感染症・リウマチ内科のメモ

静岡県浜松市の総合病院内科勤務医ブログ

関節リウマチとミゾリビン

2014-10-16 | リウマチ

ミゾリビン(ブレディニンR)はリンパ球系の増殖を抑制する免疫抑制剤で1984年に腎移植の拒絶反応抑制、1990年ループス腎炎、1992年関節リウマチ、1995年原発性ネフローゼ症候群の適応を追加されています。

免疫抑制効果も弱いのですが、副作用が非常に少ないとされ、高齢者や合併症の多い患者で他の薬の使いづらい例での選択肢の一つといえます。

MZRには禁忌(白血球数3,000/㎜3以下等)が少ないため、間質性肺炎、腎機能低下、癌併存、慢性感染症併存などで、MTXやBioが使えずSASPやBUCなどで効果不十分であればこれも検討せざるを得ないと思われます。

あまりまとまった文献はないのですが、安全性とRAへの有効性について文献をまとめてみました。

RAには50㎎を1日3回経口投与が適応量(適宜増減は可能)ですが、1日1回方法のほうが良いかもしれません。あと注意点は、プリン合成阻害作用に基づく尿酸生成増加のため尿酸値の上昇があらわれることがある、遅効性であり通常効果発現まで2~4カ月間の継続投与が必要。

 

 

まとめ

 

・ミゾリビンは(MZR)は、 核酸合成のデノボ経路における律速酵素の イノシン一リン酸脱水素酵素、 に対する阻害効果 を有し、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)と類似している免疫抑制剤である。免疫抑制効果は、選択的にリンパ球増殖の阻害によって体液性および細胞性免疫の両方を抑制することが示唆されている。

・まず臓器移植のために承認され、ループス腎炎などの自己免疫疾患に対する有効性のために知られている

・しかし標準的な投与量、1-3mg/ kg /日にて免疫抑制効果はあるが効力が低いとされた。

 

安全性

 

・Yoshimura Nらの腎移植患者に対して、MMFと高用量MZR(6mg/ kg /日)を比較し3年間の移植片生着率は同等、サイトメガロウイルスなどの重篤な感染症、帯状疱疹は、両群ともに2年目および3年目で観察されなかった。MMF群では4人の患者が帯状疱疹感染、CMV感染、骨髄抑制、および出血性潰瘍にて3年以内にMMFからMZRに変換された。

 

・Xing Sらの腎移植レシピエントにおけるMMFとのMZRを比較したメタ分析では、MZR群のほうで 白血球減少[RR0.40(0.26、0.60)]、 胃腸障害[RR0.54(0.40、0.73)]、  CMV感染[RR0.47(0.34、0.64)] のより少ないエピソードあり。逆に高尿酸血症はMZR群で有意に明らかだった  [RR1.96(1.47、2.61)]。

 

・Yoshimura Nらは、腎移植レシピエントにおいて、CSA、バシリキシマブ、ステロイドと組み合わせた、MZR(6mg/ kg /日)とMMF;25mg/ kg /日とを比較した。MZRグループは、上昇した血清尿酸値(29.7%)の有意に高い割合を示した。重度のサイトメガロウイルス感染は、いずれの群においても3と4年で観察されなかった。

 

・秋山らの腎移植後早期にMZRを受けた患者のFKとともにMZRを受けた140人の患者の調査では、1群(MZR:3未満mg/kg)、2群(3以上、5未満mg/kg)、3群(5以上mg/kg)では、有害反応に関しては、尿酸値上昇と高血圧発生率は3群で有意に高かった、一方で、 CMVおよび帯状疱疹感染症の発生率はどの群でも異ならず。

 

・腎移植後の免疫抑制療法のためのアザチオプリン(AZA)でMZRを比較した文献のメタ分析では、MZRは、AZAと比較して有害事象の有意に低い発生率と関連した (RR0.39、CI0.21から0.73、P=0.003)。骨髄抑制  (RR0.12、CI0.02から0.54、P=0.006) および白血球減少症  (RR0.20、CI0.06から0.70、p = 0.01) のエピソードの有意に少なかった。また、MZRは、肝機能障害、感染症および糖尿病の観点からより有利な結果を提供するように見えた、  しかし 差異は統計的に有意ではなかった。

 

・Rokutanda RらのRA以外の結合組織病(CTD)患者におけるMZRのretrospective研究。34 名がSLE, 6名がSjögren syndrome (SS), 5名がANCA-関連血管炎, 5名がIgG4-関連疾患,と13名がその他CTDs。MZRの初期用量(mean ± SD)は125 ± 42.7 mg/day、フォローアップでは400 ± 417 mg/day。MZRは導入および維持療法における

 

・MZRの使用は、重篤な副作用の低い発生率が示されており、発癌性の増強もない

 

→ まとめ:  安全性に関して、主に移植患者でのデータであるが MZRは6mg/kg/日程度まで安全に使用できそう、AZAやMMFと比較しても感染症リスクは高くなさそう。

 

RAなどへの有効性

 

・最近の研究では、 関節リウマチ(RA) 、全身性エリテマトーデス(SLE)、ネフローゼ症候群、および免疫グロブリンA腎症の治療で その有用性を実証している

 

・一ノ瀬らの32名のRA(高齢、間質性肺炎や他の合併症でBio治療できない患者が含まれた)に対する1日1回MZRの研究では、MZRの平均用量は 146.1±31.2(範囲:50~200)mg /日、プレドニゾロンの平均用量は4.63±3.59(範囲:0~14)mg /日、 3時間後に測定したMZR平均血漿レベルは応答群で2.20±0.49/ mL、非応答者群で1.59±0.82/ mLだった(p =0.020)。

 

・Terai Cらの関節リウマチ(RA)患者におけるMZRのprospectively研究。 腎機能検査のシステイン-Cは良好または中程度応答の患者では、応答なしのものと比較して有意に高かった。MZRのsingle doseの患者において有意に有効。

 

・Ohtsubo HらのRA治療におけるMZRのretrospectively研究。MZRの100-150mg/日を1日1回受けているA群と、2-3回分割投与されるB群に分けた。A群はB群と比較して有意に高いMZR-C3レベル(投与後3時間後 MZR血中濃度)を有し、DAS28-CRPにて有意に大きく改善し、薬剤投与期間はA群で有意に長かった。一次回帰式は、RA治療に有効な血中MZR濃度は1.47μg/ mL以上のMZR-C3であることを示唆。

 

・郡山らは2003年に、MZRをMTXと同時に内服する方法を報告。両者は作用機序が異なるため相乗効果が示唆されている。

・MZRパルス法として、週当たり100mg/回を12時間毎に3回、とするものが多い。この場合に有害事象は増加しないと報告されている。

 

→ まとめ: MZR150mg/日の1日1回法は分割法よりより有効であろう、しかし投与後3時間の血漿濃度測定が大事。週当たり300mgのパルス療法も良いかもしれない。

 

 

参考文献

Mod Rheumatol. 2014 Mar 4.

Rheumatol Int. 2014 Jan;34(1):59-62.

Mod Rheumatol. 2012 Nov;22(6):837-43.

Transpl Immunol. 2013 Mar;28(2-3):106-11.

Clin Biochem. 2014 May;47(7-8):663-9.

Transplant Proc. 2013 May;45(4):1472-5.

 

 


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