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福知山線事故(8)…暴言問題/山陰中央日報のコラム

2005-05-30 06:48:00 | 尼崎福知山線脱線事故
福知山線の脱線衝突事故について,当ブログでも書き始めたところ
最初の1回を除いてはマスコミ批判のシリーズになってしまいました。
(6)の後,「マスコミや自分を含めた皆に求めたいこと」を書いて
締めにしたいと思っていたのですが,前回の(7)で弁明コラムを乗せていた
京都新聞にツッコミを入れてしまい,また今回もマスコミ側のコメントを
目にしたので紹介しておきたいと思います。

事故から1ヶ月がたった25日,出張中の松江で新聞を読んでいたところ
京都新聞の夕刊で連載している『カンちゃん』,こっちでは朝刊に載ってるナァ
…そんなことはどうでもよくて,
地域面の前のページで1ページを使って「尼崎脱線・JR会見」の特集を組んでいました。
コンテンツは大きく分けて次の3つ。

(1) 世間を騒がせた罵声会見,そこに至るまでの経緯と感想
(2) 事故に遭遇して(救助に参加せず)取材したNHKアナの談話
(3) インタビュー・大谷昭宏氏に聞く


(1)の,山陰中央日報記者の手記(の形をとっているのに署名がない。
 まさか共同の配信記事じゃないだろうな?マサカ)の内容は以下の通り。

・大見出し「記者の罵声 市民ら批判」
・第2見出し「本質からずれた質問」「メディアに厳しい視線」

・会見場は大阪北区・JR西日本本社4Fの「大会議室A」。
 3人掛けの机が15台並べられ,その後ろにカメラマンが陣取る。
 常時60人ほどが部屋を埋めた。

・ターニングポイントは27日午前の9回目会見。
 (以下原文ママ)
 村上恒美安全推進部長「事故の捜査や調査にかかわる事実は
 公表しないよう要請されている」。
 予防線を張るかのような言葉に不信感が漂う。
 「ささいなことまで情報開示を拒むようになるのではないか」
 
・予感通り,「捜査中」を盾に,ことあるごとに公表を拒否する同社。
 5月2日の記者会見では(以下原文ママ)
 記者「会社の調査体制はどうなっているのか」
 幹部「捜査に影響するので答えられない」
 記者「車掌の事情聴取はテープに録音しているのか」
 幹部「それも捜査に…」
 報道陣から失笑が漏れ,質問した記者は「どう捜査にかかわるのか。
 テープの内容を聞いているのではない」と激高した。

・会見は吊し上げの様相を呈していく。
 前日に遭遇しながら出勤した車掌の問題が明るみになった5月4日,
 車掌区のボウリング大会問題で記者が質問した途端事実を認め
 メモを手に説明を始める村上部長らに報道陣が激怒。
 「なぜ最初から質問しない。聞かれなければ黙っておくつもりだったんちゃうか」

・怒号はエスカレートし「あんたら全員,辞めざるを得んやろ」
 「社長を呼べ」ペン先で机を叩き声を張り上げる記者ら。
 「遺族にどう説明するのか。テレビに向かって言えよ。顔を上げろ」
 記者(←この手記の筆者か)もそれまでは強い口調で質問することはあったが,
 あまりの異様な雰囲気にもはや口を挟む余地がない。
 感情をあらわにする数人の記者のほかは,やりとりを見守るしかなかった。

・頭を下げる人間に罵声(ばせい)を浴びせ続けることへの違和感はあった。
 しかしこうでもしないと,JR西日本は情報を出さなかったかもしれない。
 (原文ママ)

・日付が変わって垣内社長が会見に登場。疲れのためかうつろな目で陳謝。
 6日夕,会見の冒頭で(不適切な事象の)概要をまとめた一覧を配布。
 200人近くのJR西社員が危機感を感じていなかったことに再び怒号が。
 原稿作業に追われながら,会見の焦点が,事故の原因という本質から
 ずれていくことに徒労感を覚えた。

(2)のNHKアナ談話は以下の通り。

・見出し「事故遭遇のNHKアナ 「見えたことだけ話した」
 ちゅうちょした写真撮影」

・その人は神戸放送局チーフアナウンサー小山正人さん(52)
 「目に見えたことだけを話した。
  どう伝えたかはあまり覚えていない」

・通勤で川西池田駅から3両目に乗車。
 右手で吊り革を持ち読書をしている状態で事故に遭い,
 衝撃で床に転がり眼鏡のつるが曲がり,肋骨も折れた。

・非常時のために腰のベルトには携帯やラジオ,デジカメも
 備えている。とっさにカメラに手を伸ばしたが,
 1955年の紫雲丸沈没事件で乗客が転落する写真が新聞に載り
 論議を呼んだことの記憶が頭をよぎり撮影をちゅうちょした。
 結局,「後で記録が必要になるときのため,伝えるのが自分の仕事」
 と思い直して撮影するが,両手ではなく片手で持ち,
 腰までカメラを下げてシャッターを切った。

・半開きのドアから救出され,へたり込みながらも
 局に電話。
 (以下原文ママ)
 「体大丈夫なの?
  次の電話で現場リポートやってもらいます」
 「えっ,何しゃべる?」。
 二十九年のアナウンサー人生で事故現場の中継に縁がなかった。
 あらためて辺りを見渡す。血を流し動かない人。担架代わりの座席で
 運び出される人。「助けてくれ」と車内から漏れる声。

 「目の前のことしか言えないや」。構成も考えず,
 見えたこと,聞こえてくることを順に電話で吹き込み続けた。

 三回の電話リポートの後,合流した中継車のスタッフから
 マイクを渡された。午前十時四十分すぎ,カメラに向かい中継を終え,
 同時に警察官に追い出された。
 後輩の到着を目にしたら,胸の痛みが急にひどくなった。

(3)の大谷昭宏氏インタビュー内容は以下の通り。
・記者がJR側をどう喝するような質問をし批判を浴びた
 底流には「大阪ジャーナリズム」とも言われる独特の
 記者気質があるとの見方もある。
 元読売新聞大阪本社社会部記者でジャーナリストの
 大谷昭宏氏に聞いた。

-JRの対応は。
「一度会見に出席したがまさに官僚答弁だった。
 大阪の記者は鉄面皮な官僚を扱い慣れていない。
 東京は論理優先で建前の世界。
 大阪は情感,本音の世界で取材をする」

-記者会見での記者の発言をどうとらえる。
「記者は品性を失ってはいけない。
 遺族の怒りを代弁したつもりかもしれないが…。
 五年前の雪印乳業による集団食中毒事件の会見で社長が言った
 『寝てないんだ』に対し記者が
 『われわれも寝ていないんです』と応じたのには品性があった」

-あの発言はいかにも「大阪ジャーナリズム」との指摘もあるが。
「そういう部分があるかも。ただ,ジャーナリズムというのは
 良い意味でも悪い意味でも猥雑(わいざつ)なものと思う。
 人が泣いたり笑ったり,くっついたりということに関心がわく。
 情感の部分と大阪ジャーナリズムは結びついている」

-東京でも同じでは。
「大阪は権力から離れており伝統的に『お上』が嫌い。
 権力者の言いなりになりたくない,権力を嫌う以上は
 自分も権威になりたくないというのが基本にある」

-事故から見えた現在の大阪ジャーナリズムは。
「JR西日本は国鉄民営化の優等生とされてきたが,
 民間の利益優先という一番悪い部分と旧国鉄の官僚体質が融合していた。
 そのことを事故までウオッチしていなかった。
 なのに情感の部分だけが残り,会見での暴言につながってしまった」

-大阪ジャーナリズムは衰退しているのか。
「以前は権力チェックにもっと敏感だった。
 事件の内容ばかりでなく不祥事もよく報道された。
 記者個人の力が落ちただけでなく,
 在阪各社とも東京の力が強くなり権力になびきだした。
 権力は力関係に敏感で,弱くなったら攻めてくる。
 大阪ジャーナリズムの伝統がなくなり始めている」

-権力チェックに敏感なメディアは今存在するか。
「残念ながらそうした役割は週刊誌に奪われている。
 最近政治家を辞職に追いこんだのは週刊誌の報道ばかり。
 週刊誌は今も猥雑さをもっているが,新聞,テレビは
 自らを権威化してしまった」

-メディアの権威化,東京志向が衰退の原因か。
「大きな国の流れからすれば,市民は国家権力を是認する方向になっている。
 大阪ジャーナリズムが孤立無援になるのは分かる。
 ただ,反権力と無関心は違う。無関心に陥るから,
 大阪市の職員厚遇問題のようなものが放置されてきた」

-今後の大阪ジャーナリズムに期待することは。
「二律背反だが品性と猥雑さを兼ね備えてほしい。
 それと権力のウオッチというのが科せられた使命というのを
 忘れないでほしい。権力と距離を置くには,読者・視聴者の
 支持が必要。それなしに権力に突っかかっても自己満足に
 すぎない。会見での記者のあの発言は,読者・視聴者に
 違和感を持たれた時点で負けだった」

-最後に,事故車両に記者が乗り合わせていた場合は
 どうすべきだったか。
「記者はニュースを伝えることが使命。
 大惨事を報道することで次の被害を食い止めるのが仕事だ。
 ニュースを伝えた後に救助活動をするのがあるべき姿と思う」

◆D.D.の感想としては,
記者の手記は,暴言会見を生む雰囲気が醸成され暴走にいたるまでの
経緯と感想にとどまり,そこから踏み込んでどうするかという
ところまで言及することがなかったのでちょっと物足りない感じが
しましたが,現場の描写を削ってまでここで書くことはないかな
ということで,特に異論もありません。
結局,誰が書いても
> しかしこうでもしないと,JR西日本は情報を出さなかったかもしれない。
という結論になるんですね。
ここまで人を怒らせるJ西幹部はどういう常識を持った人々なのでしょうか。

NHKアナの取った行動は,大谷氏も語っているように
全く問題ないと思います(「ニュースを伝えた後に救助活動をするのが
あるべき姿」というのは綺麗事で,それが可能なケースは
かなり限られるんじゃないかなと思いました)。

大谷氏のインタビューについて,
「『われわれも寝ていないんです』と応じたのには品性があった」
の部分には失笑しましたが
(本当は「こっちだって寝てないんだ!」と言ってたと思う),
全体としては,戦後ジャーナリズムの流れを簡潔に教えてくれ,
本来務めるべき役割を週刊誌に譲ってしまっている,
誰もが感じている現状を明確な言葉で表現してくれたということで
賛同します。

大谷氏,在阪局の番組にもよく出ていてコメントもよくしていたと
思うのですが,どんな事を言っておられたか記憶にないんですよね…。
J西を一方的にボロクソに言っていた同年代の“ご意見番”が
大勢いたので(ABCとか),ごっちゃになっていて。
だから,5月上旬までの放送で大谷氏が変なコメントをしていなかったのか
確信はありませんが,このインタビューの内容に関しては異論はありません。


さていよいよそろそろこのシリーズも締めに…
と思うのですが,(3)で紹介したたかじんと辛坊氏の番組が,昨日の日曜日も
報道問題を取り上げて,橋下徹弁護士や田嶋陽子元国会議員らの
活発な議論が展開されましたので,これを紹介した後,
終わりとしたいと思います。
 

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●福知山線脱線事故に関するエントリー
「JR福知山線事故(1)・遺族の憤懣に思う」
「JR福知山線事故(2)…マスコミ,おかしくないか?」
  (↑100を超えるTBいただきました。皆さんありがとうございます)
「福知山線事故(3)…マスコミにもの申した?番組」
福知山線事故(4)…勘違い連中を茶化し斬りさせていただく
  (↑コメント数40突破!私自身が炎上させかけてしまい反省)
福知山線事故(5)…「茶化し斬り」で何がしたかったのか
福知山線事故(6)…この場でお笑い論(何様?!)
福知山線事故(7)…暴言問題/取材側の言い分

死体は語る現場は語る
上野 正彦, 大谷 昭宏
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グリコ・森永事件―最重要参考人M
宮崎 学, 大谷 昭宏
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事件記者―新婚夫婦殺人事件
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こちら大阪社会部 (1)
大谷 昭宏, 大島 やすいち
コミックス


毎日新聞大阪本社経済部の久田宏記者(30)の乗っていた車両は?
 毎日新聞を見ると,彼の証言が二転三転している。

※大西宏のマーケティングエッセンスよほど書くことがないのかな?読売社説(5/13)

※YOMIURI ON LINE「脱線事故会見巡る不適切発言でおわび…読売・大阪本社」

※ヒゲ記者の実名を最初に晒したとされるブログ
 清谷防衛経済研究所 ブログ分室
 「JR西日本記者会見で罵声を浴びせたヒゲ記者の[正体] 読売新聞大阪本社社会部遊軍 竹村文之」

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2 コメント

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Unknown (秋月)
2005-05-30 12:42:26
TBありがとうございました。

言われて見れば東京と大阪ではだいぶ質問の雰囲気も違いますね。

大阪気質だから暴言を…ということにはなりませんが、

JRもJRだなと思いますね。
Unknown (たけやす)
2005-05-30 19:24:34
TBありがとうございます。

今回の一件で、「メディアスクラム」の怖さと、我々bloggerが、記者連中と同レベルの叩き合いになることの反省が残りました。



コメンテーターも、結局は思慮深い奴よりも、声のでかい奴の勝ち、みたいな面があって、ものすごく鼻につきましたし。

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