ザグレブの旧市街にある、
なんてことはない街角のアーチ。
中に入ると、小さな礼拝堂があり、
ロウソクを灯し、祈りを捧げる人々が絶えない。
礼拝堂はグラデッツの丘へ上がる道伝いにあり、
この中をくぐって通り抜ける人も多い。
そんなときでも多くの人は十字をきって通り抜けていく。
小さな祭壇には、幼子キリストを抱いたマリアのイコンが
大切に置かれている。
ここはかつてグラデッツの丘を取り巻いていた城壁の
東門だったところ。
18世紀の半ばに起きた火事で、
このあたり一帯は全て焼き尽くされてしまった。
木造の東門も焼け落ちた。
ところがどういうわけか、焼け跡の灰の中から、
このマリア様のイコン像が無傷で見つかったという。
東門を石で建て替えたときに
大火でうちひしがれた住民達の心に
ひとすじの希望の灯をともしてくれたこのイコンを祭る
小さな礼拝堂が作られた。
礼拝堂の壁は、びっしり
こんな石板のプレートで埋め尽くされている
よく見るとどのプレートにもHvala(フヴァラ)と刻まれている。
クロアチア語で「ありがとう」という意味だ。
この奇跡のマリア様にお祈りをして
病気が癒されたり、絶望から救われたりした人が
感謝のプレートを寄付したものだという。
門の下の小さな礼拝堂だけど、
町の大勢の人々にとって
大事な心のよりどころなのかもしれない。