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【橋川文三の文学精神】 九 宮嶋繁明と後藤総一郎

2014年06月22日 06時00分00秒 | 橋川文三の文学精神6~10

 
   【橋川文三の文学精神】
  第9回    内容目次@本文リンク

 


 

 

   九 宮嶋繁明と後藤総一郎

 
 橋川の『鏡子の家』評によって橋川と三島の対話的交流が開始された。橋川文三の『三島由紀夫論集成』と三島由紀夫の『文化防衛論』には両者の対話的応答のほぼすべてが収録されている。ほぼすべてと限定を付したのは三島の『日本文学小史』も両者の応答の極めて重要なエピソードと私は考えているからである。

 橋川文三(1922ー1983)三島由紀夫(1925ー1970)
□対話的交流クロニクル
   (☆は橋川文三、★は三島由紀夫の作品)

 

☆「若い世代と戦後精神」 『東京新聞』1959年11月11日~13日

★「橋川文三宛三島書簡」 1964年6月15日 。「夭折者の禁欲」執筆および『歴史と体験』の献本に対する礼状

☆「夭折者の禁欲」1964年7月 『三島由紀夫自選集』所収

★「橋川文三宛三島書簡」1966年5月29日 。「三島由紀夫伝」執筆に対する礼状

☆「三島由紀夫伝」1966年8月 『現代日本文学館』42「三島由紀夫」所収

☆「中間者の眼」 『三田文学』1968年4月号

★「文化防衛論」 『中央公論』1968年7月号

☆「美の論理と政治の論理」  『中央公論』1968年9月号

★「橋川文三氏への公開状」  『中央公論』1968年10月号

★『日本文学小史』 『群像』1969年8月号~1970年6月号

☆「三島由紀夫氏への回答」 『中央公論』発表なし

※注 最後の橋川文三による「三島由紀夫氏への回答」は書かれるべくして書かれなかった両者の対話的交流の最後を締めくくるべき作品である。

  宮嶋繁明は橋川文三に師事し(昭和48年卒、橋川ゼミ十三期生)、著書『三島由紀夫と橋川文三』を2005年1月に刊行した。宮嶋繁明の観点は橋川による三島への思想的影響の分析が主になっていることもあって、その点では克明な事実描写がなされている反面、やや三島の巨きさが捉えきれていない印象を受ける。ただ、橋川文三の名を冠した著作は、宮嶋繁明氏のこの書一冊しか現時点では刊行されていない。途方もない学識を散りばめ、謎かけが多い橋川文三の文章を論じて一冊の書物にまとめるのは絶望的なまでに困難であり、そのことが橋川文三の名を冠した書物がまだ一冊しか出ていない原因であろうと思われる。その意味で『三島由紀夫と橋川文三』は先駆的であるにとどまらず、両者の思想的交流を克明に描いて鮮やかであり、三島由紀夫論としてもまた橋川文三論としても完成度の高い出色の名著であることは疑いえない。

 別に橋川文三の後継者としては明治大学の日本政治思想史の講座を引き継いだ後藤総一郎(1933―2003)がいる。後藤は橋川没後の追悼文「お別れの言葉」において、「先生独自の日本政治思想史の巾広い開拓」について述べている。

――日本曼派批判を出発点として、北一輝を中心とする昭和ファシズムの新たなる証明作業を、近世水戸学の新たなる思想的位置付けを、明治維新の夜明けを指差した思想家吉田松蔭の思想核を、やっかいな西郷隆盛への関心を、アジアは一つであると念じた岡倉天心の世界を、そして柳田国男の民俗思想の先駆的な再評作業を、さらに一方、石川啄木をはじめとする近代日本の文学思想から、太宰治や三島由紀夫の文学思想史にわたる世界をというように、壮大に展開され続けた先生の思想史の世界に、わたしたちはただあれよあれよと追いついてゆくのが精一杯なほどでした。

  後藤総一郎はこのように橋川の研究した対象の広大さを賛嘆したのである。後藤は橋川文三の柳田国男研究を主に引き継ぎ発展させた。その橋川文三は竹内好の国民文学論を引き継ぐ形で思想史家としての歩みを開始した。橋川の著作家としての仕事は日本浪曼派の思想史的位置付けを定位することから開始された。


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■著者より

●「橋川文三の文学精神」は6月14日より28日まで全15回連載します。
橋川文三告別式における後藤総一郎氏の弔辞の音声記録が、ミクシー"橋川文三を考えるコミュニティ"の管理人氏により公開されています。
http://yahoo.jp/box/xhC-VV

後藤総一郎の研究した柳田国男。かの懐かしくてしなやかな知性は例えばこんな紹介のされ方がふさわしい。この語り口は柳田の本質を指し示している。


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