよォー。守衛さん、いまここから出してください。』」、「ここは牢獄です。早く出してください。』」(本書より。)
 「出口のない家―警備員が見た特別養護老人ホームの夜と昼」(著者:小笠原和彦氏、出版日:2006/7/10、出版社:現代書館)
 上記の本を読みました。
 本書は、市役所職員と雑誌記者を経て、派遣社員として工場労働者等として勤務する傍ら執筆活動を行なっている、著者の取材による或る下町の特別養護老人ホームのノンフィクションです。
 派遣社員の警備員として特別養護老人ホームに派遣され、2年間で4つの老人ホームで「取材」を兼ねて勤務されました。最初の勤務先の老人ホームは世間一般的な施設の様で、1階には余り手のかからない利用者、2階には認知症の利用者、3階には寝たきりの利用者と分けて、様々な介護度の方々が同居して暮らしています。
 施設の出入り口から出る際やエレベーターに乗る際には鍵が必要で、車椅子には発信機が取り付けてあります。
 施設の規則が厳しく、職員と利用者それぞれに定められています。職員は低賃金、長時間労働、厳しい規則、上司からのやかましい注意、仕事を何でも熟さないといけない等でゆとりが無い事等で、特に精神的な負担が重く、続かずに辞めていく人が多いです。一方利用者は、自由に外出出来ず、酒やタバコも制限され、職員からは口やかましく言われる事で、不満・ストレスが溜まっています。「ストップ・ザ・拘束」と掲げられているにも関わらず、車椅子に拘束されている利用者が、エコノミークラス症候群になる等、精神的・身体的な束縛で不自由な生活を送っています。
 著者は職員に内緒で、利用者にタバコをあげて一緒に吸ったり、利用者の要求に応じて買い物に出かけたり、こっそり外に連れていって散歩したりして、利用者との「自然な」コミュニケーションを取って来ました。しかし、規則に忠実で融通の利かない職員や、派遣社員から正社員に身分が上がって威張る職員等から咎められ(とがめられ)、理不尽に思いながらも、以降深入りする事無く、利用者との話もしてはいけないと言う事も受け入れます。
 職員と利用者との間には一線が引かれており、利用者が抵抗や反抗をする場合には、職員は一致団結して、その厳しい規則に則って、利用者を責めてより拘束度を高めます
 世間一般的に、男性は会社人間である場合が多く、組織を離れると孤独な人達が多いです。話題も、自分の仕事や趣味の事ぐらいしか有りません。その様な人達が老人ホームに入居している為に、男性の利用者はとかく孤立しがちで、職員も忙しい為や規則に縛られている為に、話し相手になりません。利用者は厳しい規則で不自由な中、施設の中で余りする事が無く、楽しみは食事ぐらいしかありません
 職員は若い人が多く、利用者との世代ギャップが有り、またその職員の知識が薄い事もあって、話しが通じなかったり合わなかったりする事が多いそうです。最近の若い人達は、インターネットで自分の興味の有るものしか見ない傾向が有る為に、知識に偏りが生じている様です。逆に利用者等の高齢者や年配の人達は新聞を良く読む為に、広範囲にバランス良く知識を身に付けています。利用者側の話題に職員が付いて行けない問題が有ります。
 また、女性の利用者で比較的元気な人達は徒党を組み、状態の弱い利用者をいじめる事も在ります。しかし、職員は見て見ぬふりをして放置します。
 その世間一般的な老人ホームの事は、社会の中の他の組織や会社での事と同じ様に思います。規則に縛られ、管理が厳しく、上司に叱られ、マニュアル化され、成果主義、効率化等、「拘束」時間内は「不自由」で「ストレス」の溜まる状態での勤務となっています。その様に大抵の場合、会社の中では、皆、「奴隷」や「囚人」の様に日々仕事をしている様に思います。
 特別養護老人ホームに入居を希望する老人の方々が非常に多く、待機している方の家族は一日も早く老人ホームに入れる事を願い、また家から出来るだけ近い所を希望します。しかし、家族の都合で利用者本位で無く老人ホームが選ばれる為に、利用者は入居してから不満に思います
 著者や利用者の一部と同様、私も「組織」には馴染めず、いつも「マイペース」で居られる事を望みます。細かい管理や規則は嫌いです。「普通」の状態とは、拘束されて縛られず、解放されて自由であり、緊張せず緩やかに、自分のゆっくりとしたペースで、ストレスの無い事であると思います。「組織にとっての普通」では無く、会社、社会、世間、空気・雰囲気、多数派等にとっての「普通」では有りません自分にとって自然でいられる、全く苦痛の無い状態が、「自分にとっての普通」であると思います。周囲を基準にするのでは無く、自分の心を基準にしての「普通」です。よって人は、独りでいる時が最も「普通」で居られるのではないかと思います。
 著者は特別養護老人ホームの中で最初に派遣されたのが極一般的な施設であったらしいですが、その後に老人ホームとしては先進的で実習生が高評価を与える施設にも、同様に警備員として派遣されています。その結果、施設によっての「違い」が有る事を知ります。
 最初の世間一般的な施設と違って、その先進的施設では、規則が少なく、利用者が自由に外出して飲み屋やカラオケに行ったり、ショッピングに行くことが出来ます。タバコも所定の所で吸うのは自由、酒も自分の部屋で飲む事が出来ます。一般の人も利用できる喫茶や食堂で売られている飲食物は低料金で、給茶器で無料のお茶やコーヒーも飲めます。保育園や幼稚園でする様な事をさせずに、絵画や書道、陶芸等の文化的・芸術的な事をしています。置いてある本・新聞・雑誌も自由に読めます。職員は丁寧で、利用者を叱らず、夜は静かで安眠でき、セキュリティーは高い機能を持ちます。職員は何でもするのでは無く、分業的に専門分野に分かれて仕事をする為に、精神的負担が少なく「ゆとり」を持っています。
 その先進的施設を良い例として、職員の資質、理事長が営利主義であるか否か、訴える事の出来る第三者機関の設置の有無等も、老人ホームを選ぶ際のポイントとして挙げられています。そして、孤立しがちな利用者の話し相手となる専従者や、施設内に入所者自治会を設置し、利用者の家族も参加して、自ら運営方法を決める事を提案されています。
 因みに私は、年をとってからいくら先進的施設に入れるとしても、介護には頼りたくありません。「自立」して自由でマイペースな「自分にとっての普通」でいたいです。もしも、入所して「職員・施設にとっての普通」、つまり職員に嫌われない様に素直に合わせて規則に忠実になるのは、職員・施設の奴隷となりかねません

 
出口のない家―警備員が見た特別養護老人ホームの夜と昼出口のない家―警備員が見た特別養護老人ホームの夜と昼価格:¥ 1,995(税込)発売日:2006-07



「Xクラス」太陽フレアによるM7.1の福島県沖「大地震」か

2013-10-27 12:25:40 | 災害・地震・戦争
 現在、太陽活動が活発化しています。太陽の爆発現象でエネルギーが解放され、周囲に影響を与える太陽フレアは、強度の小さい方からA、B、C、M、Xの順で5つの等級に分類され、その内の最大であるXクラスのフレアが2回発生し(10月26日現在)、Mクラスも数回発生しました。
 太陽フレアX線の強度によって分類され、10倍毎に一つ上のクラスとなります。
 そして昨日10月26日の未明に、東北・関東沖にて、「大地震」に分類される規模のマグニチュード7.1の地震が発生し、福島県、宮城県等5県に津波注意報が発令されました。
 地震の規模を示すマグニチュードの大きさによって、極微小地震、微小地震、小地震、中地震、大地震、巨大地震、超巨大地震と分類し、5.0~7.0未満が「中地震」、7.0~8.0未満が「大地震」、8.0~9.0未満が「巨大地震」、9.0~10.0が「超巨大地震」となります。
 2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)はM9.0の超巨大地震、1995年1月17日の兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)はM7.3の大地震、1945年の広島の原爆が放出した全エネルギーはM5.5クラスの中地震、1908年のロシア連邦クラスノヤルスク地方で起こったツングースカ隕石の衝突時に発生した地震はM5.0(推定)の中地震、本年2013年2月12日の北朝鮮による核実験による「人工地震」はM5.2の中地震となります。(参考:ウィキペディア「マグニチュード」、2013年2月12日付・神戸新聞夕刊。)
 太陽フレアと、地震や火山の噴火等の自然災害、電磁波障害等との関係が有り、今後の注意が必要です。日本の北方領土北方のカムチャッカ半島では、依然火山活動が活発です。
 独立行政法人・情報通信研究機構(NICT)・宇宙天気情報センター(SWC)~2013年10月25日付「NICT 今日の宇宙天気情報」の概況・予報より、「活動領域1875、1882Mクラスフレアが数回発生し、太陽活動は活発でした。引き続き今後1日間、太陽活動は活発な状態が予想されます。太陽風速度は低速な330km/s前後で推移し、地磁気活動は静穏でした。引き続き今後数日間、地磁気活動は静穏な状態が予想されます。」。
 同NICT・SWC~2013年10月26日付「NICT 今日の宇宙天気情報」の「概況・予報」より、「活動領域1882Xクラスフレアが2回発生し、太陽活動は非常に活発でした。引き続き今後1日間、太陽活動は非常に活発な状態が予想されます。太陽風速度は低速な320km/s前後で推移し、地磁気活動は静穏でした。25日15時(UT)頃に発生したCME(コロナ質量放出)の余波が28日頃に到来し、地磁気が乱れる可能性があります。引き続き今後1日間、地磁気活動は静穏な状態が予想されます。」。
 またその「太陽活動」より、「太陽活動は非常に活発でした。活動領域1882(S08E59)25日7時53分(UT)にX1.7フレア(8時1分(UT)に最大、8時9分(UT)に終了)、25日14時51分(UT)にX2.1フレア(15時3分(UT)に最大、15時12分(UT)に終了)が発生しました。その他に、活動領域1882などMクラスフレアが数回発生しました。
 衰退していた活動領域1869に、再び黒点群が出現しましたが、この領域は本日から明日にかけて太陽面の裏側へ回り込む見通しです。活動領域1875は、面積と黒点数がやや減少しました。活動領域1882は、面積が増加し、磁場構造が単純なβから非常に複雑なβγδへ変化しました。
 Xクラスフレアが発生した活動領域1882では、今後もXクラスフレアが発生する可能性があります。引き続き今後1日間、太陽活動は非常に活発な状態が予想されます。」。
 2013年10月26日付・河北新報より、「26日午前2時10分ごろ、宮城、福島、茨城、栃木の4県で震度4を観測する地震があった。気象庁は岩手、宮城、福島、茨城各県と千葉県九十九里・外房に津波注意報を出した。東北の太平洋沿岸の各地で津波を観測し、最大は久慈港と相馬市の40センチだった。
 気象庁によると、震源は福島県沖で、震源の深さは約10キロ、マグニチュード(M)は7.1と推定される。東日本大震災の余震で、懸念されていた「アウターライズ正断層型地震」とみられる。余震域のM7超地震では陸地から最も遠く、最大震度が4にとどまった
 気象庁は地震発生から4分後、福島県に津波注意報を発令。40分後、M6.8をM7.1に引き上げ4県を追加した。注意報は午前4時5分に解除した。震災の余震による注意報発表は、昨年12月に三陸沖で起きたM7.3の地震以来。」。


 関連記事↓↓
   独立行政法人・情報通信研究機構(NICT)・宇宙天気情報センター(SWC)
        ……ブログ右サイドのリンクバー有り。⇒ ⇒ ⇒
   2013年10月26日付・河北新報~「宮城など未明に震度4の地震 石巻で津波30センチ観測」
   2013年10月25日付・The Voice of Russia(VOR ロシアの声 )~「本州の太平洋岸でM7.6の地震発生=米地質調査所」(ロイター)
   2013年10月26日付・同~「イタリアのシチリア島エトナ火山、活発化」
   2013年10月18日付・同~「ロシア、日本の沿岸で自然は暴れる」


  20131027
 
 
 (独立行政法人・情報通信研究機構(NICT)
     ~宇宙天気情報センター(SWC)ホームページより)
        …クリックによりポップアップ表示・拡大



 関連動画↓↓
 

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YouTube: MUST WATCH!!! SUN ERRUPTS WITH X-CLASS 1.7 SOLAR FLARE TODAY 2013-10-25


 

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YouTube: SUN ERUPTS FRIDAY EJECTING TWO STRONG X CLASS SOLAR FROM REGION 1882 (OCT 25, 2013)


 

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YouTube: 7.3 quake hits Japan, Fukushima evacuated over tsunami alert




私の鉄工所・町工場での経験と照らし合わせて……・・・「THE 中小零細製造業 町工場・鉄工所の解体新書 」を読んで

2013-10-27 01:51:18 | 鉄工所・職人・町工場
 総タイトル:【私の鉄工所・町工場での経験と照らし合わせて......・・・「THE 中小零細製造業 町工場・鉄工所の解体新書 」を読んで】

 世の中の鉄製品全般を担い、社会の根幹を支えて貢献する「鉄工所」、「町工場」
 汗やチリ・油にまみれて、作業着を汚しながら仕事をする正しさ
 「清貧」、「謙遜」を表している、町工場の小さな古い鉄工所
 「THE 中小零細製造業 町工場・鉄工所の解体新書 」(著者:相澤弘機氏、出版日:2010/6/15、出版社:文芸社)
 上記の本を読みました。
 著者は、大学文学部英米語学科を卒業すると同時に父の興した大阪の町工場に入社し、その後代表に就任して機械屋として機械加工を日々行っています。早寝早起きが習慣らしく、学生時代からの大変な読書家で、学生時代には自分で小説も書かれていたとの事です。
 私は、町工場の鉄工所に育てられました。私は普通科の高校を中退後暫くしてから町工場の鉄工所見習から入り、最初は図面も読み取る事が出来ず、溶接もそれまではした事が無く、学校で習ったはずの三角関数もすっかり忘れてしまっていました。その後、見習の立場、先手(職人に付いて職人の手の様になって職人に使われながら働く事)の立場、或いはそこから少し毛の生えた様な状態の間に、同じ製缶を行なっている町工場の鉄工所に数ヶ所移り代わりました。その後、一人で仕事を任せられる様になってからも、仕事が少し薄くなった時に、他所の飯を食って見識を広げ、勉強して自分のレベルを上げる事を理由に、製缶工として同じ製缶の町工場の鉄工所の会社に移転しました。同じ職種を続ける為に、会社は代わっても、転職ではありません
 製缶と言う仕事は、幅が広くて奥も深い。製缶と言う名前からしてタンク等の缶かんばかりを作っている様に思うかもしれませんが、そうでは無く、鉄やステンレス等の非鉄金属を材料として、世の中のそれらで出来た物全てが商品としての対象となります。故に、同じ製缶をしていると言っても、会社によって取り扱う商品が異なって様々であり、小さい物から大きな物まで、建築関係、機械関係、輸送関係、食品関係、各種構造物、プラント関係設備等々、町工場の取引先の種類と数、顧客としている親会社の種類によって様々な内容となっています。
 よって、同じ会社に居座っていると、そこの会社の事しか解らず、他所での仕事の事が解らなくなってしまいます。そこでの仕事が全てであると思い込んでしまったり、そこでのやり方が正しいと思い込んでしまったり、先輩やベテランの職人の言う事が正しいと思い込んでしまう事にもなりかねません。先輩やベテランの職人は俗にいう「カン」に頼っている部分が有り、それらは得てして職人の思い込みである事も多いです。現場での長年の経験から得た「カン」は価値が有りますが、一方で根拠の無い思い込みは間違っている事も多いです。私は見習時分からその様な疑う姿勢が有りましたので、見習の立場でありながらも余り言う事を素直に聞きませんでした。
 以前は若かったので移転もまだ比較的容易かったですが、最近の町工場の不況もあって、同じ様にはいかなくなっています。昔の高度経済成長期の様に物の無い時代では無く、バブルの様な事も今後は起こる事は無いと思います。新規で物を作らずとも、日本国内は一般的に大方設備等は揃っていています。一方で、橋梁の老朽化等、現存設備のメンテナンス・保守点検・修理等は今後は忙しいものと思います。
 市場至上原理主義、金融経済、グローバル化の下に、製造業が金融に支配されている為に、マネーゲームによって、特に下請けである町工場は煽りをまともに受けてしまいます。米国を初めとする各国の金融緩和政策によって、紙切れのお金が市中にばら撒かれ、物に比較して天文学的に余剰となっているお金を投資に用いている為に、モノづくりの実体経済は常に揺さぶられて不安定となって、直ぐに状況が変わってしまう事も有って、先行きは不透明で全く予想・予断が出来ません。
 お金が大分余っているにも関わらず、下請けの町工場まではお金が回って来ません。政府の金融緩和による市中のお金の量を増やしても、銀行が自身の営利目的の為に日本よりも金利の高い海外に投資したり、元請けの大企業・メーカーはリーマンショックのイメージも色濃く記憶に残っていたり先行き不透明である事から内部留保をして、下請けにお金を回しません。そして、今後、或る時急にハイパーインフレが起こって、その不況の煽りを食らう恐れが有ります。
 下請けの町工場は、親会社の都合でいい様に使われてしまいがちです。自分の所で仕事をしようとしていた品物が忙しくて手が回らなくて、納期がいよいよ迫ってきて出来ないからといって、その納期のままで下請けに出す為に、下請けの町工場は超特急で、遅くまで残業をしたり、外注として他の同業の町工場に仕事を分割して振り分ける等をして、その納期に間に合わさなければならない羽目になります。
 不況で世間一般的に仕事の無い時には、元請けは多くの下請けに見積を出して、その中で最も値段の低い所に仕事を出します。しかし、値段を低く見積もる会社は赤字覚悟で見積を出している事も多く、仕事が無いよりはまし、従業員を遊ばせないよりはましと言う事で仕事を取る会社も多いです。
 元請けの直接の1次下請けならまだしも、2次の孫請け、3次、4次、5次……と下のほうの下請けとなると、会社を通す度にピンハネ(中抜き)されて利益が出るどころか赤字覚悟の仕事、合わない仕事となります。
 その様に、仕事をしても儲からず、却って仕事をする事によって赤字が膨らんでしまいかねないので、自分の所に工場の無い、事務所だけの鉄工所も最近は多いです。要するに、自分の所では工場の現場で物を作る仕事をせず、営業や見積、材料の発注等をするだけで、実際のモノづくりの仕事は通すだけで下請けに安い値段で押し付け、ピンハネする事で利益を得ています。また、派遣業者の様にして、大手の工場に従業員を入れているだけの所も有ります。
 例え元請けの直接の1次下請けであっても、そことの取引量の割合が高い場合には、親会社の都合に左右されやすくなります。もしもそれが1社だけであると、そこに切られた場合には即倒産となります。逆に、2次や3次の下請けでも、仕事をもらう先の多くの顧客を持っていると、潰れにくいです。
 ところで、大きな会社は従業員も多い為に、分業制によって一人ひとりの作業範囲は狭くなっています。逆に大手の「単能工」と違って、10人前後等の零細町工場は人数が少ない為に、「多能工」として何でも熟しています。多能工の場合は他所の同じ職種の会社に代わっても、融通が利き易く、柔軟性が有ります。よって、何処へ行っても通用しやすくなります。昔の「渡り職人」は、いろんな所を転々として多くの見識を持ち、融通の利く腕を持っていました
 鉄工所の事が、余り世間には理解されていないと思います。また、誤解も多いと思います。社会に影響を与えるマスコミの中でも特にテレビの場合には、スーツ姿のホワイトカラーの職場が舞台のドラマが多いです。トレンディだのおしゃれだのとマスコミは囃し立てます。逆にグレーの作業着姿等のブルーカラーの職場を扱おうものなら、ダサいだの汚いだの3kだのと、特に若い女性にはウケない様に思います。マスコミスポンサー企業のマーケティング・意向に添った番組作りを余儀なくされる為に、そのマーケティングが若い女性をターゲットにしている為にその様になっています。
 例え同じ鉄工所でも、元請けのメーカーの社員等には解らない、下請けの中小零細町工場の苦労が本書には在ります。特に経営者としての著者の経験・苦労からの言葉が在ります。しかし著者は機械加工の仕事が好きで、自身と同じ下請けの鉄工所の町工場に共感し、応援する意味も込めて世間に理解を深めてもらう事を理由に本書を出されたのではないかと思います。
 鉄工所・町工場の昭和50年代から現在に至る過程、現在の取り巻く環境、抱える問題等が本書に在ります。

 
THE 中小零細製造業 町工場・鉄工所の解体新書THE 中小零細製造業 町工場・鉄工所の解体新書価格:¥ 1,365(税込)発売日:2010-06-01