カラス

カラスと共に生き物の世界を覗き見る

巣立ち6

2006-09-07 20:44:55 | 繁殖

 今年もじっくりと観察する事が出来なかったご近所カラス達なのだが、今年もまたまた災難に遭ってしまった。このカラス達が縄張りにしているエリア内に事も在ろうに小学校の校庭が含まれている。実は小学校の校庭に営巣するカラスは意外と多いのである。グランド周辺にはトウヒやニセアカシアといった大木が植樹されている。カラスが好む環境である。しかしこれがカラス達にとって災難の始まりでもある。毎年恒例行事のように「児童や職員が襲われるかも知れない」という想定の基に巣の撤去が行われているのである。しかも撤去は一度ではなく尽く落とし続けるのである。

 今年は4月になるとボソが営巣を始めた。しかし5月に入り巣は撤去されてしまった。その後このボソは営巣する事はなかった。次に今回の主役であるブトが営巣を始めたのである。恐らく最初のボソの巣を撤去しなければこのブトはここで営巣をする事はなかったに違いない。しかし撤去した事によってこのブトは営巣する事が出来た。これが幸か不幸かはこの時点では分からなかった。

 しかし案の定このブトの巣も撤去されてしまった。しかしこのブトはこの場所で巣を二つ作っていた。最初の巣は未完成のままで、その後新たに巣を作っていたのである。結局2つとも撤去されてしまいこのブトはこの場所からいなくなったかのように思えた。

 至る所でカラスの雛が巣立ちを開始していた頃、このブトはまたこの場所で営巣を始めたのである。前回巣落としに遭ってから約一ヶ月というブランクがある。恐らく何処か別の場所で営巣してたのだろう。しかしそこでも巣落としに遭ってしまったものと思われる。そうでなければ一ヶ月というブランクは長過ぎるからである。

 しかしこの時期になると木の葉も茂り、ブトの巣は全くといって良い程カモフラージュされていた。小学校サイドも2回も巣を撤去したのだからここに来てまた営巣されるなんて考えてもいなかったのだろうし、当然ながら撤去した巣がブトかボソかだなんて論外だったのだろう。
 
 私は毎朝このブトの営巣状況が気になりバルコニーから観察していた。私がじっくりとこのブトの巣を観察する事によって他の人に知られてしまう可能性もあったのでなるべく目立たないようにひっどりと観察する事にした。少々見難いという状態だったのだが、巣材を運んでいる姿や抱卵に入り♂が見張りを始めたといった行動さえ掴めれば大よその検討が付く。

 この時期から営巣を始めたのだから巣立ちは8月の下旬になるだろう。果たして無事巣立つ事が出来るのだろうか?と毎日気掛かりだった。夕方自宅に戻る時に「もしかして巣がなかったら??」と不安な日々が続いていた。今まで小学校の職員が校庭の見回りをしている様子を気にした事なんてなかったのだが、今回は妙に気になってしまった。何気なく樹上を見上げていると「巣が見付かったのでは?」と不安になってしまう事が多かったのである。

 8月は毎日気温が高く雨もほとんど降らなかった。育雛に専念している♀を筆頭に見張りをしている♂、巣内にいる雛・・・・・みんなきっと暑かったに違いない。良く頑張ったと思う。

 巣立ちの時期が近付くと「もしかして威嚇を始めるのでは??」と思っていたのだが、カラスがいるとは思えない程静かだったのである。雛のおねだりの声も聞こえてはいたのだが、日頃から注意を払っていない人な全く気が付かないような鳴き声だった。そうかといって弱っている訳でもなく、むしろ尾羽は生え揃い、足取りもしっかりしていたのである。この程度しっかりとしているのならたとえ巣立った後地面に降りてしまっても何とかなりそうな気がした。

 ある日の朝の事である。いつもより大きな声で鳴いているブトの声が聞こえてきたので様子を見てみたら、巣の横に1羽瞳の青い雛が立っていた。そう、巣立ちである。巣の中にはまだ2羽の雛がいて所狭しといった具合に羽ばたきの練習をしていた。後は地面に降りる事なくちゃんと飛べるようになってくれる事を願うばかりであった。これから毎日親は給餌に忙しくなる事だろう。

 巣立って数日後に雛の数を確認する事が困難になってしまった。巣の下へ行き確認するのが一番良いのだが、他の人に知られてしまう事を考えたらこのまま様子を見るしかないと思っていた。後は雛の声が聞こえていたら大丈夫だという判断をするしかないのである。
 
 ある日、バルコニーから見てみると雛が1羽電柱に止まり羽繕いをしていた。残りの雛は木の中で休んでいるのを確認する事が出来た。雛は2羽しかいないようだが、もう1羽は別な場所にいるのかも知れない。親も数メートル離れた電柱から見張っていた。私の見ている限りでは今のところ威嚇や攻撃は見られない。実に静かな繁殖である。

 今回の繁殖で無事に雛を独り立ちさせる事が出来たら数年振りの快挙になる。今まで何度も巣落としや雛の捕獲という災難に遭っていながらもこの場所を捨てる事が出来ないブトにいじらしささえ感じてしまう。もう少ししたら家族の愛らしい姿を観察出来ると思うとワクワクしてしまうのである。


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2 コメント

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Unknown (夏子)
2006-09-08 23:01:59
こんばんは。ホワァンちゃんの縄張りに隣接しているブト(以前書き込んだことあります)も、毎年なぜか繁殖に失敗をしています。巣を作るとそこの森の持ち主が「庭に設置している巣箱のシジュウカラたちが襲われるから」と営巣妨害していたことが最近わかりました。なんとも・・ところがそれでも今年はブトも粘ったようで八月半ばごろに巣立ち雛一羽を真ん中に親子で止まっているのを発見。何年ぶりかで雛が巣立ったようです。粘り強さでいえばボソよりブトですかね。執念深いところもブト。ボソはけっこう諦めが早いというかいさぎよいところありませんか?
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夏子さんへ (ブトボソ)
2006-09-13 19:28:53
こんにちは。

お返事が遅くなってしまいました。(^^;



何処でもカラスは小鳥の天敵として繁殖を妨害されているのですね。巣箱の設置にしてもあらゆる事を想定して設置しないといけないと思うのです。天敵がカラスじゃなかったらきっと繁殖妨害なんてしなかったのだと思いますよ。



ブトの方が粘り強いのは確かだと思います。妨害されても雛を無事に巣立たせる事が出来て良かったですね。来年も負けないで欲しいです。

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