カラス

カラスと共に生き物の世界を覗き見る

2007・巣立ち7

2007-07-08 05:41:18 | 繁殖

 巣立ちのピークが終わり、カラスの威嚇行動も治まりつつある。しかし今年は巣立ち遅れが多く、未だに巣立っていない番は巣立ったばかりという番も少なくない。最初から観察をしていなければ「再営巣」かと思ってしまう事もある。巣立ちが終わっていないのがブトならまだ分かるのだが、ボソでもまだ抱雛中という番もいる。しかしボソの場合は再営巣の可能性が高いと言えるだろう。

尾行ボソ

 今年は灯台下暗しにならないようにと、ご近所カラスの営巣状況もまめに見るようにしていた。一番気になっていた「尾行2:災難」のボソだが実はあれから暫く姿を見せなかったのだが、街路樹に再営巣していた。気が付いた時点では既に雛が孵化していた。しかし余り見たり、写真を撮ってしまうと巣がある事を知らせてしまう事になるので通りすがりを装って見るだけに留めておいた。従って写真は一枚も写していないのである。

 先日様子を見に行ったら、樹上に巣立った雛が2羽おねだりをしていた。親は辺りを気にしてはいたものの威嚇行動は全くなかった。恐らくこのボソが営巣していた事に気が付いていない人の方が多かったに違いない。それだけボソの繁殖というのは静かだという事になる。先ずはめでたし、めでたしである。

 そしてもう一組、気になっていたブトがいた。昨年の「巣立ち6」に登場したブトである。今年はいつもと状況が違っていた。尾行のボソが最初から小学校に営巣しなかった事もあり、近所の民家に営巣をしてしまったのである。

 私は「いつ落とされるのだろうか?」と思いつつ毎日観察をしていた。しかし今年は営巣している事に気が付いていなかったのか巣を撤去される事はなかった。予定より少し遅れて雛が巣立ちを始めた。最初2羽が巣立ち、特にトラブルのなく静かな時間が流れていった。しかし残りの雛が巣立ちを始めた時点から、問題が発生してしまい親は大忙しな毎日になってしまったのである。

 このブト君、今年は頑張って4羽の雛を育てた。しかし雛の全てが順調に成長する訳ではなく、一番小さな末っ子が何かと問題を起こしてしまう事が多い。このブトも例外ではなかった。

見張る親

 ある日の朝、親が騒いでいるので様子を見に行ったら雛が地面を歩いているではないか!!親は気が気でないので必死になり雛を守ろうとしていた。比較的人通りは少ないとはいえ、歩道が狭い分人との距離が近くなり私も心配だった。

 小学校があるので児童の登校時間になり、子供を攻撃する事はないと分かっていてもやはり心配だった。ましてや最近は親が子供を学校まで送って行くという習慣になっている。子供に被害がなくても大人に向かって攻撃する可能性は高かった。しかしこの時は校庭内に雛が隠れたのでトラブルはなかった。

居眠り雛

 そして数日後、また雛が歩道を歩いていた。今度は何と小学校のウサギ小屋に止まり居眠りをしていた。私はこの雛が先日の雛と同じだと思っていたのだが、校庭内に入ってしまった雛は死んでしまったようである。という事は成長の悪い雛が2羽いた事になる。

 この雛をどうしようかと思い見ていたら、学校から数人の大人が出て来て児童達に何かを話していた。私も心配になり話を様子を見ようと側に行ってみた。すると大人達は「ここのカラスの雛がいるから、近寄ったら親が怒るからね。今日は回り道をして学校に入るんだよ」と言って誘導していた。

兄弟

 私は嬉しくなり話掛けてみた。学校側でもこのブトの存在は知っていたようで、意外にも雛を排除しようとかは考えていないようだった。それどころか「このまま様子を見てあげよう」と考えていてくれたのである。後で分かったのだが私が話をしていた男性の一人は校長だったのである。

移動させた後

 結局雛は巣のある民家へ移動させようという事になった。しかし民家の人が快く引き受けてくれるとは限らない。しかし勝手に雛を移動させる訳にも行かないので、もう一人の男性と一緒に事情を話しに行った。民家の人もこのブトの事は知っていていつもは巣を造り始めた時か、終わった後に撤去していた事も言っていた。確かにその通りである。事情を話すと快く引き受けてくれたのである。雛を移動させる時、親は物凄く怒っていた。既に元気に飛び回っている兄弟ブト2羽もその様子を見ていた。

突進する親

 それから毎日数回、この雛を移動させている。下痢もしているし、かなり痩せているのでこれから先はどうなるか分からない。しかしこの雛の事を心配している人が他にもいるという事が分かり、本当に嬉しくなった。雛の事があるので遠出は出来ないのだが、出来る限りの事はしてあげようと思ったのである。さて、今日は何回私に捕まえられて移動させられるのだろうか? 


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10 コメント

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頑張れチビちゃん (きんいろのからす)
2007-07-08 07:07:58
今回、ブトボソさんが巣立ち失敗の場面に遭遇することは何度目でしょう。
カラスとみれば被害も出ないうちにヒステリックにかつ当然のこととして駆除を考える人間ばかりでないことを知ると安堵します。きっとそういう人の方が多いはずとは思うのですが、多くの人が無関心か無関心を装って見守っていたとしても一人でも通報者があれば結果は同じになってしまうのが悲しいことです。

無心に眠る可愛い写真ですね。だが巣立てないものを人為によって巣立たせることは辛くとも控えねばならない。この雛の体力と運に期待しています。

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きんいろのからすさんへ (ブトボソ)
2007-07-08 15:48:24
こんにちは。
今日は大人しいのですが、その分気になりますね。昨日までは何度も地面を歩いていたのに今日はまだ一度も見かけません。様子を見に行きたいのですが、私を見ると親が興奮してしまうので控えています。
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Unknown (影の住人)
2007-07-08 19:50:26
この様に理解のある方達も居る事が然りで、其の理解ある人達を少しでも多く地道に増やして行きたいものですね! 兎に角頑張りましょうね!
非常に短気な影の住人でした!
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がんばって ブトボソさん (tamakitako)
2007-07-09 00:46:39
いままで 何羽の子供たちに手を差し伸べてこられたでしょう 本当に迷惑をかけているのは私たち人間なのに すばらしい実行力に頭が下がります これからのご活躍 何もできませんが心から応援しています カラとくりりんのようなすばらしい一族が苦しむことのないようなにかしないではいられません ・・・
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影の住人さんへ (ブトボソ)
2007-07-09 18:37:42
こんにちは。
今回は本当に嬉しかったです。そうでなければこの雛はとっくに捕獲されて捨てられていたと思います。
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tamakitakoさんへ (ブトボソ)
2007-07-09 18:39:31
こんにちは。
今回は民家の方が協力してくれたので雛を何度も枝に上げる事が出来ました。民家で営巣すると巣立ち後のトラブルが多いです。結果は最悪のパターンが多いですね。(^^;
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Unknown (くおん)
2007-07-11 20:33:23
家の主人も先日巣から落ちた雛を巣に戻した後に親鳥が間一髪で帰ってきたそうです(カラスさんではなかったけど)人間の無くしたものを動物は時に見せてくれますね・・・
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Unknown (雲山)
2007-07-12 00:38:25
教育者の意識は子供達に大きな影響を与えると思います。カラスの駆除、巣の撤去が当たり前のように行われている中で、このような先生の存在はとても希望を感じさせてくれますね。子供達の今後のカラスや野生の生き物に対しての認識が変わってくるといいですね。
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くおんさんへ (ブトボソ)
2007-07-12 06:06:39
こんにちは。
雛を親元に返す事が出来て良かったと思います。家族愛に強さを感じますね。(^^)
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雲山さんへ (ブトボソ)
2007-07-12 06:09:33
こんにちは。
今回はこの小学校のカラスへの考え方を知る事が出来て良かったと思います。今度もっと接する機会を作りカラスへの理解を深めてもらえたらと思っています。教育現場で殺傷が当たり前のように行われているのって間違っていると思いますね。
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