鞦韆院落

北京で過ごすインディペンデント映画な日常

老院子

2014-05-07 02:44:56 | 其他
『黒四角』が17日から都内で公開されるそうです。
2012年の東京国際映画祭で『黒い四角』というタイトルで上映された作品です。

私はこの作品に撮影の時ちょっとだけ絡んでまして、エンドロールには名前もあったりします。
べつに大したことはしてないんです。ただ、宋荘で撮影するにあたって、栗憲庭電影基金の人たちに口利きをして、便宜を計ってもらったりしたくらいで。

そのとき監督が宋荘で撮影に使えそうな家を探していたので、一緒にいくつか見て回ったんですが、なかなかいい物件がありませんでした。
芸術家が住んでそうな、ちょっと古い感じの一軒家が良いということだったので、顧桃の家も紹介しました。
結局は、顧桃の隣の家を監督が気に入って、そこで撮影することになりました。
その家は丁度レストランに改修するところだったので、しばらく貸してもらうのにも都合が良かったようです。
私も撮影の時に覗きにいったりしましたが、家の中の道具はぜんぶ持ち込んで作ったもので、生活感が出ていました。
映画では、中国人の芸術家と日本人の奥さんが住んでいる家という設定で登場しています。

撮影が終わって、その家は数カ月後にはレストランになりました。
「老院子」という名前で、蒸し餃子が名物の、東北料理の店です。
顧桃と同じく内モンゴル出身の“二哥”と“二嫂”の夫婦が経営していて、店は主に奥さんの“二嫂”が見ています。
本名は知りません。もらった名刺に“二嫂”と書いてあったのです[“二嫂”とは“二哥(2番めの兄さん)”の奥さんという意味]。
旦那さんの“二哥”はというと、はじめのうちこそ店で客の相手をしていたけど、そのうち飽きて、最近は店にも寄り付かなくなりました。
たいてい顧桃の家にフラっと入ってきては、ソファーで横になっていたりします。
車があるので、よく私のことを空港まで迎えに来てくれたり、プールに連れて行ってくれたりします。

中国では、奥さんが働いて、旦那はふらふらしているという夫婦がとても多いです。
二哥に聞けば、二嫂を最初に見た時に「こいつは良く働きそうだ」と思ったのだとか。
かなり計画的でもあるようです。
店は、オープン当初は夫婦とコック1人くらいでやっていたのに、今では従業員を7人も抱えています。
奥さんは本当にやり手のようです。

昨年の中国インディペンデント映画祭の時には、内モンゴルの音楽が入ったCDを100枚くらい現物支給で寄付してくれて、プレゼントにでも使えというので、サポーター特典にさせてもらったりしました。
東北人らしく、とても気前がよい人です。
顧桃の家でパーティーをするときも、いつも料理を提供してくれたりします。

そんな“二哥”に先日、『黒四角』が日本で公開されるようだと伝えたら、「じゃあポスターもらって来てよ。店に貼るから」と言われました。
うーん、こっちは広州にいるから、もらって来いと言われても困るんだけど……。
確かにポスターでもあれば、映画を見た人にはピンと来るかもしれません。
皆さんも、もし『黒四角』を見て宋荘に行きたくなったら、「老院子」で食事をしてみるといいかもしれませんよ。